【写真:県幹部収賄事件の舞台となったとみられるSILC予定地(手前)。左上はJR米原駅=米原市で、本社ヘリ「おおづる」から】
東近江市の農協や米原市に建設予定の物流センターを舞台とした贈収賄事件。収賄の疑いで逮捕された県商工観光労働部管理監の古川久巳容疑者(56)は県内の物流コンサルタント会社に有利な取り計らいをする見返りに、850万円を受け取ったとされる。だが、古川容疑者が行ったとされる便宜は本人の職務権限と直接結び付きにくく、その実態は明らかになっていない。
県警によると、古川容疑者は2005年4月下旬ごろ、「JAグリーン近江」(東近江市)が米の乾燥保管施設「環境こだわりカントリーエレベーター(CE)」を建設する際、コンサル会社の米生産履歴管理システムを採用し、さらにCE建設に補助金が出るよう中央官庁に働き掛けた見返りに同社社長からわいろを受け取った。わいろの趣旨には同社が当時かかわっていた米原市の滋賀統合物流センター(SILC、シルク)事業が、経済振興特区に認定されるよう求める意図もあったとされる。
JAや県によると、システム導入の際、同社を含め3社のシステムを見積もったが、JAの仕様に合致したのはコンサル会社のみ。古川容疑者が県職員を交えた会議に同席したり、同社のシステム採用を口利きできる立場にはなかった。
CE建設にかかる総事業費7億7000万円には、3億600万円の国庫補助が出ている。当時、周辺地域で稼働していたCEの利用率は低く、元県幹部は「新たにCEを作っても費用対効果は悪かったのではないか」と疑問を呈す。県も4400万円を補助しなければならず、補助金による建設は難しいという見方もあった。「それを古川容疑者の力だけで建設に向かわせることができるとは到底思えない」と元幹部は話す。
シルク事業は05年5月の審査委員会を経て同年6月、経済特区に認定された。古川容疑者は事業の実質的なプロジェクトリーダーで、米原市や参加企業とともに事業を推進していた。だが、審査委は外部の有識者からなり、古川容疑者がどのように特区認定を働き掛けたか注目される。
捜査関係者は「当時古川容疑者は東京事務所で企業誘致を担当し、中央官庁との連絡調整に動いた。その対価としてわいろを受け取るだけで、収賄が成立する」と自信を見せる。
県警捜査二課は、14日までに県庁や東京事務所、古川容疑者宅、コンサル会社など関係先23カ所を家宅捜索し、関係書類を中心に約1100点を押収。具体的にどのような便宜を図ったのか解明を進めている。 (曽布川剛)
【関連ニュース番号:1001/114、1月17日;1001/90、1月14日;1001/83、1月13日など】
(1月17日付け中日新聞・電子版)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100117/CK2010011702000001.html
東近江市の農協や米原市に建設予定の物流センターを舞台とした贈収賄事件。収賄の疑いで逮捕された県商工観光労働部管理監の古川久巳容疑者(56)は県内の物流コンサルタント会社に有利な取り計らいをする見返りに、850万円を受け取ったとされる。だが、古川容疑者が行ったとされる便宜は本人の職務権限と直接結び付きにくく、その実態は明らかになっていない。
県警によると、古川容疑者は2005年4月下旬ごろ、「JAグリーン近江」(東近江市)が米の乾燥保管施設「環境こだわりカントリーエレベーター(CE)」を建設する際、コンサル会社の米生産履歴管理システムを採用し、さらにCE建設に補助金が出るよう中央官庁に働き掛けた見返りに同社社長からわいろを受け取った。わいろの趣旨には同社が当時かかわっていた米原市の滋賀統合物流センター(SILC、シルク)事業が、経済振興特区に認定されるよう求める意図もあったとされる。
JAや県によると、システム導入の際、同社を含め3社のシステムを見積もったが、JAの仕様に合致したのはコンサル会社のみ。古川容疑者が県職員を交えた会議に同席したり、同社のシステム採用を口利きできる立場にはなかった。
CE建設にかかる総事業費7億7000万円には、3億600万円の国庫補助が出ている。当時、周辺地域で稼働していたCEの利用率は低く、元県幹部は「新たにCEを作っても費用対効果は悪かったのではないか」と疑問を呈す。県も4400万円を補助しなければならず、補助金による建設は難しいという見方もあった。「それを古川容疑者の力だけで建設に向かわせることができるとは到底思えない」と元幹部は話す。
シルク事業は05年5月の審査委員会を経て同年6月、経済特区に認定された。古川容疑者は事業の実質的なプロジェクトリーダーで、米原市や参加企業とともに事業を推進していた。だが、審査委は外部の有識者からなり、古川容疑者がどのように特区認定を働き掛けたか注目される。
捜査関係者は「当時古川容疑者は東京事務所で企業誘致を担当し、中央官庁との連絡調整に動いた。その対価としてわいろを受け取るだけで、収賄が成立する」と自信を見せる。
県警捜査二課は、14日までに県庁や東京事務所、古川容疑者宅、コンサル会社など関係先23カ所を家宅捜索し、関係書類を中心に約1100点を押収。具体的にどのような便宜を図ったのか解明を進めている。 (曽布川剛)
【関連ニュース番号:1001/114、1月17日;1001/90、1月14日;1001/83、1月13日など】
(1月17日付け中日新聞・電子版)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100117/CK2010011702000001.html