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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第7回世田谷花みず木女流オープン戦・2

2014-05-06 00:42:18 | 将棋イベント
飯野愛女流2級と加藤桃子奨励会1級が紹介される。
飯野女流2級は、女優の○○カ○に似ていると思う。中村アナウンサーに「この棋戦では常連の…」と紹介され複雑な笑みをもらしていたが、早く初優勝と行きたいところだろう。
対する加藤奨励会1級
「いま私が来ているチェックのワンピースは、ここ玉川高島屋さんで買ったもので…」
若いのに、如才ないスピーチだ。
本局の解説は、中村修九段。聞き手は森下卓九段。
さっきと立ち位置が変わっただけじゃないか! LPSAのイベントだったら直前の対局者が出てきそうだが、本棋戦ではそうもいかないのだろう。しかし男性棋士ふたりでは絵にならず、まったくもって室谷由紀女流初段不在の穴が大きく思われた。
午前11時45分、加藤奨励会女流1級の先手で対局開始。
加藤奨励会1級の居飛車明示に、飯野女流2級は四間飛車に振る。中村九段の報告によると、飯野女流2級はプロになって、一度も飛車を振っていない「筋」があるという。
それが何か、室谷女流初段に問うつもりだったらしいが、本人が欠席してしまってはしょうがない。まったくもって、室谷女流初段の…いや、もう言うまい。
ちなみに答えは、「四間飛車」だった。よって本局は「ニュー飯野愛」のお披露目といってよさそう。ただし角道を止めていないところが今風だ。
森下九段によると、角道オープンの振り飛車や一手損角換わりなど、人より先んじて実戦を指したという。
それがあまり知られていないのは、ブームになり始めたころには、当人が指すのを止めてしまっているから。自分の肌に合わない戦法だと思えば、たとえ周りが有力だと認知しても、なびかないらしい。好漢・森下卓の一端が垣間見えるエピソードといえよう。
加藤奨励会1級は▲5七銀と上がり、玉を固める方針だ。飯野女流2級は△5四銀と出た。森下九段「この銀が△7六銀と出てきたとき、先手が▲7七歩と打ったとしますね。もし芹沢博文九段が生きていたら、『破門』と言ったでしょう」と、恐ろしいことを言う。
たしかにこの▲7七歩は将棋にない手で、私も似た局面でこの手を指したとき、植山悦行七段に咎められたことがある。もっとも最近では、コンピューターが「ない手」を平然と指すが…。
加藤奨励会1級、じっと▲5六歩。これが味わい深い手で、森下九段は絶賛する。さらに▲4七歩も時間差の妙手で、森下九段は「なるほどー」を連発しまくりである。ただ、飯野女流2級の応接も巧みで、△4四飛と引いたところでは、むしろ後手がおもしろい局面にも見えた。
この中段飛車は、父君の健二七段が得意にしていた手で、さすがに親娘だと思う。ともあれ飯野女流2級、ここまで大健闘である。
飯野女流2級、相手の馬を消すべく△1四角だが、ここでは△4一角と打ち馬切りを強要したほうが、ハッキリと形勢がよくなったのではないだろうか。
もっとも本譜でも、後手が指せる。解説で出た△3八歩の垂らしも指し、俄然おもしろくなってきた。
飯野女流2級、△5四同角。この一手だが、20数秒まで考えた。もう秒読みなので、先の先まで読んでの着手である。
ただし森下九段によると、加藤一二三九段などは、余計な考えが入るとマズいので、この一手のときは文字どおりノータイムで指すという。ちなみに私も、そのタイプである。
加藤奨励会1級、下段の飛車打ちを防ぐべく、じっと▲4九飛と引いた。並みの女流棋士には指せない辛抱で、里見香奈奨励会三段(女流三冠)にもこの類の手が見られる。まさに奨励会の手といえようか。
ここからもさらに、攻手が乱舞する。森下九段は、相変わらず「なるほどおおお!!」を連発している。まるで中倉彰子女流初段である。森下九段の言い回しに、中村九段は辟易?しているふうだが、たしかに唸りたくなる気持ちも分かる。わけても飯野女流2級の指し手がしっかりしており、次はどんな手を見せてくれるのだろうと期待している自分がいた。私は彼女の実力を見誤っていたようである。
飯野女流2級、△8五桂。森下九段「この△8五桂、もちろん局面は違いますが、電王戦でこの手が出たんですよ。これには▲8八銀と引くと思ってたら▲8六銀と出られて…慌てて次の手に悪手を指してしまいました」
つい電王戦の話になってしまう。森下九段には先日の敗戦が、よほどこたえたようだ。
飯野女流2級も踏ん張るが、加藤奨励会1級は、的確に後手玉を追い詰めていく。飯野女流2級が最後の突撃を敢行したが、先手玉はわずかに寄らず、加藤奨励会1級の制勝となった。総手数139手。昨年の同棋戦決勝・鈴木環那女流二段と室谷由紀女流初段の一戦に勝るとも劣らない、熱局だった。
局後のインタビューで飯野女流2級は、
「終盤は指す手が分かりませんでした…」
と、正直に述懐した。実に素直で、好感が持てた。
何はともあれ、これで決勝戦は、中村真梨花女流二段と加藤奨励会1級の対戦となったのである。
(つづく)
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