goo blog サービス終了のお知らせ 

心の風景 認知的体験

癌闘病記
認知的体験
わかりやすい表現
ヒューマンエラー、安全
ポジティブマインド
大学教育
老人心理

トップダウン処理

2018-03-04 | 認知心理学
見たいものしか見ない

・空腹のときには、やたらにレストランの表示が目につく
・サッカーが趣味。それに関連する情報は自然に目に飛び込んでくる
・民自党を支持していると、それを強化する情報しか受け入れない

一番目は欲求が、
2番目は頭の中の知識が、
3番目は信念が、
それぞれ集中力をコントロールして、選択的に外の世界の見えを作りだしています。この類の情報処理をトップダウン処理といいます。

トップダウン処理は、雑多な情報のあふれる外の世界から、トップ(欲求、知識、信念)に限定された情報だけを集中して処理します。集中によって選択された情報の処理はきわめてスムーズに行われますが、それ以外の情報は無視されてしまいます。その無視したところに、ミスを防ぐ情報があると、必然的にミスが発生することになります。これが思い込みエラーです。

サッカー好きな人が、オリンピックのニュースで「日本が優勝した」と小耳に挟んだだけで、「サッカーで金メダル」と思いこんでしまうような誤りです。

心理学における説明問題

2018-03-03 | 認知心理学



1) 科学的説明のいろいろ

2) 変数を増やせばどんどん説明力が上がる

3)  ビッグな概念で何でも説明してしまう

4) 認知研究は、科学理論としてはきわもの

5) 説明よりも予測できることが大事

「連想」 ーー「活発な連想こそ、頭の元気の源」

2018-02-19 | 認知心理学
「連想」
ーー「活発な連想こそ、頭の元気の源」

● あれこれ思いが浮かんで困る
仕事をしようとしたら、デートのことが頭をよぎる。
 ゲームをしていたら、明日の仕事のことや、メールが気になる。
 連想のことを書こうとしたら、検索のことを思い出す。
 ともかく、何かしようとすると、それを邪魔するかのように、あれこれと思いが浮かんできてしまう。できれば、一つのことに集中したい。
 これが連想の一つの特徴です。

 くだらない連想は浮かんできてほしくないという思いにかられることがありますが、頭の元気という点では、頭がとにもかくにも活動しているわけですから、とりあえずこうしたしょうもない連想でもよしとしなければなりません。

 その連想とは、どんなもので、どうすれば有効なものにできるのでしょうか。
 
● なぜ連想するのか
あなたの頭の中には膨大な知識が貯蔵されています。
連想が発生するのは、これらの膨大な知識が、図に示すように、複雑で多彩なネットワークを形成しているからです。

不動産    マンション  お金
                   投資
情報
     不況    金融   貯金  
        
  モノ作り            株
        家族         失業

子ども 妻
図 頭の中の知識のネットワークのイメージ。色の部分が活性化している。

ある知識要素青)に注意が向けられていても、それとリンクを張っている別の知識が自然に活性化してそちらに注意を向けさせてしまうのです。
 たとえば、「不況」のことを考えたとします。すると、それと意味的に近い「失業」も活性化します。ややリンクの強度は弱いものの「モノ作り」も活性化します。それらにつられて「家族」「モノ作り」も活性します。

ありとあらゆる語彙(知識要素)が、その程度はその人が持っている知識によってまちまちですが、どんどん活性化してきて、そちらに注意を向けさせようとします。
 これが連想となって頭の中をかけめぐりことになります。

 通常は、こうして連想された知識要素を素材にして、統制のされた論理に従った思考をすることになります。
 統制された論理的思考は、注意量の制約と自己コントロールのもとでなされます。
ここで注意量の制約という言い方には、解説がいりますね。
注意は頭の働きをコントロールしています。注意をたくさん注げば、頭の働きは活発になります。注意と頭の働きとの間には、ガソリンと自動車のような関係があります。

その注意量には限界があります。その限界のなかで注意は配分されます。
いくらたくさんの知識が活性化しても、そのすべてに注意を払うわけにはいきません。一度には、活性度の高いほうから順にぜいぜい数個程度(図の黄色部分)までしか注意を及ぼすことしかできません。
これが思考の範囲を限定することになります。

 さらに、通常の思考の際には、自己コントロールも働きます。
何に注意の焦点を当てるかを自分で決めることができます。とりあえず、必要な知識だけに注意を払い、それらの要素だけ活性度を高めることもできます。
そして、それらの知識要素を論理でつないでいきます。
 こうして、連想された知識要素を素材に統制のとれた思考を展開させているのです。
 
     注意

    思  考

連想 さ れ た 知識要素


こうしてみると、連想なし、あるいは貧困な連想は、貧困な思考しか生み出さないことがわかりますね。

● 連想って何の役割を果たしているの
一見すると、連想は、邪魔、できればしないほうがよい、と思いがちですが、そんなことはないということがおわかりいただけたと思います。
さらに、連想があるからこそ、という話を少ししておきます。

① 連想は、見方を豊かにしてくれる
 目の前になんの変哲もない花があったとします。まさに、「なんの変哲もない花」としか見えないとすれば、それは、あなたの頭の中が「なんの変哲もない」からです。
 つまり、連想しようにも、その花に関連する知識がないから、どうしようもないのです。結果として、「なんの変哲もない花」で終わりです。

 でも、お隣にいた花好きの花子さんは、どうでしょうか。
 花の名前からその種類、その名前の由来、さらには、食べられるかどうかまで、すらすらとさまざまな言葉が出てくるはずです。それこそ豊富な関連知識から発する連想のたまものです。
 このように、豊富な知識を使って現実世界の認識を豊かなものにするのが連想の大事な役割の一つなのです。

② 連想は、発想を豊かにしてくれる
さらに、連想は、頭の中でも貴重な役割を果たしています。
 今ここで、連想についての話を書いています。こうして書き上げられた文章は、いかにも理路整然としていますが、ここに至るまでには、連想につぐ連想の連続です。車の運転をしているとき、食事をしているとき、他の原稿を書いているとき、時と場所を選ばず連想について連想してきたたまものです。
 時には、メモをしたり、時には関連する本を見つけ出して読んだりもしますが、そのきっかけになるのも連想です。
 いずれにしても、連想が働かなければ、発想はひどく陳腐なものにとどまってしまいます。

③連想は、心を解放してくれる
 連想には制約がありません。この自由が、普段はあれこれ制約のある心を解き放ってくれます。普通ならとても連想できないことも大丈夫。
これが心のしがらみを解き放ってくれます。連想のリラックス効果です。時には、発明発見にもつながります。 
 
●頭を元気にする連想とは
では、連想を活発にする習慣づくりを考えてみます。
まず王道から。

それは、「頭の中の知識」を増やすことです。
知識なきところに連想はありません。仕込んだ知識は、連想の種になります。
その上で次のようなことが考えられます。
連想は、頭の中で起こる現象ですが、連想のきっかけは外にもあります。
仲間や先生とのちょっとした一言が連想を触発するかもしれません。
あるいは、旅行先のちょっとした光景、本屋の店先のポップ広告、ありふれた街角の光景などなど、あなたの外にも、豊富かつ多彩な連想触発物があります。
もっともそれらが連想を触発するためには、その素材となる知識が不可欠です。それも、ただ、頭の中にあるだけでは不十分、いつでも使えるような状態になっている(活性化した状態になっている)必要があります。
これが連想を活発にする習慣の2つ目。

「問題意識を常に持つこと」、別の言い方をするなら「情報のアンテナを張り巡らしておくこと」に関連してきます。
ここで、一つお遊び。
「ひらやま」「ひらやま」と10回繰り返して口に出してみてください。
「では、世界一高い山の名前はなんといいますか」
思わず、「ヒマラヤ」と答えてしまいませんでしたか。
問いに答える前の10回の繰り返しのうちに、「ひらやま」と音の類似した(リンクした)「ヒマラヤ」が活性化してしまい、つい、答えてしまったと解釈できます。
 活性化した知識がいかに簡単に使われるか(連想できるか)が実感できたのではないでしょうか。

 「問題意識を常に持つ」というのは、問い(情報のアンテナ)を頭の中に抱えていることです。
そうすれば、問題意識に関係する知識が絶えず活性化していて、ほんのちょっとしたきっかけで連想が起こることになります。
 旅行に出かけるときでも、あらかじめ事前のリサーチ(知識の仕込み)をしてから出かけます。それが旅行先でのさまざまな風物との遭遇を豊かなものにしてくれます。

 もう一つの連想技法は、「連想を外に出すこと」です。
 連想は頭の中で起こります。どんどん自律的に展開されます。
 頭の元気づけという点では、それはそれで成り行きに任せておくことも、あってよいのですが、思考の素材として使いたいときには、せっかくの連想内容がどんどん忘れられてしまいます。もったいないですね。
 そこで、連想したことを書き出しておくのです。
 メモでも結構です。できれば、ポストイット(付箋紙)を持ち歩いて、書き留めておくと後々整理が楽です。
 自分は、ブログに書くテーマや内容を手帳に差し込んであるポストイットにそのつどメモしています。連想は時と場所を選びませんから。

 もっと凝ったやり方としては、連想マップがあります。
 とくに、テーマ限定の発想をしたい場合はこれがお勧めです。
 連想の核になる言葉を中心に、どんどん連想のリンクを延ばしていきます。適当なところまでいったら、また連想の核(丸)に戻って、さらに別の連想のリンクを伸ばしていきます。それらを見ることで、また連想が触発されることにもなりますし、リンクのどこかで新たなリンクができることもあります。





                    思考


     精神分析 フロイト 心理学  連想  知識  本 インターネット


   図 連想マップ。「連想」から連想すること

 






















メタ認知を鍛える

2018-02-17 | 認知心理学
メタ認知を鍛える
 「できそう」「むずかしそう」という感覚をもたらすのは、人に備わっているメタ認知力です。メタ認知力とは、自分で自分の心身の状態を知り(モニターし)、さらにコントロールする力です。
したがって、メタ認知力をつけることが、集中力でミスを防止するためには有効です。
2つの方策があります。
一つは、集中力コントロールの状況を想定した内省をする習慣をつけることです。うまくいった状況、失敗した状況、あるいはヒヤリハット場面を振り返りあれこれ考えてみる習慣です。これは、メタ認知のモニター機能を高めることに役立ちます。
具体的には、日記に書く、仲間と語り合うといったことをおすすめします。

もう一つは、集中力コントロールに関する知識を豊富にすることです。知識があれば内省も豊かで深みのあるものになります。まさに「知は力なり」です。

集中力を精神主義になじませる

2018-02-17 | 認知心理学

 集中力の発揮は、とりわけスポーツで重視されてきました。かつては、試合に臨んでの集中力アップのために「激を飛ばす」光景が普通でした。監督やコーチが、あるいは自分で「集中!!」とやるあの光景です。
 スポーツ訓練の精神主義の典型ですが、しかし、これはこれでそれなりの効果があります。言葉のもつ暗示の力は馬鹿になりません。
これの効果をさらにアップするのが、集中力についての知識とスキルです。そのための連載のつもりでしたが、いかがだったでしょうか。
 あなたが管理者的な立場にいたとして、部下への集中力に関して、「激を飛ばす」以外にどれほどの具体的な方策をアドバイスできるかが問われるます。
 あるいは、自分の集中力に関しても、どれほどの具体的な方策を考えだせるかが問われます。






論理  万能ではないが、強力な道具

2018-01-29 | 認知心理学
論理  万能ではないが、強力な道具


ポイント********************************
1)仕事の中で論理的思考が大事になってきた
2)論理的思考よりも有効な推論方略があることを知る
3)形式論理には現実を越える力がある
]****************************************

●ロジカル・シンキングの本が売れている  
今、売れ筋本の一つに、ビジネスマン向けの論理的思考(ロジカル・シンキング)に関するものがある。Amazon.comで検索すると、24冊も出てくる。  
論理的思考のようなやや硬い内容の本が、なぜ今売れるのであろうか。  

背景要因としては、職場での仕事のやり方が変わりつつあることが挙げられるように思う。  一つは終身雇用の崩壊により、もう一つは仕事のコンピュータ化によって、従来の言わずもがなの暗黙知ベースの仕事のやり方から、明示的な形式知ベースの仕事のやり方に変わってきているところがあるように思う。  

形式知では、論理すなわち「いつでもどこでも正しい」ことを保証するものが中核になる。そこで、論理を身につけたいとなっているのではないか。  ここで言う論理は形式論理である。その特徴は、正誤がはっきりしていること、推論の方式が決まっているところにある。 したがって、誰でもがその方式に従えば、同じ結論に到達できることになる。それでも、時おり、論理的に誤ったり、論理矛盾を起こしたりしてしまう。そんなことにならないように、論理的思考を学びたいというわけである。

●形式論理とは人の推論のごく一部  
「アリストテレス(BC384ー322)の定言3段論法」というくらい、形式論理の発明の歴史は古い。  
そして、その論理学は、人の思考を鍛える道具として長年、教育の中で教材として使われてきた。
その結果として、形式論理は、あたかもすべての推論の正しさ、妥当さを決定づける唯一の道具であり、したがって、(形式)論理的に思考できないことは、人として不完全であり恥ずかしいことであるかのごとく考えられてきたようなところがある。  

しかし、形式論理は、人の推論のごく一部のみの特性に過ぎないことが、皮肉なことに、人の推論をコンピュータに真似させようとした人工知能の研究からみえてきたのである。  
つまり、論理的に推論するコンピュータはできても、人の推論を真似できるコンピュータは作り出せなかったのである。

●人の推論は多彩  
現実世界では、形式論理だけでは、とてもではないが、うまくやっていけないし(適応できないし)、時には生きていけないこともある。  
なぜなら、一つには、現実世界は、その時その場で結論をただちに求めるからである。  じっくりと時間をかけて論理的に考えてから、というのでは、現実のほうが先に進んでしまう。車の運転をしながら、方角を「論理的に」に探索する余裕はない。  

これに関連して2つには、現実世界の中での思考には、とりあえず結論を出してみてうまくいかなければ、もう一度考え直してみればよい、という簡便思考(ヒューリスティックス)方略が許されることが多いし、そのほうが結果としてはうまくいくことが多い。  
見知らぬ土地での車の運転でも、目的地のだいたいのあたりをつけて運転することのほうが多い。もちろん、それがとんでもない見当違い(思い込みエラー)ということもあるのだが。  

3つには、人が考えるときには、現実世界に関して蓄積されている膨大な知識を活用するほうが、形式論理よりはるかに認知的なコストが低いということがある。  「3x8」はいくつかを問われて、3を8つ集めるといくつかを計算するよりも、「3x8=24」という知識を引き出すほうが楽なのである。頭も横着なほうを好むのである。このあたりは、クイズ2で実感していただくことになる。  
とはいっても、だから形式論理は無用ということにはならない。人は、現実に制約されながらも、現実を越えて、さらに、現実を変える力も持っているからである。

エアコンの買い替え

2018-01-28 | 認知心理学
この寒さではエアコンの効きが気になる。
3台のうち、居間のエアコンの効きが悪い。
カーペット暖房でなんとか切り抜けている。

電気屋に行ってみて、驚いた。
10万円も出せばと思っていたら、
なんと20万円台がずらりと並んでいる。
この年で、高額の買い物は、つい自分の寿命を考えてしまう。

2月まだ寒波がきそう。決断ができない。

因果関係]10年前の記事2008-01-16 |

2018-01-16 | 認知心理学
因果関係
2008-01-16 | 認知心理学


「因果関係」
 因果関係は、次の3つの要件を満たす必要がある。
1)影響力である。原因(独立変数)が結果(従属変数)を引き起こす力がなければらない。
 言葉は原因たりうるのか
 動機は原因たりうるのか

2)時間的順序性である。原因が結果より時間的に先行しなければならない。
 意図は結果より先行するか

3)十分条件である。原因があれば結果が起こらなければならない。
 確率的な事象はどう考えるか

時間」今日の一言

2018-01-06 | 認知心理学
「日本の伝統的な時間意識は、「急いでは事を仕損じる」「急がば回れ」など、急ぐことを諌めるものであった。---(現在の)日本人は諸外国の人々に比べ、最も時間的に厳格で、歩くのが速く、仕事が速いという傾向を持っている。」(平伸二)

同じ問題でも社会性を加えるとときやすくなる

2017-12-29 | 認知心理学
「同じ問題でも社会性を加えるとときやすくなる」

問1 「20歳未満は禁酒」というルールが守られているかを調べるには、次のどれをチェックすれば「論理的に」十分か。
(1)20歳未満は禁酒しているか
(2)20歳以上は飲酒しているか
(3)禁酒している人は、20歳未満か
(4)飲酒している人は、20歳以上か

問2 4枚カードがある。「母音のカードの裏は偶数」という規則が成り立っているかどうかを調べるとすれば、どのカードをめくるって調べれば「論理的に」十分か。

A D 4 7  

「解説」
 実は、問1と問2とは、論理的には同じ構造の問題である。問1は、(1)と(4)をチェックするが正解。問2は、「A」と「7」をめくるのが正解。
 問1の正解は大学生でも10%以下だが、問2のように言い直すだけで、正解がぐーんと高くなる。
 真実を求める思考においてさえも、それを解く場(社会/状況)が異なると解けたり解けなかったりするところに注意してほしい。
 社会的な状況を想定すると、そこには、思考のヒントが潤沢にあることを示唆している。思考の領域固有性と呼ばれる。転じて、企業組織の中に暗黙に組み込まれていて、社員が無意識の内に使っているさまざまな思考のヒントを企業固有性と呼び、その大切さが指摘されている。

予測」心の風景

2017-12-21 | 認知心理学
●時間と空間を超える
 我々は豊かな文明と豊潤な思惟世界のおかげで、「今この場」からの制約を逃れて、時間と空間を自在に「操る」ことができるようになった。五年先、10年先の自分を考えられるし、アフリカの奥地にも宇宙にも行った気になれる。
 これを支えるのが、予測という知的活動である。
 
●過去、現在、未来から予測する
 さて、その予測には大きく3タイプがある。
 もっともよく行なわれる予測の仕方は、過去を外挿することである。過去ベースの予測である。失敗することは少ないが、前例主義に陥ってしまい、新しい状況の変化に対応できないことがある。
 もう一つは、現在の中に将来を見つけるタイプの予測がある。現在ベースの予測である。商品開発やイベント企画などでは必須とされる予測である。もっぱら個人の感性に依存するので、失敗のリスクが高いが、当たると大きい。
 さらに、未来ベースの予測もある。サイエンス・フィクションのような世界を究極の目標において、それに到達するまでの未来を予測するものである。大きな目標があるだけに、予測に系統性を持たせることができるが、画餅に帰すことが多い。

●青年の時間展望の特徴に学ぶ
 一つの仕事をするときに、この3つのベースに基づいた予測の一貫性の有無を問うてみると仕事の質があがる。
 やや唐突な話になるが、青年期に、これら3つの予測の間に激しいギャップが生ずる。不可能な未来を思い描き、それを実現する力量のなさを嘆き、そんな自分を育てた親へ反抗する。これを時間展望の混乱@と言う。
 多くの青年はそのギャップを克服して、安定した成人期へと移行していくが、そのギャップを克服できないまま心を病んでしまう人も多い。

●予測を仕事に活かす
 この青年期のメンタリティ(心性)と振舞いには、仕事の上での予測の活かし方のヒントがある。
 一つは、現在の中には、過去も未来もあることを認識することである。青年はそのことに気がついたからそこ悩む。その悩みが飛躍へのばねになっている。
 2つは、過去と現在と未来の一貫性をとることである。
 青年はギャップのあまりの大きさに気づき呆然自失してしまい、そのつらさゆえに、刹那的になって身を滅ぼしてしまうこともある。
 仕事でも、過去から未来への時間の流れの中で位置づけることができれば、自分も周囲も納得させる大義名分もみつかり、創発の芽をみつけることもできる。


「あなたの時間的展望の混乱を測る」
次の項目に「はい」「どちらでもない」「いいえ」のいずれかで答えてください。
1)その日のうちにすべきことを翌日まで延ばすことがある
2)なんでも物事をはじめるのがおっくう
3)ひとかどの人間になろうとする希望を失いそうになる
4)待たされるといらいらする

「解説」
 これは砂田氏が作成した自我同一性混乱尺度の一部を借用したものである。「はい」の答えの多いほど、過去、現在、未来の時間の流れがスムーズに認識されていないことになる。





ステレオタイプは思考をなまらせる

2017-12-20 | 認知心理学

●ステレオタイプは思考をなまらせる
 多くのステレオタイプは、過去の限られた個人的な強い感情を伴う体験を独断的に---実は暗黙の社会的通念によって---意味づけすることによって形成され、信念や偏見に近いものになっている。
 また、ステレオタイプは、面倒さを避けるための方便のようなところがある。方便なだけに便利なので、つい安易に使ってしまう。
 かくして、ステレオタイプから自由な思考を展開するのはなかなか難しくなる。
 しかし、ステレオタイプを使いすぎると、思考がなまってくるし、頭も硬くなってくる。
 それに加えて、恐ろしいのは、みえるものもみえなくさせてしまうことである。
 「T大出は頭は良いが、人づきあいはへた」とのかなり一般化しているようにみえるステレオタイプは、目の前にいるT大出の人が持っている本当の特性をみえなくしてしまう。

「参考」
「あなたの人物評価についてのステレオタイプをチェックする」
次の-----の部分にあなたの頭に浮かんでくることを入れてください。

・女性は---  
・日本人は----
・東大出は--- 
・この顔は----

「解説」
 多分、いずれについても、それなりのセリフが思う浮かんだはずである。それが、あなたのステレオタイプであり、実は、それは、あなたの周囲で暗黙のうちにお互いが認めあっている通念でもある。
 このように、ステレオタイプには、社会や文化が強く影響している。それだけに、強力な機能を果たす。
 なお、よくよく考えると、いずれのステレオタイプも、その真実性の保証がほとんどないことにも注意してほしい。かといって、虚偽とも断定できない。
 なお、相手に不快や不利益を及ぼすステレオタイプが偏見である。


情報を見て動かして発想を豊かに

2017-12-16 | 認知心理学
情報を見て動かして発想を豊かに
 「手は脳の出店」というくらい、さまざまな働きをしている。その手に、キーボード打ちという日本人にとってまったく未経験の仕事が加わった。
 「手の記憶」も、将来は変わってくるかもしれない。すでに、漢字が書けなくなってきている。
 これはやや困ったことではあるが、それを補ってあまりあるものを、ワープロはもたらしてくれている。
 それは、つまるところ、指先での思惟活動支援の制約を取り払ってくれたところにある。
 紙も鉛筆も消しゴムもいらない。思いつくことは何でもキーボードから打ち込んで、見ることができる。さらに、それを動かすことで、思惟活動が刺激されて、新たな発想が生まれる。

 そうはいっても、過度にワープロに依存するのも危ない。
 ワープロがないと作文一つ書けないのでは、たとえば、試験のときに困る。
 さらに、思惟活動の後半の段階では、「見てー動かしてー発想して」のサイクルをあえて中止して、頭の中だけで思惟をめぐらして一段高いところに思惟活動を導く必要もある。
 そんなときは、ワープロからあえて自分を引き離してみることも必要である。


形式知と暗黙知」心の風景

2017-11-09 | 認知心理学

仕事の中には、きちんと言葉で教えることのてできるもの(形式知)と、言葉では言い表すことのできないもの(暗黙知)とが含まれているのが普通である。
仕事が高度になるほど、形式知と暗黙知との乖離が大きくなる。そんなところでは、手順化は仕事の質を高めることにはあまり貢献しない。

しかし、暗黙知と形式知とは固定された分類ではない。暗黙知から形式知への知の移行は、教育・研修の場だけでなく、学ぼうとする意欲がある者は、エキスパートの仕事の模倣から自らでその移行を行なっている。

なお、形式知から暗黙知への移行もごく普通にある。手順を意識しなくとも仕事ができるようになったときが、それである。