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逃げ水半次無用帖

2008年02月27日 | 雑感
きのうご紹介した三冊の内から、『逃げ水半次無用帖』文春文庫・久世光彦のあらすじを追ってみます。

まずは、本の裏にある【あらすじ】
「幼かった遠い昔。狂ったような桜吹雪の夜、母は桜の枝で・・・。
暗い過去を引きずり、胸の底に水色の《虚無》を沈めた憂いと色気に満ちた絵馬師の半次に持ち込まれる事件は、どれも哀しい。
まだ青い林檎のような岡引の娘・お小夜に頼られ、慕われ、謎を解いていくうち、半次が辿りついた風景とは。江戸情緒あふれる捕り物帖の傑作! 」

すれちがったら思わず振り返りたくなる美貌と陰のある仕草。それなのに、女たちの前をすり抜けていく「逃げ水」半次。まるでiina。
悲惨な事件が起こるわけでなく、犯人を捕まえることもない。身の回りに起こりがちなことを題材にした短作7編は、具体的な絵解きの末に解決する江戸情話。
そのタイトルと核心にまったくふれないアウトラインは、次のとおり。

童子はわらう /振袖狂女 /三本指の男 /お千代の千里眼 /水中花 /昨日消えた男 /恋ひしくば

母親の首吊り死体を見ながら嗤っていた子供。自殺か他殺か。子供はなぜ嗤っていたか?

町を乱れた振袖姿で歩く大店の娘。その狂った娘の家で起こった小火騒ぎ。

意地悪婆さんの通夜に、婆さんの幽霊が目撃され、遺体の消えた棺桶には三本指の血の指紋が残っていた。

少女お千代が、失せ物を探し当てるようになった。

夏の縁日にひとつ一両もする水中花というビードロを売る謎の女の正体は?

父親が呆けた。なぜそんなことになってしまったのか?

足腰の立たない佐助が消えた。残された佐助の俳句を手がかりに、行方を捜す最終話。
・・・最後につむぎ出されるのは半次自身の謎。

どの話も哀しさとやるせなさが漂う。「ミステリとしても文学としても、秀逸な作品」とは、解説者のコメント。
後半の二作は、"判じ物"推理へと本格化し、明らかに主人公"半次"に掛けている。この本は、傑作です。
羊のはずが狼


明日は、笑撃画像だよぅ




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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うまく言えないけど (あやのすけ)
2008-02-27 22:07:36
時代小説って哀愁をより感じられる背景ですよね!
現代小説よりより細やかな感情が得られる気がします。
やっぱり明日は本へ直行!!(笑)

今週はブログ更新する気になれずおさぼり状態が続いてます。
コメント、TBに同調 (iina)
2008-02-28 22:28:11
(あやのすけ)さん へ
"ISO"6400は、より"一層"感度良好なデジカメなのですね。
最新の手振れ防止は、回転させた画像を静止画像で撮影してしまう
高性能に驚くばかりです。
『逃げ水半次無用帖』は、江戸風情が描かれおすすめの推理小説です。
本屋あるいは、iinaのように図書館で探してください。

TB(ミステリの部屋)さん へ
何気なく手に取った本が、この本でした。
ひさしぶりの推理小説だったのですが、立て続けに3冊読み、その総てが絶妙な推理物でニンマリしました。
この本の評判が好いのも、うなずけます。
TB「時代小説な日々」さん へ (iina)
2009-06-30 09:31:01
身の回りに起こりがちなことを、悲惨な事件というほどのこともなく、
犯人を捕まえることもない7編は、逸品でした。
なので、ブログに紹介したくなる作品ですね。

ところで、本は一度読むと、大抵はそのままになっています。
そこで重くて場所をとる本を整理しました。全国展開の古本屋に持ち込んだ
ところ、作者やタイトルで買うか否かを選別するのでなく、汚れているかいないか
で分けるのだそうです。しかも、二束三文です。
昔は、本棚に読んだ作品を並べて悦に入っていた時代もありましたが、
家の片付けにあわせて本にも及んでいます。
http://jidai-novels.seesaa.net/article/122489283.html?reload=2009-06-30T09:25:13

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