北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

令和五年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2023.07.01-2023.07.02)

2023-06-30 20:00:47 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 明日から七月となります、線状降水帯が西日本に広く架かっていましてそろそろ梅雨明けのはずですが注意が必要です。こうしたなかで行事予定の紹介だ。

 7月2日、舞鶴基地七月の一般公開、今週末は舞鶴基地が一般公開されます。COVID-19感染拡大前には毎週末土曜日日曜日が一般公開の日でしたので、今週は何もないから舞鶴に行こう、と気軽に艦艇広報とともに松尾寺や金剛寺を拝観、という不思議な週末を楽しめたところが今では一か月に一回となってしまいました、しかし、開けてくれる。

 舞鶴基地一般公開、基本的に北吸岸壁という海上自衛隊基地で最も長い岸壁が開放されるだけなのですが、運が良ければヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、その前に補給艦ましゅう、と大型艦を見上げて大きいなあ、と率直に感慨深くみてみたり、イージス艦みょうこう、イージス艦あたご、と二隻並んでいることもあったりで、迫力は中々のもので。

 北吸岸壁見学は先ず舞鶴地方隊HPから見学申請用紙を印刷してここに所要事項を書き込み当日受付で示すという方式です。前までは代表者が連絡先と氏名などを受付で書き込んでいましたが、いまは印刷して持ってゆけば現地で書き込む手間を省けるという。最終受付は1415時ですので、ゆっくり見学したい方には早めの行動が必要かもしれません。

 艦艇一般公開は行われませんが、舞鶴基地に一般公開のもう一つの特色は横須賀サマーフェスタなどの一般公開と比べ混雑しない、という事でしょうか。これは公開される頻度が高いという点も反映しているのでしょう。他方で売店も解放されますので護衛艦の識別帽などほかではなかなか入手できないものを日常の愛用品に購入することも可能です。

 舞鶴では民間が軍港めぐり遊覧船を運航しています。こちらは舞鶴市役所の裏手、赤レンガ博物館近くから運行していて、海上自衛隊OBの方の解説付きで、印象なのですが横須賀軍港めぐり遊覧船よりも小型の遊覧船を使っている関係で、結構護衛艦の近くまで寄って行ってくれます。だから広角レンズでも入りきらない、ということもあるのですが。

 基地見学とともに新日本海フェリーターミナルのある前島埠頭からも護衛艦を見ることができまして、しかもここは釣りの名所、案外大物が釣れたりもしますので賑わっているところ。舞鶴線の終電が早いので留意する必要はあるのですが、ここは夜景撮影の名所です。なお、県外ナンバーの方が多い日は水の濁りなどで釣れない日だ、と聞きました。

 紫陽花がきれいな季節なので、京都では三千院の紫陽花園がちょうどよい見ごろを迎えています、文庫山など護衛艦と紫陽花という写真を撮影できる風景を探してみるのもいいかもしれません。横須賀軍港めぐり遊覧船など、自衛隊一般公開は舞鶴基地だけなのですが、基地の街、このいとなみは今週末の平常通りですので散策をお勧めしたいところ。

 さて、少々心配なのですが線状降水帯が九州北部から山陰地方に沿って伸びています、この前、西日本豪雨のようなことにならなければよいが。いまではロシアウクライナ戦争の勃発でロシア海軍艦艇を日本で見ることが次何時になるのか、という時代になってしまいましたが、COVID-19感染拡大前には定期的に日本を親善訪問、舞鶴にも来ていました。

 東舞鶴駅前でロシアの水兵さんとビールで乾杯したり、ストリチナヤ呑んだり、平和な時代だったなあ、と記憶するのですが最後にウダロイ級大型対潜艦が二隻揃って入港した日が、西日本豪雨の始まりの日だったのですよね、この日は幸い自動車で移動していましたが、舞鶴線終日運休が決定、珍しいのでホームで電光掲示板を撮影させてもらいました。

 西日本豪雨があんな大変なことに、災害は起こるかもしれないと認識はしていたものの、十年単位で語り継がれるような豪雨災害になるとは想像せず、実際この日のロシア艦撮影を電車で撮影に行っていたら数日間小浜線と舞鶴線が運休になり、一週間近く舞鶴足止めになったところでした。もっとも翌日のロシア艦一般公開は行われたのだけれども。

 線状降水帯、豪雨災害というのは始まりがわかりにくい、夕立ひとつにおびえるのはナンセンスですが五月雨とおもっていたならば災害の序章であった、という、地震と津波のように突然発生するものなのだけれども、危機が徐々に、しかし確実に進行する、それが普段の大雨と違いが明確ではない、だから油断していると手遅れになる、という印象で。

 気象庁は災害級の豪雨を警告しています。昨日の時点で北陸本線が敦賀付近で雨量規制が入りサンダーバードが午後からすべて運休に、そして小浜線も止まっていた。JR西日本HPを確認しますと明日の運行について舞鶴基地周辺だけでも北陸線と小浜線では始発から0900時頃にかけ運転見合わせの可能性があります。お出かけの際はご留意ください。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・7月2日:舞鶴基地北吸岸壁一般公開

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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ウクライナ情勢-イリューシン22M空中指揮機ワグネル"六月の十五時間事件"で撃墜

2023-06-30 07:00:43 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 防衛省はスターリンク衛星の運用契約を結ぶようですがこの種の宇宙空間での戦闘での優位を喪失した場合の備えとなる航空機は考える必要があると思う。

 ロシア航空宇宙軍はワグネル反乱による六月の十五時間事件において貴重なイリューシン22M空中指揮機を喪失しました。イリューシン22M空中指揮機はロシア軍に12機が配備されている航空機で、これまで損失を避ける為にロシアウクライナ戦争開戦後は慎重にウクライナ軍地対空ミサイル等を避けロシア内陸部において作戦を支えてきた航空機です。

 イリューシン22M空中指揮機はその名の通り空中指揮統制を行い、また無線中継任務にも用いられ、ウクライナ軍はスターリンク衛星によりデータ通信体制を確立していますが、スターリンク衛星の恩恵に与れないロシア軍には貴重な航空機でしたが、運悪くワグネルの車列付近を飛行していた為、敵対機と見做され防空砲兵装備により撃墜されてしまう。

 ロシア軍作戦全般への影響ですが、先ず戦死者に5名前後の佐官が含まれており、イリューシン22M空中指揮機を使いこなす事が出来る要員がいっきに多数失われたことの衝撃が大きいでしょう。イリューシン22M空中指揮機そのものはまだ11機残っていますが、稼働率という側面で観れば完全に飛行できていた一機の喪失という衝撃は小さくありません。
■ルガンスク野戦飛行場
 冷戦時代に自衛隊もソ連軍の”アンブル”空中機動部隊を警戒していましたがこうした脅威となる敵野戦飛行場への対応策は検討しておくべき課題です。

 衛星写真などの解析によればロシア軍は22日までにウクライナからの占領地でルガンスク周辺の国境近くに新しい野戦飛行場を造成している様子が確認されました。建設されているのは滑走路部分で、少なくとも現在整地されている部分だけで補給部隊の車両などが整えば連隊規模のヘリコプター部隊が展開するには十分な規模であると推測できます。

 ロシア軍は南部地域の防衛線でヘリコプター部隊による大きな戦果を挙げており、特に野砲の射程で劣るロシア軍は機動力の高い戦闘ヘリコプターや武装ヘリコプターを集中させることで大きな戦果を挙げていますが、一方で既設飛行場はイギリスから供与の射程250㎞のストームシャドウミサイルによる攻撃に晒される懸念があり、新設が必要です。

 ジェルジンスクの前線ではMi-24戦闘ヘリコプターによるロンド攻撃が行われています、これはメリーゴーランド状に航空部隊を待機させ絶え間ない攻撃を加えるというもので、ロンド攻撃はロシア軍は2014年のシリア内戦介入後に多用している攻撃の一つ、現状で有力な防空砲兵の前線支援を受けないウクライナ軍には厳しい状況となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ベル360インヴィクタスという選択肢【2】FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機

2023-06-29 20:12:02 | 先端軍事テクノロジー
■複合ヘリコプター
 有人ヘリコプターの利点は安全性や費用面ではなく即座の致死性を相手に叩きつけられるという部分が大きいように考えるのだ。

 複合ヘリコプターは攻撃ヘリコプターの後継と成りうるか。陸上自衛隊ではAH-64D戦闘ヘリコプターの後継機を選定せず形式消滅させる方針を示しています。しかし、後継に無人機を充てる構想が示されていますが、果たして無人機だけで実際に指揮官や偵察員が目視で状況把握せずとも対応できるほど、AR拡張現実など研究されているのでしょうか。

 無人機は旧陸軍の時代から研究が続いており実績も高いために陸上自衛隊は今後有人航空機ではなく実績ある無人機へ運用をシフトする、こう言い切ることができればよいのですが、自衛隊が無人機の分野で先進的であったのは標的機のみ、無人偵察機については航空法の関係を含めかなり後手に回っています。故に期待しすぎても運用能力がありません。

 OH-6D観測ヘリコプター、この後継機に無人ヘリコプターを導入するとしましても、残念ながら無人ヘリコプターには匍匐飛行能力を持つ機種は存在せず、単に安穏と低空飛行していてはロシア軍ヘリコプターがウクライナ上空で多数が携帯地対空ミサイルの血祭りにあげられている状況を踏襲するのみであり、匍匐飛行ができなければ生き残れない。

 FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機、アメリカ陸軍は二つの航空機の機種選定と量産準備や開発などを急いでいます。アメリカの話か、と思われるかもしれませんがこれらに機種の装備体系を最も重視しているのは数ある統合軍の中でもインド太平洋軍で、近く懸念される中国軍の太平洋地域での軍事行動に備えての措置ということ。

 FARA陸軍将来攻撃偵察機はOH-58カイオワ観測ヘリコプターの後継を期している装備ですが、RAH-66コマンチ偵察ヘリコプターが開発費高騰を受け開発中止となって以降、安価を目指したヘリコプターに過度な装備の搭載を行うことで価格高騰という、ARH-70偵察ヘリコプターの中止などが繰り返され、結局後継機なしにOH-58は退役しました。

 AH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターとRQ-7シャドー無人偵察機、アメリカではOH-58観測ヘリコプターの任務をこの二機種が担っていますが、性能面で隔靴掻痒が否めないようで、更に想定されるインド太平洋地域の戦いでは、欧州や中東地域の戦場よりも洋上飛行を含め戦域が非常に広く、これらの装備の行動半径では全く対応できません。

 日本の視点に戻しますと、OH-6D観測ヘリコプターが全機用途廃止されました、この退役の仮定と後継機の不在、しかし現場の声を聴きますというほど後継機なき用途廃止に安心できる状況ではないという状況を加えれば、アメリカのOH-58観測ヘリコプターと日本のOH-6D観測ヘリコプターの関係は重なる点があり、さらに日本は後継が本当に無い。

 OH-6D観測ヘリコプター、当初はOH-1観測ヘリコプターを250機量産することで後継機に充てる計画で、特にOH-1観測ヘリコプターは開発当時脅威視されていた空対空戦闘能力を持つ敵戦闘ヘリコプターに対して空対空ミサイルによる積極戦闘を想定するなど、野心的な設計となっていました。その分費用は高騰し、結果調達数が大幅に減らされる。

 OH-1観測ヘリコプター、個人的には川崎重工が納入していた製造費用はMQ-8ファイアスカウト無人ヘリコプターよりも若干安く、またデータリンク能力も防衛装備庁が技術研究本部時代に実施しており、岐阜基地において技術研究本部がOH-1初号機を用い飛行実験を繰り返す様子を見ていましたので、性能で陳腐化した装備とは考えてはいません。

 OH-1観測ヘリコプターは武装搭載能力の低さが問題視されていますが、APKWS先進精密攻撃兵器という、所謂70mmロケット弾のレーザー誘導型の開発、奇しくもこれはOH-1以上に搭載能力のないMQ-8などの無人航空機用に開発されたものですが、こうしたものの開発により、偵察のほかに一定の対装甲戦闘能力を付与させることは可能といえる。

 南西諸島防衛、自衛隊が南西諸島防衛を想定する場合においてもOH-1の増槽搭載時航続距離は720km、これはイタリアのA-129マングスタ戦闘ヘリコプターとそれほどそん色はなく、自衛隊を台湾やフィリピンにおけるアメリカ軍作戦支援へ投入する計画がないのであれば、南西諸島でもほぼ十分な性能といえるものです。ただ、性能不十分という。

 FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機、一つの疑問符は自衛隊がこれらの装備を調達する可能性はあるのか、という事です。FARA陸軍将来攻撃偵察機については戦闘ヘリコプターとしての能力を有する機種が提示され、例えばコンパウンドアパッチというボーイング社の提案はアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターが原型機なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ドニエプル川対岸橋頭堡確立とドネツク市旧管理線東方地域への進出成功

2023-06-29 07:00:28 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 これが内線作戦の強みというべきなのでしょうか。

 ウクライナ軍はアントノフスキー橋付近でのドニエプル川渡河作戦を事実上成功させ対岸へ橋頭堡を確保したもよう。この上流にはロシア軍が爆破したとされるカホフカダムがあり、仮に現時点でカホフカダムがロシア軍により破壊されていなかった場合には、浮橋を用いてドニエプル川を渡河しているウクライナ軍に大きな打撃を与えた可能性があった。

 カホフカダムは破壊当時ロシア軍が一年以上に渡り占拠しており、ダム破壊当時静かであったという現地報道と、地震計の分析からダムが外部からの攻撃ではなく内部からの爆発物により破壊されたことは確実とみられています。この結果ロシア軍は洪水に見舞われたウクライナ軍のこの地域での反撃は無いと見越し部隊を移動した後にこの渡河作戦です。
■旧管理線の東方へ
 大きな前進というべきでしょう。

 ウクライナ軍は旧管理線の東方へこの戦争が始まって以来初めて前進する事が出来たとのこと。イギリス国防省ウクライナ戦争分析に記されていました。ここでいう旧管理線とは2014年クリミア併合とドンバス内戦により事実上ロシア軍がこの2022年ウクライナ戦争開戦前に制圧していた地域との境界線を示します。開戦前よりもロシア軍を押し戻した。

 ドネツク市近郊のクラスノホリフカ村周辺でのウクライナ軍反撃がこれにあたり、僅か前進ではあるがロシアが傀儡国家として樹立しロシア本土へ後に併合したドネツク人民共和国の支配地域にきり込みました。ロシア軍はドニエプル軍集団から兵力を引抜いていますが、その背景にはドンバス地域でのこのウクライナ軍反撃が背景にあると考えられます。
■ロシア軍第35軍参謀長
 ロシア軍将官が一人戦死した様です。

 ロシア軍第35軍35CAAの参謀長セルゲイゴリャチェフ少将が6月12日の指揮所攻撃を受けた際に戦死したことが確実となりました。指揮所攻撃の様子は写真などが公開され、その破壊度合いからゴリャチェフ少将の戦死の可能性が指摘されていましたが、6月15日付のイギリス国防省ウクライナ戦況報告によりその戦死が記されていたかたち。

 ゴリャチェフ少将は2023年に入り慎重に避けられていた将官戦死者の最初の事例となります。ゴリャチェフ少将が参謀長を務める35CAAは2022年3月にキエフ北方でのブチャ虐殺事件に関与した部隊として知られています。なお35CAA司令官アレクサンドルサンチク中将は現在上級司令部勤務で、35CAAは事実上ゴリャチェフ少将が司令官でした。

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【京都発幕間旅情】伊賀上野城(三重県伊賀市)織田信長と天正伊賀の乱-豊臣政権時代筒井定次の城郭造営

2023-06-28 20:23:34 | 旅行記
■高石垣の城郭への歴史
 高石垣はこの城郭を象徴するものの一つなのですが、高所恐怖症でなくとも例えばUH-1で京都市街を見下ろしながら扉を開いて編隊を撮影するよりも違う現実的な怖さを感じる。

 伊賀上野城、城郭は再建天守閣という戦前に建てられたものなのですが威風堂々と、そしてなによりこの地に城郭を復活させたいという願いのようなものを遥か時を超えて今なお感じますゆえに、その情景はなかなかに気持ちが良いのです。さてこの城郭とは。

 筒井定次、豊臣政権時代に当地を所領として下賜され、そしてここは緊要地形、領地経営のためにはかりの館ではなく城郭が必要だと思いいたったのでしょう、天正伊賀の乱、その際の織田信長に焼き滅ぼされた仁木氏館の跡地に城郭を造営することとなります。

 仁木氏館の跡地、ここは伊賀盆地の中央部であるとともに四つの河川が集中する交通要衝、交通の結節点はそれだけで緊要地形です。筒井定次は、まず小山の山頂に本丸を整備し三層天守を造営するとともに本丸の西側に二の丸、そして北の山麓に三の丸を置いた。

 天守閣は三層、好記録には残るのですが残念なことにこの最初に造営された天守閣は現在は無く、研究により現在の城代屋敷の北東隅あたりに天守台があったという。そして筒井定次は当地の前に大和郡山城の城主であり、造営意匠にはその影響も考えられます。

 関ケ原の戦い、豊臣秀吉没後に勃発しました慶長5年こと1600年の関ケ原戦役に際して筒井定次は東軍の徳川家康に付き従い、しかしこの伊賀市から若干近い関ケ原ではなく、家康の命により発令された上杉との会戦、会津討伐へと筒井定次は主力を派遣している。

 五大老の一人である上杉景勝の号令一下直江兼続は会津若松に新しく神指城の造営を開始するなど東北地方の防備強化を急いでおり、この防衛行動を明らかな徳川家康への挑発行為と受け取り福島正則と細川忠興に討伐を命じた、筒井定次もこれに呼号しています。

 会津征伐は、徳川家康も主力とともに参加するべく6月29日に鎌倉の鶴岡八幡宮での先勝祈願を行い、そして7月19日に徳川主力を率いた徳川秀忠が江戸城から出陣、その二日後の21日に家康も江戸城を出陣するのですが、なんと7月24日に急報が入りました。

 石田三成挙兵。7月24日にこの情報に接した家康はそのまま一気に方針を転換、まず後退したのではそのまま上杉景勝に背後を突かれる事から、拘束部隊を編制、最上義光と留守政景に対し西軍直江兼続水原親憲が激突する、世にいう慶長出羽合戦が始まります。

 伊賀上野城、こちらに視点を戻しますと大変なのは留守居役筒井玄蕃で、その兵力は非常に限られていました。似たような話は細川幽斎が舞鶴の田辺城で包囲された事例がありますが、田辺城は籠城し攻城戦が展開されたものの、筒井玄蕃はそこまで粘れなかった。

 摂津高槻城主新庄直頼からの攻撃を前に筒井玄蕃は殆ど戦うことなく高野山へ出家という名の逃亡を果たしまして、これを東北の会津征伐から舞い戻った筒井定次、徳川家康の許可を得て城を奪還する上野城の戦いが繰り広げられました、これは一応評価される。

 筒井騒動、慶長13年こと1608年のことですが、関ケ原の戦いで東軍の一員を担った筒井定次は所領安堵と伊賀上野藩20万石を与えられるのですが、軍事的な才覚は薄い懸念がある、何があったのかは難しいが後に豊臣方と密通の疑いを受け切腹を命じられる。

 藤堂高虎。筒井騒動を受けて滅亡した筒井氏に代わり伊賀上野藩を命じられたのは、戦国時代きっての築城の名手である藤堂高虎そのひとでした。そして三重県では津市の津城に壮大な銅像が探訪者を迎えてくれる藤堂高虎が、徳川家康から当地を任されます。

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【京都発幕間旅情】伊賀上野城(三重県伊賀市)白鳳城,新緑つつむ城郭はじまりは平清盛寺院と守護大名仁木氏館

2023-06-28 20:00:34 | 旅行記
■三重の奥地に白い城郭
 伊賀と云えばニンジャなのかもしれませんがニンジャの街には白い城郭が迎えてくれる。

 伊賀上野城、近鉄から切り離された伊賀鉄道を進んでいきまして伊賀鉄道伊賀線上野市駅という、東京にでも来たのだろうかとちょっと心躍る駅名で下車しますと、徒歩でそれなりにかかると聞いていたのですが、駅から直ぐに伊賀上野城は見えて近く感じます。

 上野市駅駅舎も古い建物を利用していて、そして駅前には小さいけれどもアーケードの商店街が広がり、駅前広場も広々として路線バスやタクシーも乗り入れ、なるほど理想的な地方の城下町というのはこういうところなんどあなあ、と考えさせられたものでした。

 三重県伊賀市上野丸之内、伊賀市の人口は九万弱となっていて、2004年に上野市と伊賀町そして阿山町と名賀郡青山町更に大山田村と島ヶ原村にわたる広い地域が町村合併により誕生した経緯があります、そしてなによりこの伊賀市は忍者の街として知られる。

 城郭までは徒歩、なのですけれども、昔行ったことがあるらしいのですが経路まで記憶にない、だから林間道路みたいなところを登って行った、学校の方に進むと入り口がしっかりとした門構えで迎えてくれるのですね、しかし近道のような林間道路から上った。

 白鳳城という別名でも親しまれるという城郭は海抜184m、服部川と柘植川、久米川に木津川、と四つの河川に守られた盆地にある台地の上に築城されていまして、そして城下町を配置した城郭となっています。この一帯は今も名阪物流の大動脈上に立地しています。

 平安時代には当地に平清盛の発願により造営された平楽寺という、大きな寺院があったという事ですが残念ながら遺構は残されていません、いや実は後述する戦国時代の激戦により当地には破壊の嵐が吹き平安時代や鎌倉時代の建物は基本的に残っていません。

 仁木氏館という、室町時代には守護大名の拠点が造営されているのですが、これは応仁の乱の頃に衰退してしまったようで、戦国時代には南伊賀への統治が柘植氏の台頭により及ばなくなり、権威回復への南伊賀討伐は逆に失敗、仁木氏当主が討ち取られてしまう。

 仁木氏は権威回復を文化に求めますが、そんなもので戦国乱世は乗り切れないと地方豪族たちの反発を買い、仁木氏は館を捨てて逃亡し、その仁木氏を援助したのが織田信長でしたが、逆に織田信長が伊賀での支持を失うという、逆効果になってしまった歴史が。

 織田信長と伊賀惣国一揆、当初は織田信雄が8000名の兵力で鎮定しようとしたのが天正7年こと1579年でしたが、山間部でゲリラ戦を展開され敗北してしまいます。これは織田信長に衝撃を与え、これをのちに天正伊賀の乱ともいうようになりました。しかし。

 天正伊賀の乱、天正9年こと1581年に今度は織田信長が蒲生氏郷などの地形案内など綿密な情報収集の上で丹羽長秀、滝川一益、筒井順慶、堀秀政、浅野長政、といった配下の武将4万5000名の兵力を派遣し制圧徹底的に破壊、滝川雄利の所領として与えました。

 中世の頃の建物が、この城下熊本より伊賀市全般に見当たらないのはこうした事情がありまして、豊臣秀吉政権時代には脇坂安治、筒井定次と配置されます。この頃城郭は無く、筒井定次は仁木古館跡に城郭造営を決断、こうして当地、伊賀上野城が造営されます。

 石垣が、しかし凄いなあ、と唸らせられる。大阪城も名古屋城もそうですが石垣は空襲にも耐え、いや広島城の石垣は核攻撃に耐えている。そして土塁のように自然に変えることもありません。しかし、この城郭に今に至る石垣が築かれるのは、もう少し先でした。

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ウクライナ情勢-ドニエプル川アントノフスキー橋付近渡河に続きコンカ川橋梁を確保,ドニエプル軍集団移動後

2023-06-28 07:00:41 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 渡河作戦の直ぐに出せる映像が無かったので自衛隊の揚陸訓練の様子とともにウクライナ情勢を見てみましょう。

 ウクライナ軍はドニエプル川のアントノフスキー橋付近での渡河に続いて南にあるコンカ川の橋梁を確保しました。アントノフスキー橋は昨年の戦闘で破壊され崩落、通行不能となっていますがコンカ川の橋梁はロシア軍が占領中のところを急襲しロシア軍が破壊する前に奪取しました。この橋梁はクリミア半島に向かうE97高速道路の一部です。

 コンカ川の橋梁確保と同時にウクライナ軍はアントノフスキー橋付近に浮橋を架橋しています、浮橋は先々週にNATOがルーマニアにおいて大規模渡河訓練セイバーガーディアンを実施していましたが、今回ウクライナ軍の架橋作戦に影響を与えた可能性はあります。なお、ここからクリミア半島のクラスノペレコプスクまでは110㎞となっています。
■ドニエプル川に架橋
 戦争は余分な事を遣った方が無駄の無い側に負けるのでしょう。

 ウクライナ軍がドニエプル川に架橋できた背景について、アントノフスキー橋の上流にロシア軍が破壊したカホフカダムが存在しています、ロシア軍はこの破壊によりウクライナ軍が洪水により当面この地域での戦闘が不可能であると判断し、この地域を占領するドニエプル軍集団から第34独立自動車化狙撃旅団や空挺部隊と海軍歩兵を移動させた。

 ドニエプル軍集団から抽出して移動させたのは1200㎞先のバフムトでのウクライナ軍反攻作戦を迎撃する、もしくはルガンスク州セレブリャンカでの再攻撃を実施する為と思われ、この移動は19日までに実施されました。当たり前の話ですがダム破壊の慢心により兵力を抽出したことで開いた軍事空白地帯へウクライナ軍が渡河したこととなります。
■アゾフ海まで100㎞以内
 ハリウッド映画のようにはいかない、こうゼレンスキー大統領がくぎを刺しました。もっともその24時間後にハリウッド映画のような六月の十五時間ワグネル反乱事件が起きましたが。

 ウクライナ軍は6月23日時点で南部戦線のロシア軍主陣地まで到達していない可能性がありますが、既にウクライナ軍は南部戦線でアゾフ海まで100㎞以内を奪還している可能性があります。100㎞という距離はHIMARS高機動ロケットシステムより投射するGMLRSによりロシア軍の南部補給路を破壊できる可能性を示しているにほかなりません。

 ウクライナ軍の反撃は前線突破よりも、攻撃前進、威力偵察の可能性さえある前進に対し砲撃を加えるロシア軍砲兵を対砲兵戦により着実に潰している段階であり、他方、前哨陣地付近ではロシア軍戦闘ヘリコプター部隊の活躍が伝えられるも、HIMARSやカエサル自走榴弾砲、PzH-2000自走榴弾砲などウクライナ軍砲兵に被害は発表されていません。

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【防衛情報】F/A-XX第六世代戦闘攻撃機開発とU-2偵察機2026年全廃,イランSu-35とポーランドFA-50

2023-06-27 20:15:11 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今週は空軍に関する11の話題をお届けです。嘉手納基地を含め西太平洋地域でのまだ始まっていない危機への警戒感が垣間見える話題とロシアウクライナ戦争の欧州中東地域への影響まで関心事ばかりです。

 アメリカ海軍は2024会計年度にF/A-XX第六世代戦闘攻撃機開発に関する15億3000万ドルの予算を要求しました。F/A-XX第六世代戦闘攻撃機は現在海軍の主力戦闘攻撃機であるF/A-18E戦闘攻撃機の後継機を目指すもので、このF/A-18E戦闘攻撃機はアメリカ海軍への必要数を充足、これ以上輸出需要がなければ2025年生産終了を予定しています。

 F/A-XX第六世代戦闘攻撃機については、これまで継続的に構成要素の研究が進められてきましたが、開発費の概要については秘密扱いとなっていました、この為2024会計年度に盛り込まれた15億3000万ドル予算要求は明示された開発予算としては初めてのものとなります。開発費分担には海軍予算に加え海兵隊予算も含まれ、両軍の採用が見込まれる。

 F/A-18E戦闘攻撃機は老朽化が進んでいますが、海軍はF-35C戦闘機やF-35B戦闘機などの第五世代戦闘機での置き換えは考えていないとしています、他方でこのF/A-XX第六世代戦闘攻撃機は有人機か無人機か、有人機を基本とした無人機があるのかについて明確に示されてきていませんが、開発されている機体に有人機は含まれる方針のようです。
■嘉手納にF-16配備
 F-16戦闘機で台湾海峡からフィリピンまで及ぶ広大な地域を担当できるとは思わないのだよなあ。

 アメリカ空軍は日本の沖縄県嘉手納基地へF-16戦闘機の前方展開を開始したとのこと、これは1月16日の発表で展開したのはドイツのシュパンダーレム空軍基地へ展開している空軍第52戦闘航空団に所属するF-16戦闘機です。このF-16戦闘機は嘉手納基地からのF-15戦闘機撤収に伴うローテーション展開計画の一環として欧州から転地したということ。

 F-22戦闘機がアラスカのエルメンドルフリチャードソン統合基地配備の第3航空団より前方展開していますが、この展開は維持され、F-22の代替にF-16が充てられたわけではないようです。他方アメリカ空軍ローテーション配備は沖縄における抑止力に如実に影響しているもので、日本政府は常駐部隊廃止ならば基地返還を強く要請し引き留めるべきでした。
■輸送機と給油機ロービジ化
 これも嘉手納関連という話題だ。

 アメリカ空軍が運用するKC-135空中給油機やC-17輸送機が垂直尾翼の部隊マーキングと機体番号を三月に入り次々と塗りつぶしているのが、アメリカ本土や各国の在外米軍基地で話題となっています。これは一見して航空愛好家などの公開情報を基に空中給油機や輸送機の運用体制を秘匿することが目的ではないかと様々な憶測を呼んでいるもよう。

 KC-135空中給油機やC-17輸送機は世界規模で運用されています、このほかに空軍のKC-10空中給油輸送機やKC-46A空中給油輸送機、C-5戦略輸送機などにも適用されるものですが、ウクライナ情勢の緊迫化やウクライナ侵攻の際には見られなかった行動であり、西太平洋地域などで昨今の著しい緊張状態へ対応を視野に行われている可能性もあります。
■イタリア輸送機延命
 C-27輸送機はターボプロップ機ですが大きさとしてはC-1輸送機と同じくらい。

 イタリア空軍はレオナルド社との間でC-27J輸送機の能力向上プログラムを開始しました。能力向上の要点としてはコックピット部分へのヘッドアップディスプレイとヘッドダウンディスプレイの追加を軸としたアビオニクス改良と機体自衛装置追加による生存性向上、また実運用を正確に再現するフライトシミュレーター開発などが含まれています。

 C-27J輸送機はアレニア社がG.222輸送機の改良型として開発した双発輸送機で、兵員60名か空挺部隊46名、物資9tを輸送した場合は1760㎞を飛行、改良はロッキードマーティン社が参加しC-130Jで培われた技術を応用しています。イタリア空軍は12機を採用、アメリカ空軍にも採用されましたが予算削減により陸軍特殊作戦航空隊へ移管されました。
■C-130J-30受領開始
 インドネシアはC-130JとエアバスA-400M輸送機をどうじに調達するというかなり思い切った計画を進めている。

 インドネシア空軍はC-130J-30輸送機の受領を開始しました。インドネシア空軍はその空軍草創期の頃よりC-130B輸送機を採用しており、これらの旧式化を受け1983年よりアメリカ空軍の余剰機となったC-130H輸送機を導入、また民間貨物輸送型であるL-100輸送機も中古市場から導入し、20機のC-130を運用していますが老朽化が進んでいます。

 C-130J-30輸送機は5機が採用され、既存のC-130H輸送機のうち、一部を延命するとともに老朽化の度合いが激しい機体を代替する方針です。他方、運用中の機体に対し導入されるC-130J-30輸送機は下回る規模となっていますが、インドネシア空軍では同時にエアバスA-400M輸送機の導入計画を進めており、二機種が空輸能力の柱となる予定です。
■フランスA-400の21号機
 C-2とよく比較されるこの輸送機について、外征型軍隊であるフランスでもA-400Mは大量に調達できないというものなのですね。

 フランス国防省はエアバスA-400M輸送機の21号機を受領しました。これは2月14日のエアバスにおけるフランス航空宇宙軍への納入式典において示されたもので、フランス空軍のC-160輸送機を置き換えたのち、C-130輸送機の一部もA-400M輸送機により置き換えることとなりました。A-400M輸送機はC-160輸送機よりもはるかに大型です。

 A-400M輸送機の型式証明はEASA欧州航空安全機関により2013年3月に認証を受け、フランス空軍への納入が開始されたのは2013年8月、間を置かずに部隊配備鵜が開始され年間2機の量産が行われたことになります。フランス空軍はA-400Mの導入によりアフリカ地域への緊急展開へアメリカ軍輸送機などへの依存を脱却し独自作戦能力を高めました。
■豪州へT-7Aを提案
 T-7といってもレッドホークの方で自衛隊のT-7とは違う機体なのですがボーイングで量産計画が二年も遅れている機体を勧められているという。

 オーストラリア空軍は高等練習機としてボーイング社よりT-7練習機の提案を受けました。オーストラリア空軍は現在ホーク練習機を運用していますが、オーストラリア空軍になF/A-18FスーパーホーネットやF-35ライトニング戦闘機など第4.5世代戦闘機や第五世代戦闘機などが配備されており、訓練基盤強化へ練習機体系の近代化が求められています。

 ボーイング社はオーストラリアアヴァロン2023国際航空展にT-7Aレッドホークシミュレータを展示しています。T-7Aはペーパーレスのサイバー空間における開発作業を行うことで36か月間という短期間で実用化させた航空機であり、アメリカ空軍のT-38練習機を置き換えるとともにF-35要員訓練へ最適化したことで各国へ売り込みを強化しています。
■イランへSu-35
 イランとロシアの軍事的接近が中東の安全保障情勢に及ぼす影響が大きな関心事です。

 イラン空軍はロシアから最新鋭のSu-35戦闘機を受領します。これはイランの議会国家安全保障外交政策委員会が公式に発表したもので、三月にも配備が開始されるとみられています。Su-35戦闘機はソ連軍が本土防空用に開発したSu-27戦闘機の改良型であり、スホーイ設計局が製造する量産期では最も強力な機体で、イラン空軍は24機を導入します。

 Su-35戦闘機にはNO-35-Irbis-E-パッシヴAESAレーダーが搭載、これにより300km先の戦闘機を捕捉可能だとスホーイ社は発表しています、そして射程300kmの空対空ミサイルのほか、オニキス超音速巡航ミサイルの搭載能力など、高い打撃力を持ち、イラン空軍はテヘラン近郊のイスファハン空軍基地に展開する第8戦術航空団へ配備するもよう。

 F-14トムキャット戦闘機にF-4ファントムとF-5タイガー、イラン空軍はイラン革命前に導入したアメリカ製戦闘機が主力であり、このほかには1990年代に購入したMiG-29戦闘機があるのみです、アメリカ製戦闘機は1979年のイラン革命とともにすでにメーカー整備支援が打ち切られ40年以上を経て稼働率が極めて低く、新型機を必要としていました。
■ポーランド向けFA50
 軽戦闘機ではありますが対艦ミサイル運用能力とレーダーの性能を除けばF-2戦闘機に比較できる機種となっている印象ですね。

 ポーランド空軍が導入するFA-50戦闘機がKAI韓国航空宇宙産業においてロールアウト式を迎えました、ポーランド空軍は48機のFA-50戦闘機を25億ドルにて取得する計画で、ロシアウクライナ戦争の勃発を受け旧式化したSu-22攻撃機とMiG-29戦闘機を緊急に置き換える必要性を痛感したポーランドは2022年7月27日に調達契約を結びました。

 FA-50GF戦闘機とFA-50PL戦闘機、ポーランド空軍はこの二系統を導入します、最初に導入するのはFA-50GF戦闘機12機でまもなく引き渡しが開始となります。AAQ-33 スナイパー目標指示装置とAIM-9空対空ミサイル及びマーベリック空対地ミサイルの運用能力をもつ、block10仕様といい、空対空能力よりも高等練習機と攻撃機能力を重視します。

 FA-50PL戦闘機は2025年までに引き渡しが完了する計画ですが、block20仕様でF-16block70にも搭載されるAPG-83-AESAレーダーを採用しAMRAAM空対空ミサイルなど視程外空対空ミサイル運用能力を持ちます。最終的にblock10仕様もblock20仕様へ能力向上されるとされ、一見手ごろな機体でポーランド空軍は数を揃えることとなります。
■U-2偵察機2026年全廃
 中国からの国籍不明気球へ接近できた唯一の高茎がこのU-2というものですので代替機なしに安易に引退させる事にはちょっと違和感だ。

 アメリカ空軍はU-2戦略偵察機を2026年に全廃する方針で検討を進めています、しかしU-2の運用維持を求める声が空軍にはあり、アメリカ議会はU-2偵察機とともにRQ-4グローバルホーク無人偵察機の退役を求めており、仮に両方が退役した場合はアメリカ空軍は今後十年間、高高度偵察機を持たない状況に陥ることが危惧されているようです。

 U-2偵察機の検討は、空軍が2025年9月までU-2偵察機の運用を維持し、廃止の決定はこの段階まで延期する検討が為されています。その背景にはRQ-4よりもU-2は大型のセンサーを搭載可能で情報収集能力が高く、空軍自身がU-2の維持を高い優先度で予算配分しているためです。現在空軍はU-2偵察機27機をビール基地に配備し運用しています。
■E-7要員訓練へ豪州へ
 これにより自衛隊のE-767も先が見えてきたような印象だ。

 アメリカ空軍はE-7A早期警戒機導入に向け訓練要員をオーストラリア空軍へ派遣しました。E-7Aウェッジテール早期警戒機は、老朽化が進むE-3セントリー早期警戒管制機の後継機として導入するもので、空軍は保有するE-3早期警戒管制機の半数を年内にも退役させ、これにより余剰となった資金を以てE-7A早期警戒機の導入を急ぐ考えです。

 オーストラリア空軍への空軍要員派遣は6月にも予定されており、派遣規模は50名から60名規模、整備要員と機上管制士官の訓練を行い、アメリカ空軍へ最初のE-7Aが納入された際にはすぐにでも運用開始する体制を構築するとのこと。アメリカ空軍は2027年にE-7A
初号機を導入し2032年までに26機を配備、空中警戒管制能力を一新する構想です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ワグネル"六月の十五時間騒擾"とウクライナ軍ドニエプル川渡河,ロシア軍東部再攻撃動向

2023-06-27 07:00:39 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ショイグ国防相が先日東部戦線を視察しましたがロシア軍は東部戦線での反撃いや再攻勢を開始しました。ストームシャドウミサイルの間接的な影響であり、自衛隊にもこの種の装備配備を急ぐ必要が。

 ロシア軍は6月21日までに東部戦線において反撃に出た可能性があります、ウクライナ軍は前線突破を試みるも無理な攻撃は避けており、一方でシェービング近郊のロシア軍物資集積所が長距離精密攻撃により破壊されるなど、防御部隊が相手の前線突破による消耗を待って逆襲部隊を投入するよりも先に逆襲部隊で野戦を挑んでいる構図でしょう。

 ウクライナ軍の意図は不明ですが、ロシア軍の逆襲部隊早期投入は1945年5月の沖縄戦における第32軍総攻撃と重なる部分があり、防御陣地を構えていながらこれを放棄し攻撃前進する選択肢は必ずしも戦術的合理性に見合っていません。ただ、ウクライナ軍の意図は不明であり、現在のところ数週間単位で戦線の動静を見守る必要がありそうです。
■ルガンスク州クレミナ
 日本が想定するロシアの脅威はこうして粘り強く何度も栗和えされるという認識が必要だと思います、今の認識は甘いようにも思う。

 東部戦線におけるロシア軍の再攻勢はルガンスク州クレミナ近郊にあるセレブリャンカで開始されています。ただ、これは突発的な攻撃ではなくロシア国防省からの可能な限り前進し戦果を拡張せよとの命令によるもので、他方でこの前進はウクライナ軍の防御戦闘によりロシア軍が少なくない損耗を強いられていて、突破口は開かれるに至っていません。

 ウクライナ軍の反撃については、東部戦線と南部戦線の三か所で展開されていて、二週間に渡る戦闘を経てロシア軍縦深防御陣地の概要を把握し始め、これによりウクライナ軍は徐々にではあるが着実な前進を開始しているということ。なお、三か所での攻撃前進の内、ウクライナ軍の攻撃主軸は6月27日の時点でもなお、不明となったまま継続中です。
■ドニエプル川を渡河
 ロシアのワグネルによる六月の十五時間事件が展開していた最中にウクライナ軍は渡河作戦を成功させた。

 ウクライナ軍はドニエプル川を渡河に成功したもよう。この渡河作戦はアントノフスキー橋周辺において実施されており、一連の行動はストームシャドウミサイルによりウクライナ軍が破壊したチョンガル橋により、ロシア軍のクリミア半島への交通路が制限されており、残る一本の経路を遮断する構えという。渡河に成功した規模は目下不明ですが。

 アントノフスキー橋付近での渡河作戦は、装甲車複数と河川フェリーにより少なくとも戦車小隊一個規模の部隊を送ったもようで、その後の戦果拡張が行われているのか、一種の陽動であるのかは不明です。渡河地点周辺ではロシア軍との戦闘が始まっていて、一方でロシア軍はドニエプル軍集団から兵力を抽出しバフムト支援に充てている盲点が突かれた。

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【防衛情報】L-52装輪自走砲とアーチャー自走榴弾砲,ボフダナ装輪自走榴弾砲にATMOS自走榴弾砲

2023-06-26 20:14:11 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 陸上自衛隊へ導入が本格化する19式装輪自走榴弾砲、そこで今回は世界における装輪自走榴弾砲の最新動向を纏めてみました。

 イスラエルのエルビットシステムズ社はドイツのラインメタル社とともにL-52装輪自走砲の実弾射撃試験を実施しました。このL-52装輪自走砲は10輪駆動の極めて大型の輸送車両を転用しており、自動装てん装置など火砲基部はコンテナ型の戦闘室を配置、トラックに榴弾砲を乗せただけの自走榴弾砲よりも一歩進んだ先進的な設計を採用します。

 L-52装輪自走砲、この名の通りこの試作自走榴弾砲が搭載しているのは52口径155mm榴弾砲です、これをA1型と位置づけていますが、しかしエルビットシステムズ社とラインメタル社では砲身を延伸させたA2型のL-60装輪自走榴弾砲を計画しており、搭載される60口径155mm榴弾砲では射程83㎞という極めて長い打撃力を想定しているとのこと。

 L-52装輪自走砲は、しかし試作段階というよりも実証段階のシステムであり、この為に射撃に際しては巨大な駐鍬四基で車体部分を安定化させるなど、通常の自走榴弾砲よりも射撃準備に時間を要します、射程が大きいことから敵砲兵による対砲兵戦を想定していないのか、将来的に射撃準備に改善の余地があるのかについては明らかにされていません。
■イギリスがアーチャー導入
 自動装填装置を備えた巨大な装輪自走榴弾砲であるアーチャーはこれこそ国産ではなく自衛隊が導入すべき装備だと考えていたものでした。

 イギリス陸軍はスウェーデンよりアーチャー自走榴弾砲14門を緊急取得することとなりました。イギリスはこれに先立ち32門ものAS-90自走榴弾砲を供与、4月にイギリス国防省がイギリス陸軍のAS-90自走榴弾砲ウクライナ供与を実行した後に顕在化したイギリス陸軍砲兵装備不足を受けての緊急措置であり、暫定的な代替装備との位置づけ。

 アーチャー自走榴弾砲は52口径FH-77榴弾砲をボルボ社製装輪車両に搭載したもので、車体部分は高度に装甲化されているとともに不整地での運用を念頭とした建機車両技術を応用したため路外機能が高く、また道路上の戦略機動性も相応に確保されています。また砲塔は完全自動化されAS-90自走榴弾砲よりも四割少ない人員で運用可能という。

 AS-90自走榴弾砲はかねてより後継装備の取得が検討されていましたが、それ以前にイギリス陸軍の砲兵へ大きなギャップが生じており、導入決定から一年以内に装備できる選択肢としてアーチャーが選定されたとのこと。イギリス陸軍によれば遅くとも2024年4月までにイギリス陸軍での運用を開始できる条件としてアーチャーが選ばれました。
■ボフダナ装輪自走榴弾砲
 カエサル自走榴弾砲により侵攻したロシア軍へ痛撃を加えたウクライナでは以前から開発が開始されていた国産自走砲が登場します。

 ウクライナ陸軍は新型のボフダナ装輪自走榴弾砲の受領をまもなく開始します。ボフダナ自走榴弾砲は正式名称2S22ボフダナ、ウクライナ軍が開発しているトラック式自走榴弾砲です。2022年のロシア軍侵攻以来ウクライナ軍はフランスから供与を受けたカエサル自走榴弾砲を運用し、大きな戦果を挙げたと発表していますが、これと同じトラック式だ。

 ボフダナ自走榴弾砲、その開発はロシア軍侵攻開始前に遡るとのことで、ロシア軍侵攻当時、ハリコフ近郊において評価試験中であったものが有事の危険にさらされることとなり、当初ウクライナ国防省はロシア軍による鹵獲を回避すべく破壊を命じましたが、開発責任者たちは新型自走砲破壊を拒否し脱出を選択、幸いキエフ近郊まで転進成功したという。

 2S22ボフダナ、トラック式自走砲でウクライナ製KrAZ-6322トラックを基に装甲キャビンと20発の弾庫と155mm榴弾砲を搭載、射程は通常榴弾40㎞でRAP弾では50㎞とのこと。ウクライナ軍はフランスから供与されたカエサル自走榴弾砲を見事に使いこなし世界を驚かせましたが、その背景にはこの種の国産砲を研究した事が寄与したのでしょう。
■コロンビア次期自走砲
 ウクライナでの活躍以降評価を上げているフランスのカエサル自走榴弾砲ですがコロンビアでは興味深い事例が。

 コロンビア国防省は次期自走榴弾砲についてカエサル自走榴弾砲を撤回しATMOS自走榴弾砲を再選定しました。コロンビア軍は国内の麻薬カルテルとの戦いにおいて火力拠点などを急襲するべく自走榴弾砲を必要としていました。この選定では当初、フランスのネクスター社製カエサル自走榴弾砲が選定されましたが、最終契約に至らず撤回されている。

 ATMOS自走榴弾砲はイスラエルのエルビットシステムズ社製、コロンビア陸軍は18門を調達する計画です。他方、カエサル自走榴弾砲の撤回について、コロンビア政府は契約金額が1億1400万ドルになるとの通知を受け、当初見積もりを上回ったことが不採用の理由としています。カエサルとATMOSは火砲としては共に52口径155㎜砲を搭載している。

 ATMOS自走榴弾砲はエルビットシステムズ社が以前のソルタム社時代に設計した自走榴弾砲で、ソルタム社製155㎜榴弾砲をチェコのタトラ社製タトラ-T815VVNトラックに搭載しています。自走砲で麻薬カルテルとの戦いは大袈裟に思われるかもしれませんが、このほかに2500名の兵員を有するゲリラ組織FARCコロンビア革命軍も存在しています。

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