(滋賀報知特集記事:真価問われる嘉田知事3)
■環境省「遮水壁にせよと言っていない」
■高谷氏「遮水壁の恒久対策など住民は認めない」
5月11日に栗東市で開催された県と住民との意見交換会で、嘉田知事はどの対策工法を採用するかを明確にしなかった。そして15日、嘉田知事は県議会環境・農水常任委員会で、突如、有害物を遮水壁(しゃすいへき)で囲んで水処理する対策工法「D案」を基本にする方針を示した。 嘉田知事の言動がいかにも唐突に映るが、実はこれには伏線があった。
嘉田知事は6日の午前中、當座洋子氏、田村隆光氏(市議)ら県の諮問機関の対策委員会の地元選出委員四人らと草津市で、非公式に意見交換を行っていた。
席上、嘉田知事は「有害物を全量撤去しても持っていくところがない」と全量撤去のA-2案が困難との見解を示した。それは事実上、D案を示唆したものと受け止められた。
同日夕、嘉田知事は、支援団体“対話の会”の幹部や県議らを大津市内に集めて最終判断の協議を行ったが、「安全面、経済性などからD案しかない」との考えを改めて示したという。
“対話の会”のメンバーからは「それなら11日の意見交換会ではD案をきちんと説明すべき」との意見が相次いだ。メンバーの一人は「知事がてっきりD案を採用することを住民に説明するものだと思っていた」と振り返る。
ところが嘉田知事は意見交換会で「住民の皆さんの意見を対策工法に反映したい」と述べるにとどまり、D案で腹を固めたことはおくびにも出さなかった。それから四日後、嘉田知事は県議会常任委員会でD案の方針を公表した。
住民団体の“RD処分場の有害物から飲み水を守る会”の高谷順子事務局長は「遮水壁を恒久対策として有害物を閉じ込めることを、住民の誰一人として認めていない。環境学者の嘉田知事が住民の願いをいとも簡単に切り捨てるとは思わなかった」と憤る。
対策委員会委員だった當座洋子氏も「大阪フェニックスが西暦21年度で満杯になり有害な廃棄物をもっていくところがないといまさら知事に言われても、こんなことは担当者が早くから知っていたこと。それさえ十分に知らされなかった対策委員会とはなんだったのか」と不信感を募らせる。
県は5月28日から、周辺の各自治会に対して説明会を開始したが、遮水壁の恒久対策には住民のアレルギーが強い。
“なにがなんでも遮水壁”の滋賀県だが、肝心の環境省の産廃特措法担当者は「どの対策工法なら汚水が漏れないようになるのか(遮水壁か粘土層の修復かなど)は、滋賀県があくまで考えること。 環境省が県に対し遮水壁にせよと言った覚えなどはない」と憮然(ぶぜん)たる表情だった。県担当者が遮水壁にこれほど執着する裏には何があるのか―、地元では疑念が出始めている。
【関連ニュース番号:0805/84、5月17日;0805/112、5月22日;0805/126、5月24日など】
(5月29日付け滋賀報知)
http://www.bcap.co.jp/s-hochi/n080529.html#1