統合運用と宇宙方面隊が必要
指揮官1佐で人員70名というとウルトラ警備隊やMAT怪獣攻撃隊ならば成立つ任務かもしれませんが。
宇宙作戦群、航空自衛隊は2022年の改編で従来の宇宙作戦隊について増強を行い、第一宇宙作戦隊と第二宇宙作戦隊を隷下とする宇宙作戦群を創設しました。これは宇宙分野への第一歩と考えられたのですが、宇宙作戦群司令は1佐が補職されていて、人員規模名70名です。もちろん増員はするのでしょうが、名称が一人歩きしているとの印象が拭えません。
宇宙方面隊を創設し、独自の情報収集衛星を運用するとともに広範囲の宇宙空間を監視するレーダー施設や光学監視施設を、市街地などの光の影響を受けにくい小笠原諸島や南西諸島に配置した上で航空宇宙自衛隊とする、名称だけというのは順番が逆なのではないかな、と考えます。それとも政府は宇宙要員について大幅な増員を考えているのでしょうか。
欧州はじめ航空宇宙軍の実例はある、しかし日本との違いで、航空宇宙軍を創設した諸国は独自の人工衛星を有しているとともに、核兵器国など事実上の核保有国であり、宇宙空間へ長らく関与してきたという実例があるのに対して、日本は情報収集衛星を政府として運用はしているのですが、運用は内閣衛星情報センターが統括、自衛隊は運用していない。
宇宙を目指すのはよいですし、名称を改称して意気込みを新たにする、という気概は評価されるべきなのかもしれませんが、人員規模4万7000名の航空自衛隊にあって、宇宙関連の専門部隊人員は70名、人工衛星も宇宙監視施設もなし、宇宙方面隊や宇宙集団のような機能もありません、大幅な改編を行うなら兎も角今のところ名称のみという点が気になる。
問題は更に、装備の面があります。宇宙軍を空軍から独立させたアメリカ宇宙軍では宇宙旅団が創設されていますが、装備についてペトリオットミサイルの一部を陸軍から移管したものの、宇宙領域と防空領域の中間で装備の区分に苦労しているようです。ただ、ミサイル防衛など大量の予算と人員を食う任務を集約できるならば、話は違ってくるでしょう。
ミサイル防衛を例えば弾道弾について航空自衛隊の所管とし、イージス艦をミサイル防衛から艦隊防空任務へ回帰させられるならば海上自衛隊としては賛成するでしょう、またイージスアショアの運用と警備を所管として提示された陸上自衛隊も中止されているイージスアショアが仮に再開された場合でも所管は航空自衛隊ならば、賛成するかもしれません。
逆の視点に立ちますと、宇宙分野は元より自衛隊の統合運用を不十分のまま宇宙は航空宇宙自衛隊の所管だと決定しますと、航空自衛隊の責任と任務に海上自衛隊と航空自衛隊の宇宙分野を押し付けられる懸念があるのです。それよりも先にアメリカの統合軍方式の、本土防衛司令部や太平洋防衛司令部と極東防空司令部のような常設司令部を置く方が先だ。
情報収集衛星を内閣府から自衛隊に移管、人員を十分確保しその上でミサイル防衛も大半を航空宇宙自衛隊に移管する、かつての海上自衛隊プログラム業務隊のような大規模なプログラミング専門部隊を航空自衛隊隷下に構築し、衛星管制運用能力を高める、そして硫黄島や沖之鳥島、宮古島などに宇宙監視施設を新設する、理想としてはこうしたところか。
70名規模の宇宙部隊、実のところ問題となるのは人材の確保でしょうか。日本は宇宙開発分野が停滞していますので、宇宙人材は大学で養成されていても宇宙産業という受け手が無い状況です。ただ、問題は肝心の防衛大学校において宇宙人材は教育していませんし、また宇宙人材であっても航空自衛隊が専従で宇宙関連の人材を集めているわけでもない。
人材の獲得と施設及び装備の強化が重要です。これは例えば防衛省のサイバー人材獲得の失敗、求める能力水準の高さに対して低すぎる俸給を提示し失敗したことを受け、宇宙教育隊など宇宙分野の人材養成を自前で行う覚悟も必要です。そこまで覚悟はあるのか、と。自前で人材を養成しないのであれば現在の自衛官の待遇で宇宙人材は集まるのか、とも。
宇宙の名称を加えることについて、実態を伴う程度に人員と装備を拡充するならば問題はない、しかしキラー衛星などの運用を考えず、そして内閣府から情報収集衛星の移管も行わず、また航空自衛隊独自の情報収集衛星や宇宙監視施設の創設を行わないのであれば、民間人材の登用を念頭に内閣府隷下に"宇宙保安庁"を創設した方がよいのかもしれません。
防衛費GDP1%からGDP2%へ拡大する流れとともに、航空宇宙自衛隊という理念先行の組織が構築されようとしているのですが、宇宙分野は陸海空が関与しており統合運用が未着手の現状では理念が先を行き過ぎている、そして衛星も何も持たず人員70名の宇宙作戦群だけで航空自衛隊全体で宇宙作戦準備の受け皿が無い、この解決が重要となるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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指揮官1佐で人員70名というとウルトラ警備隊やMAT怪獣攻撃隊ならば成立つ任務かもしれませんが。
宇宙作戦群、航空自衛隊は2022年の改編で従来の宇宙作戦隊について増強を行い、第一宇宙作戦隊と第二宇宙作戦隊を隷下とする宇宙作戦群を創設しました。これは宇宙分野への第一歩と考えられたのですが、宇宙作戦群司令は1佐が補職されていて、人員規模名70名です。もちろん増員はするのでしょうが、名称が一人歩きしているとの印象が拭えません。
宇宙方面隊を創設し、独自の情報収集衛星を運用するとともに広範囲の宇宙空間を監視するレーダー施設や光学監視施設を、市街地などの光の影響を受けにくい小笠原諸島や南西諸島に配置した上で航空宇宙自衛隊とする、名称だけというのは順番が逆なのではないかな、と考えます。それとも政府は宇宙要員について大幅な増員を考えているのでしょうか。
欧州はじめ航空宇宙軍の実例はある、しかし日本との違いで、航空宇宙軍を創設した諸国は独自の人工衛星を有しているとともに、核兵器国など事実上の核保有国であり、宇宙空間へ長らく関与してきたという実例があるのに対して、日本は情報収集衛星を政府として運用はしているのですが、運用は内閣衛星情報センターが統括、自衛隊は運用していない。
宇宙を目指すのはよいですし、名称を改称して意気込みを新たにする、という気概は評価されるべきなのかもしれませんが、人員規模4万7000名の航空自衛隊にあって、宇宙関連の専門部隊人員は70名、人工衛星も宇宙監視施設もなし、宇宙方面隊や宇宙集団のような機能もありません、大幅な改編を行うなら兎も角今のところ名称のみという点が気になる。
問題は更に、装備の面があります。宇宙軍を空軍から独立させたアメリカ宇宙軍では宇宙旅団が創設されていますが、装備についてペトリオットミサイルの一部を陸軍から移管したものの、宇宙領域と防空領域の中間で装備の区分に苦労しているようです。ただ、ミサイル防衛など大量の予算と人員を食う任務を集約できるならば、話は違ってくるでしょう。
ミサイル防衛を例えば弾道弾について航空自衛隊の所管とし、イージス艦をミサイル防衛から艦隊防空任務へ回帰させられるならば海上自衛隊としては賛成するでしょう、またイージスアショアの運用と警備を所管として提示された陸上自衛隊も中止されているイージスアショアが仮に再開された場合でも所管は航空自衛隊ならば、賛成するかもしれません。
逆の視点に立ちますと、宇宙分野は元より自衛隊の統合運用を不十分のまま宇宙は航空宇宙自衛隊の所管だと決定しますと、航空自衛隊の責任と任務に海上自衛隊と航空自衛隊の宇宙分野を押し付けられる懸念があるのです。それよりも先にアメリカの統合軍方式の、本土防衛司令部や太平洋防衛司令部と極東防空司令部のような常設司令部を置く方が先だ。
情報収集衛星を内閣府から自衛隊に移管、人員を十分確保しその上でミサイル防衛も大半を航空宇宙自衛隊に移管する、かつての海上自衛隊プログラム業務隊のような大規模なプログラミング専門部隊を航空自衛隊隷下に構築し、衛星管制運用能力を高める、そして硫黄島や沖之鳥島、宮古島などに宇宙監視施設を新設する、理想としてはこうしたところか。
70名規模の宇宙部隊、実のところ問題となるのは人材の確保でしょうか。日本は宇宙開発分野が停滞していますので、宇宙人材は大学で養成されていても宇宙産業という受け手が無い状況です。ただ、問題は肝心の防衛大学校において宇宙人材は教育していませんし、また宇宙人材であっても航空自衛隊が専従で宇宙関連の人材を集めているわけでもない。
人材の獲得と施設及び装備の強化が重要です。これは例えば防衛省のサイバー人材獲得の失敗、求める能力水準の高さに対して低すぎる俸給を提示し失敗したことを受け、宇宙教育隊など宇宙分野の人材養成を自前で行う覚悟も必要です。そこまで覚悟はあるのか、と。自前で人材を養成しないのであれば現在の自衛官の待遇で宇宙人材は集まるのか、とも。
宇宙の名称を加えることについて、実態を伴う程度に人員と装備を拡充するならば問題はない、しかしキラー衛星などの運用を考えず、そして内閣府から情報収集衛星の移管も行わず、また航空自衛隊独自の情報収集衛星や宇宙監視施設の創設を行わないのであれば、民間人材の登用を念頭に内閣府隷下に"宇宙保安庁"を創設した方がよいのかもしれません。
防衛費GDP1%からGDP2%へ拡大する流れとともに、航空宇宙自衛隊という理念先行の組織が構築されようとしているのですが、宇宙分野は陸海空が関与しており統合運用が未着手の現状では理念が先を行き過ぎている、そして衛星も何も持たず人員70名の宇宙作戦群だけで航空自衛隊全体で宇宙作戦準備の受け皿が無い、この解決が重要となるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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