歩き疲れて眠れなくなった。
街にグラフィティを求めて彷徨う。
またこの『壁』の師匠(24歳年下)に案内されながら、その魅力を堪能する。
僕はふと「世の中の裏の世界を探索しているようだ」と思った。
普段街を歩く時には多くの看板や案内表示が目に入る。
注意喚起を行ったりお店のPRが光り輝くネオンや文字で目に無理やり入ってくる。
目を背けたくなるほどの図々しさ。
しかし『壁』におけるグラフィティは探さなければ見つけられない。
実際僕は師匠が立ち止まらなければ見落としている。
そしてものの2、3時間をその見方を経験すれば、その街の見え方が変わる。
世の中の多くの人が目にしている看板は消え、そこにはアーティストたちの野心や表現力が溢れている。
大自然の圧倒的な風景に匹敵するほどの混沌と破壊力が目立たず街の奥底に漂っているのだ。
「師匠、今度は僕たちも作品を作って街を彩りましょう」
手始めにテーマを決めて持ち寄りましょう、という話になり
6月末に2作品を持ってくることになった。
締め切りや何らかの縛りがないと行動しないギリギリマスターの僕にとって、「約束」や「期限」はお守りみたいなもの。
そのパラレルワールドの創る側に回った瞬間に、ハリーポッターの魔法の世界に迷い込む。
マグルから別世界に
そんな感覚を覚えた。
また新しい世界を手に入れた。