北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新570トン型掃海艇は地方隊沿岸警備能力を補完できるか

2008-06-30 20:24:20 | 先端軍事テクノロジー

■FRP製MSC-604

 6月6日、大湊地方隊の余市基地に展開する余市防備隊第1ミサイル艇隊より、ミサイル艇“一号”“二号”が老朽化により除籍され、自衛艦旗を返納した。

Img_9698  これで3隻が就役した“一号”型ミサイル艇は一隻となる為、舞鶴警備隊よりミサイル艇“わかたか”が、佐世保警備隊よりミサイル艇“くまたか”が大湊地方隊に編入された。こうして、大湊地方隊のミサイル艇は三隻体制を維持できるが、ミサイル艇“三号”が用途廃止された後の代替艇は計画されていないため、恐らく来年度にも二隻態勢に移行するものと思われる。他方で、舞鶴警備隊の第2ミサイル艇隊、佐世保警備隊の第3ミサイル艇隊はともに大湊地方隊にミサイル艇一隻を抽出したため、現在2隻体制となっており、いまのところ増強の為の新型ミサイル艇の建造は決定していない。

Img_1238  これまでにも幾度か掲載した通り、沿岸警備及び災害派遣にあたる地方隊には、小型護衛艦を運用する護衛隊が配置されていたが、海上自衛隊再編の一環として今年三月に地方隊隷下の全護衛隊が護衛艦隊に編入となり、地方隊の水上戦闘艦艇はミサイル艇のみとなっている。能登半島や新潟県など日本海沿岸を防衛警備区域として担当する舞鶴地方隊、南西諸島を防衛警備範囲に有する佐世保地方隊は、事実上2隻のミサイル艇により任務を遂行する必要に迫られている。地方隊隷下にあった航空隊も航空集団に編入された3月の改編により、上級部隊の目標情報と、共同交戦能力を前提としていない海上保安庁巡視船からの通報に依拠して任務を行うのはかなりの苦労があろう。

Img_1314  当初、各地方隊に2個ミサイル艇隊を配備し、10個ミサイル艇隊20~30隻のミサイル艇が配備される構想があったものの、やはりミサイル艇の価格は安くなく、“一号”型3隻、“はやぶさ”型6隻の整備に留まっている。かつては、40㍉機関砲とヘッジホッグ多連装対潜擲弾投射器、爆雷投射器を搭載した駆潜艇が地方隊に装備されていたが、これは区分ごと廃止されており、地方隊の任務は重要海域掃海と基地機能維持に落ち着いた印象である。なによりも、ミサイル艇が配備されていない横須賀地方隊や呉地方隊は事実上打撃力を喪失したかたちとなっている。

Img_0439  現在では、各地方隊にミサイル艇と並んで重要な地方隊の装備に掃海艇が挙げられる。速力は14ノットと比較的遅いものの20㍉多銃身機銃を搭載しており、更に海中の係留機雷を処分する為のソーナーを搭載している。この種のソーナーは、護衛艦が苦手とする沿海域のミゼットサブを捜索することができる。新型掃海艇の“ひらしま”型が搭載するZQS-4ソーナーは、これまでの“すがしま”型が運用していた2093型と比べた場合、特に機雷掃討艇に近い運用を想定して性能が強化されており、また、水上捜索用にOPS-39対水上レーダーを搭載している。

Img_6004  さて、昨年度、建造技術に関する入札が行われた新掃海艇であるが、海上自衛隊の掃海艇として初めてFRP製の船体が採用されることで注目を集めている。木製掃海艇は、磁気感知機雷に対する秘匿性に優れ、掃海中に自らが触雷する危険性を低減している他、耐衝撃特性が軽金属やFRPよりも優れており、万一の触雷の際に船体が損傷しにくいという利点、何よりも木製であるので、船体が損傷する最悪の事態となっても浮力を確保できるという掃海艇として捨てがたい利点を有しているものの、何分、同規模の海外掃海艇と比した場合、高価であり、また海水による腐食もFRPや軽合金に対して早いという欠点がある。こういった背景から、新570トン型掃海艇はFRP製の船体を採用することとなった。

Img_2752  新掃海艇は、MSC-604として四年後に就役する計画である。基本的に“ひらしま”型掃海艇の設計を流用しているが、全長が若干延長されている。また、これまでの20㍉多銃身機銃に変えて30㍉単装機銃を搭載しており、砲手が手動で操作した20㍉多銃身機銃と異なり、艇内からの遠隔操作方式を採用している。これにより、若干の警備能力を有するといえるかもしれない。艦齢も30年の運用が可能であることから掃海艇そのものの数的勢力を充実させることも可能となる。

Img_5839  将来的には、特に護衛艦が高性能化とともに高価格化を辿り、減勢してゆくことは止むを得ないため、多用途性能を強化してゆくことも必要となろう。他方で、地方隊の沿岸警備は、場合によっては海上保安庁や護衛艦隊では不可能な任務にあたる必要がある為、こういった配慮も今後は必要となろう。他方で、警備に加え災害派遣任務には、ヘリコプター運用機能を有する哨戒艦が従来のミサイル艇を代替するという潮流が形成されつつあり、イタリア海軍、ドイツ海軍などはヘリ運用能力を有するコルベットの建造に踏み切っている。また、単一の船体を用いて機雷掃討艇やミサイル艇、哨戒艇として適宜流用する技術をデンマーク海軍が開拓しており、島嶼部防衛や大規模災害派遣など、沿海域任務への需要が増大する地方隊にあっては、この部分の研究も行い、地方隊の能力を限られた予算内で最大限に拡充する努力が必要となるのではないか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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485系パノラマグリーン 東海道本線京都線の撮影名所『山崎』

2008-06-29 21:09:13 | コラム

■雷鳥パノラマグリーン

 尾張名古屋ではパノラマカーカウントダウンということで連日多くの鉄道愛好家がカメラの砲列を並べているという。パノラマカーでは無いが、今回は485系特急“雷鳥”のパノラマグリーン車の写真などを掲載。

Img_2766  大阪、京都から北陸金沢に向かう特急といえば、代名詞的存在は“雷鳥”であった、しかし、今日では“サンダーバード”が取って代わりつつある。他方で、国鉄塗装のまま活躍する“雷鳥”は車内を改装し、指定席車などはシート間隔を広げるなど改良を重ねている。また、なによりもグリーン車の一部が前面展望をある程度可能としたパノラマグリーン車としているのも、“雷鳥”の一つの特色といえる。485系というと、ヘッドマークを掲げた先頭車を連想するが、これも485系の現代の姿といえる。

Img_2812  “サンダーバード”号。この特急に用いられている681系。“雷鳥”の後継車両もこの681系の派生型となる構想があるが、実際はどのような車両になるのだろうか。ううむ、485系は、名鉄7000形や阪急6300系と並んで好きな電車なのだが、老朽化ということを考えるといつかは完全置き換えが必要なのだろうなあ、と。

Img_2750  一応、この日の目的は山崎駅から降りて徒歩少しのところにある、有名な“山崎のカーブ”を曲がりきってこちらに向かってくる電車の撮影にあった。山崎のカーブは、架線などの障害が少なく撮影環境が非常に良好であることから鉄道写真撮影の名所として知られている。この日も数名の撮影者がカメラを並べていた。当方も撮影をしていると、“スーパーはくと”号が京都に向けてラストスパートをかけていた。

Img_2756  183系『北近畿』。485系から交流機器を撤去した車両。『雷鳥』比べると編成がどうしても短くなるが、一見すると見間違えることも。ちなみに、十年ほど前には『タンゴディスカバリー』号と連結運転していたようで(もしかして、いまも臨時運行とかで実施することあるのかな?)、名鉄7000と5300の連結みたいな印象だったに違いない。

Img_2763  『雷鳥』。撮影順番どおりに掲載したのだが。485系が今日に至るも多くの派生型が日本全国で運行されている理由は、交流電力を直流に置き換える装置をモハ484に搭載しており、電化区間であればどれだけでも走ることが出来るというのがその量産の背景にあるといえる。これから数年後には『雷鳥』も新型に置き換えがはじまるというが、それまでに撮っておきたい電車だ。

Img_2790  『はるか』。京都から関西空港まで、大阪駅さえも通らず邁進する韋駄天特急として知られる。山崎駅のこれまでの写真をみてお分かりいただけるように、午後は逆光となってしまう。順光の午前中であれば、例えば早朝に到着した『なは・あかつき』号など、良好な撮影環境で撮ることができたのだが・・。

Img_2802  『なは・あかつき』号のことを考えていたら、ちょうど同じEF66電気機関車に牽引されて貨物列車がやってきた。夜行列車というカテゴリーがどんどん廃れてゆく中、電気機関車牽引の貨物列車を眺めて、ありし日々を思い浮かべる時代も来るのだろうか・・(案外燃料費高騰で長距離バスが廃れて、夜行列車時代が再来、とか無いかな?)、ううむ、急にもう一度『富士・はやぶさ』号に乗りたくなってきた。

Img_2807  321系。順光の京都方面から大阪に向かう電車を撮ってみた(北近畿号も京都方面からだったが)。2005年から運用が開始された最新型通勤電車。車体前面のカラーリングが後述する207系との相違点。車内は液晶パネルが数多く設置されており、首都圏の通勤電車のように退屈させない空間を目指している。

Img_2842  207系。先日、はかやん氏と名古屋で会った際、207系と321系の見分けがつかない、といわれたが、こうやって見比べてみると良くわかる。側面はともかく、この207系と321系は車体正面、個々で見分けられるわけだ。207系増産でも良かったのかもしれないが、まあ、321系の方がデザインとしては秀逸なようにも思う。

Img_2834  223系。新快速から長距離の普通列車まで便利に活躍している。

 以上が山崎駅にて撮影した車両群である。本当は『雷鳥』をもっと撮影したかったのだが、1640時京都着の『雷鳥』まで、かなり時間があったので断念した次第。山崎駅から徒歩でこのポイントまでやや歩かなければならないが、こうした写真の撮影が可能である。

HARUNA

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新幹線500系 のぞみ号 東京→横浜→名古屋→京都→大阪

2008-06-28 13:42:20 | コラム

■500系新幹線 米原駅通過

 500系の特集である。東海道新幹線、山陽新幹線を走破する『のぞみ』号。先日、新幹線の撮影地として名高い米原駅での写真があるため、今回はその掲載をしたい。

Img_2660  濃尾平野から関ヶ原地峡を抜け、近江に向かう新幹線は、米原駅のまえで緩いカーブを曲がりきる。米原駅はこうした立地から撮影名所として知られている。ただし、のぞみ号は猛スピードで米原駅を通過するため、撮影の機会は本当に一瞬である。一日あたり2往復に減便されたことで、東海道新幹線の500系のぞみ号を撮影するのはやや制約が多くなってしまった。

Img_2655  米原駅を通過するべくカーブに至る500系。いよいよ新幹線が近寄る中で時計をみると0934時から0935時へと移る頃。大きく曲がった米原駅のホームからは、500系のぞみ号が真正面からみえる。このあたりから連続でシャッターを切り続けたいのだが、ピントの関係もあるので3バーストで撮影を行う。

Img_2657  通過する500系は、通過時間が駅の時刻表に記されていない。通過のタイミングが分からないと写真の撮影に支障があるのでは、と思われるかもしれないが、多くの場合、通過の30秒前には駅員がホームの安全確認のために待機所から出てくるので、これが通過が近いことを示す合図というべきか。静粛性に優れた新幹線は、線路の向こうを望遠で睨んでいるばかりでは、反対側から来たりするんで、この駅員さん登場は貴重だ。

Img_2658  500系新幹線が東海道新幹線にて運用される期間は、そう長くないのだが、そういえば本日は、名鉄が新ダイヤに移行するまでの最終日。3本まで激減するパノラマカーを撮影する為に、神宮前駅ホームや犬山橋周辺、太田川駅なんかは多くのファンで大変なことになっているのでは、と思ったりする。

Img_2659  500系新幹線が米原駅ホームのカーブを曲がり終えて京都に向けて快走を続けてゆく瞬間。もとがWIN350として山陽新幹線における350km/hの営業運転を実現する為の技術研究の末に生まれた車両ということで、速度に特化した車体形状が特色。その結果、こうした鋭利な先頭車輌と流線型で構成された車体形状となり、多くのファンを獲得するに至った次第。

Img_2665  米原駅を通過し終えた500系。ほんとうに一瞬の通過。16両の長大な編成は、今後、山陽新幹線における短縮運用編成への改造により8両の短い編成となってしまう。こうした長大な500系の撮影を行う機会は少なく、可能なら富士山や関ヶ原、浜名湖といった長大な編成を撮影できる名所で写真を撮りたい、と思う今日この頃。

Img_2674  N700系が東京に向けて米原駅を通過するのは500系が通過した一分後の0936時。ということは彦根市の山頂から新幹線を超望遠レンズにて撮影すれば500系新幹線とN700系新幹線の行き違いを撮影することができるのではないか、と思ったりする。先頭車輌の形状を緩和し、客席定数を大きく確保した上で低騒音を両立する為に、このような動物状の形状が採用されている。車体傾斜装置を有しており、カーブも高速で通過が可能だ。

Img_2675  N700系が最も良好なデザインを際立たせる撮影角度は出来る限り真横から。しかし、なにぶん速度が凄いので、これを真横から撮るには相当早くカメラを振らなければならない。車内の容積を最大限に採るための箱状の車体形状が、一分前に通過した500系との違いを強調しているようにみえる。

Img_2682  700系が0944時に、のぞみ号として東京に向けて米原駅を通過する。毎回驚かされるのが、この阪急特急並の、のぞみ号の運行頻度だ。10分間隔、毎時6本という運行頻度は、大阪、京都、名古屋、横浜、東京の大動脈を結んでいる。しかし、700系も、こうやってみてみるとやはり動物的な形状だ。汎用性を重視した700系ではあるけれども、500系の方がデザインとしては秀逸だ。もちろん、経済性を重視したので性能は500系に劣っている。

Img_2684  700系新幹線が米原駅に差し掛かった瞬間。東海道新幹線で運用される新幹線は、300系、500系、700系、N700系。300km/hの営業運転が可能な車両もあるが、4000㍍半径のカーブしかない山陽新幹線とは異なり、2500㍍半径のカーブがある東海道新幹線では、270km/hの営業運転が限界である。

Img_2694  300系新幹線のぞみ号が米原駅を通過するのは0947時。300系新幹線というと、こだま号の運用というイメージがあるが、270km/h運転を実現した300系は、一部では、のぞみ号運用にも対応可能である。こだま号運用される300系と同じ車両なのか、と思うほど、高速で通過する300系の姿は印象的だ。新幹線特急電車というだけあり、やはり300系も世界に誇る高速車両ということだ。

Img_2693  300系新幹線まで、東海道新幹線が運用する全系列の新幹線があ、のぞみ号として米原駅を通過するまで、最初の500系から数えて12分。0935時から0947時までの12分間は、500系、N700系、700系、300系の通過が撮影出来る米原駅新幹線写真撮影に関して最良の時間帯といえるのではないか、と思ったりする。

HARUNA

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速報! Weblog北大路機関 アクセス開始より50万アクセスを突破

2008-06-27 21:58:02 | 北大路機関 広報

■500000アクセス

 本日0600時頃、Weblog北大路機関はアクセス解析開始から50万アクセスを突破しました。たくさんのアクセス、本当にありがとうございます。

Img_7324  2006年10月にデータ容量増強を記してOCNブログサービスを有料に転換した際、このアクセス解析サービスを利用することが出来ました。現時点時のアクセス数は500968(2145時)。合計数ではなく、日当たりで検索できるユニークユーザ数は日によって異なるのですが67%程度なので、純粋に50万というわけではありませんが、多くのアクセスがありますと、当方としても書き応えがあります。

Img_6999  50万アクセスということで、特別記事用の素材集めを本日も実施してまいりました。とりあえず、まだその写真がまとまっていませんので、特別企画記事は後日ということに。岐阜基地航空祭で撮影した飛行開発実験団創立50周年記念の“50”が描かれた写真を掲載して代用と致します。

Img_6995  毎日掲載を維持しようという2006年後半からの試みは、メンテナンス時も予備ブログを維持すると言う方式で頑張っております。毎日掲載というのは、楽ではありませんが今後とも、一つの日課として進めてゆきたいです。呉地方隊展示訓練の詳報なども準備しているところですが、Weblog北大路機関は零細時間の有効活用という枠内で、最大限の読み応えを実現できるWeblogを気長に目指しつつ、自衛隊現勢や安全保障問題、鉄道電車から京都の情景まで、今後も幅広く掲載してゆきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

北大路機関

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平成20年度 海上自衛隊呉地方隊展示訓練 応募について

2008-06-26 18:32:10 | 北大路機関 広報

■6月30日必着 広島湾展示訓練

 7月19日、20日に広島湾で行われる呉地方隊広島湾展示訓練の乗船希望者応募について情報が出ていたので掲載いたします。

Img_7422_1  展示訓練とは地方隊や護衛艦隊、自衛艦隊隷下の艦艇を用いて海上での訓練技量などを展示する行事で、昨年は大阪湾展示訓練として大阪湾で実施されました。今年は広島湾で行われるようです。19日、20日に行われる広島湾展示訓練、乗艦場所は呉、宇品、岩国、松山の予定で、この乗艦場所は予定であり、変更される可能性もあるとのことです。

Img_7599  申し込み方法は、往復はがきに、氏名・住所・年齢・電話番号を明記、一枚で最大二名まで応募可能とのことです。申し込み先は737-8554 海上自衛隊呉地方総監部広報係へ、となっています。海上自衛隊呉地方隊HP()に詳細が記載されていますので、そちらでご確認下さい。

Img_7664  海上自衛隊の展示訓練は、舞鶴展示訓練の様子を掲載しています、JMSDF Open Exercise of MAIDURU Regional District in SEA OF JAPAN 2007()のような展示訓練の他に、電灯艦飾()なども行われますので、応募多数の場合抽選となるのですが、外れてしまわれた場合でも、お近くにお住まいの方は、この情景だけでも一見の価値ありです。なお、荒天時や緊急時などは展示訓練は中止となることがあるとのことです。

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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アメリカ海兵隊のロッキードKC-130空中給油輸送機

2008-06-25 17:19:11 | 先端軍事テクノロジー

■ヘリコプター給油に重点

 24日付記事において航空自衛隊の空中給油輸送機の改造について記載したが、よくよく考えたら岩国日米友好祭において撮影したKC-130の写真を思い出したので本日掲載。

Img_0045  KC-130はアメリカ海兵隊に34機、空軍に15機配備されており、KC-135やKC-10では追随できないヘリコプターなどの低速機への空中給油を想定して開発された。アルゼンチン、イスラエル、ブラジル、モロッコ、サウジアラビア、スペイン等でも運用されており、貨物室に20㌧の燃料を搭載し、C-130輸送機からの改造が比較的容易という利点がある。

Img_0044  空中給油方式は機体から燃料ホースを伸ばし、航空機から燃料給油口に受油管を挿入するプロープ&ドローグ方式を採用している。航空自衛隊に導入されたKC-767空中給油輸送機が採用しているフライングブーム方式の方が、空中給油の時間当たりの給油量が勝っているが、プロープ&ドローグ方式の方が改造が容易という利点がある。

Img_0008  こちらは通常型のC-130輸送機、KC-130も機内の燃料タンクを短時間で降ろすことが可能で、そうした場合通常のC-130輸送機のように輸送機として運用することが可能だ。 

 KC-130に関しては2007年2月8日に詳細な記事を掲載しているのでそちらも併せてご覧いただければ幸い。

Img_0024  ちなみに米軍では捜索救難任務に際して、特に敵対勢力の存在する地域に航空機が墜落した場合、MC-130特殊戦輸送機から特殊部隊を空挺降下させ、パイロットを保護、ヘリコプターにより収容するという方式を採っている。日本も防衛出動の際に近接航空支援に参加した航空機が撃墜されることは充分考えられ、こういった特殊な状況では陸上自衛隊の特殊作戦群を投入することが難しい場合もある(航空救難団と合同訓練を行い、準備をした場合を除くが、特殊作戦群の規模からして難しいかも)。こういった救難方式もあるのだ、という一視点も必要やもしれない。

HARUNA

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航空救難団 捜索任務に必要なU-125救難捜索機への空中給油はどうするか

2008-06-24 18:24:34 | 先端軍事テクノロジー

■C-130Hへ空中給油機能・UH-60Jへの受油機能

 平成18年度防衛予算概算要求に記されていた“18年度、19年度に分けて行う予定のC-130Hへの空中給油機能・UH-60Jへの受油機能”という記載。この関係で一つ。

Img_1115  6月24日1330時に発生した千葉県沖漁船転覆事故、巻き網漁船第58寿和丸転覆事故は乗員20名のうち3名救助、4名死亡、13名が行方不明となっている中、僚船や海上保安庁、自衛隊により必死の救助活動が続けられている。海上保安庁の発表した映像には航空自衛隊のUH-60J救難ヘリコプターが映っていたが、現場海域が千葉県沖350kmという距離にあるため、通常のヘリコプターでは往復は出来たとしても現場で捜索救難を行う為に長時間飛行することは燃料の関係で難しいのではないか、そういう印象をうけた。この関係で気付いたのが本日の記事。

Img_8788  さて、全国で常時待機している航空自衛隊の航空救難団は、事故が発生した場合、速力に優れた救難捜索機U-125Aが迅速に現場海域周辺に進出し、複合センサーにより要救助者の位置を特定し、救命物資を落下傘により投下、後続する救難ヘリコプターUH-60Jを誘導し救難任務を遂行する。いわば、U-125AとUH-60Jは不可分、協同により任務を遂行するわけだ。

Img_8068  18年度防衛予算概算要求に盛り込まれたC-130Hへの空中給油機能・UH-60Jへの受油機能は、次期輸送機C-Xの配備により国際貢献任務へのポテンシャルに余裕が生じるC-130H輸送機を空中給油任務に就かせることができるよう改良し、救難ヘリコプターの航続距離を強化することに目的があると思われる。

Img_3048  1991年より部隊配備が開始されたUH-60JAは、V-107の代替として全ての救難隊への配備が行われ、V-107は浜松救難隊に残るのみとなっている。気象レーダーと赤外線暗視装置を搭載し、機内と機外の燃料タンクにより基地から半径250km以内の現場に進出し、60分の捜索、要救助者を救助のために10分間のホバリングする能力を有している。UH-60Jが3機、U-125Aが2機を以て救難隊を編成している。

Img_8310  C-130Hから空中給油を受けることでUH-60Jは滞空時間が延長するので、進出距離や現場での捜索時間が延長する。例えば冒頭に記載したような外洋での遭難事故においても現場で捜索する時間が長く採れるわけで、U-125Aでは発見できていない状況や要救助者が既に他の船舶に救助されていない状況のような現場に留まる必要がある状況では、運用の柔軟性が向上しよう。

Img_7243  ここで気になるのは、UH-60Jが空中給油を受けることにより航続距離が延伸する一方で、U-125Aはどうするのか、という疑問。もちろん、UH-60J救難ヘリコプターも救難ヘリというだけあって捜索救難を単機でも遂行することが出来るが、U-125Aとの協同が基本であるわけで、C-130Hに空中給油機能を付与するのであれば、U-125Aへも受油機能を付与させるべきではないか、ということだ。

Img_8343  こう書くと、UH-60Jを救難ヘリコプターとして運用している海上自衛隊は救難捜索機と協同していないわけで、U-125Aは先発進出に重点を置き、後続するUH-60Jが到着すれば任務遂行如何に関わらず撤収していいのでは?と考えられる方もいるかもしれないが、海上自衛隊の場合はP-3Cとの協同を行う(実際P-2Jが遭難捜索に展開した事例がある)、岩国と厚木のUS-1Aもあるわけで、U-125Aの重要性には変わりない。速力差はあるものの、米海兵隊のKC-130TはF/A-18Cに給油を行っており、過去にはKC-130によるA-4の事例もある。能力的には可能では、と考えるわけで、U-125Aへの受油能力付与は検討されて然るべきではないかと考える次第。

HARUNA

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オスロプロセスにより廃棄予定 03式155mm多目的弾の後継を模索する

2008-06-23 17:34:03 | 先端軍事テクノロジー

■子弾散布方式155mm砲弾

 クラスター爆弾禁止条約について、先日、国際規範と一国安全保障という観点から幾つかの記述を行った。何分、MLRSなどについて抜け道があるのでは、と期待したが、色々とご指摘いただき、なるほど国際公序は厳しいなあ、と実感した次第。

Img_6819  さて、最終合意文書に示されたクラスター爆弾全廃条約に記された定義に陸上自衛隊方面特科部隊のMLRSが運用するロケット弾が抵触し、陸上自衛隊は90両以上のMLRSの運用を継続するには新型ロケット弾への代替が必要となることは、前回の記載にある通り。しかし、実は陸上自衛隊には2003年に制式化されたばかりの子弾散布式の155ミリ砲弾が存在する。福田首相がクラスター爆弾禁止レジームに日本が賛同する旨を掲載した際にも記したが、03式多目的弾がそれにあたる。今回はクラスター爆弾禁止条約と銘打っているが、装備体系への影響では陸上自衛隊の方が航空自衛隊よりもはるかに深刻なのかもしれない、と思った次第。

Img_6525  陸上自衛隊では、防衛大綱改訂に伴う装備縮減の一方策として野戦特科部隊が運用する火砲数の削減を実施中であり、155㍉榴弾砲900門を新防衛大綱画定に伴い600門に削減する計画である。155㍉榴弾砲、203㍉榴弾砲の実定数は750門であったので、実に150門が縮減される計画となる。欧州通常戦力削減条約などにみる火砲の定義は口径100㍉以上の間接照準射撃が可能な火砲(この定義は、戦車砲や対戦車砲、対戦車用途に用いる無反動砲が含まれないことを意味してるようだ)、とされているので、この定義に従えば500門(この数字はうろ覚え)程度が配備されている120㍉迫撃砲(残ってないと思うけど107㍉迫撃砲があればこれも含む)も含めるべきなのだが、日本の場合は、野戦特科が運用する火砲に限った。

Img_0109  155㍉砲弾の加害半径、つまり制圧面積は従来のM-107を用いた場合で長径45㍍、短径30㍍の楕円形範囲に有効弾片を散布する。砲弾の破壊力は爆発により生じた爆風で鉄片を撒き散らすことにあり、小さな弾辺も銃弾並の速度で人体や車両に当たれば貫徹無力化し、爆風は建造物を跳ね飛ばす。さて、火砲が数的に縮減されるならば、この制圧面積を増加させれば良い、ということで開発されたのが03式多目的弾である。一発で二発分三発分同時に炸裂した範囲を制圧できれば、面制圧を行う上では若干数の削減を補って余りある高価がある訳だ。

Img_2784  155㍉砲弾の面制圧範囲を広域化できないか?、こうした観点から防衛庁技術研究本部は17億2000万円を投じて子弾散布方式の155㍉砲弾に関する技術開発を実施、1999年には2億円を以て最終試作を実施、2000年には実用試験を行った。この試験において良好な結果が得られたことから2001年に評価試験を行い2002年に制式化手続きを実施、2003年に03式多目的弾として制式化されるに至った。03式多目的弾はFH-70榴弾砲や99式自走榴弾砲により運用される。

Img_0117  03式多目的弾は、対人及び軽装甲目標への無力化を目指したもので、50乃至150の子弾が内臓されている。通常射程弾と長射程用RAP弾仕様のものがあるということで、もしかしたら通常射程用が150、RAP弾仕様のものが50の子弾を内蔵しているという区分かもしれない。制圧範囲は公表されていないが、同様に子弾散布方式の155㍉砲弾として米軍のM-482A1がある、子弾数も150とされていて、03式多目的弾と同等の性能を有すると考えて、M-482A1の数値を引用すると100×100㍍の制圧範囲、ということになる。子弾について、軽装甲目標に対応できるとのことだが、同じく軽装甲目標に威力を発揮するとされたMLRSのM26ロケット弾は湾岸戦争などで機甲部隊に対しては充分な効果が無いとの報告もあり、他方、自己鍛造弾の空中炸裂でもカタログデータ通りの効果は発揮できないというので一概には言えないが、100×100㍍の範囲を無力化できるという装備が早速廃棄しなければならないのは残念だ。

Img_0122  せめてもの楽観的な要素は、03式というように制式化からそう経っていない点と、演習場で使いにくい子弾散布式砲弾ということで、陸上自衛隊の弾薬備蓄体系の中での割合は、一定以上高くない、ということだろうか。開発に20億円を投じて、それがいわば“幻の砲弾”になるわけだから、かなり残念、というか、前途を憂慮してしまうが、世界の紛争地においてクラスター爆弾などの集束弾に対する対人使用、特に非戦闘員への損害を局限化する努力がオスロプロセスの関係者に認められる程度、日本の運用者間では行われなかった訳で、このような軍備管理体系の趨勢を見誤っての技術開発の指向性が招いた一事例というべきか。

Img_7808_1  20億近い税金を投じて開発した子弾散布方式の砲弾が、福田総理の外交的判断(英断?)で、クラスター爆弾ともども廃止されるなかで、代替装備は、ということになる。203㍉砲弾が長径75㍍×短径30㍍に有効散弾を散布するというので師団特科を203㍉重砲で統一しよう、とか、ロシア軍の某自走砲のように砲身を二本重ねて連射速度を上げよう、とか、艦載砲の装填システムを応用して自動装填の速度を速めて一門あたりの制圧面積を上げよう、とか、FH-70の後継はせめて発射速度と射程、生存性に優れた99式自走榴弾砲で統一して牽引砲は一部の空中機動部隊や軽部隊だけにしよう、などいろいろ雑多な案が浮かんではくる。

Img_6381  こうした中で技術研究本部が研究試作を進めているのが知能化弾システムの開発である。この知能化弾システムは、砲弾そのものに赤外線センサーやミリ波レーダーを搭載し、目標に正確に命中するスマート砲弾で、2006年度までに研究試作が行われている。また高精度化弾薬システムとして2005年度までの間に評価試験を実施しており、必要な目標情報を得てから射撃までのタイムラグを減少させ、周辺に不随被害を及ぼさずに目標を制圧する野戦特科装備体系を模索中である。面制圧から点制圧へ、という、一見難しそうな、しかし非戦闘員への付随的被害を局限化するような装備体系の構築が、陸上自衛隊には求められているのではないだろうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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原子力潜水艦・ディーゼル動力潜水艦・AIP潜水艦

2008-06-22 14:23:41 | 先端軍事テクノロジー

■原子力潜水艦の価格

 先日、原潜ってどのくらい高いの?という素朴な疑問を受けた。単純な質問ほど難しいというのは事実で、価格だけを応えるのではあまりに安直、さりとて比較も難しく、中々答えに窮してしまった。

Img_1267  原子力潜水艦の利点は、原子炉から供給される無制限の動力によりかなりの速力で機動できる点にある。通常動力潜水艦の場合、浮上してシュノーケルを水上に出し、ディーゼル機関を作動させ、バッテリーに充電しなければならない。荒天時に波がシュノーケルに被ると艦内の空気圧が急変し、乗員は苦痛に悩まされる。苦労して充電してもドイツの209型で100%充電状態で20ノット最大速力を発揮した場合1.5時間、30マイル移動しただけでバッテリーが上ってしまう。4.5ノットに速力を抑えた場合89時間の航行が可能であるが、これでは20ノット以上で航行する水上艦を攻撃するには待ち伏せ以外の方法が無い。

Img_1034  シュノーケルを水上に出して高速航行するという方法もあるが、シュノーケルというのは案外、レーダーに映りやすいものだ。原子力潜水艦の場合、こういった制約は無いが、原子炉を常時稼動させていることで、動力伝達系のギアが常時動き続けている為、水中騒音では原子力潜水艦の方が大きい、加えて水中を高速航行する場合、自艦からのノイズで艦首のソーナーの探知が限定され、更に水中騒音も大きい。

Img_9283  一長一短であるが、大洋で行動する場合は原子力潜水艦に利点が大きい。原潜も減速すればソーナーは当然使えるわけで、広い大海原で相手を探知するには行動力が必要となるからだ。そこで、今回の潜水艦建造価格という問題に移る。原子力潜水艦と通常動力潜水艦の価格差をある程度公正に比較するには同じ海軍で同時期に建造されている潜水艦の価格比較が必要となる。

Img_7484   1960年代に就役したスキップジャック級原子力潜水艦は水中排水量3513㌧で建造費が概ね4000万ドルであったが、同時期に建造された水中排水量2894㌧のバーベル級潜水艦(通常動力)の建造費は1900万ドルである。この価格差をみると排水量に対しての建造費を含めても原子力潜水艦は高価であるという説明には合点がいく。ディーゼル機関に対して原子力機関の価格は高いのだ。

Img_1016  しかしながら、90年代までの対潜任務(ASW)に関する技術が発展し、潜水艦そのものが数的勢力よりも、質的能力を高めなければ、早い話が戦場は弱肉強食、高性能潜水艦以外は対潜哨戒機や水上艦により無力化されてしまうことが明らかとなった(多かれ少なかれ昔からそうではあったが)。

Img_7510  その端的な事例がフォークランド紛争で、アルゼンチン海軍が運用する3隻の潜水艦のうち第二次大戦中の潜水艦を近代化した1隻は対潜ヘリにより撃沈されたが、比較的新しいドイツ製209型潜水艦2隻は探知されることなく、イギリス海軍の作戦行動において三分の一を対潜哨戒に強いることとなった旨が英軍から発表されている。結果、潜水艦は戦闘システムとしての先鋭化を強いられ、価格は上昇、結果、潜水艦全体の建造費に占める機関部の割合は相対的に低下し、原子力潜水艦と通常動力潜水艦の建造費は接近する傾向にある。

Img_0950  1980年代の段階で、アメリカ海軍は、原子力潜水艦が苦手とする浅海域での運用と、ソ連海軍がタンゴ級潜水艦に続き静粛性を向上させたキロ級潜水艦に対抗する観点から、通常動力のバーベル級潜水艦元に通常動力潜水艦を建造した場合の試算を行った際、1億9000万ドルという結論が出された。同時期のロサンゼルス級原子力潜水艦の建造費が2億2000万ドルであったので、確かに建造費では安価であるが、ということとなった。運用経費では原子力潜水艦が炉心交換などの定期整備が4~5年に一度16ヶ月間必要で、この費用が4500万ドル、対して通常動力潜水艦は3年に一度、9~10ヶ月の整備で費用は1600万ドルである。

Img_9047_1  原子力潜水艦、特に対潜任務や対水上攻撃にあたる攻撃型潜水艦は近年、イギリスのアスチュート級やアメリカのシーウルフ級、ヴァージニア級潜水艦は更に高性能化を目指し、多用途化と併せ水中排水量は7000~9000㌧に達しているため、原子力潜水艦が通常動力潜水艦とあまり価格差が変らない、という定義は過去のものとなっているが、通常動力潜水艦も、ディーゼル機関からAIP(非大気依存)方式の潜水艦に移行することで、価格は大幅に上昇しており、ドイツ製の209型潜水艦が水中排水量1200トンで2億ドル程度であったのに対して、AIP潜水艦である212A型は水中排水量1830トンで建造費は4億600万ドルに達している。

Img_7516  潜水艦の抑止力は非常に大きい。特に国境が海、という島嶼部国家や海洋国家にあっては、侵略は爆撃と着上陸。政治的な要求を呑ませるべく強制力を行使してくる対象に対して、潜水艦がその対象近海で活動している可能性というものは、相手に未知数の威圧をかける。前述のフォークランド紛争では、アルゼンチン海軍がフォークランド島を武力制圧した際、イギリス海軍の原潜コンカラーが、アルゼンチン海軍の巡洋艦ヘラルベルグラーノを撃沈した後、アルゼンチン海軍水上艦部隊は艦艇温存のために外洋での活動を停止、母港に帰港した事例がある。

Img_5947 潜水艦は原子力潜水艦がどの程度高価なのか、という話から随分違うところに来てしまったが、用途は異なるので一概には言えない。国際関係に際して利害対立は少なからずあるわけで、潜在的に武力攻撃を介してその問題を打破しようとする国は日本周辺には存在する(欧州ほど信頼醸成は進んでいない)。こうした中で、多少高くとも抑止力を維持することは大変なのだなあ、抑止力は均衡が容易ではなく、信頼醸成と抑止力、戦力均衡のバランスを以下に構築するかで係数は変ってくる、と手堅くまとめてみたりしたい。

HARUNA

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KC-45選定に会計監査院が勧告 米空軍次期空中給油輸送機選定は二転三転

2008-06-21 17:55:43 | 先端軍事テクノロジー

■米会計監査院が勧告

 最初に事務的お知らせ。昨日の時点でWeblog北大路機関は、アクセス解析開始から49万アクセスを突破しました。たくさんのアクセスありがとうございます。本題、アメリカ空軍次期空中給油輸送機の選定で、ボーイングKC-767案とエアバスA330MRTTとの競合を行った結果、今年2月にエアバス案に決定、KC-45として導入することとなった。

Img_0026  800機以上が生産されたKC-135空中給油機の後継ということで、少なくとも100機以上の需要が見込まれる次期空中給油輸送機選定ということで、エアバス案が採用されたことに当然ボーイングは反発し、アメリカ会計監査院に対して異議申し立てを行った。この異議申し立てが今月にはいり認められ、会計監査院は報告書において受注競争が公正に行われていなかったことを指摘、空軍も報道官の談話として報告書を重く受け止めると発表。こうして選定は白紙撤回され、再度行われる流れとなっている。

Img_1652  ボーイング案のKC-767は、航空自衛隊が空中給油輸送機として採用しており、日本の導入に先立ってイタリア空軍が導入している。原型となるボーイング767の製造には日本の川崎重工が参加しており、国際共同開発機という表現が正しい。他方、エアバス案は生産をノースロップグラマンと協同で行うこととしており、機体名称こそエアバスというアメリカ以外の名称を冠しているが、生産区分の内訳割合ではKC-767よりもKC-45の方がアメリカの分担が大きいとされている。

Img_8925  KC-767は当初、ボーイングからのリースを受けるとして内定していたものの、リース契約終了時に全機を購入するという契約に対して、リース料が割高という下院軍事委員会からの指摘があり、白紙撤回し再選定を行った結果、KC-45に落ち着いたという経緯がある。KC-45は、KC-767よりも機体が大きく、給油能力にも優れているものの、運用当事者となる空軍からは空中給油機の開発に実績のあるボーイングと比較した場合エアバスに難色を示すものもあったようだ。

Img_9999  地域研究としてアメリカを対象としてみると、労働組合について、我々が想像する以上のポテンシャルを有していることに気付かされる。他方で自由貿易を求め自由競争を掲げていることとやや矛盾を感じなくもないが共和党、民主党の微妙な均衡状態がこういった一種文化を形成している。したがって必ずしも合理的な選択が為されるとは限らないのであるが、今回もその一例というべきなのだろうか。

Img_0059  ところで、今回のKC-45白紙撤回という流れに関して、驚かれなかった方も多少いるのではないだろうか。思い出されるのは空軍の次期救難ヘリコプターとしてCH-101派生型が最有力視されながらもCH-47派生型に決定し、同じような異議申し立てが行われていたからだ。もしかして逆転か再選定、ということもありえるのではないか、と。

Img_4910  米空軍の再選定によりKC767の可能性が再び出てきたということについて、日本はもう一つの視点から注目する必要がある。航空自衛隊がKC-767空中給油輸送機を選定した背景には、川崎重工の生産への参加という要素以上に、浜松基地で運用されているE-767空中早期警戒管制機との相互互換性が重視された。

Img_9291_1  KC-767は当面4機を導入する予定であるが、将来的に可能であれば数機を増強したいという意向もあるようだ。だが、米空軍が採用しなければ母機となるボーイング767の生産が終了してしまうため、中古機の改造を除けば、調達の可能性が潰えてしまうという点があるわけだ。過去に増勢の予定がありながら製造が終了してしまった事例では海上保安庁のサーブ350などの事例が挙げられるが、日本以外の航空機ど導入するうえでの注意点を一つ示されたような印象だ。

Img_7811  KC-135の後継がKC-767となれば日本にも利点がある点は以上。他方で、KC-135と同じくボーイング707を母体としているE-3早期警戒管制機の後継なども、開発されていたE-10計画が頓挫しているため、母体機がどの航空機になるかについても影響を及ぼそう。日本ではE-2C早期警戒機の後継をそろそろ選定について考えなければならない時期が来ており、国産にしても輸入にしても、そうとう先の装備体系までを含め、検討しなければならないだろう。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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