一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

日レスインビテーションカップを見た感想(前編)

2012-09-27 00:35:19 | 女流棋戦
きのう26日から、スマホ2年目に入った。スマホを使うのも良し悪しで、機会があったら詳しく記したいが、個人的には、やっぱり所持しないほうがよかった。

第6回日レスインビテーションカップ決勝戦・中井広恵女流六段と渡部愛女流3級の一戦は、29日(土)に行われる。
そこできょうとあすは、1日に行われた2回戦と準決勝戦を振り返る。きょうは2回戦4局。

・中井広恵女流六段-和田あきアマ戦
後手・中井は居飛車の本格派。和田アマは居飛車党だが横歩取りは指さないので、矢倉は予想された立ち上がりだった。
和田アマは受け将棋で、お行儀のいい手を指す。若いのだから、妹のはなさんのように、もっとガンガン攻めてもいいと思う。
本局は大豪相手に堂々の指し回し。中井の指し手にも問題があったのだろうが、もともと中井は、対局者の棋力に合わせて「いい勝負」にしてしまう、妙なクセがある。女流王将戦や倉敷藤花戦で挑戦者決定戦に進むかと思えば、女流名人位戦B級リーグで2勝5敗の星になるなどが、いい例である。
この日の中井は、きもの姿。Kaz氏によると、もし私がいたら失神したのではないか、とのことだったが、写真を見る限り、今ひとつだった。ちょっと艶やかさが足りなかった。女流棋士ファンランキング1位への注文は厳しいのだ。
64手目△2五桂に、▲2六歩の突き捨てが指し過ぎ。ここは単に▲4五歩と桂を取るところ…とは終わったからいえるのであって、実戦では飛車の捌きと▲2四歩を見て、こう指したくなるところである。和田アマは運がなかったのだ。
74手目、△6九銀とカケた手が厳しかった。矢倉崩しの手筋だが、こうも綺麗に決まった例は珍しい。
89手目▲5一銀は、代わる手がむずかしいとはいえ、どうなのだろう。こんなところに銀を打って、幸せになれるとは思えない。
本譜は中井が綺麗に寄せて、制勝。3連覇に向けて視界よし、というところ。

・鹿野圭生女流二段-島井咲緒里女流二段
ともに振り飛車党だから、本局も相振り飛車になった。後手鹿野の美濃囲いに対し、先手島井は▲3八金-▲4九玉。島井のマイブームだ。
45手目、▲9四歩。相振り飛車において島井の端攻めも定評のあるところ。手駒に何もなくっても、何やかやと手にしてしまう。
本局、島井の攻めも一気には決まらず、むずかしい戦いが続いたが、結局寄り倒してしまった。最近、相振り飛車では美濃に囲う例が多いが、こういう端攻めを見せられると、端の備えがある金無双が優っているのではないか、と思ってしまう。
鹿野は序盤から受け一方で、終盤は粘るのに疲れ、根負けしてしまった感じ。どこかで先手玉に嫌味をつけておきたかった。
いずれにしても本局は、「シマイ攻め」の名局といえる。

・石橋幸緒女流四段-渡部愛女流3級
渡部の先手で▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三角。乱戦を好む石橋が、早くも4手目に注文をつけた。ただし石橋の本領は、本格的な将棋にあると思う。ふつうに指せば強いのに、策士、策におぼれて自ら転ぶことがある。
対して渡部は角を換え、自然の指し回し。かつては振り飛車党だった渡部、すっかり居飛車が板についてきた。そのブレザー姿も、なんちゃって女子高生のようで、高揚感を覚える。
ここから中終盤の攻防は見応えがあった。もし私が現地に行ったら、解説そっちのけで、かぶりつきで本局を見ていただろう。
終盤は一手を争う激戦。しかし110手目△7五桂▲同歩に△7六金が、焦った。ここは△4三角▲7六桂△3四角とギアを緩めるところ。しかしその前109手目に、渡部が▲3四歩と、詰ましてみろと開き直ったので、石橋に詰まさねばならない、という強迫観念が生まれてしまったようだ。ここに微妙な綾があった。
渡部は辛勝で準決勝進出。しかし両者とも本当に強いと思った。

・船戸陽子女流二段-大庭美樹女流初段
序盤、先手船戸が棒銀に出れば、後手大庭は右玉模様で迎え討つ。早くも両者の棋風が出た。
大庭△2二飛に、船戸▲6六角。△8四歩を取られてはならぬから大庭は△8二飛と戻るが、△8五歩と伸ばしたあと、再び△2二飛と回ったのには驚いた。
こうしたのらりくらりとした指し方が大庭の得意とはいえ、立ち遅れ感は否めない。
のちに△2四歩と突いたが、△2五歩と取りこんでも▲2三歩△同飛▲3二銀があっては、狙いが中途半端だ。ただし、この茫洋とした指し手が、大庭の持ち味ともいえる。52手目△3六歩、60手目△3四歩など、落ち着いた歩の使い方が参考になった。
対して船戸も、いつもの元気な攻めは影をひそめ、じっくり間合いを計る。ことに59手目▲6九玉、93手目▲7八玉は、プロから見れば当然の一手なのかもしれぬが、らしからぬ手で、渋かった。
船戸は昨年の同棋戦のファイナリスト。ここで負けるわけにはいかないのだ。
大庭も渋さでは負けていない。丁寧な指し方は一貫しており、決して暴発しない。これは真似できぬことである。
優劣不明の戦いが続いたが、107手目▲4一角成に、大庭の△2九飛がしくじった。ここは△1七の成銀を逃げておくところ。船戸に香を逃げつつ成銀を取られては、一遍に大庭が苦しくなった。
じっくりした将棋を好む大庭が、攻めに逸って飛車を打つとは信じがたい。1分将棋の弊害が出たか。
以下は一手一手の寄せ。最後は船戸が大庭玉を鮮やかに詰ました。

以上4局とも、実に見応えのある熱戦だったと思う。
(つづく)
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