遠くの声に耳を澄ませて 著者 宮下 奈都
《内容》
くすんでいた毎日が、少し色づいて回りはじめる。錆びついた缶の中に、おじいちゃんの宝物を見つけた。幼馴染の結婚式の日、泥だらけの道を走った。大好きな、ただひとりの人と、別れた。ただ、それだけのことなのに。看護婦、OL、大学生、母親。普通の人たちがひっそりと語りだす、ささやかだけど特別な物語。
(紹介文より)
☆☆☆☆☆
―――自分が苦しくなって初めてわかる。笑ったり泣いたり怒ったり、感情を素直に出せるのは相手に恵まれているときなのだということを。私は自分のことに精いっぱいで恋人の気持ちの揺れも陽子ちゃんの反転も受けとめることができなかった。
―――すっかりおとなになった彼女がすぐそこを歩いているかもしれない。でも、会っていたいとは思わない。いつもうつむいていた華奢な後ろ姿がどんなふうに花開いたのか、どんな女性になったのか想像するだけのほうがきっといい。
―――鏡は何も映さない。心の中なんて本人にだってよく見えないのだ。
―――怖いものにはきっとこれからも出会うだろうけど、私たちは窓をいっぱいに開けて、どこまでも続く道をがたがた走っていく。
《内容》
くすんでいた毎日が、少し色づいて回りはじめる。錆びついた缶の中に、おじいちゃんの宝物を見つけた。幼馴染の結婚式の日、泥だらけの道を走った。大好きな、ただひとりの人と、別れた。ただ、それだけのことなのに。看護婦、OL、大学生、母親。普通の人たちがひっそりと語りだす、ささやかだけど特別な物語。
(紹介文より)
☆☆☆☆☆
―――自分が苦しくなって初めてわかる。笑ったり泣いたり怒ったり、感情を素直に出せるのは相手に恵まれているときなのだということを。私は自分のことに精いっぱいで恋人の気持ちの揺れも陽子ちゃんの反転も受けとめることができなかった。
―――すっかりおとなになった彼女がすぐそこを歩いているかもしれない。でも、会っていたいとは思わない。いつもうつむいていた華奢な後ろ姿がどんなふうに花開いたのか、どんな女性になったのか想像するだけのほうがきっといい。
―――鏡は何も映さない。心の中なんて本人にだってよく見えないのだ。
―――怖いものにはきっとこれからも出会うだろうけど、私たちは窓をいっぱいに開けて、どこまでも続く道をがたがた走っていく。