へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

メシドキ注意な話

2016-06-29 20:28:16 | へちま細太郎

「嵐の桜井翔の父ちゃんって、まじ、エリートだったんだ」
「というか、アレでしょ?事務方のトップ。政治のトップが大臣だとすると、同等の地位みたいな…」
「そうか、警察官の見張所があるんだよね?確か、自宅前に」
「それって、マジすげえな」
俺の部屋で、たかのりとなぜかメシをたかりにきた、後藤と荒波、白崎がネット記事を見ながら会話している。
「もし都民だったら、投票したの?」
現在も都民の荒波が、う~ん、と宙を仰ぐ。こいつは、都会…といってもほぼ埼玉より…からつくばった町までできた新線で通学している。快速に乗ると、めっちゃ早いらしい。
「てか、マジ、うめえ、このメシ」
後藤は、阿部さんが作ってくれた晩御飯を遠慮なく食べ漁っている。藤川先生がアパートを借りたというので、毎晩作りにきてついでに、俺たちのメシまで作ってくれるようになった。
てか、阿部さんの料理、いらねえって。
「そんなに食いたいのなら、毎晩、食べに来ていいよ。俺、いらねえから」
うんざりした口調の俺に、怪訝な目をむけた後藤たちは、
「こんなうまいのに?」
と、さらに混ぜご飯のおかわりをする。
「そのうち、わかるよ」
たかのりは、お茶漬けをかっ込みながらぼそっと言った。最初たかのりも喜んだクチだったんだが、今では食傷気味だ。
「うんじゃ、食いに来てやるよ」
白崎は、そういって、さらに、
「できれば、泊めて、家に帰りたくない」
と付け加えた。
「もしかして、水槽…」
「言うなああ!!」
頭を抱えて白崎はテーブルに突っ伏した。
「ほら、いわんこっちゃない」
「水槽に触りたくない」
情けない声で言うものの、しっかりサバの味噌煮を口に運んだ。
「あ、こういうの、得意な人がいるな」
「虫でもなんでもござれだよ、藤川家の人たちは」
と、たかのりは、隣の部屋の住人にラインを送り、
「大丈夫、今からでも、水槽捨てに行ってくれるよ」
と、ピースサインを出した。
「ほんと?」
白崎の顔がぱっと輝いた。後藤も荒波も、そんなことはおかまいなしにメシを食らう。
と、その時、
「てめえら、ごきぶりの処分しろったああ、いい根性してるぜっ」
と、作務衣にスキンヘッドの副住職さんがのりこんできた。
「げっ」
3人は、初めてみる副住職さんに驚いて、茶碗を落としてしまった。
「もったいないことすんなやっ」
と、藤川先生もライダーキックのように飛んできた。
「おめえらが、細太郎たちの大学の仲間か?いい面構えだ」
「バイク乗れるか?スズキのハスラーあるぞ?」
唖然ボー然な3人をよそに、
「メシうまいだろう?うちのお抱えの料理人だ、うますぎて食いたくなくなるんだ」
藤川先生は、荒波の肩に腕を回し、あごをつかむ。
「あ、あ、はい」
荒波は、箸を置き、他の2人と目を交わし合う。
「ま、今度、うちの農場に遊びにこいや。楽しいぞ。メシの心配はしなくていいからな」
と、気前よくいうものの、ふたりの新しいおもちゃを手に入れました風な笑顔が、マジで心配な、細太郎、選挙権はあるぞ~、でした。
ところで、荒波、おまえ、誰に投票するの?中途半端になっちゃったけどさ。



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