北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】E-3セントリー早期警戒管制機からE-7早期警戒機ウェッジテイルへ更新加速とF-22ラプター退役論争

2022-12-19 20:01:11 | インポート
週報:世界の防衛,最新11論点
 今週は空軍関連の11の論点を示しましたが、やはり気になるのは航空自衛隊のE-767が期待寿命がまだ十分あってもシステムの寿命が恰も少し前に買ったWindows10のパソコンの様にみえてきたところでしょうか。

 アメリカ空軍はE-3早期警戒管制機半数に当る15機を2023会計年度に除籍させE-7早期警戒機の取得費用に充てる計画です。アメリカ空軍はE-7早期警戒機への置き換えを急ぐ考えで、連邦議会は9月30日までに歳出法案を可決せねばならず、しかしE-7の引き渡しが始まる前にE-3早期警戒管制機半数を先行し退役させる事へ不安視する声もある。

 E-3早期警戒管制機半数を退役させる事でE-7早期警戒機の研究開発費用2億2700万ドルが確保出来ると考えられていて、E-7早期警戒機がアメリカ空軍へ引き渡された際に素早く実戦運用能力を確保できるとされます。E-7早期警戒機はボーイング社がプライベートベンチャーで開発した機体で、ボーイング737を原型としたもの、近年採用が増加しています。
サウジのE3後継検討
 サウジアラビアはイエメンからのイラン製無人攻撃機攻撃に対しこれらを監視する早期警戒機を重視しています。

 サウジアラビア空軍はE-3早期警戒管制機後継にE-7早期警戒機へ関心を寄せている、これはアメリカ空軍へE-7早期警戒機導入計画を統括する空軍デジタル総局のスティーブンワートエグゼクティブオフィサーが明らかにしたものです。サウジアラビア空軍はE-3早期警戒管制機の2040年以降までの長期運用支援契約を最近結んだばかりとなっています。

 E-7早期警戒機はイギリス空軍でもE-3早期警戒管制機後継機として導入され、アメリカ空軍も置き換えを開始する計画です。搭載するAPY-2レーダーシステムは継続的な近代化改修プログラムにより第一線の能力を維持していますが、アメリカ空軍から退役するならば、NATOとフランス及び日本だけがこの改修開発計画の費用を負担する事となります。
プロジェクトカレラ
 F-35戦闘機はもともと無人機との連節を念頭に開発されていますがアメリカではいよいよその本格的な前進が始ります。

 アメリカのロッキードマーティン社はF-35戦闘機と連携する無人機部隊を構築するプロジェクトカレラへ1億ドルを開発費として計上しました。プロジェクトカレラは2021年にロッキードマーティンのスカンクワークス先進開発事業部が構想したもので、多数の無人機を輸送機に搭載し、戦域後方から発進させ先行するF-35を支援する運用体系とのこと。

 プロジェクトカレラではF-35戦闘機と同じくロッキードマーティン社が開発製造するC-130輸送機を空中無人機母艦とし、ここから新しく開発する小型無人機スピードレーサーを展開、空中発進後にスピードレーサーは編隊を組み、F-35戦闘機を越えて前方に展開、索敵や機体掩護、必要ならば敵ミサイルからの囮に投じる等の支援任務を行うとのこと。

 スピードレーサーはF-35に随伴する以上、ステルス性に加え超音速巡航能力が求められ、またC-130輸送機に複数を搭載する以上相応に小型である必要もあります。なお、アメリカ空軍ではC-17輸送機やC-130輸送機を空中発射巡航ミサイル母機とするハーベストホーク計画を進めており、空中発進についての技術構成要素は既に構築されているといえます。
F-22戦闘機33機を退役へ
 F-22戦闘機は近年コックピット周辺部の劣化が進んだまま運用されるなど高すぎる運用費用が表面化しています。

 アメリカ下院軍事委員会では2023会計年度におけるF-22戦闘機33機退役案で反対論が出ている。これはNGAD次世代戦闘機開発に際しての予算捻出から運用費用の大きなF-22戦闘機の退役を加速させるもので、特にNGADと共に進められるスカイボーグ計画、有人戦闘機と無人戦闘機の連携運用研究への5150万ドルを捻出する上で必要とされるものだ。

 世界初の第五世代戦闘機として開発されたF-22戦闘機は機体形状は勿論ミサイルまでを機内に格納しコックピットさえ徹底したステルス設計を採用するとともに超音速巡航性能を有する戦闘機であり、制空戦闘機の上を行く航空支配戦闘機と称されたが、完成が東西冷戦終結後であり、当初計画の四分の一まで生産数が縮小、維持費が肥大化してしまった。

 F-22戦闘機を廃棄するか残して近代化改修するか、2019年にはロッキードマーティン社が算出したF-22戦闘機近代化改修費用が1機あたり5000万ドルとされている。ただ、33機はF-22戦闘機の二割近くに当る。近代化改修費用は機種当たりで決まり、改修対象数で割っただけに過ぎない、するとF-22を減らす事は一機当たりの改修費用増大にも直結しよう。
イギリスのE-7要員訓練
 イギリスでE-3早期警戒管制機後継として導入されたE-7A早期警戒機の運用について。

 イギリス空軍はE-7Aウェッジテール早期警戒機要員訓練をオーストラリア空軍のE-7A部隊において実施しているようです。オーストラリアのダーウィンから少し離れたティンダル基地において9月に実施されているピッチブラック演習ではイギリス空軍はタイフーン戦闘機とボイジャー空中給油輸送機を派遣していますが、ここにはE-7Aが展開している。

 E-7Aウェッジテール早期警戒機はオーストラリアが導入していますが、イギリス空軍もE-3Bセントリー早期警戒管制機の後継機として配備が開始されています、E-7Aはニューサウスウェールズ州ウィリアムタウン基地の空軍第2飛行隊に配備されていますが、演習へティンダル基地に1機が派遣、これがイギリス空軍要員教育支援へ提供されています。
タイが韓国製誘導爆弾
 誘導爆弾は命中精度を高める事で周辺被害をおさえるとともに弾薬消費量全般も抑える効果が高い。

 タイ空軍は韓国製LIGNex1KGGB誘導爆弾の導入を発表した。これは通常型のMk.82/500ポンド爆弾に装着するGPS誘導装置で滑空飛行が可能となっています。LIGNex1KGGBの特色は無線LANによるリアルタイム誘導が可能であり、また通常のPDU-14兵装搭載架を無改造で搭載可能となっています。タイは10発を試験調達します。

 LIGNex1KGGBの射程は投下高度次第で3000mから投下した場合は47km、12000mで投下した場合は最大103kmとなっており、韓国では旧式のF-4戦闘機から韓国製F/A-50まで幅広く運用されています。輸出実績は既に2016年にインドネシアで、2017年にサウジアラビアで採用されており、今回発表されたタイへの輸出は3カ国目となります。
ドイツのA-321LR
 日本も空中給油機とともに多目的輸送機としてボーイング767を導入し当初計画よりも調達が下方修正されているC-2輸送機を補完し飛行隊の定数をC-1時代と同程度とする必要はないか。

 ドイツ空軍はルフトハンザテクニック社よりエアバスA-321LR輸送機を受領しました。これはエアバスA-321旅客機を多目的輸送機として導入したもので、人員輸送に用いた場合の輸送能力は136名となっています。航続距離は7400kmでドイツからそのまま極東地域までは飛行が難しいのですがアメリカ本土やアフリカ大陸までは充分飛行可能です。

 エアバスA-321LR輸送機は、人員輸送機や人道物資などをパレット貨物輸送に用いる他、病院航空機として運用する事を想定しており、ドイツ衛生軍の衛生機材や航空酸素発生装置の容量に余裕をもたせ医療用酸素に転用する、また負傷者搬送用座席や寝台等の区画が設置されました。この為、旅客機時代は206席あった座席は136名分まで縮小しています。
ポーランドFA-50調達
 ロシア軍事圧力の切迫感から急いで戦闘機を揃えたいポーランドにはSu-27戦闘機にも対抗は出来て相応の性能と安価な韓国製戦闘機は有用な選択肢となっている。

 ポーランド政府は韓国からのFA-50軽戦闘攻撃機48機の導入に関する正式契約に署名しました。9月16日に行われた正式調印式にはポーランドのアンジェイドゥダ大統領も出席しています。ポーランド空軍はロシア軍ウクライナ侵攻を受け、ロシアの支援が必要なMiG-29戦闘機とSu-22攻撃機の運用寿命が最早ない事に鑑み、戦闘機を緊急選定しました。

 FA-50軽戦闘攻撃機はKAI韓国航空宇宙産業がロッキードマーティンの支援を受け開発したものでエンジンはアメリカ製でF/A-18Eなどに採用されるF414を搭載、レーダーはイスラエルのエルタEL/M-2032、ポーランド輸出仕様はAESAレーダーとスナイパーポッドを搭載しており、AMRAAM空対空ミサイルを運用可能、相応に強力な戦闘機となった。

 FA-50軽戦闘攻撃機48機はポーランド外務省によれば30億ドル規模の契約であるとしており、納入を急ぐポーランド空軍は先ず2024年に12機を取得、そして2028年までに残りの36機を順次納入を受ける事となっています。韓国製兵器は比較的高度な性能に対して取得費用の安さがポーランドでは評価され、戦車や自走砲なども多数を取得しています。
週報:世界の防衛,最新11論点
 先日朝日新聞が日本のF-2戦闘機について維持費が調達費よりも高くなったと報道していましたが、実際このように維持費は調達費にだんだん追いついて越えてゆくものなのです、飛ばす限りね。

 パキスタン空軍はF-16戦闘機関連機材4億5000万ドルの売却をアメリカ国務省より認可されたとのことだ。パキスタン政府は核実験強行によりF-16関連資材輸出禁止の制裁措置を受けており、またアルカイダ系武装勢力掃討作戦を米軍が実施した事でパキスタンからもアメリカへの疑義的世論が高まり関係が悪化、近年は中国製戦闘機を購入している。

 パキスタンは過去111機のF-16A戦闘機を発注するも核実験により禁輸となり28機のみが製造、制裁期間中はデイビスモンサン基地に保管された、2005年に制裁解除となり、この際に併せてF-16C戦闘機36機の追加発注が行われた。今回の発注は引き渡された機体の整備関連機材だが、丁度同時期の九月、パキスタンは洪水被害に見舞われ費用負担が課題だ。
MQ-25ステルス無人機
 いよいよMQ-25は本来の実任務用途へ近づく模様です。

 アメリカ海軍はボーイング社との間でMQ-25ステルス無人機の洋上監視運用試験を実施しました。MQ-25無人機は当初は空母から運用可能な無人攻撃機として開発されたものの無人空中給油機として転用された機体で、現在はF/A-18E戦闘攻撃機を空中給油機に転用している為、これらの任務から貴重な空母航空団の打撃力を解放する運用に当っています。

 試験は8月18日にイリノイ州のミッドアメリカ飛行場を中心に実施され、E-2D早期警戒機への給油実験、そしてF/A-18E戦闘攻撃機の支援が行われました。この実験ではMQ-25に空中給油とともに監視器材を搭載してのISR情報収集任務を追加する能力が確認され、この試験では海軍のP-8A多目的哨戒機が300浬先からの情報伝送試験も行われています。
ムワリ特殊戦航空機
 いわゆるウルトラライトプレーンの軍用型なのですが使い方によっては用途はあるのでしょうか。

 南アフリカのパラマウントグループはムワリ特殊戦航空機9機を複数の国へ販売したとのことです、パラマウントグループは9月21日にアフリカ航空宇宙防衛展においてムワリ特殊戦航空機の販売成功を発表、ただ販売金額や何処の空軍が配備したかは発表できないと前置きしたうえで、アフリカ大陸においてアフリカ諸国が採用したとしています。

 ムワリ特殊戦航空機はドイツのヘンソルト社製アルゴスⅡ航空観測システムを搭載した小型飛行機で、機体そのものは全長10.3mと全幅11.9m、乗員は操縦士2名で空虚重量は2tでしかありません、しかし最高速度は504km/hで航続距離は2130km、近年は無人機が担う監視任務や反乱鎮圧任務を無人機よりも安価な小型機により実施可能だとされています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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北朝鮮-弾道ミサイル二発を日本海へ発射,高出力ロケットモーター実験成功発表後初の実験

2022-12-19 07:01:41 | 防衛・安全保障
■臨時情報-北朝鮮ミサイル
 弾道ミサイル実験など慣れたものと思われるかもしれませんが、反撃能力というものを日本が整備しようという最中にあって難しい課題を突き付けました、それは固体燃料という点で、です。

 北朝鮮軍は18日午前中に二発の弾道ミサイルを発射しました、朝鮮半島を当方に発射したミサイルは二発とも日本海に落下、日本のEEZ排他的経済水域外に着弾したもよう。ミサイルは日本時間1111時と1152時に発射され、ともに到達高度は550km、飛翔距離は500kmとのこと。飛翔距離と到達高度からみて準中距離弾道弾の可能性があるとのことでした。

 ミサイル実験は繰り返されていますが、今回はこれまでとは若干違う背景がありました、日米韓防衛当局は北朝鮮の聴許委ミサイル実験へ警戒を高めてきました、その背景には北朝鮮が15日に固体燃料方式の高出力ロケットモーター実験に成功したと発表しており、新段階の固体燃料方式による長距離弾道ミサイル実験が間近に迫っていると考えられたためです。

 固体燃料方式、勘違いされる方がいるようですが液体燃料方式と固体燃料方式では全く構造が異なります、液体燃料方式ではミサイルのエンジンに当たる機関に燃料を吹き込ませ確実かつ効率的に燃焼させる技術が求められます、しかし固体燃料方式ではエンジンではなく燃料の成形が実質的に推進力をもち、エンジン有無という点で根本的に構造が違う。

 液体燃料方式、一般論ですが液体燃料の取り扱いは難しい、それはロケット燃料は過酸化水素やヒドラジンなどを用いていて一般の自動車燃料であるガソリンや軽油よりも安定性が低く取り扱いが難しくなっています。そして腐食性が高いために何年も充填して保管することはできず、一般論として発射日程が決まった後で充填するものとなっている。

 固体燃料は、通常の地対空ミサイルや空対艦ミサイルなどのミサイル燃料として用いられます。これは安定性が高いためであり、備蓄にも向いていますし移動の際に振動などに対する脆弱性を抑える点でも液体燃料方式よりも有利です。しかし推進力の面で液体燃料方式の方が、酸化剤と燃料を噴射高度に応じ適宜調整できる点でも、有利となっています。

 北朝鮮が固体燃料化を急ぐ背景には、固体燃料方式のミサイルの方が備蓄が有利であり、技術的にはKN24短距離弾道弾など固体燃料方式のミサイルを実用化しています、しかしムスダン弾道ミサイルなど射程のながいものはこれまで液体燃料方式が主流で、射程6000kmというKN-08が固体燃料方式によるもっとも射程の長いものと分析されている。

 固体燃料、アメリカ本土を射程とする長距離弾道ミサイルを固体燃料方式とできれば、生存性と即応性を高められる、ということでしょう。他方で、ミサイルの備蓄性が高まるということは、移動式発射装置を用い弾道ミサイルが基地に配備されるのではなく発射前の早い段階で演習場や山間部などに航空攻撃を警戒し対空疎開できることにほかなりません。

 日本の反撃能力、政府は自衛隊へ多数の射程1000kmから2000km程度のミサイルを配備し、北朝鮮による日本への攻撃が着手された場合にはミサイル基地など軍事施設に限り日本国外であっても攻撃を行う反撃能力整備を進めていますが、今後は攻撃着手がミサイル基地を進発する段階で見極めるという、非常に難しい情報収集能力が求められます。

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