へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

棒斐浄寺のひなまつり

2011-02-27 22:10:58 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

今日は、藤川先生と広之おにいちゃん、そして奈々子と一緒に棒斐浄寺へ向かった。
ひなまつりの飾りつけが済んだからみにいらっしゃ、と招待を受けたんだけど、飾りつけが済んだ、とは思えない。
絶対に、飾りつけを手伝わせる気だ、と疑わしい。
ところが、棒斐浄寺つ到着してみると、飾りつけが済んでいる。
「なんだよ、珍しいな」
藤川先生は、棒斐浄寺の事務を扱っているきれいなお姉さんを目で追いながらへらへら笑う。
「新人?」
と聞けば、
「ばか、北別府さんの娘さんでしょ」
と、尼御前さまに怒られた。
「へ?あんなに美人だったっけ?」
広之おにいちゃんも、驚く。
「一番下のよ。仏教学部でたんですって、珍しいわよねえ。。。で、うちでお手伝い」
「ふうん」
ぼくは、奈々子が藤川家の別荘だったころからあるという雛人形を奈々子に見せながら、聞くとはなしに話をきいていた。
「そういえば、いたなあ、あの時は小学生だったっけな。いい女になったんだなあ」
広之おにいちゃんも、しみじみうなづいている。
「そうか、だから雛人形を飾れたんだな」
「まあねえ、でもそれだけじゃないし」
「それだけじゃねえって?」
藤川先生たちの会話を後ろにきいて、ぼくは奈々子を連れて庭に出た。
そういえば、この寺…というか、別荘には山からセンイチというイノシシが、たまにあらわれてエサをもらっていくということだったけど、今でも出てくるのかな。だとしたら、奈々子がけがしないようにしなくちゃ、と旧奥御殿の方に光悦垣の間をぬけてはいっていくと、紀藤造園のおじさんの丹精を込めた庭園が広がっていた。
「奈々子きれいだねえ」
ぼくは、庭の池を覗き込んでいる奈々子に話しかけると、山際のほうから黒い影がごそごそ音を立てている。
「やばい」
てっきりセンイチだと思った僕は奈々子を抱きかかえようとしたけど、その固まってしまった。
「え?」
視線の先には、黒い衣を着た尼さんが枯れ木を持って立っていた。
「…」
ぼくは、なんで日本の尼寺に、西洋の尼さんがいるのか、理解できなかった。
「あら、お客様、もういらしてたの?」
京尼御前さまと同じくらいの年のころだけど、浮世離れした風の胸に十字架を下げたシスターの出現に言葉もなく突っ立っていた。
「は?」



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