【写真:県庁の家宅捜索に入る県警の捜査員=大津市/県が経済振興特区に認定した滋賀統合物流センター(SILC)計画の予定地(下)。JR米原駅(上)と結び、物流拠点を目指すとされる=昨年6月、米原市/古川久巳容疑者】
■システム受注 便宜か
県の経済振興特別区域の認定などをめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された県商工観光労働部管理監の古川久巳容疑者(56)=高島市マキノ町知内=に贈られた現金が、贈賄側とされるコンサルタント会社に勤める古川容疑者の長男名義の口座に振り込まれていたことが13日、県警への取材で分かった。わいろの趣旨として、農協に導入されたコンピューターシステムの受注をめぐっても同社に便宜を図った疑いが持たれている。この日午前、県警が家宅捜索する県庁で、嘉田由紀子知事は謝罪の記者会見をした。
県警によると、古川容疑者は県東京事務所副所長だった2005年、東近江市のJAグリーン近江が設置するコンピューターシステムに、県内に本店を置くコンサルタント会社が開発したソフトを導入するよう働きかけたとされる。
県農業経営課によると、JAが導入したのは米の栽培履歴や入出荷履歴の情報を管理する「トレーサビリティシステム」を取り入れるソフトで、導入にあたりJAは04年12月、旧八日市市(現東近江市)に事業計画を提出した。これにあわせて総事業費の最大50%が支給される国の補助金の交付申請が市から県を経て国に上がり、05年3月、補助金の交付決定が内示。同月、JAはソフトの見積もりをとっていた数社からコンサル会社と契約した。
県警は、当時、県と中央省庁との連絡、調整にあたる立場にいた古川容疑者が、コンサル会社の受注や補助金の受給に向けて便宜を図ったとみている。
JAは同年4月27日に国の補助金6650万円を受け取り、翌28日、コンサル会社に1億1550万円の代金が支払われた。古川容疑者へのわいろとみられる現金850万円は、ほぼ同時期に、コンサル会社側から同社に勤務する同容疑者の長男の口座に振り込まれた。
一方、古川容疑者が便宜を図ったとされる県の経済振興特別区域の認定は、米原市で進められている「滋賀統合物流センター(SILC)特区計画」に絡むものだ。認定されると、税金の減免や補助金などの助成が5年間受けられる。
JR米原駅の南にある土地を造成するなどし、約22ヘクタールの物流の拠点をつくる総事業費約150億円のプロジェクト。同市によると、この構想を市に提案したのが、今回の事件で古川容疑者にわいろを贈ったとされる社長が経営するコンサル会社だった。同社は03年に県から旧米原町に紹介されたが、この紹介に古川容疑者がかかわったという。
県商工政策課によると、米原市は05年4月に特別区域の認定を申請。外部の有識者からなる委員会が他の二つの計画とともに審査した結果、SILC構想を特区と認定するのにふさわしいと評価し、同6月に特区に認定された。
◇
県警は13日、古川容疑者の容疑を裏付けるため、県庁や米原市役所を家宅捜索し、多数の書類を押収した。
【容疑者の一問一答】
古川容疑者は昨年10月末、朝日新聞の取材に対し、贈賄側(時効成立)とされるコンサルタント会社との関係について「何も問題はない」と話していた。主なやり取りは次の通り。
《コンサル会社との癒着がうわさされている。》
私は何かと言われがちだが絶対シロや。そのあたりは大丈夫。コンプライアンスを重視せにゃあかん立場やから。
《同社をもうけさせる絵を描いたのでは。》
中小企業が先駆的な取り組みをするのを後押しするのは当然だ。何も問題ない。(経済振興特区事業で)コンサル会社は得をしていない。不適切ではない。
■「行動把握しきれず」知事が謝罪
古川容疑者は県東京事務所の副所長だった05、06年度に、出勤日数のうち半分を出張にあて、その行き先のほとんどが地元の滋賀県内だったことが判明。県内のオンブズマンが「税金の無駄遣いだ」と勤務実態を批判し、県に監査請求をするなど一昨年に問題化した経緯がある。県警によると、古川容疑者がコンサルタント会社から現金約850万円を受け取ったとされるのは、この時期とも重なる05年4月下旬だった。
嘉田由紀子知事は13日朝、記者会見し「県の幹部職員であり大変申し訳なく、遺憾の極み。県民のみなさんにおわびする」と謝罪した。古川容疑者の勤務が問題化した当時は「出張が多すぎるとは思わない」と話していたが、この日は「企業誘致という仕事の性格がら行動を把握しきれないことがあった」と述べた。
県によると、古川容疑者は1972年に県に採用され、働きながら立命館大の夜間に通い77年に卒業。97年に中小企業の振興にかかわる部署に配属されると、以後、一貫して県庁の商工畑を歩んだ。
県の重要施策である企業誘致にかかわるようになったのは東京事務所に勤務した03年から。関係者によると、コンサル会社はこのころ、米原市に物流拠点をつくる構想を東京事務所に相談。構想は官民連携事業の「滋賀統合物流センター(SILC)特区計画」として、05年6月に県の経済振興特区に認定された。
古川容疑者はこの事業などに絡み、コンサル会社側に便宜を図った疑いが持たれている。昨年6月、計画地の造成が終わり、米原市と進出企業が土地の売買契約に調印した際、現地のセレモニーにも立ち会っていた。嘉田知事は「仕事ぶりはまじめで熱心。それだけに残念」と述べた。
【関連ニュース番号:1001/82、1月13日:0802/200、08年3月1日;0803/41、08年3月1日;0803/83、08年3月12日;0803/181、08年3月28日など】
(1月14日付け朝日新聞・電子版:同日付けその他各紙も報道)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001001140004
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20100114ddlk25040470000c.html
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2010011400035&genre=C1&area=S00
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100114/CK2010011402000004.html
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20100113-OYT8T01406.htm
■システム受注 便宜か
県の経済振興特別区域の認定などをめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された県商工観光労働部管理監の古川久巳容疑者(56)=高島市マキノ町知内=に贈られた現金が、贈賄側とされるコンサルタント会社に勤める古川容疑者の長男名義の口座に振り込まれていたことが13日、県警への取材で分かった。わいろの趣旨として、農協に導入されたコンピューターシステムの受注をめぐっても同社に便宜を図った疑いが持たれている。この日午前、県警が家宅捜索する県庁で、嘉田由紀子知事は謝罪の記者会見をした。
県警によると、古川容疑者は県東京事務所副所長だった2005年、東近江市のJAグリーン近江が設置するコンピューターシステムに、県内に本店を置くコンサルタント会社が開発したソフトを導入するよう働きかけたとされる。
県農業経営課によると、JAが導入したのは米の栽培履歴や入出荷履歴の情報を管理する「トレーサビリティシステム」を取り入れるソフトで、導入にあたりJAは04年12月、旧八日市市(現東近江市)に事業計画を提出した。これにあわせて総事業費の最大50%が支給される国の補助金の交付申請が市から県を経て国に上がり、05年3月、補助金の交付決定が内示。同月、JAはソフトの見積もりをとっていた数社からコンサル会社と契約した。
県警は、当時、県と中央省庁との連絡、調整にあたる立場にいた古川容疑者が、コンサル会社の受注や補助金の受給に向けて便宜を図ったとみている。
JAは同年4月27日に国の補助金6650万円を受け取り、翌28日、コンサル会社に1億1550万円の代金が支払われた。古川容疑者へのわいろとみられる現金850万円は、ほぼ同時期に、コンサル会社側から同社に勤務する同容疑者の長男の口座に振り込まれた。
一方、古川容疑者が便宜を図ったとされる県の経済振興特別区域の認定は、米原市で進められている「滋賀統合物流センター(SILC)特区計画」に絡むものだ。認定されると、税金の減免や補助金などの助成が5年間受けられる。
JR米原駅の南にある土地を造成するなどし、約22ヘクタールの物流の拠点をつくる総事業費約150億円のプロジェクト。同市によると、この構想を市に提案したのが、今回の事件で古川容疑者にわいろを贈ったとされる社長が経営するコンサル会社だった。同社は03年に県から旧米原町に紹介されたが、この紹介に古川容疑者がかかわったという。
県商工政策課によると、米原市は05年4月に特別区域の認定を申請。外部の有識者からなる委員会が他の二つの計画とともに審査した結果、SILC構想を特区と認定するのにふさわしいと評価し、同6月に特区に認定された。
◇
県警は13日、古川容疑者の容疑を裏付けるため、県庁や米原市役所を家宅捜索し、多数の書類を押収した。
【容疑者の一問一答】
古川容疑者は昨年10月末、朝日新聞の取材に対し、贈賄側(時効成立)とされるコンサルタント会社との関係について「何も問題はない」と話していた。主なやり取りは次の通り。
《コンサル会社との癒着がうわさされている。》
私は何かと言われがちだが絶対シロや。そのあたりは大丈夫。コンプライアンスを重視せにゃあかん立場やから。
《同社をもうけさせる絵を描いたのでは。》
中小企業が先駆的な取り組みをするのを後押しするのは当然だ。何も問題ない。(経済振興特区事業で)コンサル会社は得をしていない。不適切ではない。
■「行動把握しきれず」知事が謝罪
古川容疑者は県東京事務所の副所長だった05、06年度に、出勤日数のうち半分を出張にあて、その行き先のほとんどが地元の滋賀県内だったことが判明。県内のオンブズマンが「税金の無駄遣いだ」と勤務実態を批判し、県に監査請求をするなど一昨年に問題化した経緯がある。県警によると、古川容疑者がコンサルタント会社から現金約850万円を受け取ったとされるのは、この時期とも重なる05年4月下旬だった。
嘉田由紀子知事は13日朝、記者会見し「県の幹部職員であり大変申し訳なく、遺憾の極み。県民のみなさんにおわびする」と謝罪した。古川容疑者の勤務が問題化した当時は「出張が多すぎるとは思わない」と話していたが、この日は「企業誘致という仕事の性格がら行動を把握しきれないことがあった」と述べた。
県によると、古川容疑者は1972年に県に採用され、働きながら立命館大の夜間に通い77年に卒業。97年に中小企業の振興にかかわる部署に配属されると、以後、一貫して県庁の商工畑を歩んだ。
県の重要施策である企業誘致にかかわるようになったのは東京事務所に勤務した03年から。関係者によると、コンサル会社はこのころ、米原市に物流拠点をつくる構想を東京事務所に相談。構想は官民連携事業の「滋賀統合物流センター(SILC)特区計画」として、05年6月に県の経済振興特区に認定された。
古川容疑者はこの事業などに絡み、コンサル会社側に便宜を図った疑いが持たれている。昨年6月、計画地の造成が終わり、米原市と進出企業が土地の売買契約に調印した際、現地のセレモニーにも立ち会っていた。嘉田知事は「仕事ぶりはまじめで熱心。それだけに残念」と述べた。
【関連ニュース番号:1001/82、1月13日:0802/200、08年3月1日;0803/41、08年3月1日;0803/83、08年3月12日;0803/181、08年3月28日など】
(1月14日付け朝日新聞・電子版:同日付けその他各紙も報道)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001001140004
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20100114ddlk25040470000c.html
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2010011400035&genre=C1&area=S00
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100114/CK2010011402000004.html
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20100113-OYT8T01406.htm