●投影的理解
自分(I;主体的自己)で自分(Me;客観的自己)を理解するときの図式(I--->Me)を、そのまま相手の心や気持ちの理解に使うのだ。
相手が自分と同じような心性を持っているときには、かなり精度の高い理解ができのだが、たとえば、親が子どもを、教師が児童を、日本人がアメリカ人を、さらには、人間が動物を、となると、投影的な理解には限界がある。
しかし、投影的な理解は、対人理解においては、最もよく使われ、しかも有効な理解の仕方であることは間違いない。
●共感的理解
投影的理解と似ているのだが、相手の主体としての自己(I)に寄り添って、相手のIと自分のIとを重ね合わせることで、相手のMeを理解しようとするのが共感的理解である。
投影的理解が、自分の「I--->Me」図式を相手の心の理解に使うのに対して、共感的理解は、相手の「I-->Me」図式を使うことになる。
これは、かなり難しい理解の仕方だが、カウンセリングでは必須の理解の仕方になる。したがって、それなりの訓練と経験が必要となる。
ただ、極めて親しい人、たとえば、友人どうし、夫と妻などの間での心や気持ちの理解では、ごく自然に使われている。というより、共感的理解ができているような関係でないとすると、何か問題があることになる。
●因果的(科学的)理解
ここで心理学的な知識が役立つ。もしあなたが対人理解についての社会心理学の知識を豊富に持っているなら、今現在の心や気持ちをもたらしている原因に思いをはせるはずである。そして、必要なら、その原因を取り除いたり強化することで、相手の今の心や気持ち(結果)を変えることを試みるはずである。
この3つの理解の仕方が、本当は、うまく連携を保って互いの長短を活かし補っていくのが一番よい。
しかし、どういうわけか、人によって理解の仕方に好みがあるようだ。それは、時には、相手への偏見を生んだり、浅い理解しか生まなかったりすることになる。