「老夫婦 今日も元気で物忘れ」・テレビ番組・「新宿、人情保健室」を観る
9月7日(日)9時からのNHKスペシャル「新宿人情保健室〜老いの日によりそって」を観る。
新宿の団地の一角に「保健室」がある。看護師やボランティアが常駐し、病院では聞けない、ちょっとした体の不安や在宅の介護などの相談にやってくる高齢者の部屋である。
学校に保健室があるように、街中にも「保健室」があっても良いという趣旨によって設立された。
運営の主体は、民間の訪問看護ステーションであるが、区の補助を受けての開設である。訪ねてくるお年寄りは、薬の相談から、訪問看護の相談。果てはご主人の仏壇の修理までと。
毎年700人近くのお年寄りが利用しているという。「都会の限界集落」に向き合う施設、それが「新宿・人情保健室」である。
ドラマの中の一場面がある。82歳の女性で一人暮らし。歩く後ろ姿も格好がよい。しかし、物忘れがひどくなる。エヤコーンの手元スイッチが見当たらない。お金がない、通帳がないといって保健室にやってくる。常駐の看護師がそのたびに家まで同行、無いと言ったスイッチも通帳もちゃんとおいてある。ある時ご飯を食べていないと。しかし、お釜の中には、しゃもじがちゃんと入っている。女性は、自分の物忘れの進行に落胆し立ち上がれなくなる。そのとき看護師は、「それが普通よ、それで良いのよ。見つからない時にはいつでも保健室に来てね。一緒に探しましょう」と。
誰でもが通る道と言ってしまえばその通りだが、切ない場面である。
さて、深夜放送が友達になったということをいつぞやのブログに書いた。今回も、二度目の目覚めが朝4時ちょっと過ぎである。そこで耳にした「明日へのことば」という番組である。その朝の語り手は大井玄医師である。(内科医・東京大学名誉教授 79年から長野県佐久市の「認知症老人・寝たきり老人」の宅診に関わるようになる。現在は東京都立松沢病院に籍を置きながらも桜新町アーバンクリニック在宅医療部に勤務)
大井医師は俳句も読む。その句の一つに「痴呆仏 憩いたまいし 蓮の上」がある。痴呆症である末期がんの患者が、痛みも感じることなく安らかに逝った姿を読んだ句である。
その大井医師が今習慣としていることがあるという。それは外来の患者の自宅にかける毎日の「5分間コール」である。
今日はどうですかから始まり
ご飯は食べたか、美味しかったか。
通じはあったか。
夜眠れたか。
痛いところはないか。
この電話が、患者の心をどれだけ癒すことだろう。まさに大井玄内科医は「医者」である。
最後に、大井医師の川柳を紹介したい。
「老夫婦 今日も元気で 物忘れ」
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