北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【04】イージス艦ちょうかい-横浜みなとみらいビル群とともに(2012-10-08)

2022-12-25 20:12:04 | 海上自衛隊 催事
■イージス艦ちょうかい
 ちょうかい。こんごう型ミサイル護衛艦4番艦であり1993年から短期間で4隻か建造された我が国イージス艦の鏑矢です。

 ちょうかい。Weblog北大路機関をOCN時代からご覧の方はお気づきと思いますが、長らく北大路機関のロゴタイトルにはイージス艦ちょうかい、その雄姿を掲載していました。ちょうかい、この堂々航行の様子を見ますと、ある意味で思い入れ或る護衛艦なのです。

 十年一昔、こういう単語があるのですが年末にさしかかるクリスマスの季節にこうして自衛隊観艦式、十年前の観艦式の写真を紹介しつつ、今年すなわち海上自衛隊70周年の我が国安保環境を思い起こしますと、その変容ぶりに驚くという次第です。特に今年の。

 二十年に及ぶミサイル防衛の、予算増なき巨大防衛事業の推進により自衛隊の防衛力は破綻してしまった、こう説明するところですが、思い起こせばこの観艦式を撮影しました2012年の段階はミサイル防衛に着手しほぼ十年という時期なのですが、防衛力は健在でした。

 10年でここまで、というのは非常に残念なのですが、例えば海上自衛隊も、あぶくま型護衛艦、あさぎり型護衛艦が延命に延命を重ねていますし、もう竣工29年となるイージス艦こんごう型の後継計画はまだ未着手、P-3C哨戒機にSH-60J哨戒ヘリコプターについても。

 海上自衛隊はもう少し状況はよいのかもしれませんが、原型機が1959年に初飛行を迎えたF-4EJ戦闘機がようやく全機用途廃止されたのがつい昨年のことですし74式戦車もまだまだ残っているばかりか、後継戦車ではなく戦車部隊ごと廃止さえ追いついていないという。

 ヘリコプターはずいぶん減りました、観測ヘリコプターはOH-1観測ヘリコプターが製造終了してから15年ですが、その増強が行われないままOH-6D観測ヘリコプターは全廃し、なんと無人機で補うということですがそのすばらしい無人機はほとんど実績がありません。

 ミサイル防衛に今度は島嶼部防衛、しかもそのための新部隊が編成されましたが、定員は同じまま、その十年すこし前には中央即応集団が創設されていますが、これも定員を同じままとしましたので、5000名を切る師団、という惨状がでています。平時の定員とはいえ。

 大学でいえば単科大学ではなく総合大学なのに学生数が二百人、というような状況になっていますし、予算が同じで箱物を調達するものですから既存の装備を運用する予備部品や整備治具、いや消耗品さえ不足する有様で使える装備と稼働率が明確に影響を受けている。

 ミサイル防衛、必要性はわかるのです。北朝鮮の各開発とミサイル開発は、たとえ日本が北朝鮮と決定的な対立をしなくとも、横田基地や横須賀基地、横浜ノースドックに500kt水爆が撃ち込まれれば、横浜の場合で横浜駅はもちろん品川付近までなにものこりません。

 しかし、小泉内閣時代、ミサイル防衛に必要な予算を、防衛予算の増額という形で増額していたならば防衛力は破綻せずに済んだように思うのです。いや実際、2012年と2022年でヘリコプターや戦車に装甲車両と航空機、なかでも稼働機を比較しますとかなり減った。

 防衛費1%、2012年の時代には田中内閣時代から長らく継続されていました防衛費の一種の上限は、中曽根内閣時代に一時若干超過したものの、基本的に踏襲されてきました、いや日本の高度経済成長時代と安定成長時代には防衛費を増やすことができていたのですが。

 破綻してしまうと立て直すのが難しくなるものです、例えば原発事故、格納容器が破損しそうな状況で立て直すと、危険を無視していたという批判やもう廃止しろという圧力に周辺の地価に影響するとか批判はあるでしょうが再構築することはできるでしょう、しかし。

 一線を越えるといいますが、原子炉を例に思い浮かべますとこわれてしまったならば、もう格納容器から漏れ出す一方であり、その前の状態に戻すことは基本的にできなくなってしまいます。これは一例なのですが、防衛力、無理を重ねて20年、限界を超えてしまった。

 2011年東日本大震災、こうした大規模な震災は幸いもう日本をおそうことはありません、こう開き直れるならば防衛力は特にヘリコプターなどの削減は看過できるところです。しかし現実をみますと真逆であり、南海トラフ地震、千島海溝地震などが懸念されている。

 GDP2%、思い切った政治の決定という印象なのですが、しかし、その分だけ宇宙防衛や認知領域戦争という任務が加わりましたので、果たして大丈夫なのか、宇宙は通信と偵察を司る新しい戦場ですが、宇宙に及ぶほど日本は核保有国ではありませんし切迫性は少ない。

 コンピュータウィルス対策として消毒用アルコールや高性能空気清浄機を買い込むような方向性の間違いはないのか、こんな懸念を感じてしまうのですね。まず、防衛力はミサイル防衛に必要な予算を割きすぎたことで崩壊している、認識を共有することは重要です、ただし。

 防衛力を強化するのではなく再構築するという視点をまず第一に示した上で、足りない装備と足りない維持部品などを列挙し、"防衛再構築基金"のような特別会計予算を構築した上で、一つ一つ、いきなり防衛産業に増産を求めることはできない故、数年間でそろえる。

 戦車などは2010年代前半に毎年8両しか予算が認められず、これでは戦車定数の400両をそろえることは難しいために防衛大綱を300両に削減すると、今度は毎年6両しか認められないようになる、定数を減らして現実の調達にあわせようとすれば調達数も削られる。

 GDP2%の点について、防衛費は足りないという懐疑的ではあるにもかかわらず、その増額にどうしても賛同できない背景には、予算を増やしても必要な装備がそろう気配がない、こと。そして予算を増やす政治決定があっても年度ごとに財務省に認められない歴史が。

 財務省が姑息なところは、防衛予算のための増税と責任を防衛省に転嫁する一方で、増税した予算を防衛予算として認める確証はなく、また政府が内閣人事局を設置しながら、民主主義により選ばれ場政治の政策を蔑ろにした官僚を更迭せず義務を怠るという実状です。

 自衛隊がミサイル防衛という巨大事業を組み直しで挑み20年で防衛力が崩壊に近い状態まで追い込まれてしまいましたが、しかし10年間は何とかなりました。これを政府の予算全体で、他の省庁に無理を強いる事は簡単ではないのでしょうが、数年やっては、とおもう。

 10年間なんとかなりましたのはこの2012年の状況を見ればわかるとおりであり、先ず増税ではなく既存予算の組み直しにより、5年間GDP2%の予算を組み、新任務の付与はせず、その上で防衛力を崩壊する前の段階まで、とりあえず再建する事の方が重要でないか。

 ミサイル防衛という新任務、この追加を既存の枠組みにより実施した事で、削り過ぎた各々の部分が維持できなくなり崩壊したのですから、防衛費は数千億円規模で不足するものの、数兆円を必要とはしていません。ただ、一旦崩壊した為に組みなおすには努力が必要です。

 防衛力を再建するには、数年間のGDP2%の支出は必要だと思う、しかし永遠に必要とするほど、自衛隊の想定する任務は広いものではない、GDP1.4%でも充分といえる。他方で再建までの期間であれば増税せずとも、既存枠組で、防衛省はこれまでやってきました故に思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】阪急6300系,京都本線-京とれいん定期運行終了後も嵐山線で続く阪急6300系の旅路

2022-12-25 18:21:25 | コラム
■乗っていて暖かい電車
 6300系はやはり良い電車です。

 阪急6300系、京とれいん編成が遂に定期運航から脱してしまいまして6300系の延命が叶ったという当時は日所に嬉しく感じた一方、京とれいん運行は土曜日日曜日に限定された一方、流石に京都本線特急時代の限界を超えていたのだろうなあ、と察してしまいます。

 嵐山線の主力車両に運行を変更しています6300系、なにかこうテーマパークの路線的な、いやこの当たりで暮らす方にはれっきとした通勤通学路線なのですけれども、6300系の運行が続いていますのは嬉しい所で、名車2300系を受け継ぐ6300系の運行は続きます。

 ホームドア設置とも関係はあるのだろうか、こういう事も考えてしまうのですね。身障者団体などからのホームドア設置を求める声は大きいといいまして、バリアフリーを否定するわけではないのですが、乗り心地の良い車両を排除してまでの第一主義なのか、とも。

 ダブルデッカー車や展望車が全国の鉄道で廃止されている背景に、利用者の乗り心地という要望よりも、バリアフリーを求める一部の要望と、普通の車両に詰め込む事での輸送効率を求める事業者の一部の要望とが合致している、こうした背景を聞く事もありまして。

 6300系は片側2扉車、これは停車駅が少ない特急時代の名残なのですけれども、扉が限られている分、車内が広々と感じられたものでした、特に乗り降りとつり革よりも、着席しての快適な通勤を志向した、余裕ある時代の設計というのは、今の時代でも評価したい。

 9300系特急電車も悪い車両ではないのです、しかし、一両に着席して百名をゆったり輸送するよりも、一人でも立たせて吊革をつかませた方が、少ない車両で多数を運べるし、あああとエコでしょう、というような流れについて、温暖化の時代に冷たいなあと感じるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ供与のJDAMは翼を授かるか?ウクライナの侮れぬDIY装備開発能力と手製JSOW滑空兵器の可能性

2022-12-25 07:00:44 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ情勢
 アメリカを電撃訪問したウクライナのゼレンスキー大統領はバイデン大統領と首脳会談に臨みJDAMの供与決定を受けました。JDAM,自衛隊にも装備されている装備です。

 ウクライナへ供与されるJDAM精密誘導弾薬について、ウクライナ軍は活用した場合はどこまで威力を発揮するのだろうか。JDAMは500ポンド爆弾などに装着する事で、通常の自由落下爆弾を精密誘導爆弾に変身させる改修キットです。精密誘導できるものですが、滑空爆弾ではない為に射程は限られ、ロシア本土に脅威を及ぼさない、大義名分がある。

 JDAMの誘導はGPS誘導方式であり、JDAMに任意のGPS座標を入力し、戦闘機や攻撃機、一定以上の大きさの無人航空機にも搭載可能です。一定以上の無人航空機というのはMQ-9リーパー無人機などで、500ポンド爆弾を搭載した状態で離陸する事が出来ないバイラクタルTB-2については搭載できません。ウクライナ軍にはMiG-29戦闘機などがある。

 JSOW滑空爆弾のように翼をもつ誘導装置ではない為に、高高度から投下することで多少飛距離は伸びるのでしょうけれども、遠距離を攻撃する事は出来ません。ただ、DIY兵器、ウクライナ軍はかなり装備品を創意工夫して運用しています、ウクライナ軍にはJDAM精密誘導爆弾はどのように活用されるのかを考えますと、意外と踏み込んだ用途があります。

 JDAMに滑空翼をウクライナが独自に追加する事は可能ではないか、ウクライナ国営軍事企業は海外からの防衛装備品供与に感謝すると共に、独自の装備開発も実施しています。これは防衛情報として北大路機関でも繰り返し紹介していますが、装備の近代化改修も、そして独自の新型装備も開発しています、なにしろあのハリコフ戦車工場を継承している。

 ウクライナが独自に有翼型爆弾を開発し、その誘導用にJDAM誘導キットを用いた場合、高高度から投下した場合はHIMARS高機動ロケットシステムから発射されるGMLRS精密誘導ロケット弾の射程70kmに迫る、若しくは運用次第で凌駕する様な改良が可能なのかもしれません。いや、アメリカで現地改修が為されないのはJSOWがあるためとも。

 MiG-29戦闘機を騙した、ウクライナ軍はアメリカからHARM対レーダーミサイル供与を受けた際、いやHARMは優秀な装備だが運用できる機体がウクライナ空軍には無く、搭載改修を受けようにも流石にウクライナ国外にMiGを持ち出すわけにもいかないし、メーカーから現地へ技術者を派遣する事も出来ない、ともも割れていましたが、戦果を挙げた。

 HARM対レーダーミサイルがウクライナへ供与された際、ウクライナ空軍はMiG-29戦闘機のプログラムを独自改修し、HARMをR-77空対空ミサイルだと認識させるようプログラムを書き換え、操縦士もR-77の操作手順でHARMを運用、ロシア軍の地対空ミサイル脅威をHARMにより封じています。独自改修、DIYはウクライナ軍が実績を上げました。

 DIY兵器、ウクライナ軍は日曜大工精神と云いますか無ければ自分で方式で創意工夫の装備運用を続けています、JDAMは射程が短い事は確かですが、単価が2万ドルと非常に安価であり、初めてウクライナに供与される装備故にアメリカ軍の対外供与備蓄も手つかずというほど充分あります。これは意外に強力な装備として活用できるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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