一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第34期女流王位戦第1局

2023-04-26 22:53:53 | 女流棋戦
第34期女流王位戦五番勝負が、本日開幕した。タイトル保持者は里見香奈女流王位。挑戦者は、この18日に昇段を決めた伊藤沙恵女流四段。女流三段昇段が4年前の今日だったから、4年間で130勝を挙げたことになる。年間30勝以上は、恐るべき勝利ペースだ。
伊藤女流四段は第48期女流名人戦で里見女流名人からタイトルを奪取した。里見女流五冠に7度目の挑戦で、うれしい初戴冠となったのは記憶に新しい。
だがその女流名人を、今年西山朋佳女流二冠に取られた。ふつうならここで落胆し、調子を崩すところ。しかし上記のとおり、伊藤女流四段は勝ち続け、女流王位の挑戦権を勝ち取った。やはり地力が違うのだろう。
伊藤女流四段の対里見戦は9勝23敗だが、直近の3勝は、上の女流名人戦である。奪取の記憶が上書きされて、伊藤女流四段に里見女流王位への苦手意識はもうあるまい。自分の都合のいいように考える。それが勝負師である。
第1局は伊藤女流四段の先手で、飛車先の歩を突いてスタート。と、伊藤女流四段は早くももう1回その歩を突いた。それを見て、里見女流王位は向かい飛車に振った。飛車先の歩を2つ突かれてはこう振りたくなるのが振り飛車党のサガだが、それこそが伊藤女流四段の狙い—ゴキゲン中飛車封じ?―だったかもしれない。
伊藤女流四段は銀冠に組み、予定通り、穴熊に潜る。渡部愛女流三段が得意とする手順だが、これは堅さより、玉の遠さを主張したものだろう。
その後、中央で戦いが起こり、里見女流王位が金桂交換の駒得を果たした。しかしこの桂は右桂で、左の桂は不動である。見た目ほどの得ではないのかもしれない。
と、里見女流王位が5筋のと金を6筋に入り、捨てた。
これが貧乏人の私には思いもつかない手で、驚いた。伊藤女流四段は当然銀で取る。そして手薄になった8筋に、里見女流王位は金を打った。対して伊藤女流三段も金を打って対抗する。
そこで里見女流王位は角を取ったが、それを伊藤女流四段が金で取り返した局面をどう見るか。里見女流王位はと金を捨てて角金交換の駒得に成功したわけだが、AIの世界では角より金のほうが価値が高い、と考える向きもある。それが穴熊戦となればなおさらで、ここは金を手にした伊藤女流四段が得をしたように思えた。
その後は伊藤女流四段に攻めに転じ、桂で金を取ったあと、飛車を成りこんだ。こうなれば玉の遠い穴熊ペースである。伊藤女流四段は、手を読んでいて楽しかっただろう。
里見玉は8二から大脱出を図り、宇宙遊泳のすえ1二まで辿り着いたが、伊藤女流四段の落ち着いた指し手の前に、投了を余儀なくされた。
まずは挑戦者が勝って、五番勝負は面白くなった。8つもタイトルがありながら、それを2人の女流棋士が分け合っている図は面白くない。伊藤女流四段は里見女流王位にまだまだ借りを返せていないこともあるし、ここは伊藤女流四段に頑張ってもらいたいと思う。
第2局は5月16日。
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