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【0910/245:救急医療】ドクターヘリ、調査開始 / 県、年度内には報告書

2009-10-31 01:04:57 | Weblog
【朝日新聞特集:リポートしが】

 医師や看護師を乗せて救急現場に飛び、患者を搬送しながら機内で処置をする医療専用のヘリコプター「ドクターヘリ」の導入に向け、県が調査を始めた。ドクターヘリの県内の需要や、他府県との共同運航の可否を調べ、年度内に報告書をまとめる見込み。本格的な調査は初めてで、地域医療の充実を望む県内の医療機関も注目している。 (安田琢典)

■自治体や病院も注目

 救急車での搬送に時間を要する離島や山間部の救命救急事情を改善させようと、国は01年度からドクターヘリの導入を始めた。厚生労働省によると、現在、16道府県で20機のヘリが稼動しており、来年度は京都、兵庫、鳥取の3府県が共同運航する予定だ。
 関西ではすでに和歌山県と大阪府がヘリを導入。奈良県にも両府県のヘリが乗り入れており、関西では滋賀県が唯一の空白地域になっている。
 ヘリを単独運航する場合、年間に約1億7千万円かかる。半分は国の補助だが、財政難の県は「単独運航は困難」と医療薬務課の八田敬次参事。「すでに運航している関西の府県との共同運航が現実的だ」と言う。
 県が共同運航できる可能性があると見ているのは大阪府だ。ヘリは吹田市の大阪大医学部付属病院にあり、30分で到着できる目安の半径100キロ圏内に県全域が網羅される。
 県は9月に調査費200万円を予算化。08年の県内の救急搬送事例のうち、重症や死亡に当たる約4千件の搬送時間などを分析し、救急車よりもヘリでの搬送が効果的な事例がどのくらいあるかを把握するとともに、ヘリの需要見込みや着陸可能な場所も調べる。
 こうした県の動向に、自治体や医療機関は注目する。
 高島市もその一つだ。中心の医療機関、公立高島総合病院で対処しきれない患者を救急車で大津市の医療機関に搬送する場合、1時間以上かかる地域は少なくない。木津仁志経営管理部長は「県内で最も恩恵を受けるのは湖西圏域。今回の調査は評価できる」と期待する。
 一方、草津市の草津総合病院は昨年10月、県にヘリ導入の要望書を出している。今年7月には国の地域医療再生計画を利用したヘリポートの建設計画も提案した。提案は認められなかったが、水野光邦理事長は「人命は金に換えられない。県単独で導入するぐらいの覚悟が必要だ」と指摘する。

■和歌山は救命率上昇

 関西では03年1月に和歌山県が初めてドクターヘリを導入した。県内だけではなく、隣接する奈良、三重県の一部もカバーする。今年4月からは大阪府のヘリと徳島県の防災ヘリとの相互乗り入れも行っている。
 和歌山県がヘリを導入した背景には、主な病院が沿岸部に集中し、山間部の医療体制が整っていない事情がある。県医務課の貴志幸生主任は「救急車で搬送に1時間半以上もかかる地域がある。医療の偏在を改善するにはヘリしか考えられなかった」と打ち明ける。
 ヘリのスタッフは和歌山県立医科大学付属病院の医師15人で、重症患者が発生した場合、地元の消防署の要請に応じて出動する。出動件数は年々増えており、昨年度は386件。これは救急搬送された重症患者の約8%にあたるという。
 貴志幸生主任は「ヘリ導入後、救命率は2~3割程度上がっている。後遺症を抑止するのにも有効だ」と話す。

(10月18日付け朝日新聞)

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