へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

結婚相手にチョ~ドイイ

2012-03-01 19:58:32 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

卒業式の壇上に、片山教授のくそまじめな顔が笑えた。
昨日は、あれから杉内攻略法が話題の中心となり、あげくたかのりが立ちあがっての振り向き涙こらえに発展して、大爆笑になってしまった。
だから、片山教授…もとい、片山学長のモーニング姿はペンギン…じゃなくてつばめそのものだった。もっとも、スリムな教授は、つば九郎ほど貫禄はない。
ぼくたちの卒業式は、公立の合格発表を待ってのことだから、まだまだ先だ。受験でけっこう空席があったけど、先輩たちはいつも通りだったね。
卒業式の間中、背中に野茂の視線が痛かったけど、無視してやった。おまえが、へんなことを決心しなけりゃ、藤川先生は学校を続けられたんだ。
といってもさ、辞表は学校が受けつけなくて保留どころか、
「いつも通り勤務してください、理事の伝言です」
と、御当主のおとうさんから間接的にくぎを刺されたらしい。
3年生を見送って、他に授業のない藤川先生が、おとなしくしているはずはなく、
「とりあえず、オーストラリア、F1を見に行ってだな。次にドイツのホームスティー先にあいさつに行き、イギリスに逃げたゾク仲間を探しだしてだな…」
と、おばあちゃんに嬉々と説明している。
「あんたね、もし私が喋ったらどうなると思うの」
おばあちゃんもあきれ顔だ。
「喋ったっていいよ~。悪いのはむちゃくちゃなことを言い出す、じじいどもだからね」
「あんたがいつまでたっても結婚しないからでしょうが」
「だからっていって、中学生はないでしょうが」
「心当たりねえのか?身近かによ~」
おじいちゃんは、ひざに抱いているミッフィーの頭をぽかりとひとつ。
「身近かに~?いねえなあ」
「先生たちだって、独身はいっぺよ」
「ありゃあ、女じゃねえしなあ」
頭をひねって、どうやら結婚相手になりそうな先生を思いめぐらしている。
「いいじゃん、タコ壺でも」
おとうさんがぼつりといった言葉に、藤川先生が、
「ありゃ、女じゃねえ…」
と、言いかけたけど、
「待てよ。あいつならノリは悪くなさそうだな」
「は?」
藤川先生は、何やら考え込む。
ぼくたちは顔を見合わせ、藤川先生をちらちらと盗み見た。
「あのさ、冗談だから」
おとうさんは、自分の失言を取り繕ったが、
「いや、今夜、しばらく考える」
と、藤川先生は立ち上がり、
「風呂入るぞ」
と、リカを抱いて風呂に突進してしまった。
「おい」
「あんた、ほんとにバカな子ねえ」
おばあちゃんとおじいちゃんは、おとうさんの顔を見てため息をついた。
「ふと、思いついたんだもん、仕方ねえべ」
仕方ねえべですむのなら、結婚は簡単でいいはずだよ、おとうさん。