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マーケティング研究 他社事例 683 「オープンイノベーションがつまづく理由4」 ~中国のオープンイノベーション~

2020-11-19 09:20:11 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 683 「オープンイノベーションがつまづく理由4」 ~中国のオープンイノベーション~


『政府によるインフラ投資が重要である』とイノベーションが起こる為に必要な事を説いていましたチェスブロウ教授ですが、今回は中国に関する見立てから、オープンイノベーションを考えていきましょう。

「毛沢東(モウタクトウ)が知識層を追放し、文化大革命で国中を破壊された同国だが、鄧小平(トウショウヘイ)の登場で流れが変わった。その後、世界貿易機関(WHO)に加盟した2001年から経済成長が本格化。国策として膨大な量のインフラが整備されたことにより、中国企業の生産性が一気に高まった。インフラ整備は当初は非常に低い水準だったものの、数十年にわたり持続されたことが大きかった、その結果、例えば中国の空港は現在、アメリカの空港より近代的で洗練されている」

インフラ投資の長期継続が可能だったのは、中国の統治体制がものを言いました。

中国共産党の存在です。

「中国には、他国にはないものがある。中国共産党という仕組みだ。共産党と政府は公式には分離しているが、実際には党が政府を協力して管理し支配する。このような例は他の国ににはない。だが一方でイノベーションの部分では、中国は非常に自由で開放的でもあるのだ。インフラ整備などは細かく長期的に管理するが、産業政策、とりわけ先端分野に関しては比較的自由に民間にやらせる。そんな二面性にこそこの国の特徴がある。確かに高速鉄道の建設などの分野では、党が指導的役割を果たしている。中国は世界のどの国よりも多く高速鉄道を敷設しており、中核となる中国中車(CRRC)は国有企業で、政府と共産党の影響を強く受ける。」

「しかし、他のセクターでは、必ずしもそうではない。旧ソビエト連邦や毛沢東時代の中国では政府が産業政策に強く関与した結果、経済的には立ちゆかなかった。そうした失敗から得た教訓により、中国共産党は産業政策における意思決定の多くを市場に委ねるようになった。時折、自分たちのため決定を覆すことはあるが、それは例外的な措置だ」

中国の半導体産業と自動車は例外的な措置となっています。

「数千社ある半導体メーカーを見ると、2つの違うセグメントが存在する。まず国営企業や、国営から民営化した企業セグメントだ。巨大で政府と良好な関係にあり、銀行とも親密だ。だが想像通り、あまりイノベーティブではない。なぜ中国の半導体産業が力を付けてきたかと言えば、民間スタートアップや外資系企業の中国現地法人などに『好き勝手』にさせているからだ。余計な管理も規制もかけず、その結果、ここから大量の新技術とイノベーションがもたらされる。1つ目の、国が管理するセグメントは国内向けにビジネスを展開し、2つ目は日本、韓国、欧米のグローバルサプライチェーンの一部に対してビジネスを展開する。高速鉄道業界とは全く違った風景だ。」

「さらに販売台数が年間約2500万台と世界ナンバー1の規模になった自動車業界。ここでも、半導体産業と似たパターンが見られる。国営企業はイノベーティブではなく、中国は国産車をあまり国外に輸出せず、ほとんどは国内向けだ。だが、やはり、外資系企業のスタートアップと中国企業との合弁会社などをはじめとする非国営のセグメントが、新技術とイノベーションのインキュベーター(起業に関する支援をし育成する機関)だ」

半導体に比べると自動車は、国内向け内資企業が中心で革新性で劣るため、伸び悩んでいるように見えます。

しかし、チェスブロウ教授は、アメリカ人のみならず世界の人々が抱く一般的な中国観は、実体と異なると指摘しています。

「多くのアメリカ人はとかく中国は巨大な一枚岩だと考える。しかし、13億人の多民族が数十もの省・地域に分かれる国が一枚岩であるなどあり得ない。産業面も同様で、すべての国営企業が非革新的なわけではない。既に紹介したCRRCなどは、中国政府をバックに技術力を磨き、海外市場にどんどん攻勢をかけている。今では、世界最大の、最も競争力の高い技術力のある鉄道車両メーカーの1つだ。アメリカは40年前に技術で日本が自分達からリーダーの座を奪うと懸念した。だが日本経済が最強と言われた時でさえ、日本は社会も経済も、アメリカよりはるかに規模が小さかった。一方、中国はアメリカより人口が多く、経済成長も速い。あと数年で中国経済はアメリカ経済より大きくなる。購買力はアメリカを抜いた。今後は、イノベーションでも脅威だ。国策によるインフラ投資と最先端分野での自由さに加え、アメリカよりはるかに多額の資金を教育に投じているとの指摘もある。」

「アメリカは旧ソ連に脅された時も、日本に脅された時も、より多く教育にお金をかけて競争力を維持してきた歴史がある。中国の教育システムには改善の余地があるが、教育への投資総額でアメリカを抜いているなら、これまでアメリカが経験したことのない事態だ。それだけに米中関係は今後、世界にとって想像以上に重要となる。中国と、信頼や協働といった関係が構築出来ればよい。そんな状況で中国が新型コロナウイルスの優れたワクチンを開発したら世界中が喜ぶ。しかし素晴らしい知識を持つ国が急速に軍隊を育成し、成功と繁栄を重ねるに従い、過激に振る舞うようになったら、これほど危険なことはない」

「ヒマラヤ山脈における中国・インドの国境争いをご存知だろうか。中国は係争中の地域を武力で占拠した、そうした国が、より優れた知識と教育を備えたら何が起こるだろうか。多くの緊張がもたらされるのは想像に難くない」

今後も中国の対外政策や国内インフラ投資については注目する必要はありそうですね。



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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 
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