北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【03】観閲艦!ヘリコプター搭載護衛艦くらま出航(2012-10-08)

2022-12-11 20:22:38 | 海上自衛隊 催事
■さあ!観閲艦も出航だ
 今回は先週の日曜特集は短縮版となっていましたので日曜特集"観艦式"を二段構えでお送りします。

 海上自衛隊60周年観艦式は、続く海上自衛隊70周年観艦式へ日本の進めたFOIP開かれたインド太平洋構想、これに基づく安全保障の一国平和主義から国際安全保障協調体制へ、という一つの転換点へ向けての前夜というえる観艦式と云えました、あれから10年で。

 くらま出航、このヘリコプター搭載護衛艦を撮影している際についシャッターを押す際にも指に力がこもるのですが周りの方にも、いや、くらま、次の観艦式にもいますよ、と笑われてしまいました、いやいや次の観艦式もここまで素晴らしい快晴かはわかりませんよ。

 インド洋からアジア太平洋という概念での国際関係をみますと、いわばゲオポリティクス的発想でインドは中国のリムランドという影響下に限られてしまいます、そして中国海軍空母のインド洋進出を単独で対応する負担の大きさが顕在化するのも時間の問題でした。

 シーレーンという視点に依拠するならば、中国は一帯一路政策として大陸に鉄道交通網を整備し拠点中継都市に投資を行おうとも、石油など化石燃料の輸送は貨物列車にタンク車を数十連結するよりもタンカーで輸送する方が遙かに確実で大量輸送できる点は不変だ。

 海上シルクロード構想として一帯一路政策の海上版を進める中国に対して、インドが確実に懸念するのは南沙諸島のような軍事力を背景とした、海洋閉塞化をインド洋でも実施するのではないか、例えばモルディブやミャンマーなどにおいて、という懸念が生じる。

 FOIPの概念は、渡りに船的な発想といえました。自由で開かれたインド太平洋、これを提唱した安倍総理というのはインドにとり国民の友という表現なのかもしれません、故に元首相が暗殺された際には全土に半旗を掲げた、日本でさえ全土に半旗は掲げていないのに。

 NATOのような軍事機構を目指さず、ASEANのような会議主体を志向しなかった点も、FOIPの強さといえるのかもしれません。これは概念であり理念、概念に軍事力で対抗することは不可能ですし、理念であれば加盟基準もなくアゴラの様な対話する広場に過ぎない。

 ステイクホルダー、利害の共有者として理念に参画しなければ、これはかけ声に終わる、声を出すだけならば無料だ、と反論されるかもしれませんが、海上防衛力整備はFOIPと連接するように整備されているのですね。理念を守る立場を明確に示した、行動で示した。

 2012年の海上自衛隊60周年観艦式は2022年の海上自衛隊70周年国際観艦式へとつながる、一つの転換点にあった、こういえるのかもしれません。そしてFOIPの概念は、中国の海洋進出に対してではなく、自由で開かれたインド太平洋の理念への参画を促す圧力へ。

 観艦式と国際観艦式、しかし各国艦艇参加は前々から普通に行われていました、そして今年の国際観艦式はもう一つ重要な点がありまして、海上自衛隊の平時の任務が大きくなり過ぎて、単独で観艦式を行えないような規模となっていたのですね、こうした事情が。

 舞鶴展示訓練が2022年に舞鶴地方隊70周年行事として挙行されましたが、国際観艦式をみまして驚いたのは、あの舞鶴展示訓練は国際観艦式の予行だったのか、という護衛艦の並びでした。観艦式の年度に展示訓練とは思い切ったものと、感嘆したもので、なるほど。

 国際観艦式も自衛隊からの参加艦艇は2010年の伊勢湾展示訓練を思い出す程度、そこに各国艦艇が参加しまして規模を保ったという印象でしょうか。そして舞鶴展示訓練も参加部隊を集めるのに相当苦労していたようでして、艦艇やりくりの難しさが垣間見える。

 舞鶴展示訓練は、展示訓練として相応の規模で開催できましたが、実は五月の時点で中の方に聞きますと、もっと小規模なものであり輸送艦が展示訓練には参加していましたが、当初はこの輸送艦も参加予定艦艇にはなかったという、そこからよくぞかき集めたもの。

 舞鶴の場合、護衛艦数隻に練習艦か多用途支援艦とミサイル艇、掃海艇は調整中、最初の規模はこんな感じでして、参加艦艇は10隻以下でした。ここからかき集めたのですが、一方で公募をおこなったものの実質全員招待者だけではないのか、こんな疑義が私の方にも。

 ただ、COVID-19対策もありましたので、なにしろ感染が深刻な状況ではイージス艦あたご、でさえ乗艦見学を一日40名に絞って5名づつ分けて実施したほど、はるな型で最大1200名収容できるとした定員いっぱい乗せ艦艇広報ができた時代とはことなるのですね。

 実際には招待者は多かった、が、同程度に一般見学者も乗せていた、他方で急遽参加できる艦艇が増えたために募集対象者ということで地本枠を急遽確保した、慎重を期したが幸いというか不安は的中し感染者がでた護衛艦は急遽見学者を乗せなかった、という背景が。

 国際観艦式は停泊式でなく相模湾での観艦式となった、これも前回の国際観艦式が停泊式でしたので、どのように決定したのかは少々関心があるところですが、参加艦艇の規模次第では移動式観艦式ではない可能性はあったのではないか、と、ちょっと調べてみたい。

 艦艇運用の厳しい状況ですが、しかし海上自衛隊80周年観艦式では、大きく変わるかもしれません、いや2032年の話を今から、と思われるかもしれませんが2012年の観艦式写真とともに2032年展望を考えるのですから、まあ行き過ぎというわけではないと思うのです。

 哨戒艦、海上自衛隊の艦艇運用が厳しい現状の背景には、護衛艦、水上戦闘艦であり、対潜対水上対空の各種任務に当たり、そのために年間に年次訓練計画が示されている最中に、日本周辺の艦艇への警戒監視という任務が加えられ、訓練計画が圧迫されている状況が。

 護衛艦の年次訓練計画、それも実弾射撃などは単艦ではなく訓練支援艦が必要ですし、そして護衛艦には訓練のほかに検査がある、定期検査も全検査も、しかし訓練はその向こうに検定があるのですから、こちらは疎かにできないのも確かなのですね、しわ寄は広報へ。

 哨戒艦に期待するのは、警戒監視任務に護衛艦、別にあいては攻撃してくるわけではなく、そして海上保安庁設置法と国際法上軍艦ではなく公船である巡視船にできない法的領域に対応するのですから、護衛艦が訓練に専念できる環境を構築してくれる、ということです。

 広報にも余裕は出てくる可能性がある。哨戒艦は1900tとかなり大きなものですが、乗員は掃海艇よりもかなり抑えられている、そして建造費用はもっと抑えられている。警戒監視任務が増大するならば増やすのは護衛艦を増強するよりも予算的そして人的制約が低い。

 あぶくま型なみに。護衛艦に加えて哨戒艦も1900tもあるのだから、あぶくま型護衛艦なみには見学者が乗せられるのではないか、乗せられる定員が増加するならば一般もよりのりやすくなる、こうした期待はできるのですね。遮浪甲板構造から乗り心地も良さそう。

 国際観艦式は結局停泊式か移動式かは中々決定せず、しかもCOVID-19感染対策の観点から見学者を乗せない形での挙行となりました。しかし次の観艦式には海上自衛隊の陣容もそして任務さえも大きく変容していることでしょうから、そんな事もふと気になりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【02】イージス艦あたご出航!護衛艦ゆうだち出航!(2012-10-08)

2022-12-11 20:00:54 | 海上自衛隊 催事
■艦隊は横須賀を出航
 秋空と冬迫る海の群青と共にいよいよ艦隊は出航してゆきます。

 観艦式の出航風景というものはやはり感慨深い印象を十年を経ても鮮明に思い出します、いや、今年の展示訓練出航の迫力も思い出に残るものですが、出航用意ッという号令とともに喇叭が幾重にも号令を響かせまして、嗚呼出航、動き始めた、という躍動を感じる。

 あたご出航、特に印象深いのは一万トンの護衛艦あたご、その航空機格納庫の上にテレビの討論番組などで有名な方が妙にはしゃいでいる様子が、こちらの護衛艦ゆうだち航空機格納庫からもよく見えたものでした。思わずこちらも帽ふれで応じると笑われてしまう。

 イージス艦の100000馬力ものガスタービンエンジン、おどろいたのは観艦式の出航はこう、ぐわっと一気に出力をあげて加速するのですね、よし倉桟橋まで飛沫が飛ぶような迫力で、出航してゆきました、そうか舞鶴とちがってここは岸壁ではなく桟橋、と気づきます。

 護衛艦が次々と、妙に感心するのは曳船、これだけの出航をどんどん的確に支援していまして、なるほどこうした迫力をみせるというのも、実は観艦式の目的の一つなのかもしれないなあ、こう考えさせられたものです。補給なども含めて基地能力を示している訳だ。

 快晴に恵まれている、こう感じましたのは自衛隊観艦式は天候に左右されるもので、幸いわたしがみることができた観艦式、予行だけの年度のほうが多かったですが五回というのは多いほうと思う、その観艦式すべて晴天に恵まれているのですね、晴れている方がいい。

 晴れている観艦式、これは朝雲や霞というものに視界を狭められるという可能性もあります、時雨に見舞われることもあるし撮影条件には影響するものなのですが、一つは富士山が見えるか、もう一つは横浜ランドマークタワーがみえるか、こうしたところが気になる。

 東京スカイツリーなども建設されましたが、このスカイツリーも浦賀水道を航行していますと晴れていれば見えるのです、でも靄がかかっているとみえない、これは出航するまで自分でみてみるまではわからないものですからちょっとの間でも緊張してしまうのですよ。

 横浜ランドマークタワーくらい見えるかどうか、朝みてみればよい、こう思われるでしょうが観艦式の出航は朝早く、横須賀市内のホテルなどは全部早い時期に満室となってしまいますので少し遠い横須賀線や京急沿線のホテルを探す、朝景色楽しむ時間はありません。

 龍のような巨大な一本の筋雲、琵琶湖ですと天候が崩れる前兆としてものすごい長大な雲がわき上がります、いや先週湖西線で近江今津へ向かう途中に巨大なこの特徴的な雲が見えましたので、ああ今津駐屯地祭天候崩れるなあ、と朝一でわかったものでしたけれども。

 浦賀水道にもそういう独特の雲というのはあるのでしょうか、もう20年ほど前ですが京都市内でかなり低い、白蛇のような細い、戦闘機のヴェイパーでも延びているような気持ちの悪い雲が数本低い場所、四階にいたのですが眼下に見えて、30分後に恐ろしい豪雨が。

 白雲といえば護衛艦のガスタービンエンジンが巻き起こす始動の際の白煙だけでしたので、まず天候は崩れることはないだろうなあ、こうおもっていますと女性自衛官の3佐さんが気象幹部の方でして、今日はお天気大丈夫ですよ、とにっこり微笑んでくださいました。

 海上自衛隊としてもこの60周年観艦式、まあ予行なのですし、予行ですからオーストラリア艦も逸見岸壁に係留したままなのですが、大勢の見学者の方が乗り合わせる観艦式なので、快晴のほうがよいですよね。こうして艦隊は浦賀水道へ、太平洋へ出航してゆくのだ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】彦根城,紅葉の玄宮園-臨池閣と鳳翔台そして八景亭と続く近江八景の庭園をめぐる

2022-12-11 18:29:06 | 旅行記
■紅葉に染まる水墨画
 水墨画の様な光景を再現するべく作庭された美しい庭園が極彩色の天然色に彩られています。

 彦根城の玄宮園、ここはもともとかの玄宗皇帝が唐時代に築いたという離宮庭園の水墨画などを参考としまして、大陸の瀟湘八景を親しみある近江八景に意匠を置き換え造営した庭園といわれています。もっともここは彦根藩、借景として彦根城の勇壮な城郭をおく。

 玄宮園、興味深いのは何時頃に作庭されたのかが良くわかっていないという事でして彦根藩4代藩主井伊直興が造園をはじめ、第11代藩主井伊直中の頃にほぼ今の姿になったという、元々武家屋敷であったのを城下町整備とともに跡地利用したともいわれています。

 松原内湖、玄宮園は池泉回遊式庭園なのですが、どうしても水源をどうしているのだろうという情景と情感とは別のところに関心が行きます、すると今でこそ城郭は琵琶湖から離れていますが、これは干拓事業の成果であり、元々城郭は湖畔にあったということです。

 臨池閣、鳳翔台、八景亭、とこう茶室として再利用されているところも、すこし離れてもう一つの庭園を形成しているところもありまして、それ程広い場所と云う訳ではないのですが散策しますと風景がかわってゆくところが中々に面白い立地となっているのですね。

 鶴鳴渚と空の青さ、七間橋と七間橋を包む情景、臨池閣と臨池閣を少し借景の見えるところに転じますと臨池閣と彦根城天守、魚躍沼と魚躍沼の背景に鬱蒼としかしそれほど実は深くは無い木々、龍臥橋と龍臥橋を渡る際の代わり行く景色、歩み進める程風景はかわる。

 八景亭などは実は明治維新後に彦根城が廃城になりますと払い下げられてしまい、これが一時移築して近江八幡のあたりに持って行く話が出ました、そこで井伊家が買戻し城郭の風景を維持しようと奮闘するなど、実は城の破却は文化財の維持か破壊かの戦いであった。

 紅葉の情景を記録に収めると共に、やはりカメラというもの、写真を撮影する機材を考えてしまいます。もちろん一眼レフはEOS-7Dシリーズ、嗚呼markⅡを使い始めて早くも七年だ、この機種が今なお色褪せない名機となっていますが、お散歩カメラとしてひとつ。

 富士フイルムのX-100カメラ、いろいろとカメラがある中でちょっといいよなあ、と考えてしまうのはこの、使う一を選ぶカメラです、とはいえ、ちょっと一歩踏み出せないのが35mm単焦点というコンパクト機としては質実剛健な仕様によるものです、ズームしない。

 X-100,使っている方に聞いてみますと画質はもうすごいらしい、とともに35mmというかつての標準レンズをそのまま取り替えられない標準装備としていますので、常に画角をきにすること、構図とともに散策し配慮することで思い出残る写真を仕上げられるのだとか。

 35mmかあ、こうおもいますのはわたしなんかはもうズームレンズ世代ですので、単焦点といいますと35mmよりは300mmという極限の仕上がりをもとめる大きなレンズという印象があるのです、いわれてみると300mmレンズの時には確かに常に構図を意識している。

 歴史ばかり考えて散策するよりも、こう構図と情景を通じて話題を組む散策というものも、これを考える上で単焦点35mmのカメラ、なかなか人に良いよと薦められるものではないのですけれども、自分が散策の際に使ってみるには良いのかもしれない、こう思うのです。

 玄宮園、城郭として彦根城の一番奥まった場所にありますので城を出るにも掘割を大きく迂回してゆかねばなりません、すると城郭探訪もここで夕暮れを迎えても良い、という落ち着いた気分、こうすうっと、琵琶湖畔の空気を満喫し秋の終わり冬の到来を感じました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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政府の戦闘ヘリコプター廃止方針は現実逃避,ウクライナの戦場をしっかり分析せよ!増強すべきはAH-64E

2022-12-11 07:00:20 | 先端軍事テクノロジー
■戦車廃止論の財務省に続き
 ロシア軍の地対空ミサイルが枯渇しつつある今ウクライナへ戦闘ヘリコプターを供与できれば戦況を一転し得る、こう先日述べましたがなんと我が国では政府が戦闘ヘリコプター廃止を検討している。

 ウクライナの戦訓を元に戦闘ヘリコプターを廃止するというならば現実を見ていない証拠となります、ウクライナの戦訓を元に戦車廃止論を初夏あたりに報告書として発表した財務省と同じもので、ウクライナにおけるロシア軍攻撃ヘリコプター損耗の原因をしっかり分析していませんし、ウクライナ軍無人機戦果の詳細を分析していないこととなります。

 Ka-52攻撃ヘリコプターがスティンガーミサイルに撃墜される様子がウクライナ側により撮影され話題となりましたが、この点についてはロシア軍戦闘ヘリコプターは90m程度の高度を飛行していたものが撃墜された、とエアバスヘリコプターが戦況分析を行っています、本来戦闘ヘリコプターは匍匐飛行を行うものであり90mの飛行高度は高すぎるのだ。

 匍匐飛行というのは地形追随飛行を行い、樹木の高さが20mから一部25m程度の場合は高度30m程度、草原等を飛行する場合は更に低く接触すれすれの高度を飛行します、高度な訓練が必要となりますが故に撃墜されにくい、何故ならばこの高度では携帯地対空ミサイルは木々の枝に阻まれ飛翔できない、射手が肉眼で確認する前に頭上を飛び去る、直下の機関銃以外の脅威は及びません。

 多用途ヘリコプターに武装を施した武装ヘリコプターで代替できないのか、と思われるかもしれませんが戦闘ヘリコプターの胴体が細長いのは伊達や酔狂ではなく、細長くすることで命中しにくくする確率論と胴体を絞る事で防弾装甲を追加するという目的があります、いくら低空飛行しようとも多用途ヘリコプターでは機関銃に耐える装甲を施せません。

 匍匐飛行を行うにはもう一つ、多用途ヘリコプターは流線型であり空気抵抗が少ない為に難しくなります、何故ならば空気抵抗が無い事は燃費向上に繋がりますが、逆に急制動を掛ける際に流線型は空気抵抗が無い為に操縦が即座の機動に反映しません、突然の障害物に回避行動がとれない、これは即ち多用途ヘリコプターの匍匐飛行能力は低いということ。

 AH-64Eアパッティガーディアン、いや旧式のAH-1Wスーパーコブラであってもウクライナへ提供された場合、適切な運用が為されればという但し書きが付きますが戦況を一新し得る装備となります、そして戦闘ヘリコプターのウクライナ戦場での評価が低いのは、そもそも適切な運用をロシア軍は行えずウクライナは該当する航空機を保有していない為だ。

 地対空ミサイルに対して戦闘ヘリコプターは不利、というのは匍匐飛行の有無と説明しましたがもう一つ、戦術防空システムのような射程の長い装備の場合、AH-64D以降の戦闘ヘリコプターはレーダーシステムに逆探知機能を有している、この機能は実際、1991年の湾岸戦争でAH-64Aがイラク軍レーダー網を破壊した事を受け重視された性能なのですが。

 戦闘ヘリコプターの性能は年々向上しています、2021年からはTV誘導方式のスパイクNLOSミサイルのAH-64E適合化試験が進んでいて、この射程は32kmにも上るのです。これらの性能と運用特性を踏まえて、いや無人航空機で代替できるのだ、とするならば良いのですが自衛隊でこの種の無人機研究を実動試験した事はありません、現実を見るべきでしょう。

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