◆DDH8隻、DDG8隻体制
141万アクセス記念特別企画として、大胆な提案を行ってみたい。海上自衛隊には新しい八八艦隊が必要だ、というテーマだ。
141万、Weblog北大路機関がアクセス解析を開始したのが2006年10月だから、三年少々でこのアクセス数に到達したことは、日ごろWeblog北大路機関をご覧いただいている皆様のおかげでして、今後とも、零細時間の有効活用に最適な読みやすい内容を毎日更新してゆきたい所存、よろしくお付き合いのほどお願いいたします。
Weblog北大路機関は、幾度か書きましたように、2005年7月29日、神戸での大学関係の慰労会から京都に戻る帰路、阪急十三駅にて酔った勢いで立ち上げたのがその始まりなのですが、なるほど、多くの方々に読んで頂いているとのこと、そこまで深く考えての記事では必ずしもないことで、恐縮してしまう次第。
ここから本題。海上自衛隊は、今後拡大するであろうグローバルな国際平和維持活動、国際人道支援任務、海賊対処や国連平和維持活動への任務に対応させるべく、現在の護衛艦隊の編成を一歩進め、四個護衛隊群隷下の八個護衛隊の編成を、全て同一の編成とすることができないか、という提案。
各護衛隊は弾道ミサイル防衛及び対潜中枢任務双方に対応できるよう統合し、ヘリコプター搭載護衛艦1隻、弾道ミサイル防衛対応型イージス艦1隻、汎用護衛艦3隻からなる編成に改編するべきではないか、という内容で、この過程に、ヘリコプター護衛艦、イージス艦を基幹とした八八艦隊を構想する。
ひゅうが型のようなヘリコプター搭載護衛艦8隻、そして、弾道ミサイル防衛任務に対応する、こんごう型、将来的には、あたご型もこの任務に充てるという前提のもとでこちらもやはり8隻を整備する、21世紀の任務に対応する海上自衛隊の八八艦隊を編成するべきだ、という政策提案の構想だ。
これにより、旧地方隊隷下の小型護衛艦や、旧式護衛艦を運用する護衛隊は最終的に代替されず、護衛艦隊隷下の護衛艦は、そのまま純減となる。護衛艦の定数が削減されることは、一隻当たりにかかる負担が増加することを意味するが、財政難を念頭に置けば、やむを得ない部分もあろう。
護衛隊群隷下の護衛艦は、二個護衛隊10隻に増強されるため、直轄艦1隻と併せ、海上自衛隊護衛艦隊、つまり海上自衛隊の護衛艦定数は、最終的に最盛期の63隻から41隻へ大きく減退することとなるが、各護衛隊の5隻は、従来編成の護衛隊よりも能力が大きく向上し、任務の汎用性も大きく高まることとなる。
なによりも、作戦単位が、護衛隊編成の共通化により八個と判りやすい編成になる点、加えて、ヘリコプター搭載護衛艦を各護衛隊に配備することにより、ヘリコプターの拠点を広範に遊弋させることが可能となることから、護衛隊のカバーできる海域が以前よりもかなり広くなる。
特にヘリコプター搭載護衛艦の艦載機は、対潜哨戒以上にどんどん汎用性の面で高性能化していることから、単純な対潜哨戒だけではなく、国際貢献などの任務への洋上基地機能や災害対処までを含めてであるのだが、陸上自衛隊や航空自衛隊のヘリコプター搭載も含め、広域の任務に対応することが可能となる。
観艦式に威容を示した、ひゅうが。かつての主力艦の名を冠した一隻だ。八八艦隊と言えば、対艦巨砲主義の時代において、太平洋を挟み緊張関係にあった米海軍に対抗するべく、戦艦8隻、巡洋戦艦8隻からなる強力な主力艦部隊を整備するという当時としては、国家財政の面からも軍事力の面からも長大な計画であった。
八八艦隊の第一艦として長門型戦艦が計画されている。正確には、長門型は、大正五年の八四艦隊構想の先鞭を期した高速戦艦で、速度と攻撃力を特に重視した巡洋戦艦が第一次大戦のジュットランド海戦において大きな打撃を受けたことから防御力も重視した高速戦艦が、長門型である。
日本海軍は、1925年のワシントン海軍軍縮条約により、八八艦隊計画は断念、長門型戦艦の長門、陸奥の完成を待って、第二次大戦の大和就役まで戦艦の建造は一旦長い空白期に入ることとなり、続く戦艦は、未成艦として、建造中止、もしくは建造が計画のみ、概念図のみ、今日に伝えられている。
ワシントン海軍軍縮条約の後旧式戦艦も多くが除籍され、超ド級戦艦、扶桑型の扶桑、山城、そして同じく超ド級戦艦として建造された伊勢型の伊勢、日向を近代化するとともに、金剛型巡洋戦艦に防御力強化の近代化を施すことで戦艦へ近代化された、金剛、霧島、榛名、比叡が、日本の抑止力を担うこととなった。
さて、海上自衛隊にとっても、八八艦隊という名称は特別な響きがあったようで、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型の、はるな、ひえい。しらね型の、しらね、くらま、が揃い、第1護衛隊群第51護衛隊、第2護衛隊群第52護衛隊に配備され、集中運用するという手法がとられた。
その後、汎用護衛艦に、ヘリコプターを搭載する、はつゆき型、あさぎり型の建造が進んだことで、第51護衛隊、第52護衛隊に二隻づつのヘリコプター搭載護衛艦を集中配備していた編成から、各護衛隊群の直轄艦としてヘリコプター搭載護衛艦を配備させ、四個護衛隊群の編成を共通化するという構想に移行する。
直轄艦が運用する3機に加えて、五隻の汎用護衛艦に各1機のヘリコプターを搭載、護衛隊群の護衛にあたる二隻のミサイル護衛艦を合わせ、8隻の護衛艦と8機のヘリコプターを護衛隊群に配属させる海上自衛隊版八八艦隊を完成させた。しかし、これは、8隻8機体制という方がふさわしく、旧海軍の八八艦隊と比べれば、語呂合わせの域を出るものではない。
他方で、今回提案したヘリコプター搭載護衛艦8隻、イージス艦8隻体制であれば、一種、軽空母的もしくは戦力投射艦的な運用が可能なヘリコプター搭載護衛艦と、弾道ミサイル迎撃任務という重責に耐えたうえで満載排水量で10000㌧前後、かつての巡洋艦と称してもそん色のないミサイル護衛艦、これらを8隻づつ配備するという構想。
全通飛行甲板型の水上戦闘艦は、戦力投射艦として多く建造され、海上自衛隊も現時点で、ほぼ4隻の建造が決定しており、これだけでも世界的に観た場合のポテンシャルでは、かなり大きなものがある。しかし、あえて、護衛隊の能力全般を引き揚げるべく、全通飛行甲板を有する護衛艦を8隻建造するという提案は、さらに大きなポテンシャルを有することになる。
それでは、この実現性はどうなのか、考えてみたい。建造費では、19DDとして建造されている5000㌧型護衛艦の建造費用が概ね一隻720億円、たかなみ型、むらさめ型護衛艦の建造費が600億円から650億円程度であったのに対して、ヘリコプター搭載護衛艦の建造費用は、22DDHの場合で1200億円未満である。
汎用護衛艦定数を長期的に削減することを考えた場合と、航空機を近代化することにより装備システムとしての陳腐化を長期間さけることができた、航空母艦ではないのだが、ヘリコプター搭載護衛艦は、HSS-2,そしてHSS-2A,HSS-2B,更にSH-60Jと艦載機を近代化することで第一線に対応する能力を維持した。
はるな型の長い寿命を考えれば、汎用護衛艦の1.5倍程度の長期間に運用するという観点から、運用コストが大型艦であることから割高になる点を差し引いても、こちらの方が抑えられるともいえよう。乗員確保に関しては、ひゅうが型の乗員は、しらね型の乗員定数とほぼ同じであることから、こちらも実現性は相応にある、といえよう。
イージス艦8隻体制については、現在の、さわかぜ、はたかぜ型護衛艦2隻については、ミサイル護衛艦という性格上、広域防空のスタンダードミサイルを運用する必要があり、FCS-3ではなく、イージスシステムが搭載される可能性が高い。タレス社製のAPARなどが採用される可能性も皆無ではない。
しかし、既存のミサイル護衛艦と互換性を考えればイージスシステムの導入が最有力となろうから、結局、こんごう型4隻、あたご型2隻とともに、イージス艦の8隻体制、潜在的に9隻体制の整備は既定路線にあるともいえる。即ち、予算や人員の面からは、かなり現実性がある、といえるのではないか。
しかし、である、強いてあげると、どうしても難しいのは、母港、の問題だろうか。横須賀基地吉倉に新しく建設中のDDH用桟橋も、二隻を係留できるかと問われれば難しそうだし、船越も一杯だ。佐世保基地は平瀬だけでは如何ともし難く、米海軍の揚陸艦と並ぶしかないのかもしれない、舞鶴基地の北吸桟橋や、呉基地幸地区にも、二隻は難しいかもしれない、ヘリコプター護衛艦2隻のメザシ係留、ということになるのだろうか、この点を除けば、かなり現実性のある提案ともいえるかもしれないが、どうだろうか。
HARUNA
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