北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

マドリードNATO首脳会談,スウェーデン・フィンランド加盟前進とアメリカのリフォージャー政策

2022-06-30 20:11:24 | 国際・政治
■マドリードNATO首脳会談
 NATO北欧拡大についてトルコが土壇場で賛同に回るとは思わず久々に驚かされました。

 トルコがスウェーデンとフィンランドのNATO加盟へ賛同する姿勢を示しました、これは北欧両国の加盟申請の際にNATO加盟国で唯一反対していた姿勢を一転させたもので、非常に驚かされました。具体的に両国のNATO加盟の時期が示された訳ではありません、またNATO加盟には様々な制度や装備の改編が必要で時間は掛かりますが、可能となった。

 会談はフィンランドのニーニスト大統領、スウェーデンのアンデション首相、トルコのエルドアン大統領が出席、北欧両国が、トルコ国内において武装闘争を展開しているPKKクルド労働者党について、トルコやEUとアメリカがテロ組織に指定しているが北欧二カ国は指定していない為、NATO加盟に反対する姿勢を示していました、それが一転します。

 トルコ政府によれば、トルコ政府が求めるテロ対策政策をスウェーデンとフィンランドが容認、容疑者引き渡しについては双方可罰の問題から即座には行えないとしていますが、トルコ政府の要求が大きく通ったかたちです。NATO加盟は加盟国の全会一致が必要であり、唯一反対したトルコとの両国の合意はNATO北欧拡大を決定的に進めたといえます。

 スウェーデンとフィンランドの両国がNATO加盟を事実上現実的に可能となった点について、大きな意味があります。これまではバルト海と大西洋を結ぶエーレスランド海峡やスカゲラク海峡などはスウェーデンが中立政策を維持する限り、NATOの域外となる海域が存在していましたが、両国のNATO加盟によりNATOの勢力圏航行が必須となります。

 スウェーデンはバルト海中央部にゴトランド島が立地し、現在はスウェーデンは武装中立政策を維持していますが、ここもNATOの勢力圏となり、またフィンランドにはロシアとの間で1000km以上の陸上国境が接し、フィンランドはNATO軍を当面配置しないとしていますが、フィンランド軍がNATO指定部隊となればロシアにとり圧力となるでしょう。

 トルコとの合意、しかし試金石となるのはトルコが両国へ“テロ容疑者33名引き渡し要求”を行ったことです。これはトルコのベギルボズダー法相が両国政府へテロ容疑者引き渡しを要求したとトルコの民放NTVの番組で述べた事にあります。今回要求したのはPKKクルド労働者党と2016年トルコクーデター未遂事件の容疑者に関する引き渡しです。

 PKKクルド労働者党はEU欧州連合とアメリカ政府もテロ組織に指定していますが、今回、スウェーデンから21名とフィンランドから12名の引き渡しを求めることとなります。これはNATO加盟に関してトルコとの間での“武器輸出やエロ対策などトルコの懸念に対する覚書”として北欧二カ国と共に開かれた会談に際して署名された覚書が根拠となります。

 マドリードでのNATO首脳会談に先んじて、トルコとスウェーデン及びフィンランドの政府間会談が行われ、トルコが求めたテロ対策政策に北欧両国が譲歩したかたちですが、もっとも特筆すべき点は、当初のトルコが示したテロ対策は、トルコとロシアの露土戦争後のセーヴル条約等の関係から別の思惑が在ったと考えられたのが実は杞憂だった点です。

 トルコとロシアの関係は冷戦時代には陸上国境を接し、現在は黒海を挟んだ隣国です。この為に北欧二カ国の加盟申請に否定的な姿勢を示したのは、テロ対策は口実で目的は過度にロシアを刺激しない施策を行ったのだという穿った見方も成り立ったのですが、実際にはテロ対策だけが目的であり、NATOのロシア強硬という点での一致は果たされた構図だ。

 在欧米軍は大幅に増強されており、欧州における米軍部隊はロシア侵攻後の2022年3月には、ドイツに3万8500名、イタリアに1万1500名、イギリスに1万1000名、ポーランドに1万0500名、ノルウェーに3000名、ルーマニアに2300名、スペインに2000名、トルコに2000名、ラトビアに1600名、スロバキアに1500名、ベルギーに1000名が。

 バイデン大統領は在欧米軍について更に増強する姿勢を示しており、スペインに派遣しているイージス艦を4隻から6隻へ増強し、イギリスへの戦闘機前方展開を現在のF-15E戦闘爆撃機に加え第五世代戦闘機であるF-35戦闘機の前方展開を決定、また、ポーランドへ在欧米軍の常設司令部を配置するなどNATOの要請に応える施策を相次ぎ発表しています。

 欧州への米軍増強は、冷戦時代以降一貫して削減されていた在欧米軍の再構築、冷戦時代でいう“リフォージャー”“リターンフォージャーマニイ”といえる規模のものですが、同時にNATOはアメリカの防衛負担とともに欧州加盟国への防衛負担の増額も求めており、冷戦後とテロとの戦いにより縮小軽武装化した欧州各国軍は軍の再編を求められる構図です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナへATACMS供与は有得るか?ロシア届く兵器渡さぬとのバイデン発言と後退するウクライナ東部戦線

2022-06-30 07:00:46 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ情勢
 HIMARSの供与可能性が示唆された際は可能なのかと議論になりましたが実際供与されウクライナ軍は前線へ投入しました、では次はどうなる。

 バイデンアメリカ大統領はHIMARS供与に際し、ロシアを安心させる目的から"ロシアへ届くような兵器は供与しない"としてウクライナ自衛に資する装備を供与していると強調しました。ただ、セベロドネツク陥落につづきリシチャンスクへの無差別砲撃の激化、クラマトルスクへの前進、ウクライナからみた場合、ロシアは遠くなっている現状があります。

 ウクライナへのATACMS供与はありえるのか。MFOMシリーズの長射程型についてです。MFOMは各種ロケット弾を6発内蔵して、とこれまでに紹介いていますが、実はMFOMには一見六発入ったコンテナのような形状でありながら、中には射程の長い一発を内蔵しているという軍団支援砲兵用の戦術ロケットが存在していまして、これがATACMSです。

 MGM-140-ATACMSが正式名称です。これは射程は原型では140kmと、M-30ロケット弾を上回る程度なのですが、改良型ⅠA型は原型の子弾950発内蔵から275発内蔵にコンパクト化した分だけ射程が延びていて、248kmに達します。なお、ⅠA型は一発あたりの威力低下を補うべくGPS誘導型となっていますのでその命中精度は大幅に向上しています。

 ATACMS,湾岸戦争では300発以上、イラク戦争では450発発射されているものですから、特殊な装備ではありません、またクラスター弾ではありますが、大量破壊兵器ではなくGBガスや核弾頭型なども存在しません、したがって、アメリカが供与する可能性は、少なくともロシアに届かないような現在の苦戦が続く戦況が続くならば、あり得ることと考える。

 ハープーンミサイル供与、ここで留意点となるのは、アメリカはロシアに届く兵器は供与しないとバイデン大統領が明言したものの、ATACMSを供与しないとは一言も発していません。そしてアメリカは沿岸防衛用に射程200kmのハープーンミサイル供与を決定していますので、見方次第ではハープーンと比べればATACMSも射程が長すぎるわけではない。

 ロシア軍は短期決戦を断念し、砲撃による両翼包囲という手法を続けていますので長期化する可能性が高い、それも年単位で。すると、ATACMSは後退を強いられるウクライナ軍にとり、ウクライナ領内の占領地に設置されたロシア軍段列地域などを叩く必要な手段となり得ます。アメリカのATACMSウクライナ供与というもの、ありえるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都発幕間旅情】岐阜城(岐阜),山城の歴史浪漫を世に示す金華山山頂の独立式望楼型三重四階の模造天守閣

2022-06-29 20:22:52 | 旅行記
■山城への好奇心
 歴史に関心と好奇心はあるが知識の方は全然追い付かない中に今回の望遠で眺めた城郭という話題を。

 金華山山頂に位置する岐阜城、金華山は標高329mと東京タワーよりも若干低いのですが、岐阜市は勿論、岐阜基地や小牧基地と名古屋市からも望見でき、山頂の天守閣があるというだけで、遠方からも直ぐ見分けられるために、当地の象徴的な城郭となっています。

 二階堂行政が建仁元年こと西暦1201年に当地へ城郭を造営した事が始りという。そして天守閣は現在、模造天守閣が山頂に再現されていますが、元々当地には1567年造営の望楼型四重五階天守閣があり、現在の独立式望楼型三重四階という模造天守閣よりも巨大です。

 山城、有名な山城には上杉謙信造営の越後国春日山城、尼子経久による出雲国月山富田城、六角義賢が造営の近江国は観音寺城、有名な浅井長政による近江国の小谷城、いろいろとあるのですが、現地を探訪しますと、大胆な想像力が要るほどにその概要がわかりません。

 織田信長の岐阜城、この岐阜城は天守閣が模造でも再建されているので一見してここかあと感慨深いのですが、浅井長政の小谷城は神社を辿るも戦時中の高射砲陣地跡地なのか城郭遺構かわからず、一乗谷城は一乗谷朝倉氏遺跡となっていますが、やはり遺構が少ない。

 独立式望楼型三重四階天守閣は、1956年に岐阜城はこんな感じ、という印象で造営されたものです。戦前にもありましたが火災で失われたという。ただ、再現された模造天守閣が無ければ、城郭の歴史をふれる端緒が少なくなるように思うのですよね。その点貴重です。

 岐阜城は知っているようで知らないのだよなあ、少し調べますと山頂の天守閣と山麓の三重塔は実は城郭の一部であるという事に気付かされます。織田信長は行政拠点として城郭を整備したため、国境警備の山城と違い支城が数多くあり、一帯が城郭となっています。

 戦闘機と城郭という写真を撮影しよう、じつはファントム現役時代に、基地撮影班から離陸情報を受け、金華山の稜線を超えたあたりで山麓から超望遠レンズを使った圧縮効果で天守閣と戦闘機という写真を考えていました、実際には簡単ではなく、実現はしません。

 金華山、しかし、その撮影適地を探し右往左往、いや離れた場所から撮影地を探していますと、神社のようなものが望遠レンズ越しに見えたり人工造成地形と思われる地形などが、これは遠くから見たからこそ分かるのですが、妙に関心を掻き立てます。支城は実際多い。

 特別な瑞雲を視れるという事で瑞龍寺を探訪下したさいの話題は前に掲載しましたが、瑞龍寺は岐阜城から離れているものの、ここにも城塞があったということでして、要するに今は山麓の岐阜市が広がりますが、中世以降は金華山の稜線の方が賑わっていたという。

 丸山砦に松田尾砦と稲荷山砦や相場山砦に権現山砦、支城はこのように広まっていまして、しかし歴史愛好家や郷土史研究者によれば、なにしろ造営が建仁元年と古い事から、今でも知られていない土塁の遺構などがまだまだ存在する筈であるといい、関心を集めている。

 自動車で外周を回った方が、間近に散策するよりも分りやすいぞ、とは登山が面倒という言い訳ではないのですが、天守閣の見える方角を変えるだけで別の城郭のように見える多くの城郭の天守閣と同じ様に好奇心を刺激し、しかし確かに峰々の多さに気付かされます。

 COVID-19の影響が残る為に敢えて混雑するところを避けて自動車で自由気ままに散策しているのですけれども、成程城郭に昇る以外にも歴史を考える機会はあるものだなあ、と感心します。その呼び水となる模造天守閣は、他の山城にも再建して欲しいものですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都幕間旅情】光明院,重森三玲の世界観は雲-嶺上に生ずること無く-月-波心に落つること有り禅語の具現化

2022-06-29 20:00:59 | 写真
■昭和は遠くになりにけり
 光明院は、その庭園がなによりも世界というものを感じ入らせる造り故に勧めたい寺院なのですが、その歴史も関心を誘う、院と同じほどに庭の歴史がです。

 波心の庭、光明院の庭園です。光明院は東福寺の塔頭ですが、最寄駅は東福寺駅ではなく鳥羽街道駅となっています、ただそれは地図上の事でして、実際最寄りの筈が歩み進めますと、距離感ではなく意外な勾配の急さに昇る際は若干の驚きと遠さを感じさせます。

 雲嶺庭、実は此処光明院、基本的に拝観料が必要な寺院なのですけれども、山門から拝観受付までの間に雲嶺庭という、小さな、しかし確たる小庭がありまして、その奥には摩利支尊天が鎮座、自由に参拝する事が出来ます。摩利支天は勝負を司る神様、ありがたい。

 虹の苔寺、こうも称される光明院は、その先の拝観受付を済ませまして至ります波心の庭、その苔と石の見事な調和を見せる風景によるものなのですが、三尊石組を基点に広がる独特の世界観、見渡したその庭園の様相が一新するところに新鮮な驚きを感じるところです。

 池泉式枯山水庭園、重森三玲が昭和14年、つまり戦前の1939年に作庭した庭園となっています。岡山県は水墨画を思わせる風景の加賀郡吉備中央町吉川に生まれた重森三玲は、その後日本美術学校に日本画を専攻、水墨画の世界観を作庭に活かした作庭家という。

 蘿月庵という茶亭が一段高い所に在りまして、ここからも波心庭を眺める事が出来るのですが、驚く事にこの蘿月庵も重森三玲が、造営は戦後の1956年となっていますが、設計したという事で、光明院の造形、その今日に至る完成へ並成らぬ努力を費やしたわけです。

 日本庭園史図鑑を戦前に部分執筆し上奏した事で知られる重森三玲、京都との所縁は当地に住まいました暮らしとともに、勅使河原蒼風を筆頭に生け花など京都の文化芸術家とともに独自の芸術観を醸成しまして、その上で独学の作庭研究を進め、そして携わります。

 東福寺方丈庭園、重森三玲の作庭は光明院のみならず大本山の作庭と塔頭は龍吟庵と霊雲院、そして大徳寺の瑞峯院、更には有名な松尾大社の松風苑、歴史に残る作庭を世に残しています。新しさを感じる作庭ですが、しかし禅宗の伽藍に溶け込む不思議な調和を醸す。

 戦前の京都、昭和は遠くになりにけりという言葉が有りますが、平成の御世も天皇陛下の譲位により令和の時代となりまして、重森三玲の庭園も、前衛的なという印象は無く、古刹の風情に自然と親しんでいます。ただ、散策し拝観するとともに、ふと思う事もある。

 昭和は遠くになりにけり、しかしここ波心庭が作庭される前はどのような風情だったのか、いや拝観は限られた人のみで荒廃していたのか、荒廃する前にはどのような庭園があったのか、なにしろ古都と呼ばれる京都なのですが、その変化は実は常に続いているのですね。

 平安式州浜型、庭園研究を日本庭園史図鑑として上奏した重森三玲は、波心庭を造営に際し、山号の光明に因んだといい、立石が斜線状に並ぶ中心とともに白砂を大海に見立て、いわば立石に光明が差すが如く、という歴史解釈とともに作庭を象ったとされています。

 雲-嶺上に生ずること無く、月-波心に落つること有り。こうした禅語はあるのですが、重森三玲は元々は画家で作庭は独学、この庭園の設計に際し、禅宗は全ては修行という戦前の東福寺塔頭の住持たちとともに、どのようにこの世界観を具現する話し合いをもったのか。

 東山に西日が差しこみ空の青さは黄昏時に向けて日の傾きと雲の動きを際立たせます、その雲の動きの様に、実は変わっていないようで変ってゆくのが京都なのだよねえ、そんな事を思想の探索としたのちに、日没前の頃合いとともに、御山を降りることとしました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NATO即応部隊を30万規模に増強へ-現行4万,ストルテンベルグ事務総長がマドリードNATO首脳会議前に表明

2022-06-29 07:00:32 | 国際・政治
■臨時情報-NATO首脳会議
 ロシアのウクライナ侵攻を受け緊張続く欧州ではスペインのマドリードにてNATO首脳会議が開催され、我が国からも岸田総理大臣がNATO加盟国ではありませんが出席しています。

 NATOのストルテンベルグ事務総長は27日、NATO即応部隊について、現在の4万名規模の部隊を30万規模に増強する計画を発表しました。この構想はマドリードにて開かれているNATO首脳会議に発議するとし、冷戦以降最大の集団的抑止力と集団的防衛力構築の改革になる、としています。しかし即応部隊は近年増強されたばかり、驚かされました。

 NATO即応部隊NRFは加盟国各国が陸軍部隊等の中で充足率が高く装備を近代化した師団や旅団を指定部隊とし、有事の際には即座に欧州連合軍司令部隷下へ抽出できる体制を示します。しかし驚かれるかもしれませんが、NATO即応部隊NRFという制度は1949年にNATOが創設されて以降、冷戦時代には存在しない制度でした、これは冷戦後のもの。

 2003年にNRFは正式に運用開始となりました。もともとは2002年のNATOプラハ会議においてアメリカの当時のラムズフェルド国防長官の要請によりNATOが世界規模で活動可能となるNATO加盟国15か国からなる即応部隊を創設する方針が示され、具体的には五日間から一ヶ月以内に出動可能という構想、そして冷戦時代にはこの制度はありません。

 冷戦時代、NATOはもっとも即応対処が求められた時代である為に不思議に思われるかもしれませんが、冷戦時代のNATOはソ連軍を中心としたワルシャワ条約機構軍の西ドイツ侵攻やトルコギリシャ侵攻などを念頭に置いていた為、緊急展開を行うというよりはNATOが防衛体制を固めている地域に相手が侵攻に来る、という想定であったためでした。

 冷戦後のNATO即応部隊が必要とされた背景には、1998年のコソボ派遣を契機に、NATOが創設当時想定していなかった加盟国以外の地域への、所謂“域外派遣”という任務が、冷戦後の欧州への脅威がロシアとの関係正常化によりロシア軍侵攻よりは欧州周辺地域での地域紛争が激化し欧州へ影響を及ぼす可能性に転換し、その抑止が求められた構図です。

 2003年の段階でNRFは2万5000名という“ささやかな”規模で想定されていました、具体的には、地上部隊は4000名規模の旅団を3個旅団、海上部隊は空母打撃群に2個常設水上戦闘群と2個常設機雷戦群、空軍部隊は作戦機24時間当たりの200任務飛行所要、というものが見込まれていました。その任務は当時の情勢を受けテロ対策や非戦闘員退避など。

 NRFの増強、冷戦時代にもなかった変革である為に驚かれるかもしれません。しかし、これは冷戦時代と比較するならば逆に緊張緩和を見込んだ措置といえるのかもしれません。何故ならば前述の通り、冷戦時代にNATOは第一線で守りを固めていたもので、具体的に言えば西ドイツ領内にアメリカ第5軍団やイギリスライン軍団など大部隊が駐屯していた。

 冷戦時代の方式を用いるならば、NATOの大群がバルト三国やポーランドとルーマニア等に駐留することとなります、が、ウクライナ戦争を受け、これらの地域にNATOは部隊を駐留させてはいるのですけれども、駐留しているのはNATO多国籍大隊のみ、旅団でさえありません、つまり、前に出て守りを固めるのではなく、加盟国は自国領内で待機させる。

 NATO多国籍大隊に代えてNATO旅団戦闘団が幾つもロシアとの国境に展開する訳ではない、加盟国は万一の際に即座に派遣可能な即応部隊を置く、という方式となります。冷戦時代の自衛隊の北方機動演習と似たもので、一見大胆な防衛政策にみえるものの、実のところ慎重に、しかし確実な抑止力整備を目指しているということなのかも、しれませんね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【防衛情報】アメリカDDG-X計画とポーランドアローヘッド140,中国052D型駆逐艦とイタリア212型潜水艦

2022-06-28 20:12:26 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 日本の防衛費増額の対米公約化が話題となりましたが金額云々ではなく現在各国がどの程度軍事力を強化しているかという実情との均衡を見る事が必要です。

 アメリカ海軍はアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の後継となるDDG-Xの概念図を発表しました。新しい駆逐艦は上部構造物のうち、イージスシステムの目となるSPY-6レーダーアンテナをアーレイバーク級の艦橋構造物四面配置からタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の様な船体前後に配置する方式に転じ、一見し護衛艦あきづき型を巨大化させたよう。

 イージス艦としての技術的特色はSPY-6の採用、そしてCIWS近接防護火器に代えてレーザー砲を搭載し150kwクラスレーザー1基と600kwクラスレーザー2基を搭載する構想ですが計画段階の装備であり初期艦はRAMを搭載する、垂直発射装置VLSは船体前部と中部に分けられ、前部VLSについては海軍極超音速兵器用に12セル分が拡張仕様となる。

 新機軸の多い構想ですが、スタンダードミサイルの誘導にはターターシステム時代から続くSPG-62イルミネータを用い、AMDR-X先進誘導装置などは敢えて棚上げするようです。統合電気推進方式の採用などアーレイバーク級からは進みましたが、海軍はズムウォルト級駆逐艦量産失敗の苦い経験があり、DDG-Xは2028年から建造開始となる見込みという。
■ポーランド最大の水上戦闘艦
 海上自衛隊の汎用護衛艦規模というものでポーランド海軍としては過去最大の大きさとなるのでしょうか。

 ポーランド海軍の次期フリゲイトへハブコックインターナショナル社案アローヘッド140型フリゲイトが採用されました。ポーランド海軍は旧ソ連製フリゲイトの後継やアメリカ製オリヴァーハザードペリー級ミサイルフリゲイト中古艦の後継艦としてNATOの作戦に対応するフリゲイト3隻新造を計画していて、2022年内にその概要を画定する方針です。

 アローヘッド140型フリゲイトはイギリス海軍に採用された31型フリゲイトを原型とする水上戦闘艦で、大型水上戦闘艦の船体へ最小限度の兵装を搭載した設計であり、例えば船体は満載排水量5700tとかなり大きいのですが武装は艦砲に57mm単装砲と40mm機関砲、対空用に射程25kmのシーキャプターと機銃のみ、対艦対潜任務は艦載ヘリコプターが行う。

 31型フリゲイトの利点は徹底した建造費の圧縮で、一隻当たりの建造費は邦貨換算で2億6800万ポンド、邦貨換算では400億円未満、海上自衛隊の護衛艦もがみ型と比較しても二割以上安価となっていますが、Mk41VLSを搭載し武装を拡張する事も可能となっている。なお、ポーランドではPGZ-MIECZNIKコンソーシアムでの国内建造を計画しています。
■ドイツ,コルベット計画完了
 ブラウンシュヴァイク級は大きさとしては日本の訓練支援艦よりも小型なのですがミサイル艇の後継と考えれば大胆な沿岸防衛戦略の転換といえます。

 ドイツ海軍が導入するブラウンシュヴァイク級コルベット10番艦で最終艦ケルンがこのほど起工式を迎えました、10番艦ですが5番艦までがバッチ1に位置付けられており、バッチ2の5番艦でもあるケルンはナーヴァルリュールセングループにて建造されます。この10隻の建造により長らくドイツ沿岸防備主力であったミサイル艇はその役割を終えます。

 ブラウンシュヴァイク級コルベットはドイツが輸出用フリゲイトとして開発したMEKOフリゲイトシリーズ最小型のA-100型を原型としており、MEKOシリーズの特色であったモジュール区画を排し設計を合理化しました。満載排水量は1840tと全長88mはコルベットそのものであり、MTU社製ディーゼルエンジンにより速力26ノットと抑えられています。

 一番艦は2008年竣工、バッチ2が2023年竣工予定、ミサイル艇の後継として建造されましたが、76mm艦砲とRAM-21連装発射器という従来のミサイル艇武装に加えエクゾセミサイルに代え射程の大きなRBS-15を搭載、また公然距離の増大に合せカムコプター無人機2機を搭載、乗員は65名となっていますが4000浬の航続距離を有し相応に強力です。
■テグ級フリゲイト2隻竣工
 イシンスン級を小型化したようなものですが韓国艦も1998年に初めて艦載ヘリコプターを搭載した事を考えれば進歩が速い。

 韓国海軍は新たにテグ級フリゲイトのチョナンとチュンチョンの2隻を竣工させました。2隻はウルサンの現代重工業ウルサン造船所にて建造されており、テグ級フリゲイトは7番艦のチョナンと8番艦チュンチョンをもって建造を完了します。なおチョナンは北朝鮮潜水艇魚雷攻撃により撃沈された哨戒艦チョナンの艦名を受け継ぐフリゲイトとなりました。

 テグ級フリゲイトは満載排水量3592tで全長122m、127mm艦砲とK-VLS垂直発射装置16セルに海星対艦ミサイルや青鮫対潜魚雷等を搭載し乗員は140名となっています、インチョン級フリゲイトの拡大改良型で旧式化するウルサン級フリゲイトの後継艦となっていますが船体が大型化し航空機格納庫を配置、AW-159哨戒ヘリコプターを搭載しています。
■フィリピン-海洋哨戒機計画
 フィリピンは軍事大国という印象はないのですが軍事に投じた予算が適正に運用されなかった時代が長く、いままさに近代的な軍隊といいますか国防のみに特化した軍隊へ転換しようとしている。

 フィリピン沿岸警備隊は海洋哨戒機の導入計画を発表しました。これはフィリピン南部とフィリピン西部にかけ広がる多島海域では平時からの警戒監視に際して地上や巡視船からの監視では限度がある為で、沿岸警備隊航空部隊には充分な性能や数の航空機が配備されておらず、滞空時間の長い双発航空機を取得し海洋哨戒機として運用する構想です。

 L-410NGターボレット双発航空機が現在、フィリピンの次期哨戒機として有力視されているものという。これはチェコのレット社が開発したもので、原型は1969年に初飛行、改良型にあたるNGはGE-H85エンジンとグラスコックピットの採用により航続距離2500kmと滞空時間9時間を誇り、フィリピン沿岸警備隊が必要とする機材なども搭載可能です。
■カナダ軍へP-8A提示
 カナダの視点から考えればボーイング一択でボンバルディアの海洋哨戒機派生型の対潜哨戒機はリスクが多すぎたために提示されなかった構図か。

 カナダ統合軍の次期哨戒機に関するRFI情報要求書に対しボーイング社がP-8A哨戒機を提示しました。これはカナダ統合軍空軍が運用するCP-140オーロラ哨戒機の後継で、1980年に18機を導入していて、現在も14機が現役として運用されているもの。なおCP-140オーロラ哨戒機とはP-3Cオライオン哨戒機のカナダ軍正式名称となっています。

 P-8A哨戒機について、カナダ空軍の任務には近年重要性を増す北極圏におけるロシア軍活動活性化と中国海洋進出が北極圏航路まで及んでいる事を受けての監視能力強化が含まれており、海洋監視に加え対潜水艦作戦や洋上打撃力などを総合的に考慮した結果とのこと。RFI情報要求書は今年二月にボーイングが提案したものであり今後具体的検討に進みます。
■リチウムイオン電池の212型
 212型潜水艦もそろそろ初期の212型とは別物に進化していますね。

 イタリア海軍向けの212型潜水艦初のリチウムイオン電池使用U-212-NFSがシステム設計を完了させました。212型センス感はOCCAR,オーガニゼーションフォージョイントアーマメントコオペレーションにより推進されており、今回のリチウムイオン電池仕様の潜水艦建造にはイタリア防衛大手レオナルド社やフィンカンティエリ社なども参加します。

 U-212-NFSのNFSとはニアフューチャーサブマリンの略称であり、理知海音電池の採用に加えマストなどの動作を油圧式から電気駆動式とし、また発展型CIC戦闘指揮所や地中海に加えて熱帯海域での運用に想定される対酷暑地域の空調機能、そしてリチウムイオン電池に適合する船体再設計を行います。システム設計につづいて全体設計が行われます。
■中国-052D型駆逐艦2隻竣工
 もがみ型建造もそうですが韓国も中国も二隻同時に建造する潮流です。

 中国海軍は新たに052D型防空駆逐艦湛江と焦作の2隻を竣工させた。中国海軍では1980年代に整備した旅大型駆逐艦の退役が進んでいる、ソ連のコトリン級駆逐艦を念頭に第二次大戦型駆逐艦の魚雷発射管を対艦ミサイルへ換装したような形状の旧式駆逐艦であるが、この後継となるのが中華神盾、中国版イージスと呼ばれる艦隊防空駆逐艦となっている。

 052型防空駆逐艦は昆明級駆逐艦とも称されている。湛江と焦作は旅大型駆逐艦にも同様の艦名が冠せられているが、今回052D型ミサイル駆逐艦へ継承された形である、命名式は2022年3月中旬に行われている。中国海軍の水上戦闘艦整備は艦隊防空艦の整備に重点が置かれており346A多機能レーダーと射程125kmのHHQ-9艦対空ミサイルを搭載する。
■ギリシャ,ハイドラ級改修へ
 ハイドラ級についてはオーストラリアのアデレード級と同じMEKO型ですので改修次第では生まれ変わる。

 ギリシャ海軍はハイドラ級フリゲイト4隻の近代化改修に5億ドルを投じる、ハイドラ級フリゲイトはドイツの輸出用フリゲイトMEKOシリーズの3200t型であり、1990年代より運用が開始されていますが、老朽化と陳腐化が指摘されていました、ギリシャ海軍は近代化改修により当初計画よりも15年間長く現役で運用する計画という。ただ問題がある。

 ハイドラ級フリゲイトは当初、2隻のみの近代化を計画していたものの、この規模の改修では逆に割高となる為に4隻まとめての延命を決定した構図です。しかし、同時にギリシャ財政の問題から一挙に5億ドルを投じることはギリシャ海軍の長期計画に影響を及ぼす事は必至で、例えばフランスからの水上戦闘艦導入計画にも影響が及ぶ危惧もあるでしょう。
■揚陸艦ハリスバーグ起工式
 サンアントニオ級も新しい新しいと思っていましたが既に15隻、しかし実物に巡り合う機会が無いのでホイットビーアイランド級の写真とともに。

 アメリカ海軍向けのドック型輸送揚陸艦ハリスバーグが起工式を迎えました。これはインガルス造船所にて建造されるサンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦バッチ2の一番艦となり、インガルス造船所にとっては15隻目のサンアントニオ級建造となります。15隻とは既に11隻が竣工しており3隻が建造中、そしてここにハリスバーグがくわわりました。

 サンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦は満載排水量2万5883tで全長208.5m、旧式化したホイトビーアイランド級揚陸艦の後継に位置付けられています。輸送揚陸艦の名の通り三層に分け2323平方mの車両甲板を有し、また物資は963立方mと弾薬庫1007立方m、車両や航空機燃料搭載区画も充分ある。バッチ2からはステルスマストが外見上特色です。
■サンアントニオ級の課題
 海兵隊の輸送する装備体系が大転換している最中で特に戦車を海兵隊が全廃する中でも戦車を輸送できる揚陸艦は必須なのかという海軍の素朴な疑問なのでしょう。

 アメリカ海軍のサンアントニオ級輸送揚陸艦建造終了方針に対してアメリカ海兵隊が懸念を表明しているとのこと、現在サンアントニオ級は初期型のフライトⅠの13隻建造に続いてフライトⅡの建造に移行していますが、海軍はフライトⅡの建造を4隻とし、建造を終了する訳ではないが調達優先度を引き下げ、建造を一旦終了する方針を示しています。

 海軍はフライトⅡの4番艦建造費用を一時延期することで2億5000万ドルを他の優先事業へ回す事ができるといい、しかし海兵隊は必要な水陸両用作戦部隊の輸送に支障を来すとして反発しています。他方、海兵隊は現在、伝統的なMEU海兵遠征群から地対艦ミサイルを主体とする海兵沿岸連隊への転換を進めており、その輸送需要は転換期にもあります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナ東部セベロドネツク陥落-ロシア軍漸進にアメリカから供与のHIMARSはどう戦況を変え得るか

2022-06-28 07:01:41 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ国防省はアメリカから供与されたHIMARSの実任務投入映像を公開しました。HIMARSは自衛隊も装備するMLRSの装輪型です。

 セベロドネツク陥落、ウクライナ軍は東部セベロドネツク防衛を断念し市街に撤退した事を知事が公式に発表、今後は西方のクラマトルスクが脅威にさらされることとなりますが、東部でのロシア軍攻勢がこのまま進めば、次は一時は防衛に成功しロシア軍を押し返したウクライナ第二の都市ハリコフ、現地名ハルキウが再度脅威に晒される可能性もあります。

 ロシア軍は短期決戦を断念しました、軍事目標を緒戦のように無理に拡大して各個撃破される愚を改め、時間はかかりますが十分な砲兵火力を集中し都市や緊要地形を一つ一つ奪取する運用に転換、砲兵火力を集中し時間を掛けて市街地のウクライナ軍を圧迫し後退させる伝統的な両翼包囲に転換しており、ここでは火力の差を活かし前進を続けています。

 HIMARS到着、苦境のウクライナ軍にあって朗報はアメリカから供与が決定していたHIMARS高機動ロケットシステムが到着したです。M-30ロケット弾を用いた場合の射程は70kmから80kmで、クラスター弾頭を備えたロケット弾をGPS誘導により正確な誘導が可能で、ロケット砲に区分されていますが無誘導のM-26に対しM-30はミサイルに近い。

 HIMARSはこの戦況を変え得るのでしょうか、今回到着したのは4両ですが、更に4両の追加が決定しており、ロシア軍は1000門以上の火砲を東部に集中させています。ただ、これはロシア軍砲兵に対して、HIMARSの機動力による生存性の高さと、そして射程の大きさです。砲兵は生き残る為には反撃が来る前に射撃後素早い陣地変換を行わねばならない。

 MLRSとHIMARSは発射装置が自走化され、またロケット砲の弱点である再装填の時間も発射装置にクレーンを内蔵する事で短時間での射撃が可能、しかもM-30クラスター弾は射程も大きく、HIMARSの数は少ないが損耗を避ける事が出来、弾薬の補給さえアメリカから潤沢に行われるならば、小隊射撃の24発が続くだけでも確実に出血を強要できましょう。

 アメリカ国防総省は6月23日に更に4両のHIMARS供与を発表しています、これで8両体制となり、この規模は陸上自衛隊のMLRS部隊と比較しても非常に少ない事は否めませんが、無人機や衛星画像と共にロシア軍砲兵部隊や補給拠点の位置を正確に標定し射撃を行うならば、圧倒できる事は無くともその行動を大幅に制約することは、可能でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【防衛情報】ドイツ軍CH-47輸送ヘリコプター60機50億ユーロで取得,米海兵隊CH-53K重輸送ヘリコプター初度作戦能力

2022-06-27 20:20:59 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛最新論点
 ドイツ政府はウクライナ戦争勃発を受けロシア脅威へ国防の建て直しを開戦前夜の勢いで進めていますが、流石に今回は驚かされました。

 ドイツ政府はCH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロで取得し老朽化したCH-53輸送ヘリコプターを更新する、これは4月にドイツのビルトアムゾンダーク紙の報道で示されました。ドイツ連邦軍はCH-53重輸送ヘリコプターを大量に運用していますが、双発型のG型は導入開始から半世紀を経るものとなっており、後継機が模索されていました。

 CH-47輸送ヘリコプター60機を50億ユーロ、極めて巨額の防衛装備調達となりますが、これはショルツ首相がロシア軍ウクライナ侵攻を受け緊急計上した1000億ユーロの特別軍事予算から捻出されることとなります。ボーイング社では、輸送ヘリコプターは年内に機種決定となれば早ければ2025年末から2026年内に納入が可能であるともされています。

 F型という最新型のCH-47シリーズが導入されるとのこと、CH-47Fはデジタルコックピット方式を採用しシンガポール軍向けに開発されたものですが、アメリカ陸軍でも新造すると共に既存のCH-47シリーズをF型へ近代化改修しています。CH-47は基本設計は古いものの今も生産が継続しており、運用支援は今後数十年に渡り継続することもたしかです。

 ドイツ連邦軍のCH-53輸送ヘリコプター後継機計画についてCH-47Fが選定されましたが、この後継機候補には合せてCH-53K重輸送ヘリコプターも候補に挙げられていました。何故CH-47が選定されたのでしょうか、この背景にはCH-53はアメリカ海兵隊とイスラエル航空宇宙軍しか採用していないという要因が在り、運用互換性の問題が挙げられます。

 CH-47Fは60機50億ユーロとなっていますが、CH-53Kは一機当たり1億ユーロを超えるという高い価格見積もりがあり、機内の輸送能力はともに完全武装の兵員55名を輸送するという、言い換えれば同程度となっています。また、NATOではイギリスやオランダにイタリアやスペインなど、CH-47を運用する国も多く運用面での互換性も評価されました。

 CH-53はドイツ陸軍で、いまはドイツ空軍に移管されましたが50年に渡る運用実績はあります、しかしこれもCH-47選定を覆すには至らない背景として、ドイツが運用しているのは双発型のCH-53Gであり、三発型であるCH-53Kの運用は、エンジン整備負担の増大も示す事となる為NATO諸国と歩調を合わせたともいえる。ただ、正式決定発表はまだです。

 ドイツ連邦軍のCH-47F輸送ヘリコプター導入とボーイング社の支援について。ボーイング社はドイツ空軍がF/A-18E/F戦闘機をトーネード攻撃機後継機に選定した際に、その定期整備や予備部品現地生産に関してドイツ国内防衛産業との提携強化を発表しています。その上でボーイング社製CH-47Fもドイツ国内産業への経済波及効果が意識されています。

 ボーイング社は既に欧州NATO諸国に採用されている多数のCH-47を運用する為に、欧州航空大手のエアバスヘリコプターズ社との間で提携しており、ボーイング社によればドイツがCH-47を採用した場合、500名規模の正規雇用が生まれるとしています。一方、CH-53を製造するシコルスキー社については、厳しい結果となったともいえるかもしれません。

 CH-53K重輸送ヘリコプターは機内貨物室容積でCH-47よりも若干小さいものの、三発の強力なヘリコプターであり吊下げ空輸能力は勝っています、それでも輸出実績はイスラエルのみであり、前型のCH-53Dなどを多数を採用しているアメリカ海兵隊も重輸送ヘリコプターの装備定数を削減する計画があり、今後運用基盤や維持基盤に影響も予想されます。
■CH-53KにIOC
 CH-53KについてIOC初度作戦能力付与という話題がありました。

 アメリカ海兵隊は2022年4月22日、最新型のCH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプターへIOC初度作戦能力付与を発表しました。CH-53Kは従来海兵隊で運用されたCH-53E重輸送ヘリコプターを元にグラスコックピットの採用や、エンジンをT408-GE-400として出力を強化、機内の貨物室を大型化しハンヴィーも収容可能とした。

 CH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプター、スーパースタリオンと称された従来型に対し輸送能力も大幅に向上しており、エンジン出力は57%向上、時間当たりの輸送能力ではCH-53Eと比較した場合で実質三倍以上に強化されているとのこと。2024年度からはMEU海兵遠征群への配備が開始され、海兵沿岸連隊の支援にも必要な装備とされている。

 フォースデザイン2030としてアメリカ海兵隊は2030年を目処に伝統的な水陸両用部隊から、中国の海洋進出による変化の著しい太平洋島嶼部地域での作戦を主眼とする沿岸砲兵主体の編成へ転換を進めているとことですが、この為に航空輸送する装備は従来よりも大型化、空輸能力強化は求められています。ただ、生産数はE型よりも少なくなる計画です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京電力-電力需給ひっ迫注意報発令,2011年の政治決定による原発停止と再稼働への政治決断の必要性

2022-06-27 07:00:52 | 防災・災害派遣
■臨時情報-電力関連
 六月の猛暑としては今回のものは災害規模に迫るものですが、仮に今後の夏本番を受け大規模電力不足と成れば巨大な災害に発展しかねません。

 東京電力は猛暑による冷房などの電力需要が高まり供給能力が他の電力会社からの融通を受けた場合でも供給不足となる懸念から昨日初の、電力需給ひっ迫注意報、この発令に踏切りました。原子力発電所のほぼ全てが停止し、火力発電は温室効果ガス削減機運を受け施設老朽化による廃止が続き、再生可能エネルギー開発は調整電力開発が進んでいません。

 政治決定による原発再稼働、今回は11年以上続く停止状態から、急な点検が間に合うとは考えられませんので、この夏の電力不足は最早回避出来ないと云わざるを得ないのですが、原子力事業者と原子力技術者の再確保という十年単位の再構築計画を、今からでも着手し、須年以内にこの状況を脱する必要があるよう考えます、その為には政治決定が必須と思う。

 菅直人首相(当時)は2011年5月2日の参議院予算委員会にて、浜岡原子力発電所において“地震の影響を受けやすい場所に立地していると指摘を受けており、政府としても国民に安心してもらえるかしっかり見極めて判断しなければならない”とし、当時点検中であった静岡県の浜岡原発、2011年7月に予定されていた再稼働への慎重な姿勢を示しました。

 海江田経済産業大臣(当時)は5月6日、浜岡原発の原子炉再稼働について政府として中部電力に運転停止を求める要請を行うと0700時にテレビ中継を行い、政府として事実上政治決定により運転停止を求めた事を全世界に発表しました。これは法的措置ではありませんが、3月11日から続く東京電力福島第一原発事故を背景に要請を公表した意味は大きいもの

 2011年5月6日の政府要請に基づく原子力発電所停止、政府要請は電力事業者が仮に根拠法が無いとしても拒絶する事は出来ません、いわば政治決定により原発を停止させた、この一点を考えれば、当時とは政党が違うという言い分ではなく、政治決定による再稼働を行わなければ、この状況を覆す事は出来ないのではないか、電力供給が逼迫しても、です。

 しかし、日本の原発全停止措置は、この“東海地震が切迫している”という受け留めができる政府要請と共に、法的措置ではなく政治主導での超法規的な要請に基づくものであり、地震発生の可能性を示唆された場合は日本の原発立地自治体で地震懸念の無い地域は存在せず、いわば慎重論に圧される形で原発停止のドミノ倒し的要請が広がる事となりました。

 停止要請から11年、確かに日本国内では熊本地震や胆振東部地震に鳥取県西部地震や能登半島地震など、地震は多発していますが冷温停止中の原子力関連施設が破損する様な地震は起きていません。問題は日本の電源構成において30%以上を占めていた原子力が突然、発電から冷温停止として逆に電力が必要となる負債化した事が、余りに突然であったこと。

 LNG液化天然ガス、中部電力は2011年5月8日に浜岡原発停止に伴う代替発電用にカタールからの液化天然ガス緊急調達への接触を開始したと毎日新聞が報じました、ここで日本と云う巨大な電力需要市場をLNGにより急遽まかなう措置が開始され、他の原発にも波及した事でLNGの取引価格が急騰、世界エネルギー市場を突然混乱させることとなります。

 再生可能エネルギー開発は確かに進められました、太陽光発電などは1kwあたり42円という破格の数字が政府により決定され、太陽光発電バブルというものが日本で生じました、しかしこれは再生可能エネルギーの普及以前に、日本の製造業に高すぎる電気料金を突き付け、国内の製造業を海外に転させざるを得なくなり、モノづくり大国の地位は後退した。

 電力不足、今回の六月猛暑により電力不足が顕在化したように思われるかもしれませんが、延々と2011年より続いている問題です。もちろん、太陽光パネルが風景として増加していますので、一見代替電源が確保されたように錯覚するのですが、再生可能エネルギーは太陽光の場合で日暮れや早朝などの発電能力など限界があり、調整電源が不充分なのです。

 大規模ダム開発による水力発電拡充や、化石燃料による発電が投資家の理解を得られないのであれば国営石炭火力発電所を建設し世界からの批判を電力会社に代わり国営会社が引き受ける選択肢もあります、しかしこれも時間がかかるのですが、2011年以降、増えるのは太陽光発電偏重、調整電力開発は放置されたまま、今年も夏の猛暑と電力不足が話題だ。

 政治決定による原発再稼働、ただ、万一の事態が発生した場合には政府には電力会社に措置命令を発する、生命の危険があっても実施を強制する事は可能ですが、実能力として原子力施設へ万一の際は対応する事が出来ません。しかし、シーレーン防衛など経済を意識した防衛政策は存在する一方、こうした状況にも政治決定は必要と考える余地もあるか、考える必要はあるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(12)89式装甲戦闘車と73式装甲車に96式自走迫撃砲(2011-10-09)

2022-06-26 20:11:40 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■89FVと73APCの行進
 戦車部隊の観閲行進が全国の師団祭では行進の大団円を知らせる迫力を残すのですが、第7師団は最初から機械化部隊の迫力が続きます。

 装甲戦闘車、89式装甲戦闘車は優れた装備です、いやしかしこれが過去形となりつつあるのは基本設計の古さに挙げられます。装甲戦闘車の用途は乗車戦闘での戦車支援から下車戦闘の短縮化へ敵陣地へ肉薄できるよう重装甲化が新世代のものですし、ミサイルも。

 第11普通科連隊だけでは、装甲戦闘車が配備される事で得られる機動力、戦闘における優位の獲得という、相手に対抗手段を講じさせる前に浸透する打撃力というものを、ドクトリンとして内部化させられないように思うのですよね、ドクトリンの硬直化は問題です。

 89式装甲戦闘車も、しかし数が揃っていれば十分活躍できたように思います、実際冷戦時代にはもともと北部方面隊師団の各一個普通科連隊は89式装甲戦闘車でFV化する構想はあったという、73式装甲車並みの350両は量産される計画はあったという、実際はしかし。

 標準的な性能として考えると、戦闘重量は26tありますので、防御力は低すぎる訳ではありません、昨今の装甲戦闘車の重装甲化が異常なだけです、35mm機関砲も強力ですし、なにより戦車に随伴できます、出力重量比で戦車随伴を設計に反映させた点は重要です。

 68両しか量産されず、第7師団の第11普通科連隊にしか装備出来ない装備となったために73式装甲車と混成運用されていて、しかも73式装甲車は74式戦車に随伴する運用要求に依拠した設計、つまり90式戦車には随伴が難しく10式戦車には完全に置き去りとなる。

 自衛隊も北部方面隊の総合近代化師団へ戦車を集中させるという防衛大綱に基づき、これはロシア軍ウクライナ侵攻により白紙撤回させるべき過去の思案に思えるのですが、ともかく戦車は北海道に集中させるという、すると戦車を支援する装甲戦闘車は強化すべきだ。

 プーマやアスコッドにリンクスといった、40t級の装甲戦闘車が開発されていますが、これらは大口径機関砲で対処するにはかなり無理のある重装甲となっています。日本に侵攻する可能性の阿多海諸国にはこれら装甲車に対抗する装備が予測され、日本も参考とすべき。

 対戦車ミサイルは車載型とするのが即座の射撃を可能とする為に必要な設計であると考えられていましたが、装甲戦闘車が車体を曝してミサイルを射撃するよりは、脆弱な装甲を戦車に曝す事無く、大型の対戦車ミサイルを車内に搭載し下車戦闘する運用が今日のもの。

 40mm機関砲の時代が到来していますので、逆に装甲戦闘車は相手が主力戦車以外であれば機関砲で対処可能です、いや40mm機関砲のAP弾は第二次大戦中の75mm徹甲弾よりも貫徹力が上になっていまうので、第二世代戦車程度であれば優位に戦闘が可能となる。

 火器管制装置の優位がありますので、交戦距離2000m未満を考えている例えば弾三世代の一翼を担うT-72戦車であれば対抗は可能です、ただ、主力戦車が120mm砲を搭載している通り、T-72B3やT-80といった相手では分が悪いのも確かです。こので対処法は多様に。

 戦車と遭遇したならば装甲戦闘車が下車戦闘のために停車するまえに戦車が行進間射撃で敵戦車を撃破してしまうのですが、新しい世代の装甲戦闘車は対戦車戦闘の枠組みそのものを転換させているという。これは言い換えれば、89式装甲戦闘車の旧式化を意味します。

 一方で、対戦車ミサイルを搭載した装車も依然として存在しまして、例えばコングスベルク社製RWS遠隔操作銃搭にはジャベリン搭載型が開発されていまして、これは装甲戦闘車ではなく装輪装甲車、ストライカー装輪装甲車に採用されているものなのですが、積む。

 装甲偵察車であればフランスのジャガー装甲偵察車は、これは六輪式の装輪装甲車ですが、40mmCTA機関砲とともにMMP対戦車ミサイルを搭載、ミラン対戦車ミサイルの後継で射程は4kmですので89式装甲戦闘車の重MATと射程や運用では似ているといえます。

 12.7mm機銃などを搭載するRWS、暗視装置と火器管制装置を搭載し歩兵が車外に出て肉眼で照準するよりもRWSを通じて照準したほうが素早い、この観点からジャベリンミサイルを一体化している、RWSは日本製鋼が護衛艦用に国産化しており、日本にも可能という。

 01式軽対戦車誘導弾を国産RWSに搭載するという選択肢は、交戦距離が1500mと非常に短くなるのですが、安上がりな選択肢といえるのかもしれない。ただ、ミサイルは瞬発交戦能力や開けた地形でなければ運用が難しいという、運用成約が在るのも確かではあるが。

 もっとも、1989年のまだ冷戦機運が残る頃の設計に2020年代の中国との島嶼部戦などまで展望しろと考えるほうがどうかしているのですけれども、故に旧式化は致し方ない。後継車両というものを考える必要がある。いや後継車両は共通装軌車両があるのですけれど。

 日本の新しい装甲戦闘車、共通装軌車両として開発されているのですが89式装甲戦闘車の設計をもとに銃眼は廃止されているようですが、防御力などはそのままなのですよね。戦闘重量35t程度、増加装甲により41t程度まで想定した装甲戦闘車は必要であるよう思う。

 装甲戦闘車は必要であるよう思う、こういう背景に中国は装甲戦闘車の配備を大車輪で進めていまして、ロシアの新型装甲戦闘車は57mm自動砲を搭載、防御力というものはそうとう考えねば生き残ることは出来ませんし、数少なくなる戦車で対抗せねばならなくなる。

 装甲車は、なにより自衛官の生命が大事と主張する政党は与野党ともに多いのですが、万一のことを考えるならば、それこそ装甲戦闘車の強化を提示しなければ、政策として矛盾し、論理破綻する政治家の名札のように思えてなりません。これは、如何なものだろうか。

 機械化部隊、しかしすべての部隊、普通科部隊を装甲戦闘車により充足すればよい、というような安直な考えでもありません。いや突き詰めれば、第2師団型の戦車連隊と3個普通科連隊を基幹とした編成の師団に装甲戦闘車を充足させてみては、とおもうのですが。

 96式自走120mm迫撃砲、この装備は120mm迫撃砲を開発したフランスなどはVAB軽装甲車に牽引させていましたが、もともと120mm迫撃砲は105mm榴弾砲と並ぶ火力と射程を有していました為、120mm迫撃砲の自走化がスウェーデンやフィンランドで進められた。

 開放型戦闘室に120mm砲を装備しているのみ、簡易な方法でM-113装甲車を転用したM-1064自走迫撃砲などを思い出す方式ですが、射程も長く一つの選択肢であるように思えます。北欧の事例は後填式砲塔を採用しているものですから、遥かに高性能なのですが。

 砲塔式の自走迫撃砲には、フィンランドが行進間射撃を可能とする、間接照準射撃を走行しつつ実現するという砲兵の夢を具現化した様な装備が開発されています、陣地変換せず走りながらであれば敵砲兵の反撃を受ける事はありません、これには驚かされましたが。

 戦車や普通科部隊へ直掩火力を供するには、考えれば昨今流行の52口径155mm砲では少々大袈裟過ぎますが、120mm迫撃砲の自走化が代替し得るのか、直接掩護の任務領域でも補完する程度に限られるのか、野砲がNATOや日本で削減される中、多くの関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする