へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

乱入“燃えよドラゴンズ”

2011-11-02 13:03:34 | へちま細太郎

そんなわけで…って、どんなわけだ。
(仮)嵐軍団2号だ。

中島教授の弟子である1号は、イモ畑でサツマイモの管理だ。
「何で、ガキどものお遊戯のために俺ら働かされるんだ」
と、カンカン。
「まあ、文句を言うな」
高橋さんが、集めてきた落ち葉をドラム缶の中に入れて、煙を振り払った。
「教授は教授で、他大学に行かれると困るんだろうという思惑での許可だからね」
「そういうことか」
「ま、おまえみたいなやつは珍しいからね。有名大学進学をうたっているような学園じゃないけど、やっぱりみんな東大早慶行かせたがる親が多いじゃんか」
「どうせ、俺は東大落ちましたよ」
1号はふてくされている。
確かにこいつは、東大受験した。受験できただけでもエライが、しかし最低ラインのセンター点数だったと本人は認めている。東大じゃなければ孟宗って、どんな選択なんだ。
「ま、記念受験でしたけどね。中島教授がいたからきたようなもんですけど」
わかってんじゃん。それに中島教授は有名人だからね、いろんな意味で。
と、その時、
「何?タコ壺の前で“闘魂こめて”の大合唱だと?」
という、歓喜の雄たけびが聞こえてきた。
「そうか、そうか、それはいい企画だ」
ジャイアンツファンのファンの中島教授のドヤ顔が見えた。
「よっしゃあ、俺も参加するぞ」
「え?」
鍬を放り出して、中島教授は畑を飛び出し、チャリに飛び乗り猛然とこぎ出していってしまった。
「俺も行く」
俺は、1号の文句を背中に浴びても、こんな面白い光景を見逃してたまるもんかと振り向きもせず、中島教授のあとを追った。
そしたら、どうだ、生徒たちは“闘魂こめて”をうたえない。どうせ、ジャイアンツファンだって、古くからの連中以外は歌えまい。
「バカ野郎、球界の盟主の球団歌が歌えんとは何事だ
中島教授のどなり声に、
「くたばれ○売そ~れ行け行け」
と、匿名希望の東山先生の声が聞こえてくる。
しかも、東京音頭に合わせて、
「くたばれ讀○」
と、片山教授が歌いながら、あのビニール傘を振っていた。
「ひええええええ」
いつものパターンだと、呆れつつもなぜかビデオを回している藤川坊ちゃんがいた。
「こんな面白い現場、残さずにはいられん」
わきにいた浜中先生が、スケッチブックにマジックでさらさらと書いて、しーっと親指を唇にあてた。
「バカ野郎、なにが、“闘魂こめて”だああ」
そこへ、おたまじゃくしを持った青い割烹着姿の阿部さんがのりこんできた。
「頭がドアラだ」
両耳に、名古屋の青いコアラの耳がついている。
「とおらを倒して鯉つってええええええ~」
ムッとタコ壺が眉を吊り上げた。
「はあまの星座にくうもをかけえ~、つ~ばめ落としてえ」
片山教授の傘がとまった。
「おおおとこおお、いきのねえとおめてええ」
「何で、大男だけ、息の根とめるんだあ」
当然、中島教授は大激怒だ。
「意外や意外、阿部さんはドラゴンズファンだったのか、ぼっちゃん、あんた知ってたの?」
「知ってた、阿部さんは名古屋出身、昨日、話してた」
と、さらさら浜中先生が代筆。
「確信犯め」
今日の混乱は、このバカ殿が仕組んだんだな。
よかった、ベイスターズファンと広島ファンがいなくて、と思った瞬間だった。
「いいぞお~、がんばれええ、どおらごんずうううう~もえよお~ドラゴンズうぅうぅう」
生徒たちもここだけは知っているのか、合わせて大合唱になってしまった。
う~ん。どう収拾つけるんだ?



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