北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

終幕に佇む“東京エキスプレス”の名優たち 鉄路の果てに みえてきた終点

2008-02-29 13:40:15 | コラム

■名優の余命 秒読み段階

 高度経済成長を支えた一翼に、新幹線と寝台特急を挙げることに異論を唱える人は少ないだろう。体制の軍事化と世界大戦における躍動、一転し敗戦の焦土、復興と高度成長。そのどの場面にも、鉄道がもたらす鼓動は列島を動脈の如く駆け抜け、今に至る。

Img_1943  鉄道線は東京を中心に明治から着々と広がり、幹線鉄道が結ぶ大都市を中心に私鉄網と鉄道省線近郊線が広がった。人口密度は高く、山岳が多く、四方を海に囲まれ、弧状に広がる列島。人の移動を結ぶのは船舶でも航空機でもなく、鉄道であり、技術革新とともに速度を速め、一時は世界有数の軍事大国、そして今日では世界有数の経済大国としての地位を確固たるものとした。しかし、主役は老いれば入れ替わるもの。高度経済成長を支えた東京エキスプレスの名優たちも、そろそろ引退の時期が近付いてきた。

Img_1720  新幹線0系は、現在、山陽新幹線の『こだま』号運行をして短縮編成が現役であるが、これは今年11月には全車除籍となる見込み。これに関連して、六月ごろから現行の山陽新幹線塗装から、デビュー当時の純白に青いストライプという塗装に戻る見込み。0系の運行は、N700系導入に伴うダイヤ見直しにより激減しており、いよいよ、日本鉄道史上空前絶後の名車と謳われた0系新幹線も終着駅が近付いている。

Img_6181  3月15日のダイヤ改正により廃止となる寝台特急“なは・あかつき”号。大阪と九州を結ぶブルートレイン。いわゆる九州ブルートレインは、山陽新幹線開業までの間、東京・大阪間を結ぶ新幹線の大阪早朝発に連絡する重要な交通手段であったが、現在は“なは。あかつき”号と東京乗り入れの“富士・はやぶさ”号のみ。まず、“なは・あかつき”号が3月15日に廃止となる。

Img_5205  東京エキスプレスというべき、大阪と東京を結ぶ寝台急行『銀河』も3月15日廃止。ブルートレインがまた一つ減る。最終列車の早い新幹線を補完する寝台急行として長い歴史をもつ列車ながら、幅75㌢、仕切りはカーテンのみというB寝台でもビジネスホテル並の寝台料金が必要であり、時代の変化に対応できなかったことから利用者が減少し、ついに廃止の憂き目となった。割高な寝台料金と割引制度の不備やソロB寝台の無設定が遠因。割安なノビノビシートやレガートシートを装備していれば少なくない需要があったはずなのだが。

Img_8138  C.ジョニー氏からお教え戴いた情報では、『雷鳥』に用いられる485系が来年から2011年にかけて順次、『サンダーバード』に用いられる683系の新系列車輌により置き換えられる構想とのこと。485系自体も老朽化が否めず、遠く無い将来、新型車両により置き換えられるのだろう。国鉄特急車輌の代名詞として、地方と都市や新幹線の未整備区画を結んだ485系も終着駅が近付いているということか。

■鉄道関連情報

 鉄道に関する最近の様々な話題を、独断と偏見と写真フォルダの在庫に基づき列挙したい。

Img_9953  500系新幹線。山陽新幹線地区での短縮型『こだま』号運行本格化。9編成ある500系新幹線のうち、5編成を8両編成に短縮し、運行されるが、既に一部では16両編成のまま『こだま』号運行が行われている。短縮編成による『ひかり』号運行も行われるので、座席は基本的に2・3の五列方式を採用。短縮編成運行開始は来年度からとされている。なお、『のぞみ』号運行は激減するものの維持される。

Img_9087  名鉄7000形パノラマカー。C.ジョニー氏からの情報では現在残る6輌編成七本が秋までに、4輌編成六本も2009年6月までに全廃の見込み。中部国際空港と犬山経由岐阜行きなどで運行が多いが、こちらは三月のダイヤ改正でどうなるかが未知数とのこと。

Img_7089  京阪電鉄7000系の話題。京阪電鉄『きかんしゃトーマス』編成が1月27日にさよなら運転を行ったとのこと。京阪本線などで特急から急行、普通電車などで運行されていた特別塗装の7000系であるが、「ありがとう また会う日まで」とヘッドマークを掲げ、さよなら運転。石坂山本線で運行されていた700系特別塗装車も、さよなら運転を実施。これらの車輌は通常塗装に戻されて運用される。

Img_7153  南海電鉄7000系の話題。塩害に揺れる去就。南海本線で運行される7000系は、導入が1963年からと、古く、特急『サザン』自由席車から支線ワンマンカーとしてまで幅広く運行されているものの、本線や空港線など臨海部の運行が多い為塩害による車体腐食が問題化している。まもなく営業運転が開始される8000系の投入により、今後の動向が注目される。

Img_7478  名鉄7000形の除籍に関する今後の見通し、京阪7000系の特別塗装車さよなら運転、南海7000系の塩害腐食と後継車両登場に関する話題。その心は!?

 パノラマカー廃止に困ってやった、7000形の話題なら何でも良かった。後悔はしていない・・・。寒くなったところで次の話題。

Img_8019  明るい話題。米原駅改良工事がようやく一段落しました。いやあ、物凄く時間掛かってて、何年掛かるんだよ!と、実際、運転士&車掌のボヤきが聞こえて来るのだが、ようやく、一部工事が完了したようで。しかし、いままでの跨線橋部分が工事に入る関係で使えなくなって、ホーム停車部分が変更になった。

Img_3145  敦賀~福井駅間などで多く運用されている419系電車。もともと寝台電車用の車体を用いた旧国鉄急行型車輌として知られているが、貫通扉を有していた車輌のヘッドマーク部分の閉塞工事が一部の車輌に行われたとのこと。419系に予算を投入してこうした工事を行うということは、投資を回収できる程度には、まだまだ当分の間、運用を続けるのかな、と。なお、改造された車輌は福井~金沢間での運行に用いられるとのこと。

Img_3932  JR東日本209系の廃車回送開始、昨年12月の話題だが、浦和電車区の209系が廃車回送として長野に送られたとのこと。貫通扉の無い洗練されたデザインで知られる209系であるが、低コスト化のために一部の予備機器を省略している為、現役寿命が少ない車輌。廃車回送とともに新型車輌E233系の系列車に置き換えられつつある。

Img_8985_1  京浜急行電鉄1000形が大師線にも導入。まあ、これは京浜急行電鉄の塗装がどことなく名鉄に似ていて親近感があるのと、絶頂期の阪急や京阪並みに特急が停車駅を限定して快走する点から最後の関西私鉄、といわれ、特急料金が不要な特急を運行しており、加えて横須賀基地を見学に行く際にはお世話になっている京急の話題ということで掲載。

 以上、鉄道に関する話題を関心事項に合致したものだけ厳選して掲載した次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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航空自衛隊岐阜基地飛行開発実験団 F-15J近代化改修形態2型の試験進む

2008-02-28 16:47:29 | 先端軍事テクノロジー

■F-15J近代化改修機

 本日も岐阜基地ではXP-1の試験飛行が行われていたようだ。しかし、岐阜基地はXP-1が最も注目されているとはいえ、明日の防衛力を担う極めて稀有な航空機が日々飛行試験を展開している。

Img_9460  MAD氏の表現を借りれば、日本のエドワーズ空軍基地というべき岐阜基地。ここに着陸するF-15J。航空自衛隊の主力要撃機として任務にあたっている機体だが、この21日はXP-1にEC-1,EH-101などの珍しい機体が次々と着陸していた為、注意力は散漫となっていた。だが、よく機体番号をみれば942号機。そして機体細部の特徴に留意すれば、これが近代化改修型F-15であることがわかる。

Img_2068  航空自衛隊では、千歳基地第2航空団201・203飛行隊、百里基地第7航空団204・305飛行隊、小松基地第6航空団303・306飛行隊、築城基地第8航空団第304飛行隊にF-15を配備し、対領空侵犯対処措置にあたるとともに、新田原基地の飛行教導隊や飛行開発実験団、第1術科学校に配備し、有事の際の日本周辺の絶対航空優勢確保にむけた技術研究、戦術開発を行っている。

Img_9464  F-15Jは常に能力を世界最高の水準に維持する為に、各種装備の近代化を続けている。航空自衛隊ではレーダーの換装、電子戦装備などを一新する近代化改修を2002年に予算承認、抜本的に改修した近代化改修形態2型を2006年に完成させている。2008年度防衛予算に32機分のF-15J近代化改修予算として1123億円を計上している。

Img_9465  空気取入口側面に涙滴型のふくらみがみえるが、これは電子戦(ECM)用アンテナで、このアンテナは垂直・水平尾翼部分にも搭載されている。レーダーはAPG-63V1に換装されるが、これに伴う改装により、将来的にはAESA(アクティヴ電子スキャンドアレイ)方式のAPG-63V3への換装が容易となる。

Img_9468  機体後部の尾翼部分に黒っぽいアンテナハウジングがよくみえる。航空自衛隊のF-15J近代化改修対象機は電子廃線などがデジタル化されたJ-MSIP機(アナログ式の配線を中心としたものは非MSIP機と呼称)で、現在101機が配備されている。近代化改修ではレーダーを改修するとともにセントラルコンピュータをIBM社製AP-1Rからロッキードマーティン社製VHSICに換装して記憶容量などを増加、飛行制御プログラムの新規装備、レーダープログラム記憶容量の四倍への強化している。最終的には、レーダー波を一切出さず、赤外線で目標を探知するIRSTの装備も計画されている。

Img_1860_1  こちらは無改造のMSIP機コックピット部分。近代化改修により、航空自衛隊のF-15はレーダーやコンピュータ換装により索敵能力が向上、ECM装置の強化により電子戦能力が向上し、部隊ごとに補完し合う共同交戦能力の向上が盛り込まれている。外観では一機あたり40億円前後必要な点は理解しにくいが、これは米軍が多段階に分けて行う改修を一度に行った為。能力的には大幅に向上している。

Img_2367  こちらは在来型のF-15J。冒頭の写真と見比べると、アンテナの有無などがよくわかる。細かく分けるとF-15は、J型の基本型であるC1/C2が98機、これにAN/ALE-45チャフフレアディスペンサーを装備したC4/C5が30機、配線のデジタル化によるJMSIP機に移行したC6が14機、J/ALQ-8電子戦アンテナを搭載したC7が12機、レーダー警戒受信機を最新のJ/APR94Aに換装しエンジンを強化したC8/C9/C10/C11が45機、エンジンをF100-IHI-100からF100-IHI-220Eに換装したC12/C13が15機、J型に後方警戒装置J/APQ-1の装備を開始したC14/C15/C16/C17が15(内DJ型が9機)機。ひとくちにF-15J/DJといってもこれだけあるわけだ。

Img_3530  F-15早期退役の可能性として最近衝撃があったニュースがある。米空軍イーグル墜落事故として航空自衛隊でも安全確認のための飛行停止がとられ、注目を浴びたが、破断部分に設計必要強度の43~81%しか厚みが確保されていなかったため、機首部分と胴体を繋ぐロンジロンに構造疲労が蓄積し、首が折れ空中分解したとのこと。1978~1984年の機体に顕著であり、米空軍や州空軍では一部F-15(A~D型)の早期退役を検討していると、事故調査委員会報告書には記されているようだ。該当時期の機体は航空自衛隊にも非MSIP機で17機在籍しており、入念な調査が必要となる。少なくとも、日本の人口密集地上空で空中分解し、墜落、という事態だけは絶対に避けなければならない。

Img_3517  航空自衛隊のF-15Jでは、近代化改修以外にも能力向上への試みが続けられている。写真(上の写真も)のF-15Jには細長いミサイルが搭載されているが、これは新型の先進短射程ミサイルAAM-5で、運用試験が行われている。これは極めて高い機動性を有する空対空ミサイルで、高機動回避能力を有する航空機にも追尾する能力があり、航空戦闘を有利に進めることが可能だ。

Img_7394  写真はアクティヴレーダー追尾方式の99式空対空中射程誘導弾、AAM-4で対航空機能力を高めるとともに、巡航ミサイルなどを筆頭とするミサイル迎撃能力にも重点が置かれている。海外の資料にも50~60km(一説には70km)の射程があるとされ、定期整備の際に近代化改修とは別に運用能力を付与する改装が行われている。

 次期主力戦闘機として筆頭に挙げられるF-22の導入が難航し、ロシア空軍では新型のステルス戦闘機実証型が本年中にも飛行すると目される中、航空自衛隊は主力戦闘機であるF-15の能力を最大限に発揮できるよう、余念無き努力が続けられている。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成十九年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報

2008-02-27 14:06:52 | 北大路機関 広報

■自衛隊関連行事

 2008年も駐屯地祭シーズンがいよいよ始まる。陸上自衛隊関係の行事が三つ実施され、海上自衛隊の練習艦隊が大阪港に寄港するという情報も(昨年は神戸港)。

Img_0344_1  3月期の行事の目玉は、四国で開催される第50普通科連隊創設2周年記念行事で、第14旅団HPには詳細な解説がある。海上は高知県香南市香我美市民館グランドにて実施され、駐屯地で実施されないという点が非常に稀有。観閲式。野外音楽演奏、訓練展示、試乗などが行われる予定。この記念行事とは別に30日には高地駐屯地記念行事が実施される。

Img_6803  春日井駐屯地祭が、並んでこの時期の貴重な駐屯地祭。愛知県春日井市に所在する春日井駐屯地は、名古屋からも中央線で程近く、首都圏からの新幹線で当日展開も充分可能だ偵察隊や施設大隊、後方支援連隊が駐屯しており、模擬戦では例年、戦車や榴弾砲は参加しないものの、偵察隊を中心とした市街戦の展示が行われる。施設部隊関係の装備というものには珍しいものが多いのだが、昨年は寒かった。

Img_6813  高知駐屯地祭は、第14施設中隊や第14候補支援隊が駐屯している駐屯地でも駐屯地祭が行われる。この部隊は2009年度には徳島県阿南市の新駐屯地に移駐するが、これに入れ替わる形で善通寺駐屯地から第50普通科連隊が移駐するとの話。海上自衛隊徳島航空基地には第14飛行隊が2009年度に新設され、これで第14旅団は編成が完結するのかな、と。駐屯地祭の規模としては、どうなのか、全く情報が無いのだが、富山駐屯地祭や鯖江駐屯地祭のような小規模な行事、訓練展示は他の駐屯地部隊の支援というようなものを想定していいのかな、と(情報お持ちの方、カキコいただけると幸い)。

Img_7644  C.ジョニー氏に教えていただいたのだが、3月2日に“大阪防衛防災フェスタ”なるものが大阪南港のアジア太平洋トレードセンターで開催される。陸海空自衛隊の主要装備(まさか戦闘機や護衛艦!?)が展示され、陸自ヘリの編隊飛行がある、とのこと大阪地方協力本部HPを参照。ここからは未確認情報だが、練習艦隊が大阪港に入港するという情報。昨年は3月23日に神戸港に入港して、今年は大阪に入港するらしいのだけれど、地方協力本部HPに情報無し、入り次第掲載の予定。情報などありましたらリンク先など書き込みしていただけると幸いです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 3月9日:第50普通科連隊創設記念行事(第14旅団HP)・・・高知県香南市香我美市民館グランド/第50普通科連隊創設二周年の記念行事。訓練展示も実施。
  2. 3月9日:春日井駐屯地創設記念行事(第10師団HP)・・・愛知県春日井市/第10後方支援連隊・第10偵察隊・第10施設大隊などが駐屯/訓練展示
  3. 3月30日:高知駐屯地創設気炎行事(第14旅団HP)・・・高知県高知市/第14施設中隊・第14後方支援隊などが駐屯

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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海上自衛隊 『げんかい』・『えんしゅう』就役 多用途訓練支援艦五隻体制完成

2008-02-26 15:40:05 | 防衛・安全保障

■五地方隊に各一隻

 2月20日、『ひうち』型多用途訓練支援艦の四番艦『げんかい』、五番艦『えんしゅう』が就役、これで横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊の各地方隊に一隻の多用途訓練支援艦が配備されることとなった。先日、新年会で話題に上ったのでひとつ、掲載。

Img_7088  2月20日の就役に伴い、『げんかい』は呉地方隊直轄艦、『えんしゅう』は横須賀地方隊直轄艦となった。同時に、既に就役した三隻も所属部隊の異動があり、二番艦『すおう』(写真)が横須賀地方隊から大湊地方隊直轄艦に、『ひうち』が呉地方隊佐伯分遣隊から舞鶴地方隊直轄艦に異動した。なお、三番艦『あまくさ』は佐世保地方隊のままである。

Img_7091  『ひうち』型は満載排水量1400㌧。護衛艦の水上射撃訓練や航空機などの魚雷投下訓練支援などが目的で、曳航能力も高い。また、後部の作業甲板には車輌の搭載も可能であり、災害派遣などでの物資輸送にも活躍する。今回の就役に伴う異動は、四番艦、五番艦が潜水艦訓練支援の能力を充実させている為、横須賀、呉という潜水艦配備基地に配備されたと考えられる。

HARUNA

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イージス艦あたご衝突事故再発防止案提言 シースワップ勤務体制

2008-02-25 12:09:23 | 防衛・安全保障

■SEA SWAP

 ミサイル護衛艦“あたご”衝突事故は、いまだ衝突した漁船の乗組員二人が行方不明のまま推移しており、捜索活動が続けられている。一刻も早い発見を願いつつ、抜本的な再発防止案を一つ提言したい次第。

Img_5668  あたご事故について、コメントで書いた、シースワップは、人員の一部を順次、入れ替えてゆくという方法なのだと勝手に誤解していたが、よくよく調べてみると、世界の艦船誌通巻648号に解説があった。人員の一部ではなく、艦船を展開海域に残し、乗員だけそのまま入れ替わってゆくという方式。背景には米海軍の人的不足があるようで、現状の人員を輸送する手段だけやりくりすれば、実現可能な方式。この点は、同じく、人員不足になやみ、同時に艦艇も削減されている海上自衛隊にも学ぶべき点を提供するのかな、と。他方で、本質的な解決策を講じなければ十年二十年先までの再発防止とはならないようにも。

Img_1275  今回発生した衝突事故の背景には、三ヶ月にも及ぶ航海が一つとして考えられる。考えてみれば、数年前のインド洋対テロ作戦給油支援任務派遣艦艇での続発した諸問題なども、あまりにも長い航海と任務が背景にあるのではないか。この点、疲労困憊やストレスを配慮しないまま、過剰な負担を強いた政治的な背景もあるように思える。なんとなれ、給油支援に対応可能な海上自衛隊の全補給艦を集めても五隻、弾道ミサイル防衛に対応できる海上自衛隊の全イージス艦を集めても五隻。これは紛れもない事実である。

Img_0770  実際体験したことが無い身の上で、又聞きした情報なので恐縮だが、艦隊勤務は過酷である。インド洋に派遣されれば、夕方にちょっと外出、なんてのも無理だし、ハワイでの訓練派遣であっても、やはり上陸は制限される。洋上でのプライバシーは寝台特急のB寝台並で、三ヶ月間、B寝台は辛いやも。艦内の居住区画の実情をみると、せめて施錠できるような扉はいらないからソロB個室(B寝台と同じ料金のやつね)並にならないか、と思ったりする。

Img_1159  艦隊勤務が厳しいのは外洋海軍の世界では共通のようで、アメリカ海軍でも艦隊勤務、特に長期の航海は嫌がられているようだ。例えば、空母機動部隊をノーフォーク海軍基地からペルシャ湾に派遣すると、片道だけで約一ヶ月必要となる。半年間の派遣ならば二ヶ月間が移動、四ヶ月任務、ということになる。

Img_0750  ここで提示されたのがシースワップ制度。三隻の同型艦の内、一隻を派遣して、6ヶ月置きに乗員だけ空輸で交代させる。同型艦であれば、新しい艦に乗っても、基本的に同じ設備を同じ要領で扱うことが出来る。すると、現地に艦艇だけ往復を含め20ヶ月展開させることができ、乗員の展開期間はこれまで通り、結果、負担は軽減することができる。往復二ヶ月必要とする海域への部隊派遣に固有の艦艇に固有の乗員を組み合わせて実施した場合、6ヶ月航海を基準として任務対応期間は各4ヶ月。20ヶ月間で5隻の艦艇が必要となる。これがシースワップ制度を用いれば3隻で対応することが出来るということ。

Img_1191  戦略ミサイル原潜では、一隻に対して二組のクルーを用意して、稼働率を向上させていたが、シースワップ制度では同型艦三隻と三隻分の乗員を、一隻だけ派遣、一隻だけクルーをローテーションさせる。派遣任務から戻った乗員は、航空機で帰国し、入れ替わりの交代で乗員が居なくなった同型艦に乗艦し、任務にあたる、というわけ。同型艦とはいえ、乗員を全て入れ替えるには、米海軍でも抵抗があったようだが、次期駆逐艦などが大型化し、コスト高(3000億円くらい)により配備数が制限されることを考えれば、止むを得ない措置として、検討されているようだ。

Img_0218  艦艇の効率運用方策を人員の負担軽減に流用するのは、万全とは言いがたいかもしれないが、シースワップ、検討に値するのではないか。海上自衛隊の場合、アメリカ海軍の6ヶ月勤務と比べれば、短い、と思われる方もいるかもしれないが、アメリカ海軍が横須賀に持っているような海外拠点が無く、また、ノーフォークから中東までは英語圏の豪州フリーマントルを中継地としているが、日本語圏の中継地というものも無いのが実情だ。神戸の阪神基地のような規模で、海上自衛隊真珠湾基地やモルディブあたりにマレ基地を新設するというのも難しい。このことを踏まえれば、6ヶ月以下の派遣でも、可能な限り乗員の空輸交代などを検討して然るべきではないか、と。

Img_1096  海上自衛隊が、まず汎用護衛艦でシースワップを実施すると想定してみたい。三月までに、海上自衛隊では地方隊の護衛艦部隊である護衛隊を護衛艦隊に編入する改編を実施するが、更に一歩進んで、同型艦3隻からなる護衛隊に全て改編し(むらさめ型が9隻あるので三個護衛隊、あさぎり型は練習艦所要を差し引いて6隻なので二個護衛隊、はつゆき型が練習艦所要を差し引いて11隻あるので、三個護衛隊と+α、最新の、たかなみ型が5隻・・・)、同型艦編成の9個と混成編成の1個、そして小型護衛艦、あぶくま型6隻の2個、12個護衛隊を各護衛隊群に配分して、護衛隊の中でシースワップを行う、という制度としてはどうか、と。

Img_5979  固有の艦への愛着や、護衛隊の中での優秀艦を目指して練成しているという海上自衛隊の現状は背景にあるが、これを所属する護衛隊での技量練成に代えることはできないのかな、と。なお、海上自衛隊の任務範囲広域化と艦艇や予算削減を両立する上で、他に名案があるのなら、また話は別。極力、護衛隊を構成する護衛艦は異動させず、護衛隊の固定化を図り、その中でシースワップの人員をやりくりする、というかたち。

Img_6434  ただし、イージス艦の場合は、そもそもシースワップをしようにも、“こんごう”型四隻、“あたご”型が新造の“あしがら”就役でようやく二隻の計六隻である。補給艦であれば“とわだ”型三隻と“ましゅう”型二隻、ともに護衛艦隊直轄艦なのだが、イージス艦はそれぞれ、第61・62・63・64護衛隊に配備されており、三月の改編で、護衛隊群のDDGグループ直轄艦として更に動かしにくくなってしまう。

Img_9284  イージス艦だけによる二隻基幹の護衛隊ならば三個可能なので、思い切って、護衛隊群を大型化し、汎用護衛艦による護衛隊×3、ミサイル護衛艦による護衛隊×1、そして直轄艦としてヘリコプター護衛艦、イージスシステムを搭載していない在来型ミサイル護衛艦(これも、はたかぜ型に関してはSPY-1Kでいいのなら、イージス艦に改修することも出来なくは無いんだけど、コストの関係で非現実的)を配置する、護衛隊群編成に移行。在来型ミサイル護衛艦は将来的にイージス艦により代替し、順次二隻編成を三隻編成に移行する。という方法もあり得るのでは、と。定数は護衛艦だけで14隻、場合によっては第一艦隊(横須賀)、第二艦隊(佐世保)、第三艦隊(舞鶴)として、潜水艦隊をそのまま第四艦隊(呉)としてしまう、とか。

 削減することだけに重点が置かれた冷戦後の自衛隊は、基幹部隊の効率運用と抑止力維持、能力強化に重点を置いた、自衛隊再編ということを本気で検討するべき時期がきているように思う次第。

 最後になりましたが、本日1034時、YAHOO検索から“饗庭野演習場 八尾駐屯地”で検索され、“航空自衛隊 装備名鑑”にアクセスされた方を以て、Weblog北大路機関はアクセス解析開始から34万アクセスを突破しました。たくさんのアクセス、ありがとうございます。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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イージス艦『あたご』・漁船『清徳丸』衝突事故を俯瞰する一視点

2008-02-24 13:19:21 | 防衛・安全保障

■艦上からの日本近海の船舶

 イージス艦“あたご”の漁船衝突事件。海上保安庁による捜査が、まだ明確な情報を出さないまま、漁船の航路とイージス艦の航路について、憶測が乱れ飛び、憶測を精査しないまま、連日のようにテレビのニュース、ワイドショーが採り上げている。

Img_5590  当事者、目撃者以外から得た情報は、想像の産物であり、想像の情報を挙げて、コメンテーターが議論するのは、妥当性に疑問符が付かないでも無いが、自衛隊叩きの要素を必死でさがし、競って過熱報道がすすんでいるようにみえるのは私だけか。あたご乗員は上陸も許されず、横須賀から舞鶴に戻れる目処も立たない中、一方的な過熱報道。もはや報道被害の域というべきやも。本日は、あたご航路情報などが正式な情報がない中で記せば、その仲間入りとなってしまうので、体験航海で見た、そして撮った様子を紹介したい。

Img_6490  護衛艦“はるな”。展示訓練における写真である。写真は5インチ砲空包発射に備えて、慌しく安全確認を行っている様子。この場所は、艦橋の隣にあり、入港や出港はもちろん、航行中であっても常時人員を警戒として配置し、船舶往来や小型船の接近に備えている。双眼鏡は、集光性がSIGUMAのF.2.8のようなレンズと比べても比較にならないほど思いのほか明るく、航海レーダー以外にも肉眼で安全確保を行っている。

Img_6313  舞鶴湾を出港する途上、後続する護衛艦“あぶくま”の間を通るべく、プレジャーボートが待機している。距離は充分あったのだが、それよりも休日の日本海でこれだけの船舶が往来するのか、と驚かされた次第。これだけの船舶が出港するならば、当然ながら同じだけの船が帰港するわけである。したがって、先に述べた艦橋やCICの監視要員は万全を期して任務についている。

 ところかわって、今度は大阪湾展示訓練での写真。舞鶴湾や若狭湾よりも大阪湾の方が船舶往来量は多い。

Img_7665  海上自衛隊の操艦技術については、体験航海などで単縦進航行や一斉回頭などを何度もみていると当たり前に見えてくるが、この一見、単純な航行も海軍で艦隊勤務の経験がある大学院の留学生にいわせると中々難しいのだとか。それも途上国海軍ではなく、3000㌧級のフリゲイトや駆逐艦を20隻以上保有している国の海軍OBから出ると、なるほど技量は高いのか、と。

Img_7740  海上自衛隊は、その高い操艦技量を一般の人たちには展示訓練や観艦式などで公開している。この展示訓練や観艦式では、艦隊行動の実施海域が海上保安庁の航路情報で公表されているのだが、船舶がその海域に進入してこないように、警戒船を配置する。写真の交通船2150号型も警戒船として航行しているもので、横断幕には“警戒中”と書かれている。小生、まさか、航路情報で何度も回頭を行う訓練海域に入ってくる、いわば高速道路を横断するような危険を冒す船はいないだろう、と正直思っていた。

Img_7739  しかし、交通船5152号が速力を徐々に上げて行く様子が目に入った。よくよくみてみると、一隻のプレジャーボートが艦隊行動の真ん中を通過しようと接近。警笛を鳴らし、航路を変更するように促すが、それでも真っ直ぐと進んでくる。結果、洋上のカーチェイスのような写真となった。入ろうとする船もいるのか、と驚いた瞬間である。興味本位か、通りたかったのか、今では確認する術はないが、この写真のような状況があったことだけは紛れもない事実である。

Img_78241  展示訓練を終えて、艦は神戸港摩耶埠頭に接岸作業を行う。すると一隻のプレジャーボートが入港作業中の護衛艦に接近してくる。航路警戒にあたっている海上保安庁の巡視船が警笛を鳴らし、護衛艦からもハンドマイクで進路変更し、距離をとるように叫ぶ。それでも進路は変更せず、護衛艦にどんどん接近してくる。

Img_7821  小生は飛行甲板にて接近船舶を見守るのみ(船名など一部にモザイク加工を行っておりますがご了承下さい)。他の展示訓練見学者も、おいおい、ここまで接近して大丈夫なのか、というような呟きが聴こえてくる。巡視船はこちらに向かい、警笛を鳴らすが間に合わない、このままでは衝突。ゆるやかに艦中央部に向かう、機関部のガスタービンエンジンへ進んでいる。

Img_7458_1  非常に危険な距離まで接近したのち、進路を急転換し、艦尾のシースパローミサイルランチャーの後方に消えていった。しかし、再度、進路を転換して艦尾周辺をしばらく航行、徐々に遠ざかっていった。この写真で距離は20㍍程度。きわどい瞬間であった。

 日本近海の船舶往来量は非常に多く、展示訓練というひとときでもこのような状況に出くわしたという実情を、とりあえずお知らせした次第。

■今後の対策 監視要員増強とシースワップ

 今回の事故は、二名の人命以上に報道加熱は目立っているが、本質は別のところにあるように思う。事故の根絶を前提として、警戒人員の増強と、乗員の負担軽減という二つの視点から、少し考えてみたい。

Img_9066_1  今回の衝突事故をみてゆくと、イージス艦の警戒要員、交代のタイミングなどが、報道では問題視されている。ここで思うのだが、衝突防止に加えて対テロなどの視点の観点から、アメリカ海軍の艦艇並みに、もう少し警戒要員を増やしてみてはどうかな、と思ったりする。米海軍は、ソマリアのアデン港で自爆ボートによりイージス艦を大破させられた戦訓から警戒要員を増加させている。

Img_9011  艦橋横には12.7㍉機銃を連装で装備し、上甲板には左右にそれぞれ25㍉機関砲と12.7㍉重機関銃を配置している。横須賀基地に入港していても、写真の乗員はM-16A2突撃銃を構え、また一部の兵士はベレッタ9㍉拳銃を腰に帯びて警戒に当たっていた。停泊時でこれだけの警戒を行うのならば、航行時の警戒はもう少し多いのかな、と。

Img_9060_1  25㍉機関砲。ブラットレー装甲戦闘車や87式偵察警戒車に搭載されているものと同じ動力式の機関砲で。右舷、左舷に配置されている。海上自衛隊の補給処には、除籍艦から取り外した5インチ砲が保管されているようなので、旧式のエリコン20㍉機関砲なんかも保管しているのではないか。銃座を設置して人員を配置すれば、射手と弾薬手、銃座指揮官の三名が就くので、テロ対策にもなり、安全管理対策にもなるはずである。

 今回の事故の背景には長期間にわたる航海があるという疲労度からの指摘もある。補給艦乗員を例に挙げるまでも無く、9.11対テロ派遣を契機に艦艇乗員への負担は大きくなっているのではないか。

Img_9102 シースワップという制度がある。米海軍などでは、極めて長期にわたる展開では、乗員の一部を航空機で輸送し、乗員を一定期間を置いて交代させている。固有の艦艇乗員を採る海上自衛隊ではこの方式は難しいかもしれないが、艦隊規模で同型艦の乗員を融通し、負担を極力軽減させるような方式に海上自衛隊も検討して然るべき時期が来たのではないかと考えたりする。海上自衛隊には人員輸送に用いることが出来るYS-11輸送機を保有している。

Img_8921  シースワップ制度は、9.11以降の2002年8月から米海軍で導入された制度で、これによりクルーの艦隊勤務は一ヶ月程度とすることが出来る。人員交代にYS-11では航続距離が不足というのであれば、航空自衛隊はKC-767空中給油輸送機を導入しているが、可能であれば一時期言われていた中古のボーイング767型の政府専用機として装備するという話を再検討し、可能ならば四機程度を導入、海上自衛隊におけるシースワップ制度の導入を検討してみてはどうだろうか。

Img_8458  艦艇勤務は過酷である。今回、“あたご”が自動操舵を用いて航行していたことが、問題点の一つとして挙げられているが、年月年始返上でハワイで三ヶ月近くに及ぶ訓練、疲労も背景にあろう。艦艇が削減される中で負担は増大しているという海上自衛隊を運用する政治側の問題があるようにも思えてくる。現場に責任を押し付けるだけではなく、艦艇の充実や人員の確保などの観点から防衛大綱の改訂を含め検討が必要なのかもしれない。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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京都上賀茂神社 五穀豊穣と空の神,雷神を祀る

2008-02-23 10:55:20 | 写真

■XP-1撮影のお礼参り

 岐阜基地に着陸するXP-1を撮影することができた。これもなにかの縁と考え、雷とともに航空の関係者から参詣を集めるという京都北山の上賀茂神社に足を運んだ次第。上賀茂神社は京都三大祭の一つ、葵祭の終着としても知られる。

Img_7552  神社の前にひとつだけ、海上幕僚長の吉川海将更迭はどうも納得がいかない。海上自衛隊初の海上警備行動を洋上から指揮し、危機に臨んだ海上自衛隊では稀有の経験を持つ指揮官を、直接関係していない事件の引責で更迭するのでは、士気も再発防止もあったものではない。直接の関係者は米軍であれば軍法会議にかけられる、日本なら海難審判、という判断ならば納得がいくが、この点、報道の傾向などから危機管理がいちばん出来ていないのは世論を誘導した大マスコミの方ではないのか。

Img_7541  今回の事件で、当初、少なくない新聞が衝突した成徳丸と“あたご”の位置関係を説明する際に図には航行していた他の二隻の漁船との相関関係を第一報で載せていない。知る限り、四隻を載せていたのは朝日新聞など一部だけである。朝日新聞の図をみれば、回避すれば他の漁船に衝突することがわかるのだが二隻の位置関係しか載せない新聞や、平然と面舵をきるべきだったという論評を行う一部マスコミ、これを偏重報道といわずしてなんというのか。

Img_7526  事実関係はまだ不明、あたご乗員の聴取も終わっていなく、マスコミが多く採り上げる漁協からの情報も、事実関係が、発見のタイミングや他の二隻の航路、護衛艦の警告フラッシュの有無などについて、二転三転。防衛省の事実関係の発言が小出ししているのだが、これは事実確認(つまり裏を取っている)ために、という遅れであり、これを説明が二転三転と批判するのに、漁協の情報こそが二転三転しているようにみえるのが報じられないのは気のせいかなのだろうか。漁協の私人の一見解をあたかも公式見解のように報道している側の恣意的な(もう、示威的な?)ものも感じないでも無いが。

Img_7533  余り熱くなっても事実関係が明確に出るまではナンなので、上賀茂神社。平成27年に第42回式年遷宮を迎える、京都でも最も古い神社の一つであるこの神社は、雷神を祀ることから賀茂別雷神社(わけいかづちのかみ)と呼ばれる。雷鳴は農業に不可欠な雨季の到来や季節の移り行きを知らせることから五穀豊穣を司る神社として農民の信仰を集めている他、雷ということで空の、つまり航空関係者の参詣もあつめているとされている。そこで、最新航空機XP-1を最高の気象条件で撮ることができたお礼参りということになった。

Img_7540  実は、今年こそ伊勢神宮に初詣、ということを考えていたのだが、時間的に難しく、では空挺初降下を見学しつつ午後には千葉成田山、ということを考えたのだが、こちらも超絶多忙な時期と重なり行くことができなかった。その後、神社へ足を運ぶことは避けていたので、上賀茂神社参拝が期せずして今年の初詣ということになった。そこで、今年一年の平安安泰と研究成就を願った次第。

Img_7544  やや雪残る北山の地にて参拝した御利益は、舞鶴に足を運んだ際、この冬いちばんの大雪の中で乗った電車だけ運休にならず、岐阜基地に足を運べばKC-767J空中給油輸送機&EC-1電子戦訓練支援機&XP-1次期固定翼哨戒機が撮影できた。また、その際に撮影したF-15Jをよくよく確認してみたらば、942号機、つまりF-15J近代化改修形態2型という非常に珍しい一機だったりした。ということで、今一度お礼参りに。

Img_7543  本殿の向こうに青空を見上げる。実は上賀茂神社、徒歩で行ける場所になるのだが、非常に澄んだ空を見上げているうちに、このあと行こうと考えていた鞍馬、叡山電鉄を使うのではなく、徒歩にて鞍馬山まで10km、散策しようという気分になってきた。そこでも道中、天狗もでたというほどの山中ということで雪も残っており、冬景色と叡山電鉄という非常に美しい写真を撮ることができたのだが、こちらについては後日、改めて掲載したい次第。

HARUNA

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雪化粧の京都清水寺 澄み切った蒼空と雪雲のカーテン

2008-02-22 13:01:54 | 写真

■雪舞う京都

 相模原での新戦車完成発表と、岐阜では今年最初のXP-1初飛行に沸く中、京都には雪が積もった。久々に古都の雪景色を撮影するべく、友人と清水寺に向かった(あれ?)。ということで、雪の時期が終わらないうちに冬季京都特集。

Img_7445  清水寺。雪積もる様子を撮影しようと勇んで足を進めても、残念ながら出遅れてしまったため、思いのほか雪は少ない。京都は気温変化が激しいのか、朝に10㌢積もっていても、昼ごろにはほとんど溶けてなくなってしまうことが多い。金閣寺なんかはけっこう残っているんだけど、まあ、金閣寺とは正反対の東山にある清水寺は、西日がさす地形となる為、このてん顕著なのかな。

Img_7382  スキーなどで長野県の戸隠村や志賀高原に何度も足を運ぶと、低いところに薄っすらと雲があり、上空が澄み切っているときなんかは、もうすぐまた雪が降り出す前兆だ、ということが経験からわかる。写真のような情景は、まさに雪の訪れを示唆しているところだ。

Img_7378  冬季の京都は、寺社仏閣を彩る青々とした木々が紅葉をへて落葉してしまうので、残念ながら、あまり見栄えがしない。特に、冬の時期は日照量も少ないので、どうしても光量不足となり、写真には黄ばんだ様子と葉の無い木々が写るというやや興ざめな情景に。しかし、雪が降ればまた別の情景がある。前述のような地表に雪雲、上空に蒼穹の大空という気象条件は、写真に記録すれば冬らしい良い情景を写しこむことができる。

Img_7384  京都の街並の向こうにその名の如く絹を冠したように雪に染まる衣笠山や遠く宝ヶ池の向こうの鞍馬山などを望む。写真の右下にみえている塔は法観寺の塔。この塔は、日本で最も古いものの一つなのだとか。来月には東山花灯路が行われ、ほのかな光が塔や夜道を彩る。

Img_7435  清水寺の三重塔。手前には雪が残っている。でも、見ての通り雪はもう溶けてたりする。銀閣寺もこんな感じだったとか。常緑樹であれば、雪がそのまま木に積もり、雪化粧、となるのだけど、常緑樹の中には花粉症の人には天敵となるようなものもあるので。ここは一つの撮影スポットのようで、三脚が林立、多くの人は冬の風物詩(溶けてるけど)をシャッターに収めていた。

Img_7417  暖かな冬の一日、かと思いきや、しばらくすると一転して吹雪。遠くの方からこちらの方に薄いカーテンが引かれるように、視界を白いものが覆ってゆく。釦雪で、デジカメの天敵。奥の院でしばしの雨宿り(雪宿りと表現するべきか)。晴天と吹雪が交互に訪れるので、この日は様々な写真が撮れた。でも、やはり積もっていた方が写真としては絵になるのは言うまでもない。

Img_7454  清水寺の拝観を終えて、足を円山公園の方に進める。一旦止んだ雪は、また空に舞い始め、舞う雪の中で登った高台寺駐車場から法観寺と京都タワーを望む。風とともに舞う白雪、その雪空の向こうには弱々しい太陽の陽光が、雪の古都に降り注いでいる。法観寺の五重塔には、日蔭となる部分に白雪がほんのりと積もっている。この時間帯、逆光になりうるのだが、雪が醸し出す冬の日中、というところか。

HARUNA

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岐阜基地試験飛行 EC-1電子戦訓練支援機&XP-1次期固定翼哨戒機

2008-02-21 18:00:16 | 航空自衛隊 装備名鑑

■上賀茂神社の御利益として感謝

 7000形パノラマカー連結八両編成が0755時に犬山遊園駅を発車して有名な犬山橋を渡るとの情報を、C.ジョニー氏に教えてもらい、KC-767撮影の翌日、このパノラマカーを撮影に木曽川へ展開した。

Img_9394  岐阜基地に着陸するEC-1電子戦訓練支援機。7000形多数を撮影した後、三河線で今日では貴重となった7100形と7700形を撮影しようかと話し合ったが、知立はちと遠い、ということで天候も良いことだし220円で行けるということもあり、継続は力なり!ということもあって岐阜基地に展開した。すると、EC-1が飛行しているということで正直、幸運であることに喜んだ。

Img_9645  次期固定翼哨戒機XP-1,初飛行から六回目の飛行試験。今回は四時間の長時間飛行を実施した。ううむ、正直、KC-767を撮影した翌日にEC-1にXP-1と撮影できるとは思わなかった。これも雷の神様ということで航空の参詣も集めるという上賀茂神社へ、先週のXP-1撮影成功のお礼参りへ赴いた御利益であろうか。感謝!またお礼参りにいかねば!。

Img_9401  EC-1電子戦訓練支援機が岐阜基地へ着陸する。EC-1はレーダーサイトに対して電子攻撃やチャフ散布などによって電子戦環境を形成し、実践的訓練を行うことが目的の航空機。総隊司令部飛行隊に所属し、日本(というか世界)に一機しかいない非常に稀有な航空機。1984年12月に初飛行した機体で、C-1輸送機を改造したものである。

Img_9415  EC-1は、その特殊な目的から様々なアンテナを機体の各所に配置しており、機首や胴体、尾部にアンテナを収容している。ちなみに、今回は川崎重工において定期整備を実施中であるが、首都圏の方からお聞きしたのだが、この際に機体形状が大きく変わるのでは、と一部でいわれていたようだ。電子戦用か、もしくは計測用のポットとおもわれるものが機首の下あたりに置かれていることがわかる。

Img_9586  XP-1固定翼哨戒機.1018時に離陸し着陸は1412時。実質四時間の飛行試験を実施した。今回もP-3Cを随伴機として飛行を実施。離陸したP-3Cがローパスするとともに続いてXP-1が離陸した。写真は着陸の様子。今回は比較的正面から撮影出来る位置に展開した。XP-1の正面の様子が良く判る。着陸時に滑走路をフライパスして再度進入、着陸した。

Img_9612  六度目の飛行試験は、前述のように四時間と非常に長時間の飛行試験。15日の記事にも書いたけど、そろそろ、引渡しなのかな、と。海上自衛隊の明日を担う翼、真新しい純白の機体に引かれた真紅のライン、機首部分などにはYS-11の香りを感じられる本機は、日本の系譜だ。

 最後になりましたが、C.ジョニー様、MAD様、本日はありがとうございました。

HARUNA

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航空自衛隊空中給油輸送機KC-767J 日本到着

2008-02-20 15:18:13 | 先端軍事テクノロジー

■KC-767 岐阜基地到着

 近海練習航海部隊舞鶴出港の本日2月20日、中日新聞Web版やFlightaware.comにKC-767の岐阜到着に関する情報が出ていた為、こちらの方を撮影するべく岐阜基地に展開した。マッコーネル基地から岐阜基地にそのまま飛来したようだ。

Img_8911  航空自衛隊が始めて装備する空中給油輸送機となったKC-767,本機は戦闘機や輸送機、将来的には早期警戒管制機に対して空中給油を行い、航続距離や滞空時間の延伸延長を行うとともに、人員や物資などを貨物機と同じように輸送することが可能な航空機である。2001~2005年の中期防衛力整備計画で4機が整備され、最終的には7機程度が整備されるといわれている。

Img_8903  ボーイング社によればKC-767の空中給油能力は、遠隔空中給油操作員が遠隔視野システムによりフライングブームを操作し給油する。機内には自機用の燃料を含め91.62㌧の航空燃料を搭載でき、これはF-15Eで14機強、F-16Cで29機強の燃料を満タンにでき、追加燃料タンクを機内の貨物室に搭載すれば更に18.5㌧を搭載できる。給油速度は燃料がほぼゼロのF-15Eであっても2.34分で燃料を満タン状態にすることができる。

Img_8917  機体後部に伸びているのがフライングブーム。なお、このKC-767は空中給油輸送機と呼ばれているところから判るように元々ボーイング767-200ERを母体としただけあってパレット輸送方式で最大34.97㌧の貨物を輸送できる他、与圧された貨物室をキャビンとした場合、座席パレットを配置して192~200名の人員を輸送することが出来、緊急人道支援任務や邦人輸送任務にも用いる事が出来る。

Img_8921  航続距離は貨物4.7㌧搭載の状態で1400km、31.7㌧の貨物を搭載した場合でも9250kmの航続距離がある。貨物輸送型から人員輸送型への転換は4.3時間、これを戻すのに4.2時間。貨客混合運用も可能である。なお、KC-767は航空自衛隊のほか、イタリア空軍も採用しているが、原型機であるボーイング767は51%をアメリカが生産、日本が29%、イタリアが20%生産に参加している。

Img_8920  KC-767は本日着陸した岐阜基地に隣接する川崎重工岐阜工場で整備を受けた後、中日新聞2月19日朝刊(Web版)によれば29日頃に防衛省に引き渡される見通しとのこと。また、配備先となる小牧基地へは出来るだけ早く行われるとされ、2号機も年度内に日本へ到着する予定。運用開始は2008年度末の見通しで、岐阜基地から約60名の空中給油輸送機実用試験隊が小牧基地に派遣され運用試験を実施、その後、小牧基地に新編される部隊が運用する計画と報じている。

Img_8925  KC-767日本到着は以上。昨日の護衛艦あたご船舶衝突事故について。痛ましい事故ということで哀悼の意を表すとともに、大手マスコミによる報道の偏重には首を傾げざるを得ない。本ブログに報じているように、“あたご”は舞鶴を出港し、正月返上で訓練を行い、帰国している。

Img_8898  事故報告の遅れが海上自衛隊の危機管理云々いわれているが、“あたご”は緊急時ということで海上保安庁への通報とともに、第63護衛隊、第3護衛隊群を飛び越して船越の護衛艦隊司令部に通報しており、衝突回避失敗に問題はあるが、事後、手続き的には問題ないように思う。吉川海上幕僚長の危機管理意識もいわれているが、吉川幕僚長は98年に“はるな”艦上から第3護衛隊群司令として日本初の海上警備行動を指揮したことで知られ、判断した彼は危機管理については第一人者である。マスコミはこの事実を知っているのだろうか。状況の進展状況を把握しなければ、それこそ防衛大臣が常時中央指揮所に詰めていなければならなくなるほどの情報が集中してしまう。あと、イージスシステムのSPY-1Dレーダーと航行に用いるOPS-28C対水上レーダーの相違に関しては、事故後半日ほど触れられていない。これについては、後日、改めて詳述したい。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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