北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空宇宙自衛隊の宇宙戦争能力【4】防衛費GDP2%増税と反撃能力保有にも関わる宇宙問題と防空自衛隊問題

2022-12-22 20:00:20 | 国際・政治
■金額のみ議論の現状
 航空宇宙自衛隊へ改称するよりも防空自衛隊と云う現状をせめて航空自衛隊という名に恥じない水準まで転換する必要がある。

 反撃能力などは本来不要、航空打撃の本来任務だ。今回防衛三文書として政府は陸上自衛隊と海上自衛隊に射程2000km前後のミサイル、国産ミサイルとトマホークミサイルを配備し、日本本土へ弾道ミサイル攻撃や核攻撃の着手が行われた場合には、反撃し破壊する能力の確保が進められることとなりました、先ず当面五年間で2兆の予算と投じるという。

 しかし、航空打撃は航空自衛隊の所管であり、本来であれば反撃能力というのではなく、航空打撃戦の一環として航空攻撃を行えば、わざわざ新しい能力を構築する必要はありません、もちろん護衛艦にトマホークが搭載されても、それほど困ることはないのですが、航空自衛隊が現在の防空自衛隊から脱却していれば新装備調達に2兆円も必要ないのです。

 制空戦闘、ここで忘れられているのはF-15戦闘機は制空戦闘機であり、単なる防空戦闘機ではないということ、そして制空戦闘機というのはアメリカ空軍のドクトリンとして、敵国上空に展開し迎撃にあがる敵戦闘機をすべて撃破し制空権を掌握する、という戦闘機です。航空自衛隊ではこのための戦闘行動半径の大きさが有利とし採用の背景となりました。

 F-100のような爆撃機は不要だ。自衛隊の防空自衛隊志向という組織はもともと岸内閣時代に当時の主力であったF-86昼間戦闘機、全天候レーダーを有さないために昼間しか飛行できない故にこう呼ばれていた、この後継を選定する際にF-100戦闘機が提案されたさい、この機体は戦闘爆撃機としても使用できる点に、我が国に爆撃機は不要と一蹴したため。

 F-104戦闘機という純然たる迎撃戦闘機が採用されることとなりましたのが当時の次期戦闘機選定となっていますが、こののちに対地攻撃能力は周辺国に脅威を与えるという点から社会党などの要求もあり一種の禁忌となり、続いて導入されたF-4EJ戦闘機も、わざわざオプションで改造し照準装置を取り外す追加費用をくんだほどです。今とは全く違う。

 核戦争の時代なので気にする必要はなかった、当時の防衛政策において、日本有事として想定されていたおは米ソ核戦争の波及でした、74式戦車や73式装甲車などがNBC防護能力で90式戦車よりも高い水準、90式戦車は乗員が防護服を着用し車内は汚染物質が入る設計ですが、74式戦車は気密室構造を採用、その背景は核兵器使用が前提であった為でした。

 短期間で戦争は終わる、核戦争は短期間で終わると考えられたために、護衛艦などは小型のもので充分と考えられていましたし、航空自衛隊の任務は日本に飛来する爆撃機による核攻撃から防衛するという想定、だからこそ防空自衛隊のような能力で充分だと考えられていたのですが、当たり前ですが現代の戦争は核兵器使用前提は無く、実例もありません。

 しかし、これも1970年代後半には米ソ全面戦争という概念そのものを念頭としたドクトリンよりも、段階的に拡大する戦争への抑止や限定戦争という核兵器を前提としない戦いに転換しています、だからこそ自衛隊はこの頃にF-1支援戦闘機などを1970年代後半に導入しているのですが、基本的に防空、当時は敵基地攻撃能力など憲法違反という認識です。

 支援戦闘機、実は対艦攻撃ならばF-86戦闘機をF-4戦闘機の配備開始に併せ余剰となった機体を戦闘機から支援戦闘機に変更し反跳爆撃という、なかなか古めかしい方法で対艦攻撃訓練を実施していた時代まで遡る事は出来るのですけれども、世界が戦闘機と攻撃機に分かれていた時代から多用途戦闘機の時代に移行する最中にも、日本の動きが低調でした。

 F-15戦闘機、近代化改修には驚くべきことに試作改修で一機当たりF-2戦闘機新造分に匹敵する費用を投じています、いや、量産改修が始れば一機当たりの費用も下がるのかもしれませんが、自衛隊でF-15の配備が開始されたのが1981年、近代化改修で延命したとしても、わたしよりも年上の戦闘機が2040年代2050年代まで延々使えるのか、ともおもう。

 次期戦闘機としてF-35戦闘機の配備を進めている最中ですが、例えば既存の、延命しても抜本的な運用期間の延長が望めない機体について、三菱重工においてF/A-18E戦闘攻撃機かF-15FX戦闘爆撃機のような機体を導入により早期に置換えるという選択肢も必要でしょう、そして何より、対地攻撃や低空侵攻訓練を抜本的に増やす必要があるのではないか。

 防衛費の増額という方向で増税の話ばかりが進んでいますが、“宇宙作戦能力の強化”と“反撃能力の整備”は多くの防衛費を必要とする新事業です。しかし、それ以上に今ある装備を有効活用するという試みや、防衛力の効率運用と云う部分に話が踏み込まれていません、これはいままで政治も国民も防衛力の中身に踏み込まなかった結果なのですが、そろそろ改める時が来ているよう思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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プーマ装甲戦闘車全滅!ドイツ軍NATOリトアニア戦闘団派遣車両全車故障で稼働せず,ランブレヒト国防相激怒

2022-12-22 07:00:32 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-NATO即応部隊
 防衛省が調達するパトリアAMVの費用を見ますと89式装甲戦闘車よりも高いのではないかと危惧するところですが、ドイツから装甲戦闘車の残念な話題が入りました。

 NATOリトアニア戦闘団、NATO加盟国から選び抜かれた精鋭部隊が一つの戦闘団を編成し、万一の状況に備えて即応体制に置くというNATOが複数編成している戦闘団の一つが、編成完結を経て、その総合演習を実施しました。これはドイツ連邦軍公式SNSにおいて写真が発表され、良い画角だとかもう少し引けばよかったのに、と思いつつ眺めていました。

 プーマ装甲戦闘車、不思議に思いましたのはドイツ連邦軍公式SNSに発表される写真で日を追うごとに最新鋭のプーマ装甲戦闘車の写真が減り、1960年代のマルダー装甲戦闘車の写真が増えてゆく、当初これはわたしが74式戦車の写真を選りすぐって撮るように、撮影者の懐古趣味なのだろうかと思ったのですが、演習とともにドイツ国防相の怒りの声明が。

 ランブレヒト国防大臣は、NATOリトアニア戦闘団へ派遣されたプーマ装甲戦闘車18両全てが演習中に故障し動かなくなったという、数週間以内に是正できなければ退役させる、という厳しい声でした。プーマ装甲戦闘車は、装甲戦闘車が30t前後の時代に全備重量45tもの重装甲を誇り、新時代のドイツ連邦軍を背負うと期待され2004年に完成しています。

 重装甲戦闘車、と当方は一時期区分していたほどですが、問題はドイツ軍のアフガニスタン派遣が始まると、汎用性の高いボクサー装輪装甲車が重視され、量産開始が2010年までずれ込みます、ただ、2014年までは年間数両という寂しい規模でした、どこかの89式装甲戦闘車を思い出す。ただ、連邦軍建て直しへ2015年から大量生産へ移行してゆきました。

 邦貨換算1両12億円の装甲戦闘車です。350両を生産し、最終的に410両を調達する計画でしたが、とにかく不具合が多い装甲車として知られ、無人砲塔を搭載したものの頻繁に再移動を必要とする、設計が2004年と古い為に自衛隊の広帯域無線機に当るデータリンク装置を搭載していない、エンジンの排気制御装置の不具合など、伝えられていたものです。

 5億0100万ユーロを投じて、ドイツ連邦軍は昨年6月末に初期型の154両を不具合対応することとしています。1両あたり325万ユーロもの費用を投じて改修するのですが、今回不具合が発生したものは改修済みの車両ということで、製造から十年前後の装備としては、一寸お粗末、というところです。連邦軍は8億2000万ユーロの追加改修を計画している。

 冷戦時代のドイツ連邦軍は洗練された装甲師団と装甲擲弾兵師団に勇気で挑む降下猟兵旅団と、理想的な編成の軍隊に、傑出していないが優秀な装備の高い稼働率と最高の戦術研究や指揮官に支えられた編成の軍隊でした。しかし、冷戦後は一気に脅威がなくなる平和の配当を前に、雑多な旅団の寄せ集め、再編成し僅か2個となった装甲師団、となった。

 日本の自衛隊は、ここまで酷いものではありませんが、可動する火砲は数十門とか、動く潜水艦が無いとか、戦闘機は即応機5機だが衝突事故を起こした為に3機、などなど厳しい話が聞こえました。ある程度は再構築された、とは聞いていたのですが、今回最新鋭のプーマ装甲戦闘車の概況を伝え聞きますと、一旦崩れたものの再建の難しさを、痛感する。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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