へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

けんちゃん、子供が生まれる

2010-09-09 17:50:37 | へちま細太郎
こんばんは、へちま細太郎です。


台風が大雨とともに駆け抜けた夜明けに、けんちゃん先生のところにあかちゃんがやっと生まれた。
男の子だった。
「そうか、男か」
藤川先生は電話をきったあと、
「よっしゃ、これで後継ぎが誕生した」
と、大喜びをしていた。
「あんたね、女系じゃ周りがゆるさないでしょ、実孝んとこにはもう小学生の男の子がいるでしょうが」
おとうさんの意地の悪い言い方にも、
「藤川家の問題だ」
と取り合わない。
「ようするに、種馬っていわれるのがいやなだけだろ」
おじいちゃんが珍しく藤川先生の肩をもった。
「おやじさ~ん、わかってくれましたかあ」
藤川先生が泣きつかんばかりだ。
「ま、あまのじゃくってことだな」
「え?」
「そうそ、ほんとは結婚したいんだけど、お見合いでもいやだし、かといっても恋愛したくてもできないし」
おばあちゃん、おじいちゃんは藤川先生の肩を持っていそうで、実は持っていない。
「うん、ほんとはモテないだけなんだよね」
思わず、つられた僕もいっちゃった。
「細太郎、てめえ」
藤川先生の凄みのきいた声も、もうなれちゃった。だから、
「こわくないよ、それに、怒るってことはほんとのことだもんね」
といったやった。
「あ~、近藤家にも見捨てられてしまった~」
勝手になげいてろ、とおとうさんがつぶやくのが聞こえた。
ほんとだ。


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