北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

朝鮮半島有事邦人救出検証(5)CH-47J/JA輸送ヘリコプター韓国釜山九州福岡間緊急輸送検討

2018-04-30 20:12:47 | 国際・政治
■大量のCH-47輸送ヘリを集中
 邦人救出、隣国韓国には多数の邦人が居留しており難易度を高めますが、隣国故の距離の短さという光明もあります。

 九州へ釜山から輸送ヘリコプターによる邦人救出を政府は想定している。昨年からの朝鮮半島緊張を背景に報道されたところによれば、陸上自衛隊と航空自衛隊が多数を保有しているCH-47J輸送ヘリコプターやUH-60JA多用途ヘリコプターを邦人救出へ活用の指針を示しています。今回はこのヘリコプターによる邦人救出の可能性を検証してみましょう。

 在韓邦人は5万7000名、一時滞在者と長期滞在者の合計はこれほどの規模となります。500名乗りのボーイング777旅客機を120機程度準備して初めて達成できる規模だけに果たしてヘリコプターでの空輸は可能なのか、不安である事は確かです。ただ、必ずしも5万7000名全員をヘリコプター輸送するのではなく、また自衛隊保有数の多さも加味するとどうか。

 陸上自衛隊はCH-47J/JA輸送ヘリコプターを55機運用しています。実は世界的に見て大型輸送ヘリコプターを20機以上保有する国は非常に限られているのです。理由は簡単で、大型ヘリコプターは最新戦車の十倍前後という高価なものであり、導入したくとも出来ないのです。自衛隊は山間部と離島の多い国土防衛の観点から特に重視、多数を揃えました。

 航空自衛隊もCH-47J輸送ヘリコプターを20機保有しています。これはレーダーサイトへの部品緊急空輸や弾薬輸送支援の任務にあたるものです。世界に20機以上の大型輸送ヘリコプターを保有する国は少ないと前述しましたが、航空自衛隊も20機保有している。CH-47は高価な航空機ですが川崎重工にてライセンス生産が行われ、少数を調達し続けている。

 CH-47J輸送ヘリコプターは55名乗りの輸送ヘリコプターで航続距離は1000kmあり、とはCH-47Jの航空祭や駐屯地祭での展示パネルに記載されている内容ですが、実は70名から80名程度は搭乗できます。55名とは完全武装の歩兵や普通科隊員を空輸する状況で、実は新潟中越地震山古志村全村避難の際にも緊急時ということで実施されたという事でした。

 フォークランド紛争では200名以上を詰め込んだ事例もある。1982年のイギリス領フォークランド諸島へアルゼンチン軍が侵攻した際、イギリス軍が奪還作戦を行う際、イギリスの航空機輸送貨物船アトランティックコンベア号がミサイル攻撃により撃沈、多数の航空機材をイギリスは失いました。しかし沈没前にCH-47を一機脱出させる事に成功します。

 イギリス軍はCH-47を貴重な航空輸送力として活用し、特に軽武装の空挺兵を“ロンドン地下鉄の朝ラッシュ並に”詰め込む事で驚く事に200名も搭乗させたという。操縦士は対空砲火にでも曝されないかと気が気ではなかったと回顧する資料があります。流石にここまではやりすぎといえますが、それでもCH-47潜在輸送能力の一端を示すといえましょう。

 2500名、これは毎年行われる木更津航空祭における体験搭乗と地上滑走の定員です。500名が抽選で体験飛行を、2000名が先着順に地上滑走を体験できます。体験飛行は東京湾中部を一周する15分程度の飛行時間、地上滑走は木更津駐屯地で高度数百mまで上昇し駐屯地内の飛行体験するもの。何が言いたいかといえば、自衛隊は大量輸送に慣れている。

 自衛隊が保有する75機のCH-47,もちろん朝鮮半島有事となれば防衛出動待機命令が発令され、ミサイル防衛や特殊部隊浸透などへの対処も必要となりますが、総数の四割を投入できたとして30機、新潟中越地震並みに邦人を搭乗させ一往復2400名、釜山から長崎県対馬まで70km、24時間で最大8往復、釜山まで脱出した在韓邦人の多くを救出できます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】富士学校創設63周年富士駐屯地祭【05】特科教導隊の観閲行進(2017-07-09)

2018-04-29 20:04:43 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■203mm自走榴弾砲の迫力!
 富士学校創設63周年富士駐屯地祭,元々より前の行事用に解説記事を作成し急遽昨年の富士学校祭写真へ転換しましたので若干写真と解説分の離隔がある事をご了承ください。

 自衛隊の牽引砲重視、当時の国鉄貨物列車では自動装填装置を有し高性能の75式自走榴弾砲や安価なM-109A2等は全幅が大き過ぎ運べない、しかしFH-70ならば牽引車で高速道路を100km/hにて飛ばせ、貨物列車にも載せられる、ここに自衛隊がFH-70を評価した背景があります。

 特科教導隊第1中隊と第2中隊の観閲行進、74式特大トラック派生型の中砲牽引車がけん引している、普通科部隊を支援し迫撃砲を叩き潰す直掩火砲の105mm砲が軽砲で全般支援にあてる155mm砲が中砲、軍団砲兵用の203mm砲が重砲、として区分していました。

 しかしながら、1970年代以降、世界では155mm砲への統合化が進む事となります、二種類よりは統合した方が良い。そこで自衛隊も105mm砲は礼砲用の予備装備を除き155mm砲へ統合されてゆきます。北海道に75式自走榴弾砲、本土用にFH-70榴弾砲、として。

 39口径155mm砲というものは砲身の長さを示すものです。155mm×39、という砲身の長さに由来する。方針が長ければ装薬の燃焼効率が高くなり射撃時に砲弾速度が大きくなる。初速が大きければ結果射程が伸びる、走り幅跳びと立ち幅跳びの助走と考えれば良い。

 長砲身は有利だが鋳造が難しいという難点があります。仮に鋳造できても精度が低ければ連続発射で変形してしまう、火砲の製造技術向上はこの問題を克服したのですね。我が国では榴弾砲から艦砲まで日本製鋼所が製造していまして、砲身精製精度は世界的にも高い。

 FH-70の最大射程はメーカーによれば射程延伸装薬を用いた場合で42km、ただし実用的な射程は30kmという。東富士演習場では地形成約により3kmの射撃しかできません。日本最長の長距離射撃ができるのは北海道矢臼別演習場の14km、それ以上は海外で行う。

 自衛隊は第二次世界大戦型火砲の後継火砲として、FH-70榴弾砲を選定する際、FH-70のほかにアメリカ製で軽量だが自走能力が無いM-198榴弾砲とスウェーデン製の3発自動装填装置を持ち瞬発火力が大きいが火砲そのものも大きいFH-77を候補として検証しました。

 FH-77は3発の砲弾をクレーンで吊り上げ弾庫に装填すると13秒で全部撃ってしまう、FH-70は緊急射撃で毎分6発というから凄い、しかし日本の道路には大き過ぎたのです。FH-77を開発したスウェーデンは永世中立国、機動力よりは火力重視が要求されている。

 大砲の撃ちあいは過酷です。速度が全て結果に反映されるのです。速度とは何か、砲弾は対砲レーダーに映る、射撃から数分で反撃の砲弾が降り注ぐ、だからNATO諸国は牽引砲よりも自走榴弾砲を選んだのは、撃ったらすぐに移動できるという意味がありました。

 FH-70はこの点も強いのです、FH-70は富士重工製、いまはスバルか、エンジンを搭載していて短距離を自走できる、半自動装填装置により連続射撃能力が高いので数発撃ったら直ぐ陣地変換します。下手に地下掩蔽陣地に籠るよりも、移動した方が生き残れるのです。

 自衛隊はFH-70榴弾砲を479門も調達しました。これはNATOのイギリス、ドイツ、イタリアの調達総数よりも多い。日本製鋼所にてライセンス生産したのですが、量算数を考えますと恐らく日本でFH-70を生産し欧州へ供給した方が安かったのではないでしょうか。

 現在火砲は52口径の長砲身が最新型なのですが39口径火砲も依然として多い、これは冷戦後の趨勢です。そして世界を見れば第二次世界大戦中の火砲も意外と現役だ、我が国周辺では先進国の一員である韓国や台湾で第二次世界大戦中の105mm砲が現役でもある。

 特科教導隊第3中隊の観閲行進、99式自走榴弾砲を装備する特科中隊です。99式自走榴弾砲の長砲身は勇ましい。日本製鋼所が開発した52口径155mm榴弾砲を装備している、その射程は30kmというが薬室容量や後退駐座器の強度上40kmは超えるともいわれるもの。

 北部方面隊の特科連隊と特科隊へ重点配備されており、本土での配備は富士教導団と武器学校のみ。日本の自走榴弾砲は先代の75式自走榴弾砲以来、自動装填装置を採用し素早い射撃能力を持ちます。一効力射30秒3発といわれていたのが75式自走榴弾砲の時代です。

 99式自走榴弾砲は射撃速度と射程、標定装置にデータリンク能力を加え性能は凄い。その分高価と云われるが、生産数は130両ほど、先代の75式自走榴弾砲は退役完了したが実は北部方面隊の特科部隊は定数割れの状態となっているので当分生産は続くとのこと。

 島嶼部防衛を考えると、射程50kmの火砲が欲しい所ですね。99式自走榴弾砲については未知数ですが、世界を見れはロケット補助推進のRAP弾を用いれば50kmの射程を持つ火砲はある、南アフリカのG-6/52ライノ自走榴弾砲は射程最重視の結果55kmに達しました。

 火砲で射程50km以上あるものとしては更に試作に終わったアメリカのクルセイダー自走榴弾砲が70kmを越えています。ドイツのPzH-2000自走榴弾砲も公式では40kmが最大だがアブダビ兵器ショーでは50km超えの射撃を展示し、もっともアフガニスタンで極端に長射程射撃での精度が低下したという欠陥判明はありますが射程は長い。

 50kmを越える射程の火砲があれば、宮古諸島を考えると航空自衛隊の宮古島分屯基地と陸上自衛隊の新しい駐屯地が出来る石垣島や与那国島に配備したならば相互の射程で宮古諸島全域を火力圏内に収める事が可能となるでしょう。島嶼部防衛を考えれば理想的です。

 ミサイルと違い榴弾砲は上陸前の警告射撃や着上陸後の海岸橋頭堡を叩く事が出来る。那覇駐屯地と奄美大島に建設する新駐屯地に配置したならば沖縄県と鹿児島県の離島防衛を火力網で覆う事が出来る。一個中隊だけでもいい、データリンクで繋げばよいのですから。

 陸上自衛隊はFH-70榴弾砲の後継として火力戦闘車という国産装輪自走砲を開発中だ、聞くところでは日野自動車が自衛隊に納入する10tトラックの荷台に52口径火砲か先進軽量砲を搭載し手早く開発する予定だったのですが、メーカーである日野自動車が難色を示す。

 射撃の反動に車体の懸架装置が耐えられるかが疑問として日野自動車が難易度の高さを表明したため。しかし、自衛隊は特科火砲を従来の900門から300門まで縮小する施策を示しているので、いっそ本土の特科部隊にも99式自走榴弾砲を装備してはどうかとも思う。

 99式自走榴弾砲にFH-70と開発中の口径火砲である火力戦闘車、300門の火砲定数を二種類新旧三種類の火砲で充足するなど、幕の内弁当じゃああるまいし、とおもうのです。99式自走榴弾砲の砲塔システムを大型装甲装輪牽引車へ搭載するという手段もあるでしょう。

 特科教導隊第4中隊は203mm自走榴弾砲を装備している中隊です。アメリカ陸軍がM-110として装備していた自走榴弾砲で軍団砲兵用の火力、自衛隊でも方面特科隊に配備している装備で、北部方面隊と東北方面隊に西部方面隊の方面特科に91両が配備されていました。

 重厚な砲身が頼もしい203mm自走榴弾砲ですが、既に東北方面隊からは退役しており、北部方面隊と西部方面隊でも除籍が進む終り行く冷戦時代の重装備と云えましょう。火砲300門体制への転換と共に除籍され、方面隊へはロケット砲が配備される為、後継装備としての重砲は調達されませんでした。

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仏独次期哨戒機へP-1哨戒機提案!ロシア潜水艦脅威顕在化へ急務のNATO対潜能力再建

2018-04-28 20:02:29 | 先端軍事テクノロジー
■フランスドイツ将来対潜哨戒機
 P-1哨戒機が輸出されるかもしれません。フランスドイツ将来対潜哨戒機としてです。

 フランスドイツ将来対潜哨戒機へ海上自衛隊が運用する川崎重工製P-1哨戒機が提案されるとの驚きのロイター報道がありました。ロイター報道といえばF-22戦闘機へF-35戦闘機関連技術を搭載する新型機を日米共同開発として航空自衛隊F-2戦闘機後継機へ提案したという、報道があったばかりですが、改めてP-1哨戒機輸出という報道には驚きでした。

 P-3C哨戒機とアトランティック哨戒機を運用するフランス海軍、ドイツ海軍ですが、共に老朽化が進んでいます。哨戒機老朽化の一方、欧州では北海やバルト海、北大西洋においてロシア潜水艦の行動が活性化しており、ウクライナ東部紛争介入やクリミア併合を契機に対立が激化するロシアと欧州の緊張状態を背景に、新型対潜哨戒機が必要となりました。

 P-1哨戒機を原型とする新型哨戒機をフランスドイツが開発する、というもので、既に海上自衛隊において運用実績のある哨戒機を原型とする低リスクの開発計画を提示したものです。P-1哨戒機は量産が進み、一定程度の量産効果による費用低減が圧制されているほか、先日海上自衛隊が中国新型原潜商級を捕捉したように自衛隊対潜能力の高さで知られます。

 P-3C哨戒機での経験を基に、P-1哨戒機は高高度からの索敵から潜水艦攻撃への低高度までの機動性を確保するとともに、長大な航続距離とHPS-106レーダー等先進装備を固めています。最新鋭哨戒機としてアメリカ製P-8Aがありますが、旅客機を原型としている為、高高度の索敵から一機に低空での攻撃へ移行する等の運動性ではP-1哨戒機に及びません。

 イギリス将来対潜哨戒機へ、P-1哨戒機は2016年に提案されていますので、今回のフランスドイツへの提案は、防衛装備品輸出という意味で目新しいものではありません。また、防衛用航空機輸出はインドへのUS-2救難飛行艇輸出交渉やフィリピンへの中古TC-90練習機供与等の実績もあります。ただ、P-1哨戒機輸出が実現すれば巨額契約となりましょう。

 P-8A哨戒機、イギリスへのP-1哨戒機輸出提案ではアメリカ製ボーイング737原型の新型哨戒機との競合に一敗しました。イギリスはニムロッド対潜哨戒機全廃以降数年ぶりの導入で、P-8A採用の背景には、同盟国アメリカが採用しているため、イギリス軍への技術情報接近の容易さと、評価試験不要という運用リスクの低さが理由として挙げられています。

 フランスドイツ将来対潜哨戒機候補にはP-1以外にも仏伊ATR社製ATR-72ターボプロップ旅客機を原型とするATR-72-ASW対潜哨戒機構想、エアバスA-321旅客機へ対潜機材を搭載するA-321-MPA構想、ダッソーファルコン900ビジネスジェットの対潜型、アメリカ製P-8A哨戒機が提案されています。また、ロッキード社はC-130輸送機へ対潜機材を搭載するC-130-ASWを提案する可能性もあるでしょう。

 ベルリン国際航空宇宙展へP-1哨戒機2機を派遣し、政府は輸出交渉を主導するかまえです。政府は何故P-1哨戒機を輸出しようとしているのか、その理由は量産効果を高める事で自衛隊所要機の費用を低減する目的があります。防衛省は多年度一括取得として20機を一か年で取得する事で費用一機当たり130億円まで低減、実に15%程度圧縮できています。

 しかし、その輸出は簡単ではありません、P-1哨戒機は純国産機、元々が輸出を想定した設計ではないため、エンジンを含めIHI製エンジンを採用する等、フランスやドイツの既存航空機との部品互換性等、汎用性の面で限界があります。また、センサー等も互換性は想定外、原型機として開発する場合、エンジンとセンサー等、改造点は多岐に上るでしょう。

 加えて、P-1哨戒機を輸出する場合、どこまでの情報開示を行うのか、特に海上自衛隊が運用するセンサーやデータリンク系統を合わせて情報開示を求められた際の経験が少なく、防衛秘密と装備移転という相反する要求の妥結点を見出す難しさ、また定期整備や予備部品等、航空機引き渡し後の支援体制をどう構築するかについても、未知数の部分は不安だ。

 一方、海上自衛隊はP-1哨戒機を60機程度取得し、更にP-1哨戒機を原型とする電子情報収集機や洋上早期警戒機等の派生型を研究中です。一方、フランスやドイツは対潜哨戒機を装備し、その保有数も両国合わせ25機、世界的に見た場合、決して少なくは無いのですけれども、世界に二桁の数の哨戒機を保有する国も稀有なのですが、自衛隊よりも少ない。

 ATR-72-ASW対潜哨戒機構想、エアバスA-321-MPA構想、といった独自案に対してならば、P-1哨戒機の方が既に完成した機体を原型と出来、そしてなにより新規開発となる上記機種よりもすでに量産効果の部分で優位性があります。こうした意味では輸出は手探りの部分も多いのですが、必ずしも不利な要素だけではなく、動静を慎重に見守りたいですね。

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平成三〇年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.04.28/29-05.03/05)

2018-04-27 20:03:46 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 GW到来、やったぜGW,しかも今日はさっき聞いたらプレミアムフライデー、皆様いかがお過ごしでしょうか、今年のGWは日米海兵隊祭りです。

 水陸機動団創設記念相浦駐屯地祭、長崎県佐世保市に新編された水陸機動団は我が国戦後初の水陸両用作戦専門部隊です。佐世保駅から松浦鉄道乗換、AAV-7水陸両用車を装備する水陸機動団は三月末に西部方面普通科連隊を増強改編し創設されたばかり、年々厳しさを増す南西諸島防衛へ防衛省自衛隊が進める統合機動防衛力整備の切り札として新編です。

 岩国基地日米フレンドシップデイ、アメリカ海兵隊第一海兵航空団航空部隊とアメリカ海軍第五空母航空団、海上自衛隊岩国航空基地の一般公開です。2005年の在日米軍再編により厚木航空基地より移転成った第五空母航空団初の航空祭であり、F/A-18E/F戦闘攻撃機等が大量配備され、海兵隊は第五世代戦闘機F-35Bを配備、アジア最大級の航空基地となりました。

 岩国基地日米フレンドシップデイ、大迫力の飛行展示です。その分注目度も高く、毎年GW中に開催されるとあって2002年に最後となった厚木ウイングス以降、入間基地航空祭と並び日本で最も多くの来場者が集う航空祭で、毎年JR岩国駅は入場制限が行われるほどの活況、シャトルバスも長蛇の列となりますので、駅から基地まで徒歩という選択肢もある。

 キャンプ富士フレンドシップデイ、静岡県御殿場市の在日米海兵隊訓練施設です。本年は岩国が混みそうなので、ゆるーくキャンプ富士、と思うもののF-35Bの参加があるとのこと。駐屯地祭と違い観閲式や訓練展示は無く、装備品展示中心の行事ですが、MV-22可動翼機、AAV-7両用強襲車やLAV-25軽装甲車、M-777軽量榴弾砲といった海兵隊ならではの装備品が展示されます。このGWは日米水陸両用部祭の様相ですね。

 エアメモリアル鹿屋、第1航空群の展開する海上自衛隊鹿屋航空基地祭です。西海防衛の要衝として重責を担う海上自衛隊哨戒機部隊の拠点で、P-3C哨戒機による編隊飛行や機動飛行等が迫力の行事、終戦時には海軍第五航空艦隊が置かれた伝統の地でもあり、街を挙げての航空基地となっています。開会式では基地司令と市長によるテープカットを行う。

 鹿屋航空基地は鉄道では進出が難しい航空基地の筆頭で、鹿児島市の対岸、国鉄鹿屋線廃線後は最寄駅が西鹿児島駅、現在の鹿児島中央駅となっています。しかし、鹿児島中央駅から鹿児島市電で鹿児島港、垂水港行鹿児島湾フェリーにて海を渡り、鹿屋バスにて鹿屋航空隊へ。当日展開は交通受胎の懸念もありますので、早め早め行動が望ましいでしょう。

 中部方面混成団創設記念大津駐屯地祭、滋賀県大津市の駐屯地祭です。第109教育大隊と善通寺の第110教育大隊に海田市第47普通科連隊と豊川第49普通科連隊等を隷下に有する方面混成団、教育大隊全員による徒歩行進、琵琶湖体験乗船として渡河ボート試乗や教育大隊の若い自衛官候補生による自衛隊体操等、琵琶湖畔での迫力の行事が行われます。

 さて撮影の話題、自衛隊関連行事展開に、寝台特急全廃後の今日も、阪九フェリーや名門大洋フェリーという選択肢を含めますと、個室寝台を非常に安価に使えますし、早朝に到着しますので快適さと豪華さと利便性に驚かされました次第です。大浴場も清潔でレストランも美味しく瀬戸内の夜景と共に一杯という移動、寝台特急廃止後に夜間快適に移動する手段として、成程と良さを知りました。

 しかし、目的地に早朝に到着するフェリーというのは少数派なのですね、北海道へ安価に向かおうとしますと名古屋から太平洋フェリー、舞鶴から新日本海フェリー、大洗から商船三井フェリー、となるのですが、新日本海フェリー小樽着は2045時、太平洋フェリー苫小牧着は1100時、商船三井フェリー苫小牧着は1330時、行事当日着では間に合わない。

 太平洋フェリーは仙台港経由ですが先代を目的地とした場合でも入港は1640時ですので行事への交通手段には使い難く、阪神地区から九州への阪九フェリーや名門大洋フェリー、宮崎に0840時に到着する宮崎カーフェリーの利便性の高さが際立つ。これは長距離トラック輸送への利便性を第一として夕方着という話も聞きますが、観光には使い難いですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・5月5日:キャンプ富士フレンドシップデイ…http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Installations/Fuji.html
・5月3日:中部方面混成団創設記念大津駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/macb/
・5月5日:岩国基地日米フレンドシップデイ…http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/units/Maw.html
・4月28日:水陸機動団創設記念相浦駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/gcc/ardb/index.html
・4月29日:エアメモリアル鹿屋/鹿屋航空基地祭…http://www.mod.go.jp/msdf/kanoya/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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F-2後継ニッポンFS-XにF-22&F-35日米共同開発案急浮上【2】F-2-Super-KAI騒動顛末

2018-04-26 20:08:18 | 先端軍事テクノロジー
■国際航空宇宙展F-2スーパー改
 F-22&F-35のFSX-2,しかし思い出すのはF-2-Super-KAIというWeblog北大路機関創設準備中の騒動顛末です。

 F-2戦闘機後継機をどうするのか、最新鋭という呼び名で初飛行を迎え既に二十年以上、F-2支援戦闘機も運用区分がF-2戦闘機となり、防衛装備庁は2030年代にはF-2後継機を導入開始する、との展望に基づき国産技術開発を進めてきました。日本はエンジン技術で技術力はあっても実績が無くエンジン開発で不安が残り、マネジメント能力も不安がある。

 F-2-Super-KAI,航空自衛隊の次の戦闘機についてF-22とF-35の技術を併せた新型機の提案ですが、開発について一転留意するのは本案がロッキードマーティン社より非公式に打診されたという点です。ここで考えるのはF-22とF-35に関する技術情報を何処までアメリカ側が日本へ提供するのか、見通しがあるかについてで、F-2-Super-KAIを思い出す。

 F-2-Super-KAIとは2004年にロッキードマーティン社が独自提案したF-2支援戦闘機の独自改良型提案です。横浜みなとみらい21パシフィコ横浜にて開催の国際航空宇宙展ジャパンエアロスペース2004、その会場においてロッキードマーティン社が大型パネルにて発表されたもの、巨大なCFT外装型燃料タンクを搭載したF-2B改良型の新造機が描かれた。

 F-2-Super-KAI外見上最大の特色は、巨大なCFT外装型燃料タンクの追加搭載で、これはロッキードマーティン社がF-2の原型機となったF-16Block60等に搭載する胴体密着型の低空気抵抗型燃料タンクです。F-2は機体内部に4700lの航空燃料を搭載しますが、CFT追加により8100lの機内燃料搭載能力を得て、戦闘行動半径を大幅に拡張する事が可能だ。

 F-2-Super-KAIは機体構造をF-2B支援戦闘機の構造を基本としながら、能力拡張型次世代AESAレーダー換装、LINK-16 JTIDS/MIDS 先進統合型データリンクシステム搭載、WSO兵装システム士官専用後席追加、JHMCS統合型ヘルメット照準装置追加、PANTERA/FLIR先進前方赤外線監視装置運用能力追加、偵察ポッド運用能力、以上追加改修される案です。

 F-2-Super-KAI は上記先進センサーや追加搭載機材により、LGBレーザー誘導爆弾、WCMD誘導クラスター爆弾、JDAM/GPS誘導爆弾、AGM-154 JSOW巡航ミサイル、AGM-88 HARM対レーダーミサイル、AIM-9X先進短距離空対空誘導弾、AIM-120 D-AMRAAM中距離空対空誘導弾運用能力などを得て2030年代の多用途任務へ対応を期す。現在推進中のスタンドオフ装備との重なる部分も多い。

 F-2-Super-KAIと今回のF-22&F-35-FSX案との共通点は、ロッキードマーティン社の独自提案、という点です。F-2-Super-KAIは実現していたらば、RF-4戦術偵察機後継機や現在検討伝えられるEA-18G電子攻撃機の必要な性能を充分満たし、30機程度の需要、またF-35までの次期戦闘機選定の予想外の遅延に際し、老朽化著しいF-4EJ代案ともなり得ました。しかし、大きな問題が一つ、ロッキードマーティン社の独自案だったのです。

 X-2実験機、として防衛装備庁が技術研究本部時代から蓄積した戦闘機構成技術を応用し将来戦闘機に繋げる技術実証機を2016年に初飛行させています。一見、第五世代戦闘機をもわせる形状でしたが、燃料搭載やレーダー搭載、機体規模の小ささから兵装庫を有さない純粋な実験機でしたが、充分予算と期間を重ねれば国産戦闘機開発も可能だったでしょう。ロッキードマーティン社独自案は、この流れと歩調や調整を併せたものではありません。

 国産戦闘機、勿論この部分についても万全とは言い難く、課題の方が多い。問題は日本が開発すべき戦闘機はF-22やF-35の次世代にあたる第六世代戦闘機であり、防衛省には第六世代戦闘機について“凄く強い”との曖昧模糊とした認識以外確たる定義がありません。高度なステルス性、ネットワーク型戦闘対応、高度な運動性、長距離瞬時攻撃能力、長大航続距離、防衛省が挙げる定義は第4.5世代と共通する点が多い。

 第六世代戦闘機は、同時に膨大な開発費を要する点で一国開発が難しい点も忘れてはなりません、ステルス性を重視した航空機とは航空力学を無視した形状であり、これを空中戦に用いるには操縦補正プログラムが必要となる、勿論、火器管制装置やデータリンク等を体系化するにはシステム統合の可変変数増大を意味し、プログラム開発だけでも膨大だ。F-2-Super-KAIは一つの案と云えたのですが、日本政府や航空自衛隊の要求ではなく独自案として出されたことで、単なる技術提案に終わった印象がある。

 FSX-2というべき今回の提案に視点を戻すと、リスク面では一国開発よりも低い。イギリスとの第六世代戦闘機研究など、防衛省では技術交流の形で様々な第六世代戦闘機開発を模索していますが、イギリスのBAE社はトルコとの共同開発を模索、NATOではドイツフランス次世代戦闘機国際共同開発、韓国も准第五世代戦闘機米韓共同開発、と莫大な費用を忌避、一国開発を断念する事例も多々見受けられ、独自開発は中ロ程度でしょう。

 F-22&F-35-FSXは、この観点から少なくとも飛行している実用航空機を念頭に開発するリスクの低い案である事は確かなのですが、F-2-Super-KAIのように非公式打診の一つに過ぎず、その意味ではF-22&F-35-FSX関連技術開示でのアメリカ政府との確たる共同歩調が採られているのか、梯子を外されないか、との懸念は、やはり忘れてはならないでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【14】F-35B,護衛艦搭載と空母運用を隔てる弾薬搭載の壁

2018-04-25 20:06:45 | 防衛・安全保障
■艦上固定翼哨戒機の構想
 舞鶴の護衛艦ひゅうが、佐世保の護衛艦いせ、横須賀の護衛艦いずも、呉の護衛艦かが、全通飛行甲板型護衛艦は四隻揃う。

 ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦はF-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として搭載し、運用することは出来るでしょう。しかし、F-35B戦闘機を運用する航空母艦としては使用できない、という視点、これはF-35Bを固定翼艦上哨戒機としてではなく、戦闘機として航空打撃戦や制空権確保に用いる場合を示すのです。

 F-35B戦闘機を搭載するには、整備能力と弾薬運用能力や燃料搭載能力が必須となります。整備能力については、もともとF-35Bがアメリカ海兵隊やイギリス海軍において運用を想定し、狭い艦上での整備は勿論ですが野整備をも想定している航空機です。また燃料についてもヘリコプター搭載護衛艦は元々哨戒ヘリコプター用の大量の燃料を搭載しています。

 護衛艦の全通飛行甲板にF-35B戦闘機を並べて運用する事は、燃料や整備区画のほかに整備要員の収容能力も必要となりますが、ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦ともに科員区画の二段ベッドを三段ベッドに転用する事で収容力を強化できますし、もともと便乗者の乗艦を想定し余裕ある設計を採っています、整備員を受け入れる能力もあるといっていい。

 空母として、それならば完全に運用できるのか、と問われますと、大きな問題は弾薬搭載能力です。弾薬は無造作に艦上や格納庫に並べる事は出来ず、定期的にミサイルコンテナの整備を必要とします。F-35Bが航空戦闘を実施する際には、AIM-120D-AMRAAMを2発とAIM-9Xを2発搭載しますが、この程度であれば十数発程度追加搭載は簡単でしょう。

 しかし、制空戦闘を実施するには少なくとも飛行中隊規模、6機程度は搭載しなければ、勘定での緊急発進の待機さえできません、前述したイギリスのインヴィンシブル級軽空母でもハリアー攻撃機を当初5機搭載、迎撃能力や戦力投射任務にあたる際には9機程度を搭載していました。6機搭載3任務飛行の弾薬を考えた場合、72発のミサイルが必要となる。

 制空戦闘を実施する場合、F-35Bはミサイルの機外搭載が可能です。これによりミサイルがレーダーに反射するためにステルス性は損なわれますが、機内兵装庫へAMRAAM4発を搭載した上で、主翼にAMRAAMを8発、AIM-9Xを2発搭載可能となり、仮に6機分を搭載した場合は一回の出撃でAMRAAMだけで72発、3任務飛行を行う際には216発要る。

 航空母艦がどの程度の頻度の戦闘を行うのかは運用により左右されますが、参考までに標準艦載機数が固定翼航空機52機とヘリコプター15機であるニミッツ級原子力空母で24時間の出撃機数は240機を想定、最新鋭のジェラルドフォード級原子力空母は電磁カタパルト採用等で将来的に270機を想定、24時間で3から4の任務飛行を想定しているようです。

 AMRAAMを216発、ひゅうが型の弾薬庫容積は弾薬庫専用エレベータを有するなど決して小さなものではありません、確証はありませんが搭載できる余地はあるでしょう。しかし忘れてはならないのは、F-35Bは統合打撃戦闘機であり、航空母艦として運用する際は戦力投射任務に際し、JSM空対地ミサイルやJDAM精密誘導爆弾を搭載せねばなりません。

 F-35Bを全通飛行甲板型護衛艦へ搭載したらば固定翼艦上哨戒機としてステルス性を活かした索敵任務や、わが方へ艦隊攻撃に際し防空戦闘を実施する事も可能ですし、JSMを搭載し運用した場合、艦隊間戦闘では相手に対し従来とは比較できない程のプレゼンスを発揮できます。しかしこの能力は制海艦としての任務であり、航空母艦運用ではないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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F-2後継ニッポンFS-XにF-22&F-35日米共同開発案急浮上【1】アメリカLM社の非公式提案

2018-04-24 20:18:00 | 先端軍事テクノロジー
■ニッポンFS-Xにロッキード案
 ロイター通信20日付“空自F2後継機、米社がF22とF35両機ベースの開発案打診”驚きの報道がありました。

 航空自衛隊の次期戦闘機について、F-22戦闘機を原型としてF-35戦闘機により培われた新技術を応用した日米共同開発の提案がアメリカロッキードマーティン社側よりなされた、驚きのロイター報道がありました。F-2戦闘機の後継機なのだからF-22といっても“2”が一つ増えただけ、というような簡単なものではなく、輸出不能といわれたアメリカ製第五世代戦闘機の示唆です。

 F-22戦闘機は現在航空自衛隊が配備を開始したF-35戦闘機に先行する世界初の第五世代戦闘機、実戦運用から世界最強の制空戦闘機というアメリカ空軍のF-15戦闘機の後継として開発され、制空戦闘機の上を行く航空支配戦闘機と呼ばれる機体です。一方、F-22は制空戦闘に特化し過ぎた為、多用途戦闘機として汎用性を高めた機種がF-35戦闘機、となる。

 F-35戦闘機を導入する航空自衛隊ですが、当初、F-4戦闘機後継機として構想されていたのはF-22戦闘機でした、強力なエンジンと空中ではハガキ一枚分にしか反応しない徹底したステルス性能、レーダーや電子戦装置にて来襲する戦闘機が気付かぬまま優位な方向から一方的に撃墜する、F-22が航空支配戦闘機と誇示される背景には圧倒的高性能がある。

 航空自衛隊は2000年代前半、小泉政権時代に旧式化したF-4戦闘機、原型機の部隊配備は1959年という旧式機の最新型、その後継機にF-X選定を構想していましたが、F-22戦闘機導入への政治的障壁は意外なほどに高いものでした。実際、F-4が同盟国友好国へ輸出され実に5000機もの大量生産を実現したのに対し、F-22は元々輸出を想定していません。

 イージス艦きりしま情報漏洩事案は、こうした最中に発生しました。本事案は海上自衛隊の慢性的予算不足を背景に幹部自衛官が不足する業務用PCに代えて私物PCにて作業していたところ、ファイル交換ソフトを通じ機密情報が漏洩した事案です。本件事案を重く見た防衛省は、レーダー更新計画等幾つかの重要施策を中止し官用PC大量取得を行いました。

 イージス艦きりしま情報漏洩事案は、直接的にはF-22取得への交渉へ影響は及ぼしていない、しかも日本政府としてアメリカ政府へF-22戦闘機の有償軍事供与を正式打診する前の時点ではありましたが、事前調査の形で実質水面下での検討や研究が行われていた時期であり、高度な機密性を有するF-22の導入へ間接的影響を及ぼしたことは十分あり得ます。

 EF-2000戦闘機やF-15E戦闘爆撃機、次期戦闘機はF-22ありきであった一方、先んじて供与を要請したオーストラリア政府がアメリカ政府に公式に第三国移転不可能との結論を突きつけられ、航空自衛隊F-X選定は文字通り暗礁に乗り上げ、防衛省がF-35戦闘機へ正式決定したのは民主党政権時代に入ってからの事でした。しかし、F-22を求める声は続く。

 F-2戦闘機、航空自衛隊次期支援戦闘機としてF-1支援戦闘機の後継として1980年代より開発され1994年に完成した日米共同開発の支援戦闘機です。当初は国産開発を目指していましたが、政治的理由から日米共同開発へと落ち着き、主任務は対艦攻撃と航空阻止戦闘、続いて制空戦闘、この為、完成当時は要撃機と区別し支援戦闘機と区分されていました。

 日米共同開発、といいますと当初の日本が求めていたのは国産開発による第五世代戦闘機の完成でし。この為にステルス性を最優先し航空力学を無視した機体形状を航空機に仕上げる為のCCV実験機を筆頭に様々な構成要素を独自開発していましたが、当時は日米貿易摩擦が最大の政治課題、アメリカはF-16戦闘機を対日貿易赤字相殺へ調達を要求したほど。

 FS-X,とよばれた新支援戦闘機計画は結果として、F-16戦闘機を原型に日米共同開発とし、日米共同生産体制を採る、という玉虫色の結果で妥協が成立しています。もっとも、電子戦技術や航空戦闘等様々な装備体系と戦術要求の集大成である戦闘機を日本が独自にプログラムマネジメント出来たかは疑問符も残り、“妥協”に見せかけた“妥当”ともいえます。

 F-2戦闘機はシステムとしては完成度が高いものでした、しかし、制空戦闘を第一とする航空自衛隊部内では対艦戦闘重視の機体は海上自衛隊の任務であり航空自衛隊は防空第一とする意見があり風当たりが強く、一方、技術研究本部と現在の防衛装備庁中心に完全な純国産戦闘機であればF-2以上の制空戦闘にも完成度の高い戦闘機を開発できたとの声も。

 将来戦闘機、F-2戦闘機後継機こそは潤沢な予算と十分な開発期間を投じて納得のいく機種を開発しようと機運が残る中ではありますが、安全保障情勢緊迫化に伴う日米空対空戦闘能力強化や防衛協力強化の必要性、日本国内の秘密保全法制整備、F-35戦闘機に関する日本最終組立FACO施設整備等、状況が変わりF-22改良型共同開発が模索されたのでしょう。

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【G7X撮影速報】第14旅団創立12周年/善通寺駐屯地創設68周年記念行事(2018-04-22)

2018-04-23 20:00:32 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■即応機動旅団誕生!14旅団祭
 第14旅団創立12周年記念式典、EOS-7D撮影写真に先立ちG7Xにて撮影の写真を紹介しましょう。

 四国善通寺、御大師様と師団の街、善通寺駐屯地祭へ行って参りました。善通寺駐屯地には四国を防衛警備管区とする第14旅団司令部が置かれています。この第14旅団記念行事、実は今年度屈指の注目行事を行う部隊でもあり、今回四国へ展開する事となりました。

 16式機動戦闘車は訓練展示にて105mm空包射撃を連続実施、10式戦車のクラッカーのような軽薄な空包ではなく74式戦車の火球が閃光として刹那衝撃と轟音襲う迫力の空包射撃を叩きつけまして、軽装甲代価の機動力重視での装輪と巨大な車体とともに迫力は大きい。

 善通寺五重塔を借景に観閲行進に臨む精鋭第14旅団、市街パレードとして実施されました、実は市街パレードを撮影するのは今回が初めてです、毎年福知山駐屯地祭では名物となっていますが京都府内でも時期で縁が無く行った一回は災害自粛にて縮小開催となりました。

 祇園祭に時代祭と葵祭はフィルム時代から数多撮影経験がありますので、府警年頭視閲式始め市街パレードの撮影はこれまでの撮影技量の応用にて臨む心意気ながら、善通寺へ展開するはこれが三度目、まだ未知の地形故の漠然たる撮影臨場の緊張感と共に行事へ進む。

 市街パレード、一般道を交通規制し実施される行事ですが、祇園祭の経験上、道路の屈曲を巧みに探せば確実に撮影できる適所は多々あり、行進経路を丹念に調査し、五重塔や赤煉瓦倉庫を借景に、しかし人口密度高い観閲台近く等に余り拘らない事が撮影の肝要です。

 即応機動旅団、第14旅団は新年度改編により従来の旅団から大きく改編されています。元々は第13師団から独立した第2混成団を母体として2006年に旅団改編を受け誕生した部隊です。そして善通寺駐屯地祭は昨年度行事より市街パレードを実施行事としても知られる。

 第14旅団の隷下部隊は、第15即応機動連隊、第50普通科連隊、中部方面特科隊、第14高射特科隊、第14偵察隊、第14施設隊、第14通信隊、第14特殊武器防護隊、第14飛行隊、第14後方支援隊、第14音楽隊、新年度での部隊改編でこのようになっています。

 第15即応機動連隊、歴史ある第15普通科連隊を改編し誕生した新しい部隊で、第15即応機動連隊本部、本部管理中隊、第1普通科中隊、第2普通科中隊、第3普通科中隊、火力支援中隊、機動戦闘車隊本部、機動戦闘車隊第1中隊、機動戦闘車隊第2中隊、という。

 機動戦闘車隊は16式機動戦闘車を装備しており、機動戦闘車隊第1中隊と機動戦闘車隊第2中隊という2個中隊編成、実質、機動戦闘車隊とは大隊編成に他ならず、1962年以来久々に連隊隷下に大隊編成、第14戦車中隊母体に実質大隊編成まで強化された事は驚きでした。

 本部管理中隊は、情報小隊、対戦車小隊、高射小隊、通信小隊、施設作業小隊、補給小隊、衛生小隊、7個小隊を率いる大型編成です。中距離多目的誘導弾、75式装甲ドーザ、93式近距離地対空誘導弾、1t半救急車、本部管理中隊の装備は独立戦闘団として充分な水準だ。

 中部方面特科隊として第14特科隊が改編されました、現時点では松山に特科隊本部が置かれていますが、順次、第3特科隊、第10特科連隊、第13特科隊が師団改編と旅団改編により中部方面特科隊へ改編、FH-70榴弾砲は方面直轄化、担当大隊が配置されるもよう。

 第14旅団創立12周年/善通寺駐屯地創設68周年記念行事、記念式典に続き訓練展示模擬戦が実施された続きで市街パレードが観閲行進として実施、16式機動戦闘車の発砲焔と共に初夏のような暑さを感じる快晴の善通寺市にて、迫力の行事を撮影する事ができました。

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【日曜特集】ミストラル東京寄港【3】東京港出港,ミストラル&きりしま(2008-04-13)

2018-04-22 20:05:03 | 世界の艦艇
■ミストラル&きりしま東京出港
 強襲揚陸艦ミストラル寄港、いよいよホストシップのイージス艦きりしま、とともに出港です。

 ミストラル級強襲揚陸艦ミストラル東京寄港、この日9は第1師団創設記念練馬駐屯地祭と同日という事で早朝の東京港へ進出したものです。正直な印象ですが、ミストラル、もう少し艦首部分を延伸、飛行甲板を長大化する事は出来なかったのかな、と第一印象が。

 強襲揚陸艦ということで飛行甲板を大きく採った艦容、しかし、撮影はミストラルを見上げる構図で撮影しましたので、どうしても飛行甲板よりも巨大な上部構造物の方が目に入ります。格納庫容積の確保という観点からの設計でしょうが、風の影響が大きそうだ、と。

 ブロック建造方式を採用したミストラル級強襲揚陸艦ですが、この関係もあるのでしょうか、艦首部分の曲線があまり軍艦としての優美さを強調するのではなく、費用面で重視した結果、という印象もありました。ホストシップが護衛艦きりしま、であった為に尚更だ。

 シロッコ級ドック型揚陸艦、ミストラル級強襲揚陸艦の前級に当たる揚陸艦よりも満載排水量で倍近くになっているのにもかかわらず建造費は抑えられているという際、前提の情報が安っぽい、と思わせたのかもしれません。見慣れてくると、良さが分かる、という。

 飛行甲板ですが、フランス陸軍が誇るNH90/SA330/AS532-U2強襲ヘリコプター、最新鋭のEC665戦闘ヘリコプターが離発着できるのは当然です。ここに加えて2009年のNATO演習においてアメリカ海兵隊の各種ヘリコプターも艦上運用できる事を証明しました。

 ミストラル級強襲揚陸艦からは西側最大のヘリコプターとして知られるアメリカ海兵隊のCH-53E重輸送ヘリコプターが発着でき、またAH-1W攻撃ヘリコプターの運用も出来たといい、この点、AH-1S対戦車ヘリコプターを運用する日本としては興味深い能力ですね。

 MV-22可動翼機も2014年に西アフリカ地域で実施された人道支援作戦においてミストラル級強襲揚陸艦艦上を経由し運用した実績があり、陸上自衛隊は間もなくMV-22可動翼機の受領を開始しますので、振り返ってみますとミストラル級強襲揚陸艦は興味深い艦です。

 ステルス性の観点からここまで大きな船体、特に傾斜へ配慮していない設計様式について東京港で現物を目の当たりにしまして随分と考えさせられたものですが、ハイブリッド戦争、地域紛争への展開を考えた場合の対艦ミサイル脅威度の判定結果帰結したのでしょう。

 戦力投射艦、という概念はこのミストラル級強襲揚陸艦の後に最高速力を抑え、航空機運用能力に両用作戦能力を共に兼ね合わせた、強襲揚陸艦と軽空母の中間を担う艦艇という区分が醸成されていったのは2010年代に入ってから、ある意味その先駆者ともいえます。

 ハイブリッド戦争、地域紛争が段階拡大する状況や地域不安定要素が結果的に主権国家の存亡へと発展する状況、非対称戦争の手段を以て第三国の軍事的要求が達成されるという状況を回避するには、早い段階に展開し対処、紛争を芽の内に摘んでしまう事が望ましい。

 対艦ミサイル脅威、しかし、この種の地域紛争ではある程度は無視できるという考えは、2017年のイエメン内戦における有志連合部隊アラブ首長国連邦輸送船スウィフトがイエメンフーシ派のイラン製対艦ミサイル攻撃で全損する被害により認識が大きく転換しました。

 地対艦ミサイルは大型で複雑な装備ですが、過去にはイスラエル海軍が誇るステルスコルベットエイラートが武装勢力ヒズボラにより中国製地対艦ミサイルによる攻撃を受け、回避できず被弾するという事態も発生、武装勢力即ち軽装備とは言えぬ状況があるのですね。

 ミストラルは従来型戦争に対してどの程度の能力を発揮できるのか、イスラエル海軍の事例もアラブ首長国連邦輸送船スウィフトも、地域紛争であっても第三国が一方の武装勢力を支援している場合従来考えられなかった高性能兵器が運用される事を突き付けています。

 MRR-3D三次元レーダーを搭載するミストラルは遠距離の航空目標を探知する事が可能です。これは多数の航空機を運用する強襲揚陸艦には必須といえるもので、航空管制以外に対空警戒も可能、併せてブリッジマスター250E航空管制レーダ装置を搭載しています。

 武装は12.7mm機銃4丁とSIMBAD連装近SAM発射機が2基、近年は30mm単装機関砲2基が追加されました。SIMBADはミストラル携帯地対空誘導弾を簡易発射架に据えたもので、防空システムと連接している訳ではありません。CIWSも無く、一見して心細い。

 しかし、ミストラル級にはARBR-21電波探知装置とECM電波妨害装置にSLAT対魚雷デコイ装置という電子戦装備が一通り搭載されています。これにより地対艦ミサイル等の脅威情報を迅速に検知し、ミサイル攻撃や魚雷攻撃を受けた際には適切な妨害が可能となる。

 輸送船スウィフトへのミサイル攻撃は、同船が電子妨害装備を全く有さず、そもそも電波探知装置を搭載していなかった為に夜間、ミサイルが命中するまで気付かず、適切な回避行動がとれなかったという要因があり、ミストラルの装備はやはり戦闘艦だ、といえます。

 多目的輸送艦として海上自衛隊は水陸機動団新編と島嶼部防衛強化へ対応するべく、現在の輸送艦おおすみ型、おおすみ、しもきた、くにさき、の3隻に加えヘリコプターの運用能力を有する両用作戦艦の整備を検討していると幾つかの報道機関にて報じられています。

 ミストラル級強襲揚陸艦は長大な飛行甲板から6機のヘリコプターを同時運用する事が出来、AH-64D戦闘ヘリコプター2機、UH-60JA多用途ヘリコプター2機、CH-47JA輸送ヘリコプター2機という、着陸掩護に偵察隊と戦闘部隊を送る飛行分遣隊を同時発艦させうる。

 MITSUI-LHDとして2017年の海洋安全シンポジウムMASTにて三井造船が提案した多目的輸送艦というパネルが展示されていました。全通飛行甲板構造を採用しており、基準排水量16000t、全長210m、全幅35m、喫水7m、速力22ノット、乗員200名、という。

 ミストラル級は基準排水量16500t、全長199m、全幅32m、喫水6.2m、速力18.8ノット、乗員200名、となっていますので三井造船が提案する多目的輸送艦というものはミストラル級、とは一致しないものの共通する要目がある艦艇、ということが分かるのですね。

 MITSUI-LPDとして2017年の海洋安全シンポジウムMASTにはドック型揚陸艦を三井造船は提案しています。全通飛行甲板型ではありませんが基準排水量16000t、全長210m、全幅30m、喫水7m、速力22ノット、乗員200名、独自案ではありますが実に興味深い。

 イージス艦きりしま、に先導され強襲揚陸艦ミストラルは東京港を出港してゆきました。横須賀にて随伴のフランス駆逐艦と合流するとの事でしたが、当日は満開の桜並木と第1師団記念行事の当日、74式戦車と桜並木の情景もやはり撮影しておきたく、転進しました。

 フランスと我が国は2018年内にも包括安全保障協力協定締結の方向で調整が続き、日仏外相防衛相会談が行われています。フランスは南太平洋に海外県を有し、実は太平洋諸国の一員でもあり、今後日仏防衛協力が強化されたならば、今度はミストラル艦内が一般公開されるかもしれませんね。

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【G7X撮影速報】第12旅団創立17周年&相馬原駐屯地創設59周年記念行事(2018-04-14)

2018-04-21 20:18:11 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■12B,空中機動旅団の基幹部隊
 第12旅団創立17周年行事速報は前篇に続き後篇、新カメラPowershotG7Xmark2の写真と共に旅団隷下部隊の紹介を掲載しましょう。

 旅団司令部、司令部付隊、第2普通科連隊、第13普通科連隊、第30普通科連隊、第12対戦車中隊、第12偵察隊、第12特科隊、第12高射特科中隊、第12ヘリコプター隊、第12施設隊、第12後方支援隊、第12通信隊、第12化学防護隊、第12音楽隊が基幹部隊です。

 第2普通科連隊は新潟県高田駐屯地に駐屯する普通科連隊で、連隊本部、本部管理中隊と3個普通科中隊を基幹としています。通常師団普通科連隊は本部管理中隊、5個普通科中隊、重迫撃砲中隊、という編成ですが、師団旅団改編に併せ1200名から550名へ縮小しました。

 第13普通科連隊、松本駐屯地に駐屯しています。日本アルプスを防衛警備管区とする連隊で愛称は山岳連隊、自衛隊に山岳連隊は正式にはありませんが2500m級高地において任務展開能力を持つ連隊には山岳レンジャー教育隊が置かれ、山岳戦の登竜門として知られる。

 第30普通科連隊、上越市の新発田駐屯地に駐屯する普通科連隊です。旅団は北関東信越地方を管区としていますが、3個普通科連隊の内2個連隊が新潟県に配置されているのは冷戦時代、日本海側からの着上陸を警戒していた為です。新潟から群馬を抜ければ、首都圏だ。

 第12対戦車中隊、師団時代の第12対戦車隊を受け継ぐ部隊です。元々対戦車ミサイルは師団長直轄部隊として師団長最後の手札となっていましたが、順次普通科部隊への配備が開始され発展的に解消、しかし第12旅団では戦車部隊を有さない分、維持されています。

 第12偵察隊、師団時代には87式偵察警戒車が配備されていましたが空中機動旅団への改編と共に73式小型トラックへMINIMI分隊機銃を搭載したものへ更新されヘリコプター空路進入能力を得ましたが、2013年の改編で偵察警戒車と軽装甲機動車が配備されました。

 第12特科隊、宇都宮駐屯地に駐屯しています。旅団改編当時は4個特科中隊を基幹としていましたが現在は改編当時の第48普通科連隊が東部方面混成団へ移管され3個特科中隊編成となっており、FH-70榴弾砲15門を装備しています。無論対砲レーダ装置等も一式持つ。

 第12高射特科中隊、81式短距離地対空誘導弾と93式近距離地対空誘導弾を装備する旅団の防空砲兵部隊で、2セットが配備の81式短距離地対空誘導弾は旧型の短SAM-Bを運用しています。各部隊には自隊防空用に携帯地対空誘導弾もあり中隊は全般防空情報も扱う。

 第12ヘリコプター隊、2個飛行隊を基幹とし第1飛行隊はUH-60JA多用途ヘリコプター8機を装備し北宇都宮駐屯地へ駐屯、第2飛行隊はCH-47J/JA輸送ヘリコプター8機を装備し相馬原駐屯地へ駐屯しています。火砲は勿論、地対空誘導弾や渡河器材も空輸可能だ。

 第12施設隊、師団時代の第12施設大隊を旅団改編に伴い第12施設中隊へ縮小改編した後、2013年の旅団改編に伴い第12施設隊へ拡大改編されました。戦闘工兵用の装甲車両は有しませんが今年度の旅団行事ではM-1破壊筒に加え携帯障害御処理装置を初展示しました。

 第12後方支援隊、部隊は第1整備中隊、第2整備中隊、補給中隊、輸送隊、衛生隊、を基幹としています。第1整備中隊は火器車両整備や通信電子整備等の重整備を担い、第2整備中隊は普通科直接支援小隊等の各部隊駐屯地へ直接整備支援として分遣されています。

 第12通信隊、やはりこの部隊も師団時代には第12通信大隊であった部隊を旅団改編と共に通信中隊へ縮小した後、2013年に通信隊へと拡大改編されました。この他に第12化学防護隊や第12音楽隊等が旅団隷下部隊として、第12旅団の団結と精強化を支えています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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