へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

寺ガール

2012-02-06 07:22:21 | へちま細太郎

おはようございます、へちま細太郎です。

先週、野茂と大げんかをして以来、面白くない。面白くないことに、野茂は学校を休んだ。
休んだ理由がインフルエンザときて、ふんざまあみろ、と思ったもんさ。
週末に入って、またもやヒマになったぼくはたかのりと遊びにいった。
「百合絵さん、割烹着だなんて、イメチェンしすぎですよ」
たかのりは、口が達者でしかも減らない。
「シスターの服の下は坊主かと思いましたよ」
「去年はお式まで美容院へいけませんでしたから、伸び放題でしたのよ」
ジーンズに割烹着姿の百合絵さんは、それはそれで初々しい。
いったいこの人はいくつなんだ。
「このおばさんは、姉ちゃんといっしょだからな、不惑をとっくに超えている」
副住職さんが火鉢で餅を焼く。
本堂には暖房器具を置いていず、須弥壇の前でぼくらは火鉢を囲んで茶飲みだ。
本堂は、須弥壇のある部屋が広く、両脇に14畳ほどの小部屋がついている。普段はふすまで締め切っているけど、法事などがあった時は開け放てばかなり広い座敷になる。
法堂は、本堂から渡り廊下でつながっていて、こっちは昔ながらの寒い作りで、ここで法事や葬式をしている。本堂を使えばいいのに、正座するのが嫌な檀家に文句を言われて法堂のみ使用になっているとか。
と、そこへきゃらきゃらした声が聞こえてきた。
「すいませ~ん」
副住職は若い女の声に、
「?」
と怪訝な顔をして、障子をあけて出ていくと、
「お寺拝観させてもらっていいですかあ」
と、若い女性が3人くらいたっている。
「当寺は観光寺ではないぞ」
と、すごんだ目つきをしてみたが、
「かまわぬではないか」
「当節流行の寺ガールかの?」
住職さまとご隠居さまの声がする。
「はい、藤川家の菩提寺だったんですよね」
美都市の観光案内をぱらぱらめくる。
「なんでそんなのに載ってんだ?」
副住職は不機嫌になったが、
「拙僧がこの隠居と相談して決めた。見学自由、座禅OK、精進料理食べませんか」
という、住職さまのニコニコ顔にいっそう不機嫌になる。
「精進料理って、あんた昼飯はタイカレーだろうが」
「やん、お坊さんもタイカレー食べるんですかあ」
「昼がまだなら、食べていかんか?」
「嫁の手作りでな」
と、百合絵さんを手招きで呼び、
「住職の家内でございます」
と、挨拶して寺ガールをびっくりさせた。
「今はやりの年下婚ですかあ」
「わか~い」
「びじ~ん」
ご隠居さままで悪乗りして、
「わしゃ80過ぎたが、元気だぞ。ばあさあんをおんだしてわしと結婚せんか?」
と言ったもんだから、本堂前は大騒ぎになってしまった。
「藤川家は跡取りが独身バカだから、子供うんだらウハウハですよ」
たかのりもご隠居に調子を合わせたもんだから、余計盛り上がった。
「なんなんだ」
副住職さん1人が不機嫌だったが、ぼくらは副住職さんが焼いていたおもちを食べてしまい、副住職さんは余計に機嫌が悪くなってしまった。
知らんわ。



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