政治的計算で進められる報道の規制

2016-02-14 15:22:26 | 日記

  政治的計算で進められる報道の規制

  やはり書かざるを得ない。2月5日の毎日新聞に「NHK籾井会長『解説委員に偏った人いる』」との見出しの記事が載った。それはNHKのトップが自局のニュースを解説する委員について「偏った考えを持つ者がいる」と発言をしている。尋常ではない。この発言は、自民党の総務会での一部の議員から、解説委員の個人名を上げて「無責任な評論やコメンテーターのような発言をしている」との指摘に対する籾井会長の答弁である。

 そこで思い出すものがある。昨年、自民党若手議員から「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくすのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制すべきだという意見が出された。当時、開催されていた国会の論議となったが、自民党内からの若手の独走という発言もあり幕引きされたが今回は違う。ベテラン議員によって構成されている総務委員会での発言である。

 そしてまたぞろ出てきたのが高市総務大臣の8日の衆院予算委員会での発言である。「政治的公平が疑われる放送が行われたと判断した場合、その放送局に対して、『放送法の規定を順守しない場合』は行政指導を行う場合もある」としたうえで「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と述べ、「私が所轄している間はそのようなことはないが」と前置きをして、放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性があることを言及した。

 加えて滋賀県議会である。NHK大津放送局は、2016年度県当初予算案の概要を県から議会に説明する前に報道した。それは独自の取材に基づき予算案や規模の概要を入手しての報道であった。何も異常なことでもなければ、議会からあれこれ言われる筋合いもない。にもかかわらず自民党議員団は、これを「遺憾」として17日に開かれる全員協議会にNHKの担当者を呼んで説明を求めることを決めたという。議会が介入して報道機関を呼び出すことは極めて異例なことである。

 民放労連は、高市総務相の「停波発言」に抗議の声明を出している。以下その一部を貼りつける。「昨年来、安倍首相をはじめ閣僚や自民党首脳などから、「政治的に公平であること」などをうたう放送法4条の「番組編集準則」を根拠に、放送局に対して行政指導を行うことを正当化する発言が相次いでいる。しかし、大多数の研究者・専門家は「番組内容に関する規律は放送事業者の自律に基づくべきで、番組編集準則違反に対して電波法の無線局の運用停止や放送法の業務停止などの行政処分を行うことは表現の自由を保障する憲法上許されない」との意見であり、こうした見解はBPOの意見書や国会の参考人招致などで繰り返し表明されている。現に番組内容を理由に政府・総務省が放送局に対して不利益となる処分を行ったことはこれまで一件もないが、許されるものではない」 当然のことである。

 そして次のことを報告したい。この時期2月12日、フジテレビは「金曜プレミアム・池上彰緊急スペシャル!」の放映を実施した。テーマは「なぜ世界から戦争がなくならないのか(1)「イスラム国」描く恐怖の20年計画の全て(2)戦争というビッグビジネス!米軍需産業の実態(3)日本も参入!?“武器輸出”狙いは」であった。

 今、名前を上げられる数人の解説者がテレビの画面から消えようとしている。池上さんもその俎上に上げられるのか。とするなら恐ろしい時代に今があるというものであろう。

 これら一連の動きは、政治的に計算された「憲法改正」に向けたものとして見抜かなければならない。安部首相は野党の質問に対し「報道の規制、自粛に連なると言うが、それでは日刊ゲンダイを手に取ってみて欲しい」と茶化した発言をしている。笑って済まされることではない。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿