一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4回 中井広恵の将棋合宿(第9手)・中井広恵VS大野八一雄

2012-06-04 00:06:57 | 将棋イベント
第3回 最恐戦
平成24年5月20日
於・埼玉県秩父郡小鹿野町「越後屋」
▲七段 大野八一雄
△女流六段 中井広恵

(持ち時間・チェスクロック使用で30分、秒読み1分)
▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△6二銀▲4八玉△6四歩▲3八玉△8五歩▲7六飛△8八角成▲同銀△3二銀▲7八金△6三銀▲2八玉△4二玉▲3八銀△3一玉▲1六歩△1四歩▲7七銀△9四歩▲8六歩△4四角

His氏の振り駒で大野の先手となった。と、「相居飛車はやめてください」と、W氏の声が飛ぶ。それを聞いた大野、3手目に▲7五歩と伸ばし、石田流の意思を見せた。
中井は角を換えて△3二銀。「広恵の左美濃」のようだ。以下△3一玉まで、バタバタと手が進んだ。
本局の聞き手はFuj氏。弁の立つFuj氏、独演会になるのではと危惧したが、でしゃばることもなく、無難にこなしている。
なお前回までの聞き手はY氏だったが、今回は所用で不参加。Y氏の次回の参加を、心から祈る。
大野、▲7七銀と指して席を外した。秒読みになってからではトイレに行けない。いまのうちに用を足しておこうということか。
▲8六歩の開戦に、中井はさして時間を使わず、△4四角。序盤の勝負手だ。

▲8五歩△同飛▲8六銀△8二飛▲7七桂△7二金▲9六歩△5四銀▲7四歩△同歩▲同飛△7三金▲7六飛△7五歩▲同銀△8九飛成▲7九歩△9九竜▲8六飛△8三歩▲8二角

大野は▲8五歩から▲7七桂と跳ね、再び席を外す。戻ってきて▲9六歩。このあたりは中盤の難所で、一手一手に時間を使っている。△5四銀と腰掛けて、中井も席を外した。
植山悦行七段の解説は簡に要を得ておもしろい。対局者の耳にも入っているはずだが、ふたりは盤上を凝視している。
中井、文字どおりノータイムで△7五歩と打ち捨て、勇躍△8九飛成。続いて△9九竜と香得を果たしたが、▲8六歩~▲8二角に、中井の手がピタリと止まった。何か誤算があったのだろうか。

△9三香▲7一角成△9七竜▲8七歩△3五角▲4六歩△8四金▲6四銀△2二玉▲8一馬△8六竜▲同歩△6一飛

外はきょうも快晴。わずかに開けた窓のすき間から、初夏のさわやかな風が入ってくる。実にのどかな、日曜の午前だ。しかし盤上は風雲、急を告げている。
大野、お腹をさすり、また席を外した。昨夜の飲み物が相当残っているのだろう。将棋を指しているときの対局者は、その魅力が5割増し、が私の持論。中井は凛としていて、つい見とれてしまう。棋譜読み上げ兼記録係の特権である。
中井、大野が戻るのを待たず、しょうがない、という感じで△9三香と上がった。しかし▲7一角成で、この桂は逃げることはできない。
中井の持ち時間は残り5分を切った。△3五角とのぞいて席を外したが、元々この角は期待の一着だった。こんなはずではなかった、の思いだったろう。
▲8一馬に中井が考慮中、秒読みに入った。秒の読み上げはR氏が担当する。中井は飛車を交換して△6一飛。泣きの自陣飛車だ。

▲8二馬△7四金▲5五銀△6二飛▲8一飛△8二飛▲同飛成△5五銀▲7一飛△6三角▲4一飛成△同角▲4二金

局面は大野優勢。中井は△8四金が僻地にいるのが痛い。将棋は遊び駒があっては勝てない。そこで△7四金と寄った。悪くなっても暴発せず、じっと駒を活用する。これがプロの手だ。
大野は▲8一飛から秒読みに入ったが、すでに時間の要らない将棋になりつつある。
中井は△8二飛から△5五銀と一枚得したが、お返しの▲7一飛が痛打。両金取りだ。中井は△6三角でそれをしのいだが、大野は▲4一飛成から▲4二金とシンプルに攻める。これで大勢が決したようだ。

△5二香▲8一竜△4六角▲4一金△7六歩▲4七歩△5七角成▲4二金△6九飛▲3一竜△1三玉▲3二金△3九銀▲1七玉△7七歩成▲2二竜△2四玉▲3三角
まで、91手で大野七段の勝ち。

中井が盤に覆いかぶさるようにして考えている。△5二香は涙が出るような辛抱だが、大野はそれを相手にせず、▲8一竜と入る。
そして中井が△7六歩と桂を取りに来た手に対し、大野の▲4七歩が、植山七段も唸った手。万一のトン死筋を消した、「絶対負けません」という手だ。
中井、△3九銀と王手して、顔に手をやった。
大野、▲3三角。ここで中井の投了となった。
しばし盤上でのやりとりがあったが、大盤に移動してやってもらう。中盤、中井は△9九竜と香得したが、大野の▲8六飛~▲8二角が、それを上回る攻めだったようだ。
してみると△9九竜では、じっと△8二竜だったか。しかし観戦者のいる対局で、そんな辛気臭い手は指せなかったようだ。
それよりも△9三香では一手早く△9七竜と引き、先手を焦らせるべきだったようだ。また一足先の香得を活かして、どこかで△1五歩~△1二香打と攻める手はあったらしい。
とにかく感想戦は、丁々発止のやりとりがあり、おもしろかった。
大野に賞金が手渡され、第3回の最恐戦は、大野七段の「優勝」で幕を閉じた。
(つづく)
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