第1章 日本経済
(A) 世界経済のファンダメンタルズ、マクロ的な経済の基礎的条件は、すぐに変わらない。「大局観」が重要。
(B) 民主党政権の最大の反省点は、官僚機構を使いこなせなかったこと。「脱官僚」は的はずれ。社長が、「脱社員」と言うことはありえない。
(C) リーマンショック、欧州債務危機後の不況に関し、今や世界経済は底を打ち、2013年後半から、景気が良くなるだろう。
(D) 「アベノミクス」のインフレターゲット2%とは、結局、そこに達するまで、金融緩和を続けるというだけである。
(D)-2 すでにカネがだぶついており、銀行から先の領域に、カネをまわす必要がある。
(E) 「日銀の独立性」は通貨価値の維持のため、当然。
(F) 世界経済が回復する2013年前半までは、公共事業が重要。
(F)-2 長期的には成長戦略として、①農業への自由な株式会社参入、②代替エネルギー開発が重要。
(F)-3 消費税は今は、増税しない。法人税減税をすべき。
(G) 日の丸掲揚し、国家斉唱したからといって、公教育のクオリティは、あがらない。
(H) 「アベリスク」の最大のものは日中関係。日本の「国益」から言うと日中経済関係がポイント。すでに日中経済は一体化。日本の輸出の20%は中国向け、香港・台湾を含めれば30%。米国向け輸出は15%にすぎない。
第2章 円と株
第2章-1 円高トレンドと米国の「金融立国」化
(A) 円高トレンドは、1971年ドル・ショック以来、続く。1975年300円台だったのが、今や1995年4月79円台、2011年10月75円台。
(B) クリントン政権は、途中1995年、ドル安政策からドル高政策へ転換。アメリカに世界の資金を集中させ「金融立国」をめざすこととなる。金融バブルへ。2008年リーマンショックで金融バブル破綻。
(C) 2010年から、ギリシャ危機に端を発し、ユーロ危機へ。
第2章-2 日本国債
(D) 日本国債の92%は、日本人が保有する(日本人の個人金融資産1500兆円)ので、大丈夫。ただし大丈夫なのは、今後5年程度。6~7年後に国債暴落・円安危機がありうる。ただし1ドル=150円を超える円安は、ないだろう。
第2章-3 円高
(E) 今の円高の原因は「日本経済が、アメリカ・欧州より良い」とされるため。
(E)-2 95年の円高の方が、企業には今より大変だった。現在の企業は、グローバリゼーションの対応に失敗し苦労しているので、円高が理由でない。自己責任。
(E)-3 現在、起こっているのは、円高というより、ユーロ安。2008年1ユーロ=160円台。現在、2013年1ユーロ=110円台。
第3章 ドルとアメリカ経済
第3章-1 アメリカン・ドリームの崩壊と貧富の格差
(A) かつてのアメリカでない。貧富の差の拡大がアメリカを分断。
(A)-2 移民の流入が、アメリカ経済を支える。
(A)-3 アメリカン・ドリームが崩壊。
(A)-4 上位のCEOの報酬急増。上位1%の層が、所得の23.1%を占める。そして富の不平等が、所得の不平等を上回る。
(A)-5 アメリカ国民はお互いへの信頼感を失う。
(A)-6 所得階層間の移動も小さい。
第3章-2 アングロ・プロテスタントとヒスパニック
(B) アメリカのナショナル・アイデンティティの危機。
(B)-2 アメリカの伝統は「アングロ・プロテスタント」文化(「英語&新教」)。アメリカの保守的な一般大衆・地域社会はそう信じる。これに対し、リーダーたちは、アメリカが「自由と民主主義」を信じる「普遍的」な国と思う。
(B)-3 ヒスパニックは英語を話さず、カトリック。
(B)-4 ハンティントンは、アメリカが分断されていると言う。①一般大衆が政府・議会に、不信を持つ。②ヒスパニックが、アングロ・プロテスタント文化に同化しない問題。
第3章-3 信心深い人ほど、ナショナル(愛国的):アメリカ
(C) 宗教(信心深さ)がアメリカを復興させる。信心深いと、善悪がはっきりする。
(C)-2 信心深い人ほど、ナショナル(愛国的)である。Ex. アイルランド、ポーランド、アメリカ
(C)-3 ただし日本は一神教的信心深さがないが、多神教的自然崇拝がある。
第3章-4 アメリカの「双子の赤字」
(D) アメリカの経常収支(主として「貿易赤字」)、1980年代に赤字が定着。このため政府の債務(「財政赤字」)を国内でまかなえない。海外から資金を流入させる。アメリカ国債を外国に買ってもらう。「双子の赤字」問題!
(D)-2 アメリカは2000年から財政収支悪化。2012年、アメリカの政府債務が、対GDP比100%超へ。(2002年は、まだ対GDP比57.1%だった。)
(D)-3 アメリカの国債の70%は、海外で保有。経常収支赤字のため。日本と違う。米国は財政赤字を海外でファイナンス。
(D)-4 アメリカ国債の格付けに関し、引き下げの心配がある。
第3章-5 アメリカの「失業問題」
(E) アメリカの失業率は8~9%で高い。フランス、イタリア並み。
(E)-2 金融政策はすでに金融緩和を実施しており手詰まり。財政赤字で財政政策も手詰まり。
(E)-3 独・日は4~6%の失業率。
(F) かくて弱まる経済、「双子の赤字」のもと、ドル安が長期トレンド。
第4章 ユーロとヨーロッパ経済
第4章-1 金融・為替統合に加え、財政統合する:欧州危機の唯一の解決策
(A) 1918年、ドイツのシュペングラー『西洋の没落』刊行。
(B) バブル崩壊で2010年、アイルランド危機、ギリシア危機。
(B)-2 欧州危機は、基本的に、金融・為替に加え、財政の統合も進めるかどうかの問題。財政統合しヨーロッパ合衆国が出来なければ、EU解体する。
(C) 財政債務の拡大が、欧州危機の核心。
(C)-2 歳出削減と増税しか対策がなく、欧州危機の出口が見えない。
(C)-3 長期的にユーロ解体もありうる。
(D) 現状を大きく変えられないまま、ユーロ下落の方向。ギリシアのユーロ離脱は、さしあたり、考えにくい。
(D)-2 かつてならギリシアは、ドラクマを引き下げて対応できた。
(E) ドイツは、ギリシアへの財政移転に賛成しないだろうから、ヨーロッパ合衆国は無理。
第4章-2 ユーロから離脱し、ユーロ・ペグ制にする:ギリシアの可能性
(F) ギリシアを旧通貨に戻し、ユーロ・ペッグ制にする可能性はある。
(G) イギリスは財政主権を制約されたくない。ユーロ導入せず。
(H) 各国で経済成長率、インフレ率が異なるので、為替統合は無理。
(I) 成熟先進国は低成長が当たり前。(例1)日本は1991-2011の実質GDP成長率0.9%/年。(例2)2006-11の成長率、日本0.2%、EU0.7%、米1.0%。
(J) EU(27カ国)、人口5億人、GDPはアメリカの1.1倍で世界1。
(K) ユーロから離脱し、ユーロにペグするのみの国が増えるだろう。
(K)-2 中国の元はドルにペグしている。
(K)-3 ギリシアはユーロ離脱し、ドラクマを切り下げ、その後、ユーロにペグすればよい。
第4章-3 ドイツの一人勝ち:ユーロ導入によるEU経済の構造的危機
(L) ユーロ加盟で、ギリシアは通貨切り下げが出来なくなり、国際競争力あるドイツ企業が有利。
(L)-2 ユーロ加盟後、ドイツは経常黒字増。ドイツと似たベネルクス3国も経常黒字増。ギリシア、仏伊など南欧は経常赤字増。仏伊も経常赤字増。
(L)-3 ユーロ圏は、ドイツ(とベネルクス3国)の一人勝ち。
(L)-4 ユーロ導入が、国際競争力に関し、為替の切り下げ、切り上げという調整手段を奪った。
(M) ユーロ導入が、ギリシア危機、南欧危機の原因。
(M)-2 財政移転による解決を、財政統合して、ドイツは行うべき。
(L) 国際収支の悪化とともに、(※企業の利益減による税収減で)財政収支も悪化。
(L)-2 EU経済は、ユーロ導入による構造的危機のもとにある。国際収支危機と財政危機。
第5章 人民元と中国、アジア経済
第5章-1 2030年頃:中国のGDP世界1、60-64歳人口最多
(A) 2010年、中国、GDP、世界2位となる。
(A)-2 中国の一人当たりGDPは、日本の10分の1なので、成長の余地あり。2030年頃、中国が、アメリカを抜きGDP世界1となる見込み。中国の人口、13億4千万人。
(B) 中国はしかし、「一人っ子」政策の影響で、人口は13億9千万人で頭打ちの見込み。
(B)-2 中国経済は、今がピーク。人口の老齢化で、成長率鈍化へ。20年後、2030年頃、60-64歳人口が最多となる。
第5章-2 インド:NEP(新経済政策、1991年)以後の発展
(C) 世界経済の中心はアジアに回帰。「リオリエント」現象。1820年の実質GDP(対世界比)は中29%、印16%で中印計45%。50年後、1870年には欧米のGDPが、中印を抜く。
(D) あと10年で、人口、成長率は、インドが中国を抜き、ナンバー1となる。
(D)-2 インドは1991年NEP(新経済政策)以降、経済成長。社会主義的統制経済から、市場経済体制に移行。(2003年のゴールドマン・サックス証券のBRICs予測は、この経済成長の帰結。)
(D)-3 現在、中国は30-34歳層がピークで、以後人数減少。インドは10-14歳層がピーク。今後の経済成長が見込める。
(E) インドは親日的。「外交的資産」と言える。
(E)-2 インドは多神教で寛容。またヒンドゥー教はダルマ(真理)・マルタ(富の獲得)・カーマ(欲望追求)を宗教的3大義務とする。
第5章-3 ASEAN諸国:インドネシア、タイ、マレーシア、ミャンマー、ベトナム
(F)中国、シンガポールは反日的。
(F)-2 インド、インドネシア、タイは、戦前の「アジア解放」の日本の国策から、親日的。インドネシアの民族主義者スカルノを日本が支援。タイと日本は戦前、攻守同盟を結ぶ。
(G) マレーシアは戦後、「ルック・イースト政策」で日本をモデルに高度成長をめざす。
(H) フィリピンは、親米、反日。第2次大戦中、111万人が死亡。
(I) インドネシア、ベトナム、ミャンマーが世界の成長センターになる。
(I)-2 インドネシアは、人口2億3千万人(2010)。印度に次ぎ、発展の可能性。
(I)-3 ベトナムは、1986年、ドイモイ政策以来、発展。
(I)-4 ミャンマーは、1997年、ASEAN加盟以来、経済発展。2011年、民主化指導者アウン・サン・スー・チーと軍事政権の和解後、発展加速の可能性。
第6章 基軸通貨をめぐる攻防:ドル、円、人民元、ユーロ&2050年「無極化」
第6章-1 1ドル=360円時代
(A) 1944年、ブレトンウッズ会議では、英代表ケインズの新しい準備通貨「バンコール」案と、米代表ホワイトの「金・ドル本位制」案が対立。現実的な、後者に決まる。
(A)-2 各国は、利息を産まない金より、ドルで外貨準備を持つ。
(B) 円の対ドルレートは、1871年新貨条例で、1円=純金1.5グラム。1ドル=ほぼ1円となる。
(B)-2 1897年、貨幣法で金本位制へ移行。1円=金0.75グラム。1ドル=2円。
(B)-3 すでに管理通貨制に移行して以後、1941年、1ドル=4円25銭。
(B)-4 敗戦後のインフレで、1ドル=50円へ。
(B)-5 1949年、ドッジラインで、1ドル=360円に決まる。若干、円安の設定。
第6章-2 変動相場制のもとでドルの価値が4分の1となる:1ドル=90円時代
(C) スミソニアン合意(固定制への復帰、1ドル=308円)が維持出来なかったのは、市場が、ポンドなどを売り浴びせたため。
(C)-2 1973年、変動相場制への移行後、ドルは下落。1ドル=270円。
(C)-3 ついに1995年(4/19)には1ドル=79円75銭へ。これはさすがに行き過ぎで、《円高・マルク高、ドル安》の是正のため、1995年9月、米など先進国が協調介入し1ドル=100円へ。
(D) アジア通貨危機と日本の金融危機(1997・8)で、1998年、1ドル=147円まで円安へ。
(D)-2 その後は再び円高で、2011年(10/31)には、1ドル=75円32銭へ。
(E) ドルは対円で、価値が4分の1となった。
第6章-3 今後20年間、ドルが基軸通貨(2030年代半ばまで)
(F) ドル価値が下落したとはいえ、アメリカはNo.1の国。人口5000万人以上の国で、1人当たりGDP1位。
(F)-2 さらに米国の軍事力は世界最高。「軍事における革命」(RMA=Revolution in Military Affairs)、「ネットワーク中心の戦い」(NCW=Network-Centric Warfare)が進行。
第6章-4 2030年頃、中国のGDPが世界1となる
(G) 2030年頃、中国は、GDP世界1となる。
(H) 人民元は、この5年間で、対ドルで20%切り上がった。1ドル=7.69元から、1ドル=6.30元へ。(1ドル=100円から、1ドル=82円の円高に相当。)
(I) 中国経済は日本と40年のタイムラグ。(2013年の中国は、1973年の日本に相当。)
(I)-2 ただし2014-2030年の中国は、1974-1990年の日本4%台成長よりも、大きく成長するだろう。(1人当たりGDPが日本より相当小さいため成長する。)
第6章-5 今後、「元高、円高、ドル安、ユーロ安」、2050年に「無極化」時代へ
(J) 人民元は、後40年たつと、2050年には、かなり高くなるはず。日本は1973-2012年で270円から90円になった。
(K) 中国の1人当たりGDPは2050年でも、アメリカの2分の1程度。
(K)-2 中国は人口13億人、インド17億人(1人当たりGDPはアメリカの3分の1)。
(K)-3 2050年のGDPそのもの:米、印は、中国の半分。
(L) 2050年には資本主義の新たな投資先がなくなる。フロンティアの消滅。
(L)-2 利子は2%以下の低金利が続く。利子率革命。Ex.1997年以降の日本の10年国債利回りは
(M) 2050年には、アメリカ、EU、中国の3極というより、どこもリーダーシップがとれない、「無極化」の時代となる。
第7章 世界に誇る日本の資産
第7章-1 日本経済は「成長」から、すでに「成熟」へ:低成長は当然
(A)-2 日本の経済成長率(年平均):①1956-73年、高度成長、9.1%。②1974-90年、安定成長、4.2%。③1991-2011年、バブル崩壊以後、0.9%
(B) 日本経済は、バブル崩壊後、円高で失速
→1995年、円高是正で、2.7%もどる
→1998年、東アジア危機(1997-1998)と、日本の金融システム崩壊でマイナス成長
→2000年、2%成長に回復
(C) 2008年9月、リーマンショック後、日本経済の成長率は、2008年マイナス3.7%、2009年マイナス2.1%
→2012年予測、2.2%
(D) 日本の潜在成長率は1-1.5%。
(E) 経済の「成熟」につれ、成長率下がる。
(F) 2006-10年経済成長率(年平均):日本0.2%、EU0.7%、米1.0%
第7章-2 日本の歴史的・自然的資産
(G) 日本には森、水があり、魚がいる:稲作漁撈文明。(欧米は畑作牧畜文明。)
(H) 日本は、長く平和が保たれていた。
(I) 人口3000万人以上の国では、日本の平均寿命は男女とも世界一。平均寿命の長さと豊かさは比例関係。日本は、「成長シンドローム」(成長第一主義)から抜け出すことが必要
(K) 日本と英国は、「海」の国で似ている。梅棹忠夫の「第1地域」海洋国家(日本、西欧、米)。Cf. 「第2地域」(中・印・露・イスラム諸国)
(K)-2 海洋イスラムから自立した英国と、海洋中国から自立した「脱亜」の日本。
第8章 世界の中の日本経済
第8章-1 東アジア製造ネットワーク
(A) 多国籍企業によって、東アジアの経済統合(地域内分業)が進展。1980、90年代の20年間に変化。①自動車部品、②エレクトロニクス製品など。
(A)-2 グローバルなプロダクションシェアリング、グローバルな製造ネットワークの形成。
(A)-3 東アジア製造ネットワークは、日本が部品を提供し、中国・香港がアセンブルする。(2001年)
(B) 今後の「ASEAN+3」の発展が重要。日中の協調&イニシアチブが欠かせない。
(C) アジア通貨高は2012年で底を打った。つまりアメリカ経済順調、中国経済減速。
(D) アジアは巨大すぎて、宗教も様々(仏教、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教など)で、EU的統合はない。
(E) 東アジアの経済統合はありうる。金融・為替の統合以上の統合。
第8章-2 「ドル・ユーロ・人民元」の時代へ
(F) 世界の3大通貨は、「ドル・ユーロ・円」から、「ドル・ユーロ・人民元」へ。
(F)-2 中国は「SDR準備通貨構想」を主張。「バンコール」に相当。ドルよりも中立な国際通貨。
(G) 2030年、日本のGDPは、中国(世界1)の4分の1程度へ。
おわりに:発想を転換し「成熟」戦略を考えるべき。環境・安全・健康分野の重視。
(A) 「アベノミクス」:①大胆な金融緩和、②大規模な公共投資による国土強靱化、③製造業の復活による成長の促進。
(A)-2 2011、2012年、「マイナス成長対策、インフラ劣化対策」として、「アベノミクス」は、必要。
(A)-3 しかし「2%のインフレターゲット」は疑問。日本の1995年以来のデフレは、景気後退によるものでなく、グローバリゼーション(とりわけ東アジアの経済統合)を背景にした構造的なものである。「悪いデフレ」ではない。むしろ物価安定である。
(A)-4 2002-07年は、景気回復し、平均2%弱の実質GDP成長を達成したが、この時も物価は下がり続けた。
(B) 「アベノミクス」が、従来型の「成長」政策なら、「資産バブル」を生み、中・長期的にマイナス。
(C) 発想を転換し、「成熟」戦略を考えるべき。環境・安全・健康など日本経済が大きな強みを持つ分野の良さを認識し、維持・展開させるべき。
(A) 世界経済のファンダメンタルズ、マクロ的な経済の基礎的条件は、すぐに変わらない。「大局観」が重要。
(B) 民主党政権の最大の反省点は、官僚機構を使いこなせなかったこと。「脱官僚」は的はずれ。社長が、「脱社員」と言うことはありえない。
(C) リーマンショック、欧州債務危機後の不況に関し、今や世界経済は底を打ち、2013年後半から、景気が良くなるだろう。
(D) 「アベノミクス」のインフレターゲット2%とは、結局、そこに達するまで、金融緩和を続けるというだけである。
(D)-2 すでにカネがだぶついており、銀行から先の領域に、カネをまわす必要がある。
(E) 「日銀の独立性」は通貨価値の維持のため、当然。
(F) 世界経済が回復する2013年前半までは、公共事業が重要。
(F)-2 長期的には成長戦略として、①農業への自由な株式会社参入、②代替エネルギー開発が重要。
(F)-3 消費税は今は、増税しない。法人税減税をすべき。
(G) 日の丸掲揚し、国家斉唱したからといって、公教育のクオリティは、あがらない。
(H) 「アベリスク」の最大のものは日中関係。日本の「国益」から言うと日中経済関係がポイント。すでに日中経済は一体化。日本の輸出の20%は中国向け、香港・台湾を含めれば30%。米国向け輸出は15%にすぎない。
第2章 円と株
第2章-1 円高トレンドと米国の「金融立国」化
(A) 円高トレンドは、1971年ドル・ショック以来、続く。1975年300円台だったのが、今や1995年4月79円台、2011年10月75円台。
(B) クリントン政権は、途中1995年、ドル安政策からドル高政策へ転換。アメリカに世界の資金を集中させ「金融立国」をめざすこととなる。金融バブルへ。2008年リーマンショックで金融バブル破綻。
(C) 2010年から、ギリシャ危機に端を発し、ユーロ危機へ。
第2章-2 日本国債
(D) 日本国債の92%は、日本人が保有する(日本人の個人金融資産1500兆円)ので、大丈夫。ただし大丈夫なのは、今後5年程度。6~7年後に国債暴落・円安危機がありうる。ただし1ドル=150円を超える円安は、ないだろう。
第2章-3 円高
(E) 今の円高の原因は「日本経済が、アメリカ・欧州より良い」とされるため。
(E)-2 95年の円高の方が、企業には今より大変だった。現在の企業は、グローバリゼーションの対応に失敗し苦労しているので、円高が理由でない。自己責任。
(E)-3 現在、起こっているのは、円高というより、ユーロ安。2008年1ユーロ=160円台。現在、2013年1ユーロ=110円台。
第3章 ドルとアメリカ経済
第3章-1 アメリカン・ドリームの崩壊と貧富の格差
(A) かつてのアメリカでない。貧富の差の拡大がアメリカを分断。
(A)-2 移民の流入が、アメリカ経済を支える。
(A)-3 アメリカン・ドリームが崩壊。
(A)-4 上位のCEOの報酬急増。上位1%の層が、所得の23.1%を占める。そして富の不平等が、所得の不平等を上回る。
(A)-5 アメリカ国民はお互いへの信頼感を失う。
(A)-6 所得階層間の移動も小さい。
第3章-2 アングロ・プロテスタントとヒスパニック
(B) アメリカのナショナル・アイデンティティの危機。
(B)-2 アメリカの伝統は「アングロ・プロテスタント」文化(「英語&新教」)。アメリカの保守的な一般大衆・地域社会はそう信じる。これに対し、リーダーたちは、アメリカが「自由と民主主義」を信じる「普遍的」な国と思う。
(B)-3 ヒスパニックは英語を話さず、カトリック。
(B)-4 ハンティントンは、アメリカが分断されていると言う。①一般大衆が政府・議会に、不信を持つ。②ヒスパニックが、アングロ・プロテスタント文化に同化しない問題。
第3章-3 信心深い人ほど、ナショナル(愛国的):アメリカ
(C) 宗教(信心深さ)がアメリカを復興させる。信心深いと、善悪がはっきりする。
(C)-2 信心深い人ほど、ナショナル(愛国的)である。Ex. アイルランド、ポーランド、アメリカ
(C)-3 ただし日本は一神教的信心深さがないが、多神教的自然崇拝がある。
第3章-4 アメリカの「双子の赤字」
(D) アメリカの経常収支(主として「貿易赤字」)、1980年代に赤字が定着。このため政府の債務(「財政赤字」)を国内でまかなえない。海外から資金を流入させる。アメリカ国債を外国に買ってもらう。「双子の赤字」問題!
(D)-2 アメリカは2000年から財政収支悪化。2012年、アメリカの政府債務が、対GDP比100%超へ。(2002年は、まだ対GDP比57.1%だった。)
(D)-3 アメリカの国債の70%は、海外で保有。経常収支赤字のため。日本と違う。米国は財政赤字を海外でファイナンス。
(D)-4 アメリカ国債の格付けに関し、引き下げの心配がある。
第3章-5 アメリカの「失業問題」
(E) アメリカの失業率は8~9%で高い。フランス、イタリア並み。
(E)-2 金融政策はすでに金融緩和を実施しており手詰まり。財政赤字で財政政策も手詰まり。
(E)-3 独・日は4~6%の失業率。
(F) かくて弱まる経済、「双子の赤字」のもと、ドル安が長期トレンド。
第4章 ユーロとヨーロッパ経済
第4章-1 金融・為替統合に加え、財政統合する:欧州危機の唯一の解決策
(A) 1918年、ドイツのシュペングラー『西洋の没落』刊行。
(B) バブル崩壊で2010年、アイルランド危機、ギリシア危機。
(B)-2 欧州危機は、基本的に、金融・為替に加え、財政の統合も進めるかどうかの問題。財政統合しヨーロッパ合衆国が出来なければ、EU解体する。
(C) 財政債務の拡大が、欧州危機の核心。
(C)-2 歳出削減と増税しか対策がなく、欧州危機の出口が見えない。
(C)-3 長期的にユーロ解体もありうる。
(D) 現状を大きく変えられないまま、ユーロ下落の方向。ギリシアのユーロ離脱は、さしあたり、考えにくい。
(D)-2 かつてならギリシアは、ドラクマを引き下げて対応できた。
(E) ドイツは、ギリシアへの財政移転に賛成しないだろうから、ヨーロッパ合衆国は無理。
第4章-2 ユーロから離脱し、ユーロ・ペグ制にする:ギリシアの可能性
(F) ギリシアを旧通貨に戻し、ユーロ・ペッグ制にする可能性はある。
(G) イギリスは財政主権を制約されたくない。ユーロ導入せず。
(H) 各国で経済成長率、インフレ率が異なるので、為替統合は無理。
(I) 成熟先進国は低成長が当たり前。(例1)日本は1991-2011の実質GDP成長率0.9%/年。(例2)2006-11の成長率、日本0.2%、EU0.7%、米1.0%。
(J) EU(27カ国)、人口5億人、GDPはアメリカの1.1倍で世界1。
(K) ユーロから離脱し、ユーロにペグするのみの国が増えるだろう。
(K)-2 中国の元はドルにペグしている。
(K)-3 ギリシアはユーロ離脱し、ドラクマを切り下げ、その後、ユーロにペグすればよい。
第4章-3 ドイツの一人勝ち:ユーロ導入によるEU経済の構造的危機
(L) ユーロ加盟で、ギリシアは通貨切り下げが出来なくなり、国際競争力あるドイツ企業が有利。
(L)-2 ユーロ加盟後、ドイツは経常黒字増。ドイツと似たベネルクス3国も経常黒字増。ギリシア、仏伊など南欧は経常赤字増。仏伊も経常赤字増。
(L)-3 ユーロ圏は、ドイツ(とベネルクス3国)の一人勝ち。
(L)-4 ユーロ導入が、国際競争力に関し、為替の切り下げ、切り上げという調整手段を奪った。
(M) ユーロ導入が、ギリシア危機、南欧危機の原因。
(M)-2 財政移転による解決を、財政統合して、ドイツは行うべき。
(L) 国際収支の悪化とともに、(※企業の利益減による税収減で)財政収支も悪化。
(L)-2 EU経済は、ユーロ導入による構造的危機のもとにある。国際収支危機と財政危機。
第5章 人民元と中国、アジア経済
第5章-1 2030年頃:中国のGDP世界1、60-64歳人口最多
(A) 2010年、中国、GDP、世界2位となる。
(A)-2 中国の一人当たりGDPは、日本の10分の1なので、成長の余地あり。2030年頃、中国が、アメリカを抜きGDP世界1となる見込み。中国の人口、13億4千万人。
(B) 中国はしかし、「一人っ子」政策の影響で、人口は13億9千万人で頭打ちの見込み。
(B)-2 中国経済は、今がピーク。人口の老齢化で、成長率鈍化へ。20年後、2030年頃、60-64歳人口が最多となる。
第5章-2 インド:NEP(新経済政策、1991年)以後の発展
(C) 世界経済の中心はアジアに回帰。「リオリエント」現象。1820年の実質GDP(対世界比)は中29%、印16%で中印計45%。50年後、1870年には欧米のGDPが、中印を抜く。
(D) あと10年で、人口、成長率は、インドが中国を抜き、ナンバー1となる。
(D)-2 インドは1991年NEP(新経済政策)以降、経済成長。社会主義的統制経済から、市場経済体制に移行。(2003年のゴールドマン・サックス証券のBRICs予測は、この経済成長の帰結。)
(D)-3 現在、中国は30-34歳層がピークで、以後人数減少。インドは10-14歳層がピーク。今後の経済成長が見込める。
(E) インドは親日的。「外交的資産」と言える。
(E)-2 インドは多神教で寛容。またヒンドゥー教はダルマ(真理)・マルタ(富の獲得)・カーマ(欲望追求)を宗教的3大義務とする。
第5章-3 ASEAN諸国:インドネシア、タイ、マレーシア、ミャンマー、ベトナム
(F)中国、シンガポールは反日的。
(F)-2 インド、インドネシア、タイは、戦前の「アジア解放」の日本の国策から、親日的。インドネシアの民族主義者スカルノを日本が支援。タイと日本は戦前、攻守同盟を結ぶ。
(G) マレーシアは戦後、「ルック・イースト政策」で日本をモデルに高度成長をめざす。
(H) フィリピンは、親米、反日。第2次大戦中、111万人が死亡。
(I) インドネシア、ベトナム、ミャンマーが世界の成長センターになる。
(I)-2 インドネシアは、人口2億3千万人(2010)。印度に次ぎ、発展の可能性。
(I)-3 ベトナムは、1986年、ドイモイ政策以来、発展。
(I)-4 ミャンマーは、1997年、ASEAN加盟以来、経済発展。2011年、民主化指導者アウン・サン・スー・チーと軍事政権の和解後、発展加速の可能性。
第6章 基軸通貨をめぐる攻防:ドル、円、人民元、ユーロ&2050年「無極化」
第6章-1 1ドル=360円時代
(A) 1944年、ブレトンウッズ会議では、英代表ケインズの新しい準備通貨「バンコール」案と、米代表ホワイトの「金・ドル本位制」案が対立。現実的な、後者に決まる。
(A)-2 各国は、利息を産まない金より、ドルで外貨準備を持つ。
(B) 円の対ドルレートは、1871年新貨条例で、1円=純金1.5グラム。1ドル=ほぼ1円となる。
(B)-2 1897年、貨幣法で金本位制へ移行。1円=金0.75グラム。1ドル=2円。
(B)-3 すでに管理通貨制に移行して以後、1941年、1ドル=4円25銭。
(B)-4 敗戦後のインフレで、1ドル=50円へ。
(B)-5 1949年、ドッジラインで、1ドル=360円に決まる。若干、円安の設定。
第6章-2 変動相場制のもとでドルの価値が4分の1となる:1ドル=90円時代
(C) スミソニアン合意(固定制への復帰、1ドル=308円)が維持出来なかったのは、市場が、ポンドなどを売り浴びせたため。
(C)-2 1973年、変動相場制への移行後、ドルは下落。1ドル=270円。
(C)-3 ついに1995年(4/19)には1ドル=79円75銭へ。これはさすがに行き過ぎで、《円高・マルク高、ドル安》の是正のため、1995年9月、米など先進国が協調介入し1ドル=100円へ。
(D) アジア通貨危機と日本の金融危機(1997・8)で、1998年、1ドル=147円まで円安へ。
(D)-2 その後は再び円高で、2011年(10/31)には、1ドル=75円32銭へ。
(E) ドルは対円で、価値が4分の1となった。
第6章-3 今後20年間、ドルが基軸通貨(2030年代半ばまで)
(F) ドル価値が下落したとはいえ、アメリカはNo.1の国。人口5000万人以上の国で、1人当たりGDP1位。
(F)-2 さらに米国の軍事力は世界最高。「軍事における革命」(RMA=Revolution in Military Affairs)、「ネットワーク中心の戦い」(NCW=Network-Centric Warfare)が進行。
第6章-4 2030年頃、中国のGDPが世界1となる
(G) 2030年頃、中国は、GDP世界1となる。
(H) 人民元は、この5年間で、対ドルで20%切り上がった。1ドル=7.69元から、1ドル=6.30元へ。(1ドル=100円から、1ドル=82円の円高に相当。)
(I) 中国経済は日本と40年のタイムラグ。(2013年の中国は、1973年の日本に相当。)
(I)-2 ただし2014-2030年の中国は、1974-1990年の日本4%台成長よりも、大きく成長するだろう。(1人当たりGDPが日本より相当小さいため成長する。)
第6章-5 今後、「元高、円高、ドル安、ユーロ安」、2050年に「無極化」時代へ
(J) 人民元は、後40年たつと、2050年には、かなり高くなるはず。日本は1973-2012年で270円から90円になった。
(K) 中国の1人当たりGDPは2050年でも、アメリカの2分の1程度。
(K)-2 中国は人口13億人、インド17億人(1人当たりGDPはアメリカの3分の1)。
(K)-3 2050年のGDPそのもの:米、印は、中国の半分。
(L) 2050年には資本主義の新たな投資先がなくなる。フロンティアの消滅。
(L)-2 利子は2%以下の低金利が続く。利子率革命。Ex.1997年以降の日本の10年国債利回りは
(M) 2050年には、アメリカ、EU、中国の3極というより、どこもリーダーシップがとれない、「無極化」の時代となる。
第7章 世界に誇る日本の資産
第7章-1 日本経済は「成長」から、すでに「成熟」へ:低成長は当然
(A)-2 日本の経済成長率(年平均):①1956-73年、高度成長、9.1%。②1974-90年、安定成長、4.2%。③1991-2011年、バブル崩壊以後、0.9%
(B) 日本経済は、バブル崩壊後、円高で失速
→1995年、円高是正で、2.7%もどる
→1998年、東アジア危機(1997-1998)と、日本の金融システム崩壊でマイナス成長
→2000年、2%成長に回復
(C) 2008年9月、リーマンショック後、日本経済の成長率は、2008年マイナス3.7%、2009年マイナス2.1%
→2012年予測、2.2%
(D) 日本の潜在成長率は1-1.5%。
(E) 経済の「成熟」につれ、成長率下がる。
(F) 2006-10年経済成長率(年平均):日本0.2%、EU0.7%、米1.0%
第7章-2 日本の歴史的・自然的資産
(G) 日本には森、水があり、魚がいる:稲作漁撈文明。(欧米は畑作牧畜文明。)
(H) 日本は、長く平和が保たれていた。
(I) 人口3000万人以上の国では、日本の平均寿命は男女とも世界一。平均寿命の長さと豊かさは比例関係。日本は、「成長シンドローム」(成長第一主義)から抜け出すことが必要
(K) 日本と英国は、「海」の国で似ている。梅棹忠夫の「第1地域」海洋国家(日本、西欧、米)。Cf. 「第2地域」(中・印・露・イスラム諸国)
(K)-2 海洋イスラムから自立した英国と、海洋中国から自立した「脱亜」の日本。
第8章 世界の中の日本経済
第8章-1 東アジア製造ネットワーク
(A) 多国籍企業によって、東アジアの経済統合(地域内分業)が進展。1980、90年代の20年間に変化。①自動車部品、②エレクトロニクス製品など。
(A)-2 グローバルなプロダクションシェアリング、グローバルな製造ネットワークの形成。
(A)-3 東アジア製造ネットワークは、日本が部品を提供し、中国・香港がアセンブルする。(2001年)
(B) 今後の「ASEAN+3」の発展が重要。日中の協調&イニシアチブが欠かせない。
(C) アジア通貨高は2012年で底を打った。つまりアメリカ経済順調、中国経済減速。
(D) アジアは巨大すぎて、宗教も様々(仏教、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教など)で、EU的統合はない。
(E) 東アジアの経済統合はありうる。金融・為替の統合以上の統合。
第8章-2 「ドル・ユーロ・人民元」の時代へ
(F) 世界の3大通貨は、「ドル・ユーロ・円」から、「ドル・ユーロ・人民元」へ。
(F)-2 中国は「SDR準備通貨構想」を主張。「バンコール」に相当。ドルよりも中立な国際通貨。
(G) 2030年、日本のGDPは、中国(世界1)の4分の1程度へ。
おわりに:発想を転換し「成熟」戦略を考えるべき。環境・安全・健康分野の重視。
(A) 「アベノミクス」:①大胆な金融緩和、②大規模な公共投資による国土強靱化、③製造業の復活による成長の促進。
(A)-2 2011、2012年、「マイナス成長対策、インフラ劣化対策」として、「アベノミクス」は、必要。
(A)-3 しかし「2%のインフレターゲット」は疑問。日本の1995年以来のデフレは、景気後退によるものでなく、グローバリゼーション(とりわけ東アジアの経済統合)を背景にした構造的なものである。「悪いデフレ」ではない。むしろ物価安定である。
(A)-4 2002-07年は、景気回復し、平均2%弱の実質GDP成長を達成したが、この時も物価は下がり続けた。
(B) 「アベノミクス」が、従来型の「成長」政策なら、「資産バブル」を生み、中・長期的にマイナス。
(C) 発想を転換し、「成熟」戦略を考えるべき。環境・安全・健康など日本経済が大きな強みを持つ分野の良さを認識し、維持・展開させるべき。