へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

細太郎の失恋

2011-10-16 12:13:28 | へちま細太郎

お久しぶりです、ぼくがへちま細太郎です。

夏休み明けから、全然更新しなかったのは、実は…。
作者が阪神の怒涛の連敗にショックで立ち直れなかったからです。
立ち直れなかったのは、ぼくも同じで…。

阪神が神宮で3タテをくらい、タコ壺保健室の匿名希望の東山先生が荒れまくり、自称紳士の片山教授が、東京音頭を傘をさして歌い踊っていたころ、ぼくは久しぶりにりょうこちゃんと会った。
震災以来、初めてだった。多少電話では話したりしたけど、軽く被災したのはぼくたちも一緒で、みんなショックや被害から立ち直るまでに時間が、それでもかかったわけだし。
ぼくはぼくで、いろんなところに手伝いに行かされたりして、正直りょうこちゃんのことを思い出しているヒマはなかったんだ。
「地震のあった日ね」
と、りょうこちゃんがぼつりと言った。
「同じ生徒会室にきょうすけ君といて、きょうすけ君が落ちてくるものから私をかばってくれて…」
なに?あのきょうすけが?
「それで、落ち着くまできょうすけ君が段ボールで私のからだをつつんでくれて守っていてくれたの」
「…」
「すごくきょうすけ君って男らしいな、小学校の時はただの勉強できる人としか見てなかったけど、すごく強い人なんだって思って」
「…」
「で、ようやく段ボールから出てみると、額をちょっと切ってて」
「うっ」
ぼくは、そんな大事な空間をりょうこちゃんと共有していたきょうすけに、ひどく嫉妬した。
「ごめん、私、きょうすけ君がスキになっちゃった」
「…」
ぼくは、一番ききたくない言葉をきき、何も言えなかった。
「…」
泣きたい、今、ここからりょうこちゃんからはなれて一人になりたい。
「ごめんね」
「…」
涙が出そうだ。
「私、高校は孟宗にしようと思ったけど、きょうすけ君が美都一受けるっていうからがんばろうと思って」
う、やばい、涙出そうだ。
「ごめん」
「い、いいよ、いけよ。ぼくが悪いんだ、謝らなくていいよ、いけよ」
それだけいうのが精いっぱいだ。
「ごめん」
なんで、女って謝るんだ?悪いことしてないだろ。
「ごめんね、私、ほんとうは…」
この後に及んで何を言うんだ。
「行けよ、行かないならぼくが行く」
ぼくは、りょうこちゃんに背を向けて歩き出した。
くそ、涙出てきたぜ。
女なんか、大嫌いだ。
いや、何で、おんなじ中学校にいかなかったんだ、そうすれば、地震の時、一緒にいられたじゃないか。きょうすけなんかにとられたりしなかったはずだ。
ぼくが須庭寺で住職さまたちにこき使われていた時、副住職さんにどつかれていた時、りょうこちゃんの傍できょうすけがりょうこちゃんを助けていたんだ。
ちきしょ~
バカ野郎
誰にも会いたくないぜ~
と、泣きながら須庭寺の本堂の須弥壇の裏の隠れ部屋に立てこもったぼくだった。
そのあと、副住職さんに、どつかれたのも堪えたわ~。


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