安土町を中心に不登校や発達障がいを考えようと集まった住民団体「あんどYOU」の第五回子育て支援セミナー(町教委後援 県子ども未来基金助成事業)がこのほど安土町文芸セミナリヨで開催された。オープニングイベントではメンバーら四十五人による合唱「手紙~拝啓 十五の君へ~」が披露され、歌声に乗せたメッセージが発信された。
町内や近隣市町などから参加した保護者や、教育・福祉・行政関係者らで満席となった会場に、「拝啓 この手紙…… 負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな時は 自分の声を信じ歩けばいいの…… 人生の全てに意味があるから 恐れずにあなたの夢を育てて…… 笑顔を見せて 今を生きていこう 今を生きていこう……」のハーモニーは響いた。
合唱は、小学校三年生から日野高校卒業までを県内で過ごした、発達障がいの権威として活躍する、児童精神科医で川崎医療福祉大特任教授の佐々木正美氏にセミナーの講師を引き受けてもらえたこともあり、感謝の気持ちも込めて披露することにした。
昨年十一月から老蘇小学校の音楽室などを借りて、日曜日や夜を中心に練習を続け、この日に臨んだ。合唱が終わると、会場からは大きな拍手が贈られた。
山田靖弘代表は、「四年前に発達障がいの子を持つ親と出会い、活動が始まった。発達障がいへの正しい理解を」と訴えた。
この後の講演「発達障がいへの正しい理解――長所と短所への心づかい――」で佐々木氏は、ニュートン、モーツァルト、アインシュタインも発達障がいと言われている例をあげながら、「発達障がいは発達が遅れているわけではなく、発達がでこぼこなだけであり、理解してもらえて受け入れてもらえば優れた能力を発揮する。遅れているところを直そうとしても直らない。直すものでもない。無理に直そうとすると、本人にとっては過酷なことであり、二次障がいをおこす危険性もある」などと、正しく理解し、受け入れることの重要性を強調した。
また、個人差がある一方で、視覚的なものを理解する能力、個別的・定型的なことへの理解・記憶力は高く、一芸に秀でたり、超一流の職人として成功する可能性を秘めるが、想像力・応用力が必要なことには弱い――などの共通点があることも紹介し、「ダメなところは切り捨て、優れたところを伸ばしてあげる」ことへの理解を求めた。
そして、発達障がいの人の「わがままでない、ずるくない、うそをつかない、裏表がない、まじめ、一途」な良い点を示し、「不安定行動は周りの責任」と、周囲に理解者の存在が不可欠であることを、繰り返し訴えた。
質疑応答では、就職問題を抱えた保護者、自分が発達障がいであることを開示すべきかという本人、保護者に事実を受け入れてもらえない保育園教諭から、当事者の切実な思いが出され、参加者と共に問題の解決策を探った。
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(3月8日付け滋賀報知新聞)
http://www.shigahochi.co.jp/info.php?type=article&id=A0000892