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榛名防衛備忘録:検証-自衛隊ガンダム,"軍用人型ロボット"充分な実用性と当面の技術的課題

2021-01-30 20:21:46 | 先端軍事テクノロジー
■軍用人型ロボットの可能性検証
 横浜に実物大ガンダムが完成し話題となっていますが、古くて新しい話題"自衛隊のガンダムは被り物以外で実現するか"について。

 人型ロボットの軍事的な意義について。1990年代に本田技研工業が基本的な二足歩行ロボットを実現させて以降、技術的な模索が続いていましたが2020年代前後から徐々に軍事的な二足歩行ロボットが現実的なものとなってきました。将来的には技術次第で、現在試験的な配備が始まっている軍用パワードスーツの一部を置き換える事となるかもしれません。

 人型ロボット。等身大のもので、整備がある程度自動化され、内臓電源だけで12時間は可動出来、自衛隊体力検定4級程度の能力を出せるものが開発され、耐用年数がトラック程度は運用できるロボットが開発されれば、少子高齢化と予算難での非正規公務員化で人員不足に悩む自衛隊としては一基あたり高機動車位の費用ならば、多数を導入するでしょう。

 ガンダムやマジンガーZのような巨大ロボットにはまだ大きな課題があります、技術的に解決できる点は大きいと思われますが、最大の問題は物理的な問題で、地面は1cm平方に1kg以上加わると陥没を始めます、意外ですが戦車も50tや60tのものを含めて設計時には1cm平方1kgの加重を前提に設計されています、巨大ロボットとなると接地圧が問題に。

 1cm平方1kgを越えると地面にめり込みます、不整地突破能力が低くなるのですね。ガンダムにはバーニアという補助推進力があり、ホバーリングのように歩行時に噴射を続ける選択肢がありますが、この状況を十時間程度持続できる燃費の良い機関が完成すれば、現実的選択肢ですが、21世紀初頭の動力としてはなかなか考えつかないものがあるのですね。

 ドラえもんのように小型軽量で放射線を確実に遮断できる原子力機関を搭載するならば、多少は変わるのかもしれませんが、過去陸上原子力戦車というものは幾つか検討されたものの、破壊された場合の格納容器の安全な炉心冷却手段が無く、単なる歩行式ダーティボムのような放射性物質汚染兵器の隠れ蓑にしかならない事から、現実的ではありません。

 装甲材に、きわめて軽量な新素材、歩兵用ボディーアーマーに装着することで40mm機関砲弾にも耐えうるような新素材が開発されたならば、ガンダムのようなロボットに装着しても地面にめり込まないロボットは実現するでしょう。若しくは忍者が水蜘の術で足に履くような巨大な円形状のもの、実際には浮き輪だったようですが、あれを付けるか、で。

 しかし全く不可能ではなく、25mm程度の機関砲に耐えられる装甲を有した上で底部接地圧を1cm平方1kg以内とできる新素材、もしくは製造費用を装甲車と同程度の2億円規模に抑えられるならば12.7mm機銃への防弾性能、移動速度を45km/h以上、燃料満タンで航続距離200km以上、自衛用火器とセンサーの重量を搭載さえ実現すれば、用途はある。

 巨大ロボット、人間と同じ歩数を毎分発揮できるのであれば、例えば瓦礫の多い錯綜地形である市街地を装甲車よりも早く移動出来る事となりますし、今日まで、都市と森林は兵を呑む、として森林は戦術上の特殊戦場として避けられていましたが、現在の戦車でも踏破できない山間部を克服できるゲームチェンジャー、新しい装備となるかもしれません。

 マジンガーZやガンダム、基本的に匍匐全身する運用を基本として必要に応じて適宜立ち上がる、という運用ならば、地面センサーなどを用い荷重に強い岩盤地形や上下水道などのない市街地のコンクリート地盤を選んで立ち上がるという選択肢も無いには無いのですが、現在では立ち上がって視界を得るより、高さならば無人機を飛ばして情報収集すればよい。

 しかし、人型ロボットを巨大ロボットと解釈するのだから論理が破綻するのです、一人用小型戦車が消え戦車が基本的に主力戦車に収斂していったように、人型ロボットも適した大きさというものがあるはずです、常識で考えれば人型がもっとも適しているのは2m弱、人の身長でしょう。荷重についても200kg以内に軽量化できれば地面にめり込みません。

 現実問題として、巨大ロボットに固執したとして、戦車でさえ操縦手に砲手と車長の3名が必要なのですから、一人で操縦できるまで操縦を簡略化するには、まだまだ操縦支援用AI人工知能の技術は追いついていません。すると無理に巨大化させるよりは通常の人間規模、最近のアニメならばEX-AR,昔ならば、まほろまてぃっく、のようなものが理想だ。

 軍用パワードスーツはアメリカ陸軍が既にアフガニスタン山間部において試験的な運用を行っています。具体的にはM-777榴弾砲の155mm砲弾運搬やM-240軽機関銃に弾薬運搬を兼任させるなど、運用が模索されました。歩兵が携行できる重量は31kgを越えると長期的な戦術的非効率を生むとされていますが、パワードスーツが解決への試金石といえます。

 人型ロボットの軍用用途として、例えば兵站用に第一線での弾薬運搬、架橋など施設作業、センサーを搭載しての無人機などにたいする監視支援、特に小銃班に随伴して荷物運搬を行う、前方監視哨へ独立して進出しての監視、トラックの運転支援、戦車などの損傷車両の回収支援、野砲の装填支援、尖兵小隊でのポイントマン接敵の支援、こうしたものが考えられるでしょう。

 AIに殺傷任務を担わせることについては将来的に国際人道法や戦時国際法文民保護の制約が加わる可能性が高いのですが、上記任務では逆にロボットに殺傷される任務を担わせる、という用途となります。鈍重な動きを担う人型ロボットが撃たれている間に回避行動を取る、もしくは最初に撃たれる場所には先ず数m先を人型ロボットが進む、という形で。

 護衛艦のRWS遠隔操作式銃塔、方向性としては危険な銃座の執銃を機械に行わせるというもの。90式戦車や10式戦車の自動装填装置、重い砲弾の装填をロボットに行わせるもの。こうしたかたちでロボットは人型以外で既に採用されているものですので、実用性が伴えば、その延長線上に人型ロボットというものは充分実現の範疇にあるのかもしれませんね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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Unknown (成層圏)
2021-01-31 16:21:50
装甲騎兵ボトムズという作品の4m程度の人形兵器なら、実現しそうな気がします。一人乗り装甲車の様なものですが。
しかし、現状ではパワードスーツを着た兵士が桃太郎よろしく犬(型ロボット)、キジ(ドローン)などを従えるほうが早いかもしれませんね。

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