北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

はるな型ヘリコプター搭載護衛艦・しらね型ヘリコプター搭載護衛艦、巡洋艦としての価値

2012-05-31 23:23:58 | 北大路機関特別企画

◆海外での任務を念頭に元来の巡洋艦の位置づけ
 護衛艦はるな、の写真を掲載するための記事です。地方隊の在り方の特集記事やかなり前から護衛艦隊の八個護衛隊全てにDDHとMD-DDGを配備する八八艦隊の必要性を掲載してきましたが、今回は備忘録的にもう一つ。
Himg_9671 前回の観艦式でしたが併せて護衛艦ひゅうが艦内で行われた海賊対処に関するシンポジウムにて、意見を求められたイギリス海軍大佐が、海上自衛隊の護衛艦は水上戦闘艦としてどれも素晴らしいが、哨戒と長期航海を念頭に置いた艦があってもよいのではないか、と発言されました。海上自衛隊のDDHという艦種は、ヘリコプターを近代化もしくは更新することで即座に多用途任務に充てることが出来、日本独自の艦種というべき運用体系が確立していますが、実のところ上記任務にも非常に最適の艦船として対応し得るのではないか、と考えます。
Dimg_2899_2 過去にも従来型DDHの能力については今後も十分な能力がある、と記載してきました。その一案が地方隊旗艦に充てる、という任務です。DDHは元々対潜中枢艦として護衛隊群旗艦としての任務を重視し設計されてきました。有事においては我が国周辺海域であれば各地方隊のなかで当該管区の地方総監が海上統合任務部隊指揮に当たりますが、有事においては陸上の艦艇基地はゲリラコマンドーの襲撃や弾道ミサイルによる攻撃に見舞われ、災害時には指揮官先頭の位置づけを示すという程度ではありますが、特に前者に意味はあるでしょう。
Dimg_2911_2 今回の提案は、ヘリコプター搭載護衛艦の多用途性を以て巡洋艦としての任務を担うことが出来ないか、ということです。巡洋艦と言えば我が国では帝国海軍の時代に主力艦を補う任務、もしくは駆逐艦を中心とした水雷戦部隊の旗艦としての任務が主に想定されていましたが、海外植民地を有する諸国は植民地警備任務に航続距離の大きな水上戦闘艦として巡洋艦を充てていました。日本は植民地が台湾と近かったため植民地警備ではなく海外権益保護、という観点から装甲巡洋艦出雲等を上海に停泊させた事例を出すのが妥当でしょうか。
Dimg_3166_2 哨戒艦的な任務に充てる海上自衛隊の巡洋艦、これは冷戦時代に想定されたヘリコプター巡洋艦ミサイル巡洋艦混成巡洋艦隊や全通飛行甲板型護衛艦という話ではなく、海賊対処任務と国際平和維持活動への対応を念頭に置いたものです。即ち、ヘリコプター搭載護衛艦は、艦隊防空能力で、ひゅうが型のような最新を除けば限定的で、従来型護衛艦は打撃力に艦砲を重視し、対艦ミサイルを搭載していません。半面強力なソナーを搭載している、そして大きな航空機運用能力を持っており、この部分を如何に使うかにより能力は大きくなります。
Himg_3884 海賊対処任務では海賊は航空機や水上戦闘艦を導入した事例は今のところなく、水上戦闘艦を拠点とした哨戒ヘリコプターと高速艇の運用が大きな抑止力となっています。この場合ヘリコプターのほか艦砲が威圧し抑止する期待がありますがヘリコプターからの機銃掃射で現在のところ決定的な反撃手段がもちられた事例が無く、それならば海賊対処部隊にヘリコプターを強化した場合の能力を模索したほうが対処能力全般の強化につながるともいえます。即ち、複数のヘリコプターを運用できるならば一隻で船団を防護できるやもしれません。
Himg_6887 国際平和維持活動ですが、ヘリコプターの運用基盤として、SH-60Kを三機搭載した護衛艦はるな型はHSS-2の搭載を念頭に格納庫が設計されていますが、これは同時にHSS-2の搭載艦に搭載を念頭としたAW-101,つまりMCH-101を搭載できるということを同時に示すことにもなります。MCH-101は掃海輸送ヘリコプターですが、図らずも掃海母艦を補助することに加え、機体は35名までの完全武装兵員を空中機動させることが出来ますので兵員輸送から邦人救出まで対応する母艦として高い能力を発揮できるでしょう。
Himg_7718 海賊対処任務等は長期の任務となるため、居住性が重要となりますが、はるな型と同等の想定で護衛艦を建造した場合、もちろん機関のガスタービン化などは行われると共に自動化もある程度行われますので、一定の居住性は確保できるところ。他方、長期任務を念頭に置いた場合は、設計にどの程度反映されるかが重要となるのですが、練習艦としての任務に充てることも考えられるでしょう。特に格納庫は多用途空間として用いることが出来ますので、充分対応します。また、飛行甲板に導板を設置すれば車両輸送も可能となり、災害派遣にも寄与します。
Himg_7937 ただ、この運用を行う場合には、どうしても複数隻の艦艇が必要になります。必要なのは、予算上の措置で、これを画定する要素を挙げますと、国際平和維持活動の増加を見越した支援艦への護衛艦充当を行うか行わないか、海賊対処任務に現在の護衛艦を派遣することにより生じる領海防衛警備への影響と専用艦を建造した場合の護衛艦勢力維持への影響との比較、さらに今後我が国は海外での任務をどのような形で展開するのかという国家戦略に依拠した運用体系というものがあってしかるべきでしょう。そのうえで、海外での我が国の防衛に寄与する任務へ巡洋艦的な運用を従来型DDHに対応させる、ということ、検討してみる価値はあるやもしれません。

北大路機関:はるな

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海上自衛隊地方隊への一考察② ミサイル艇の有事任務を支援する沿岸砲兵部隊の防空網

2012-05-30 23:11:48 | 防衛・安全保障
◆スウェーデン方式、ミサイル艇護る沿岸砲兵部隊
 特集第二回目。地方隊の任務に基地の防護があります。即ち自衛艦隊の任務遂行上必要な基地機能を維持しなければならない事を示しています。海上自衛隊にも陸王自衛隊的な任務を行う必要がある、ということ。
Cimg_6402 平時におけるミサイル艇の任務と戦時におけるミサイル艇の任務は異なる、この点は最初に記しておきたいと思います。この区分を間違えますと欠点と利点を入れ替えることになってしまいますから、ね。ミサイル艇は平時に哨戒任務に当たり我が国周辺海域への敵対勢力の接近に対する示威行動を行い、同時に自衛艦隊は練度向上に最大限の努力を重ねる。対して有事の際はミサイル艇は位置を暴露すれば撃破されるため位置を秘匿しつつ絶対防護しなければならない海域での打撃任務と奇襲にあたり、第一線に出ての対水上戦闘対空戦闘対潜戦闘は自衛艦隊が担う。
Cimg_1403 さて、海上自衛隊は地方隊が有事に際して統合任務司令部を発足させ、海上部隊式を地方総監が担当、自衛艦隊は必要な戦力を提供し、平時には地方隊が沿岸警備や地誌情報収集を行うと共に自衛艦隊は練度向上を担当します。ここで、平時から必要な哨戒任務に地方隊が恒常的に自衛艦隊より抽出した場合、自衛艦隊は平時において練度向上に従事する機会を逸することになり、これは問題です。訓練のための自衛隊ではありませんが、訓練が無い状態での運用は能力を十分発揮できません。そこで、平時においては地方隊がミサイル艇を運用し、哨戒任務にあたる、ということを前回提案しました。
Img_4967 平時において哨戒を行うミサイル艇、それでは戦時はどうするのか。ミサイル艇は如何に戦時において生存するか、スウェーデンの事例を見てみましょう。ミサイル艇は脆弱性が高い装備ですが、その背景には小型と高速を重視したことから自衛用の艦対空誘導弾を搭載することが出来なかった、という部分にその弱点は収斂します。逆に艦対空誘導弾を搭載すれば一定範囲内の航空脅威には対処できるでしょうし、対潜装備を搭載したならば潜水艦の脅威に打ち勝つことも出来るのでしょうが、そこまで行きますと最早フリゲイトと表現するのが正しくなってしまうところ。
Cimg_7004 スウェーデン沿岸砲兵は現在、両用戦軍団に改編されています。陸上部隊と海上部隊に分かれ、海上部隊は沿岸砲兵部隊から両用戦軍団への改編期の規模で、満載排水量57tのムンテル級哨戒艇12隻、満載排水量31tの201型揚陸艇70隻、兵員20名を収容し速力35ノットで満載排水量19tの90H型強襲艇が125隻といった装備を有しています。基地や港湾施設の防備に兵員を輸送し、湾口部分での潜水艇浸透への対処、少なくとも防備に徹して局所的に運用した場合、能力はかなり大きいものがあります。
Cimg_6789 スウェーデン海軍は冷戦時代、中立を掲げつつソ連海軍の強大な戦力と対峙する中、沿岸砲兵部隊とミサイル艇や魚雷艇の連携を掲げ防衛に当たっていましたが、しかし、万一ミサイル艇が航空機の攻撃を受けた場合はどうするのか、簡単です、沿岸部に偽装網などを用いて退避し、攻撃の機会まで待つのです。それならばその沿岸部へ航空機や駆逐艦が接近した場合はどうするのか、非常に簡単です、沿岸砲兵が航空機を撃退し水上戦闘艦を砲撃し、ミサイル艇に防空網と防護機雷原という聖域を提供していたのでした。
Img_8143 現在のスウェーデン海軍の規模は海上自衛隊よりもはるかに小さく、数字としては潜水艦6隻、コルベット11隻、哨戒艇13隻、揚陸艇34隻、機雷敷設艦1隻、掃海艇11隻、航空機49機。人員6000名。我が国と異なり、長大なシーレーンを独力で維持する必要が比較的低く、加えて周辺情勢は安定しているほか、自給率は食料とエネルギー面で高く、北海油田などシーレーンは近傍にあることから沿岸防備に集中できるのですが、それにしても規模は限られ、この海軍力で最大限の能力を発揮する、という背景に沿岸砲兵の存在があったといえるかもしれません。
Cimg_2068 スウェーデンは海軍両用戦軍団、かつての沿岸砲兵部隊との協同を念頭に置いていました。実質には沿岸砲兵四個連隊を現在は一個連隊にまで削減されているのですが、陸軍とは独立した非常に強力な火力を有していたわけです。FH-77AD-KARELIN,CD-80/120mm沿岸砲やRBS15K地対艦ミサイルを有し、GIRAFFEレーダーを運用、更にRBS-70地対空ミサイル、TRIDON装輪自走高射機関砲を主な装備としています。大砲にミサイル、まるで陸上自衛隊の装備だな、と思われるかもしれませんが、沿岸防備には陸上自衛隊の任務と海上自衛隊の装備が統合運用される必要もある、こういえるのではないでしょうか。
Cimg_6290 この装備は海上自衛隊の地方隊警備隊とは根本的に次元が異なり、陸上自衛隊の各種装備に当てはめますと、以下の通りです。FH-77AD-KARELINはFH-70榴弾砲を装輪自走砲架に搭載したものに匹敵します。FH-77榴弾砲はボフォース社が開発した野戦榴弾砲で、155mm砲弾三発を起重機にて装填装置横の半自動装填装置に装填、一効力射三発を僅か15秒で射撃するほか、射撃姿勢からそのまま補助動力装置により時速15km/hで機動可能なのですが、FH-77AD-KARELINではこれをVME-A25C装甲トラックに搭載した簡易自走砲となっています。陸上自衛隊が開発中の火力戦闘車と比較すれば装填装置等で見劣りしますが、FH-70と比較すれば強力な装備です。
Img_5153 CD-80/120mm沿岸砲、これはFH-77を補完する目的でボフォース社が開発した榴弾砲です。砲身が長く、結果120mm砲ですが射程は21000mに達し、1985年に制式化となりました。野戦榴弾砲として開発されたFH-77は短時間での効力射と迅速な陣地転換に重点を置いた陸軍用のkじゃ法を沿岸砲兵が採用した形ですが120mm沿岸砲は沿岸横柄の要求が大きく反映された装備で、砲弾が小さく発射速度が速いことから、間接照準射撃ながら上陸用舟艇や小型哨戒艇に対する射撃を念頭に置く装備で、他方、自走用のほど常緑装置を搭載、時速6km/hでの機動が可能とのことです。基本はトラックにより長距離機動を担います。陸上自衛隊では比較できる装備が、退役した105mm榴弾砲くらいしか思いつきません。しかし、120mm砲は想定された運用の範囲では非常に近代的な装備で、着上陸を画策する相手には脅威というところは間違いないでしょう。
Cimg_8996 RBS15K地対艦ミサイル、陸上自衛隊では88式地対艦誘導弾に匹敵する、と簡単に言えるのですが、一長一短の部分があり、独特の地対艦誘導弾です。沿岸砲兵用のRBS15Kでは大型トラックに四連装発射器が搭載されており、射程はMk-1で110km、最新のMk-3で200km、概ね88式地対艦誘導弾と同程度で同時発射能力が一両当たり少ない、というところでしょうか。基本として30km程度内陸から運用するようです。長所としてはRBS15Kでは発射器のキャビン後方に管制室を有しているところで、88式地対艦誘導弾では連隊規模での運用が基本となていますが、RBS15Kは単体で目標情報へ対応できる点です。この方式、88式地対艦誘導弾は同時弾着過飽和攻撃を思考しているので運用思想の違いでもあるのですが。
Cimg_5953 GIRAFFEレーダーはこれらを統括する装備です。スカニア製大型トラックに搭載し、屈曲伸縮式マスト上にレーダーを搭載し警戒管制に当たるのですが、勿論地形障害はあるものの高所に設置すれば150km程度先までを警戒することが可能で、FH-77AD-KARELIN,CD-80/120mm沿岸砲、RBS15K地対艦ミサイルに対し目標情報を提供する装備です。陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾には評定車が装備されていますがこちらは遙かに大型で、可搬式の移動レーダ装置と比較し非常に高い性能を持っています。
Img_2638 RBS-70地対空ミサイル、これは三脚に設置し運用を行う大型の携帯式地対空誘導弾です。携帯式ではあるのですが最新型のRBS-70-BOLIDEでは射程8000m、有効射高5000m、ミサイル重量17kgと非常に大型となっています。FIM-92Cを例に出しますと有効射程4800m、有効射高3800m、かなり大型であることがわかるでしょう。陸上自衛隊では93式近距離地対空誘導弾と81式短距離地対空誘導弾の中間というところ、陸上自衛隊では師団防空システムの支援を受けるため効率は非常に高く維持されていますが、ミサイル単体ですとRBS-70の性能は無視できません。
Img_6469 TRIDON装輪自走高射機関砲、ボフォース40mm高射機関砲を搭載する装甲トラックです。装甲トラックと言いますと、非常に陳腐な印象をもたれる方がいるやもしれませんが、その車両はボルボA-25C-6×6装甲トラックで、多目的キャリアとして開発された車両です、キャビン部分が装甲版と防弾ガラスにより防護されており、必要に応じて遠隔操作式銃塔所謂RWSを搭載することが可能です。多目的キャリアとして開発されているため一定の不整地突破能力を有しており、あのアーチャー自走榴弾砲も同一車体を採用しました、40mm機関砲は射程4000m程度ですが直進するため航空機の欺瞞行動を無視し、近接信管により損害を与えることが可能で、陸上自衛隊で言えば、L-90高射機関砲の自走型か、93式近距離地対空誘導弾に匹敵するといえるでしょう。
Cimg_7126 この種の装備、海上自衛隊が運用するにはやや手に余り陸上自衛隊の任務とも重複します。陸上自衛隊が地対艦ミサイル連隊、高射特科大隊、特科大隊と警備支援の普通科中隊に後方支援隊を統合して、沿岸防備混成団を各方面隊に創設してくれるならば非常に明快になるのですが、海上自衛隊のミサイル艇を支援する、有事の際の統合任務部隊設置に際して陸上自衛隊の指揮系統から取り外し、海上自衛隊の指揮系統に編入できるのか、など疑問が生じるのですが、特に用地接収や陣地構築の権限、陣地構築の適地とミサイル艇秘匿の適地の連携を如何に行うのか、難しい。
Cimg_6383 しかし、基地防空用と、そのほかにミサイル艇支援用の防空装備を保有することが出来れば、加えて96式多目的誘導弾と警備の小隊でも配置されていたならば、何とかなるかもしれません。野砲は陸上自衛隊がFH-70や99式自走榴弾砲で対応しますし、集団で上陸すればMLRSで一度に無力化することが可能となるわけです。ミサイル艇の支援を行うならば、ミサイル艇に接近する小型目標を制圧するために多目的誘導弾があればよく、航空機に対しては93式近距離地対空誘導弾により十分対応が可能でしょう。
Cimg_7526 いろいろと話は飛びましたが、ミサイル艇の脆弱性を補うには我が方の地上の防空網に対空疎開し、必要に応じてその射程外に出る打撃、日露戦争の旅順艦隊のような運用と言えるかもしれませんが、あり得るわけです。陸上自衛隊と海上自衛隊の共同運用。難しい話ではあるのですが、必要ならば独自の装備を整備し、対応することでミサイル艇の任務は脅威状況下においても十分に発揮できる、といえるのではないでしょうか。このほか、地方隊にはもう一つ、自衛艦隊では行えない任務があるのですが、こちらは次回に掲載することとしましょう。
北大路機関:はるな

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第4師団創設58周年・福岡駐屯地創設62周年記念行事(2012.05.27)速報

2012-05-29 23:38:15 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆九州北部対馬五島地区の防衛警備
 日曜日に行われた福岡駐屯地祭、快晴に恵まれ駐屯地は多くの来場者で賑わいました。
Fimg_2_603 第4師団は九州の北半分を防衛警備管区として受け持つ西部方面隊隷下の師団で、警備管区には五島列島、対馬など文字通り国境の島を抱える師団です。師団創設当時は朝鮮戦争の緊張が残る中、遠からず想定された戦争に際しては米軍来援拠点となる北部九州、万一半島赤化統一の際には最初の脅威正面となることもあり、重要視されていた師団です。
Fimg_26_57 福岡駐屯地。前日久留米に一泊した当方は西鉄特急、・・・、はまだ運行される前の時間だったので急行にて春日原へ、そこから普通に乗り換え雑餉隈へ、最初は雑餉隈駅の読み方がわからず難渋しましたが、JR南福岡駅前を徒歩で移動し、シャトルバス乗り場前をそのまま駐屯地へ、JR九州車両基地で撮影したいのを敢えて我慢し、開門前に到達、初めての九州での駐屯地祭撮影とあって気合いを入れました。
Fimg_2213 福岡駐屯地祭。撮影位置は、スタンド席を考えたのですが最上段右端以外は観閲行進の撮影が難しそうで、地上椅子席は安全ロープまでの距離が一定あるため写真に写りこんでしまうため撮影には不適、結果、写真の位置にて撮影することとなったのですが、観閲行進を正面から撮影できる植込みが来場者へ開放、こちらの方が良かったかもしれません。
Fimg_2321 武内誠一師団長訓示、武内師団長は東北方面総監部幕僚長として東日本大震災災害派遣の第一線で対応した指揮官です。災害派遣に出動した隊員への評価は有難いが、車両を整備し物資を補給し派遣任務を支えた隊員、一人の派遣人員も捻出せず、しかし増大する脅威へ防衛の第一線で立ち向かった部隊があることを忘れないでほしい、とのこと、なるほど。
Fimg_2291 観閲行進ですが第1師団や第3師団に第10師団と比べた場合普通科部隊の行進が少々ことなったものでした、それは上記師団では連隊から軽装甲機動車の中隊、高機動車の中隊、重迫撃砲中隊を中隊ごとに十数両を出しますが、第4師団では普通科連隊の各中隊から数両を出すので、軽装甲機動車二両、高機動車二両、重迫撃砲二門、指揮官車、これが各連隊同じ、というところ。
Fimg_2347 第4師団には対舟艇対戦車隊が維持されており96式多目的誘導弾が配備されています。実は昨年第11旅団の式典を真駒内へ撮影に向かった際、北部方面隊直轄でも参加するのだろう、と思い空振りであった当方には干天の慈雨、富士学校以外では見ていない装備でしたので。長射程で間接照準射撃となる関係から運用が難しく、コスト面からも厳しい評価が為される装備ですが、光ファイバー誘導方式を採用、射程は10km程度ですが、師団の防御か攻勢の決心を行った際には精密誘導による全般支援が可能な装備であることは間違いありません。
Fimg_2381 FH-70榴弾砲。久留米駐屯地からの参加です。この久留米ですが、トンコツラーメン発祥の地と初めて駐屯地での部隊紹介、太鼓演奏の部隊紹介ですが知りました。実は当方、博多が発祥の地と思いつつ、宿が無かったのならば仕方ないと西鉄で久留米に一泊したものですから、前日は駅前に小奇麗でしかも安い焼き鳥屋にて、黒霧島300円、鳥皮60円、み90円、アゴ100円、焼き御握り二つ250円と舌鼓を打っていた次第。トンコツラーメン本場が久留米と知っていれば夜を徹して、BS-211でDOG
DAYS再放送始まるまで探していたはずだったのに。
Fimg_2538 人命救助システム。東日本大震災災害派遣では不眠で高速道路を北上に北上を重ね一昼夜で被災地へ展開したとのこと。厚労省は今回の災害派遣まで制式の医療設備として人命救助システムを認めていなかったが、制式化後初めて実任務で、しかも医療設備としてもちられた、ということを教えてもらいました。滅菌が構造上大丈夫なのか、という疑問に際して術衣を装備するが、感染症は後方の医療設備に入院すれば完治するものの、一分一秒を争う外科手術は後方に搬送していれば助からない、ということが念頭にある装備との説明で、トリアージでは赤か黒かという状況での究極の応急処置といえるやもしれません。
Fimg_2546 化学防護車。光景装備のNBC偵察車が化学学校に配備された装備です。特殊武器防護隊に所属。第3特殊武器防護隊では生物偵察車が装備されていましたが、西部方面隊の、そして大都市に司令部を置く第4師団にも生物偵察車が装備されているのか、興味はあったのですがどうも装備はされていないようです。
Fimg_2585 そして74式戦車。第4師団は今年度末に師団改編を受け、戦車と特科装備の縮小を行うとのことです。来年度の行事では戦車の参加は削減されるのでしょうか。こうして祝賀飛行とともに展示は終了、祝賀飛行は機数は少ないものの低空で迫力がありました。こののち訓練展示模擬戦と展開しましたが、縦横無尽立体的に展開する訓練展示、G-12は固定位置から撮影するのみ、片手間に予備機としてG-12を使うことはできませんでしたので、こちらはEOS-7D,EOS-50Dの撮影となりました。
Fimg_2644 おまけ。サクラ席。いくら人が来ないとは言ってもサクラはやりすぎなのではないのか、という人がいるかもしれませんが、これは招待者席の案内表示です。1000時頃までは空いていたのですが、急激に混雑となりました。千僧ほどではありませんでしたが。こうして行事を撮影、当方は福岡駐屯地という初めての九州での陸上自衛隊行事を撮影、観閲行進はもう少し当方も撮影場所を工夫したほうがよかったかな、と思いつつ特急で佐世保へと向かいました。

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海軍記念日(日本海海戦1905.05.27)迎えた西海の要衝 海上自衛隊佐世保基地俯瞰風景

2012-05-28 23:36:18 | 海上自衛隊 催事

◆G-12速報 佐世保に行ってきた

 日曜日は海軍記念日でしたが、当時の連合艦隊一大根拠地であった佐世保に行ってきました。

Simg_2685 海軍記念日は1905年5月27日に対馬沖にて展開された日本海海戦の戦勝を由来とする記念日で、今日では象徴的な意味を出るものではありませんが、象徴は一種の文化的側面もあり、重要です。福岡の4師団祭ののち、折角九州まで来ているのだから、と特急みどり号に乗り込み一路佐世保へ。

Simg_2686 護衛艦くらま、あきづき、を筆頭に護衛艦5隻が停泊しているのがみえるでしょうか。右端が護衛艦あきづき、最新鋭艦ですが、隣のミサイル護衛艦しまかぜ、よりも上部構造物が大きいことがわかります。五隻のうちの中央がヘリコプター搭載護衛艦くらま、そして護衛艦ゆうだち、いりさめ、が停泊しています。

Simg_2696 巨大な飛行甲板のこの一隻は米海軍のワスプ級強襲揚陸艦ボノムリシャール。この日に新しく西海市に完成したLCAC整備施設を地元の方に一般公開したとのこと。聞くところでは金曜日の朝まではもっと多くの護衛艦が停泊していたとのことです。もう少し早く来ればよかったのに、とは地元の方のお話し。

Simg_2689 イージス艦あしがら。丁度一隻増えるところでした。曳船が出てきていたので、この時間から出向ということもないだろう、そんなことを考えていたところに満載排水量10000tのイージス艦帰港です。G-12では少々厳しいですがEOS-7Dの18-200mmはもう少し鮮明に撮れていました。

Simg_2699 撮影時間帯は1900時過ぎとかなり遅い時間帯なのですが、季節は夏が近づくと共に、この時間でも明るい時期に入ってきているようです。さて、順番からは第4師団創設記念行事福岡駐屯地祭を先に掲載するところですが、本日は少々時間が無いため、先に掲載できる方の記事を作成し掲載しました。

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航空自衛隊 幹部候補生学校開庁記念行事・奈良基地祭2012速報

2012-05-27 01:08:27 | 航空自衛隊 装備名鑑

■奈良基地祭 G-12撮影速報

 奈良基地祭へ行ってまいりました。本日は4師祭に足を運ぶので、時間はなく、取り急ぎG-12の速報記事を掲載します。

Img_2034 航空自衛隊幹部候補生学校、防衛大学校や一般大学からの一般幹部候補生、部隊からの部内選考を経て幹部候補生となった空曹長の教育を一手に担う機関で、ここ奈良基地での一般幹部候補生課程を経て三等空尉に任官、指揮官として我が国の防衛を担うこととなるわけです。

Img_2016 式典は訓示と観閲行進、飛行展示と行われたのですが、訓示にて井上浩秀校長が候補生に対し、諸君らの小銃は諸君らへの信頼の表れであり、小銃の重みは責任の重さそのものである、という訓示がどうしても心に残りました、担いでいるのは64式小銃でしたからね。せめて89式かHK-416を調達できないものか。

Img_2055 式典は観閲行進という展開でしたが、車両行進もなく、訓練展示の模擬戦もない、候補生課程の期間を考えるとそうなのですが、しかし対称的にきびきびとしたすべての動作が印象的でした。先週の千僧駐屯地と比べますと、やはりそこまで会場も混雑していなかったのが、良かったですね。

Img_2059 飛行展示はF-2支援戦闘機とT-4練習機による航過飛行、U-125とUH-60の機動飛行などが展示されたほか、音楽演奏や第4高射群と第4施設団の装備品展示、音楽演奏などが行われています。天気もよく、しかし暑すぎることもなく、初夏の爽やかな気候に恵まれた行事は、国際情勢と周辺情勢の緊迫化に防衛の第一線で立ち向かう決意を固めた候補生への励ましにも感じられました次第です。

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巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑤ 被害評定、補給と補給路をどう確保するのか

2012-05-26 00:43:08 | 防災・災害派遣
◆戦場監視機は必要、予算限界と必要性の狭間で
 南海トラフ地震ですが、そもそも東日本大震災以前、航空自衛隊にE-10統合指揮管制機のような機体があれば、と記載していました。必要なのですが、予算の限界を考えると難しいところです。
Nimg_0070 E-767の補完に、E-2Cの後継機に、米空軍が開発中であったE-10統合指揮管制機があったならば、E-8の戦場監視能力後継機能を有していたことから当時災害としてはもっとも我が国に対する脅威であった東海地震に対して、被害状況の迅速な把握に寄与するだろう、と考えてはいたのですが、E-10の開発そのものが中止となったことから、導入は画餅に帰しました。もっとも、最新鋭のセンサーを備えた航空機が、E-3AのNATO供与のように日本に対して行われるのかということには疑問符もないわけではないのですが。
Nimg_8340 航空自衛隊のE-2C早期警戒機は旧式化が始まっていて、E-767を増勢するにも肝心のAPY-2レーダーが生産終了となってしまっており、結局のところ供与されるかは別として米海軍空母艦載機であるE-2Dを導入するのか、それとも航空自衛隊の装備体系には無い機体なのですがE-737AEW&Cを導入するのか、というところ。米空軍はE-8戦場監視機を延命し運用を継続する計画ですので、E-8の原型機、KC-135などに多用された機体ですが、既に終了したボーイング707が遙か昔に生産終了となっており、導入できる余地はありません。
Nimg_0043 戦場監視機、例えばヘリコプターに搭載するオリゾンシステム、フランスのトムソン社が2000年代初頭に開発を進めていた航空戦場監視システムですが、これですとEC-225規模の機体に搭載するセンサーで、機体下部に展開方式で搭載し高度4000mに滞空し悪天候時で150km、晴天時で200km四方の移動目標監視や地形把握が可能、得た情報は地上の情報処理装置を搭載した大型トラックに搭載し分析と把握が可能となっています。これが、中央即応集団に1セットあれば、かなり変わってくるのでしょうけれども。
Nimg_0995 イギリスのASTOR計画、米英共同開発の戦場監視機系あくですが、米空軍が完成した機体が余りに小型すぎるとして導入を拒否したため計画が破綻したものですが、こちらも考えられるでしょう。15000mという高高度を飛行可能なビジネスジェットを基本とした航空機に戦場監視レーダーとともに赤外線感知装置を搭載し、複合的に稚樹の状況を把握する装備で、特に米英共同開発ながら米軍が導入を拒否し、英軍が予算面から導入できない状況に際して、ある程度安価に取得できる部分があるかもしれない。
Nimg_0270_1 どれにしても取得には費用を要します。しかし、被害状況の把握は何よりも重要です。橋梁はどの程度使用可能なのか、津波被害はどの地域まで達しているのか、高架橋道路の状況は、長期浸水の結果生じている新しい海岸線は何処まで到達しているのかその境界線は、道路上の津波漂流物の状況は車両の通行に支障はあるのか、山岳崩壊などの地震ダム湖の発生や山岳道路の使用可能状況は、倒壊家屋の集中状況はどの程度なのか、これは自衛隊の部隊展開や、展開した部隊の活動を支える補給部隊の通行をどこまで対応させることができるのか、これを左右する情報です。
Img_5999 首都圏などでは平時から防災道路を確保しているため、首都圏直下型地震に対しても迅速な救援体制の確保を念頭に置いてはいるようですが、今回想定する地震は津波災害を伴うため、防災道路を確保する場合でも防災道路そのものが被災する可能性、また過疎地域では防災道路そのものが地域と地域を結ぶ数少ない幹線道路である場合があり、仮に防災道路指定道路が無事であったとしても、こちらを防災部隊と補給部隊が占有した場合には、避難誘導さえもできなくなる可能性があるわけで、この問題は単純ではないというもの。
Nimg_4772 ヘリコプターによる航空偵察を行うことで一定の情報は得られるのでしょうが、狭小道路は一本の橋梁破壊が根本的な交通の支障に繋がります。とにかく一本一本道路をたどるには、偵察隊を進出させるか、情報小隊を前進させることとなるのでしょうが、何よりもこれら部隊は被害状況の把握に一番必要な部隊であり、輸送隊の上級部隊たる後方支援連隊の本部に情報小隊を置く、ということも考えられなく、は無いのですが、しかし、情報取集に展開して橋梁が破壊されていた場合はどうするのか、視点まで戻るのか、渋滞回避への交通規制をどうするのか、難しい。
Nimg_8397 補給路、橋梁一つとっても、難しいものがあります。本当に緊急時ならば一定程度の瓦礫や山岳崩壊による道路封鎖は施設大隊だけではなく、二日連隊の施設作業小隊が運用するドーザでも対応はできるでしょう、しかし橋梁は別です。陸上自衛隊は60m程度の応急橋梁ならば数時間で、もちろん可能ならば測量に一日は欲しいとのことですが、応急橋梁ならば迅速に展開させることは可能です。しかし、師団施設大隊や旅団施設隊では橋梁は一セット、方面隊でも92式浮橋やパネル橋など合わせて数本を架橋するのが限界ですから、極力橋梁が無事な道路を選ぶことが必要でしょう。
Nimg_8921 ヘリコプターによる空中応報収集ですが、予めデジタルマップを広範に作成し、AH-64D戦闘ヘリコプターが搭載するミリ波レーダーにより大規模災害に際して迅速に進出し被害状況をデジタルデータとして伝送、災害以前に作成されたデジタルデータとの相違点を照合することが一つの方法となるでしょう。多用途ヘリコプターなどでは震災時に重要な輸送任務があり、多くを転用することはできませんが、AH-64D戦闘ヘリコプターであれば、流石に震災時に輸送任務に誦等させることは、・・・、スタヴウイングの兵装架に物資を搭載することはできなくもないのですが、まあ、情報収集に専念できるでしょう。もっとも、AH-64Dをどの程度そろえることが出来るかは未知数ですが。
Nimg_1720 しかし、住宅などの倒壊状況は、予め作成したデジタルデータでは日常的に更新しない場合には建て替えや取り壊しと被害状況の比較はできません。震災以前には、航空写真から倒壊家屋と非倒壊家屋の色調の相違点から迅速に被害状況を把握する研究が防災研究所などにより実施されていたようですが、被害状況の把握は、被災者の人命を左右するという72時間の壁、問題があるのです。民間の情報をそのまま自衛隊に伝送する能力、というものは、例えば連絡調整員とデータリンクなど、考えられるものではあるのですけれども、とにかく航空情報収集では道路状況や地形変化以上のものを行うには難しい部分もあります。しかし、限界はあっても、必要性はある、これは事実忘れてはならないものでしょう。
Nimg_0842 防衛の面からは、戦場監視機、一応導入の意義はあります。もちろん、例えば中国軍との全面戦争、というような状況になれば、航空優勢確保の面で戦場監視を行うには少々問題があることは否めませんが、かなり遠距離まで側方監視が可能ですし、なによりも航空攻撃や渋滞状況の把握など、用いる用途はかなり広い部分にあります。国際平和維持活動に用いることも当然可能でしょうし、用途は広いのです。予算の限界と必要性の狭間で、戦場監視機、難しいものはあるでしょうが、それならば代替手段、考えておかなければなりません。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十四年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.05.26・27・30・31)

2012-05-25 23:49:12 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 日本海海戦海軍記念日を迎える今週末の自衛隊行事を紹介してゆきたいと思います。
Gimg_4057 実施されるのは、陸上自衛隊で東千歳、鹿追、北宇都宮、武山、大久保、青野原、福岡、高遊原の各駐屯地。海上自衛隊は大村航空基地祭、紋別港艦艇広報、マリンフェスタ船橋、明日の掃海殉職者追悼式、たまの港フェスティバル、下関ひゅうが一般公開、門司港港祭り、水俣恋龍祭、日本海海戦記念大会。航空自衛隊は奈良、笠取山、見分島の開庁記念行事と美保基地航空祭が行われます。
Gimg_3638 陸上自衛隊は師団祭が第4師団創設記念行事福岡駐屯地祭、第7師団創設記念行事東千歳駐屯地祭の二つが大きな行事です。第4師団は九州北部を防衛警備管区とする師団で、対馬海峡という国境を抱える重責を担う部隊。第7師団は道央地区を担うと共に北海道の戦略予備部隊として、今日では全国への展開を行う日本最重装備の機甲師団です。
Gimg_2259 さて、今週末は色々と行われ、見所が多いのですが施設団と方面混成団の行事も大きいもので、京阪神地区では京都の大久保駐屯地第4施設団、近鉄大久保駅の高架から駐屯地が見えるほど交通が便利な場所になるのですが、戦闘工兵の装備を一手に担う施設団行事が注目でしょう。
Gimg_5312 方面混成団、日曜日には横須賀市の武山駐屯地において東部方面混成団創設記念行事が行われます。第1教育団に第1師団から即応予備自衛官主体の第34普通科連隊を編入して誕生した混成団ですが、第1機甲教育隊の戦車四個中隊を隷下に持つ、東部方面隊最強の部隊でもあります。10式戦車も参加するとのこと。
Gimg_2064 この関係で戦車部隊行事ですが、鹿追駐屯地祭が行われます。第5戦車隊の駐屯地で、90式戦車が配備されています。写真は真駒内の11戦車。北方領土に近く冷戦時代には着上陸の危険性がありつつも、道東地区は平野が広がり地形防御が行いにくく、戦車部隊に期待するところ大という立地にありました。
Gimg_4511 航空部隊行事ですが、これも北関東と九州で大規模なものが行われます。北宇都宮駐屯地創設記念行事、栃木県の駐屯地で航空学校宇都宮校が置かれている駐屯地。ヘリコプターの教育を行う部隊ですので、大編隊の飛行や機動飛行を期待したいですね。
Gimg_9486 高遊原分屯地祭、西部方面総監部の置かれる健軍駐屯地の分屯地で、西部方面航空隊とその第三飛行隊、そして第8師団隷下の第8飛行隊が駐屯している分屯地。方面航空隊ですので、大編隊を期待したいのですが、方面鉱区隊行事は八尾駐屯地しか知らず、どの程度の規模なのかな、と思ったりもするところ。
Gimg_5925 陸上自衛隊関連では兵庫県の青野原駐屯地祭、方面隊直轄の第8高射特科群が置かれています。03式中距離地対空誘導弾を運用する部隊で、京阪神地区の防空を担う重要な部隊です。兵庫県小野市、加古川線のダイヤが限られ、シャトルバスの本数も限られているので注意が必要、行った友人は全員こうした感想を聞かせてくれました。
Gimg_86371 海上自衛隊最大の行事は、5月27日の日本海海戦記念大会で、日露戦争の天王山となった艦隊決戦の記念と追悼の行事が行われるのですが、博多港から洋上慰霊祭と体験航海が行われるのですけれども、こちらは招待者のみとなっています。一度はこの行事、みてみたいところではあるのですが。
Gimg_5959 九州では大村航空基地開庁55周年記念行事、西日本全ての哨戒ヘリコプター部隊総本山というべき大村航空基地での開庁記念行事でSH-60J/K哨戒ヘリコプターの展示、体験搭乗なども海上自衛隊HPには記載されていました。編隊飛行も行われるようで、長崎空港の対岸ということもあり、空路からも便利な行事と言えるやもしれません。
Gimg_3018 紋別港北海道紋別市艦艇広報多用途支援艦、土曜日と日曜日に行われます。マリンフェスタ2012 in
FUNABASHI、船橋港で行われ艦艇一般公開と護衛艦やまゆき体験航海が予定。第61回
掃海殉職者追悼式が金比羅宮掃海殉職者顕彰碑前で実施予定、高松港5万トン級岸壁にて土曜日と日曜日に艦艇一般公開と体験航海が予定です。
Gimg_9092 第16回
たまの港フェスティバルが岡山の宇野港にて実施予定で土曜と日曜に艦艇一般公開予定。護衛艦「ひゅうが」一般公開、下関あるかぽーとにてこちらも土曜日曜に予定です。門司港港まつり一般公開も土曜と日曜に、恋龍祭が熊本の水俣港で行われ艦艇一般公開と体験航海が予定されているようです。
Gimg_0806 一般公開は公開時間内ならば見学自由です。体験航海は基本として事前応募の乗艦券が必要ですけれども、当日券を配布している場合も多々あります。中には乗艦券を当日配布に重点を置いていることも。ただ、サンダルやハイヒールは禁止、危険物とアルコールは持ち込み不可ですのでご注意ください。
Gimg_5760 週明けですが、平日なのでいける方は限られるかもしれませんが、清水港艦艇一般公開が30日水曜日に、清水港祭りを思い出しますがあちらは夏の実施で掃海艇のとじま入港。加治木港艦艇一般公開、かご島津が護衛艦せんだい、の一般公開が30日と31日に実施されるとのこと。
Gimg_9542 航空自衛隊ですが、奈良基地祭、航空自衛隊幹部候補生学校が置かれている基地で、明日土曜日に開庁記念行事が行われます。記念式典などいくつかの行事が行われるようですが、加えて航空機による飛行展示も実施されると発表されていました。
Gimg_0861 美保基地航空祭2012、C-1輸送機が展開する基地ですがC-2輸送機が最初に配備されるという基地、岐阜基地からC-2が展開するのでしょうか、山陰地方の基地ですが東京から寝台特急サンライズ出雲で行くことが可能です。C-1の編隊飛行は日本最大の混雑航空祭である入間基地航空祭と同じものですので、一つ足を運んでみるのはどうでしょうか。
Gimg_1950 明日土曜日に笠取山分屯基地分屯基地開庁56周年記念行事、明後日日曜日に見島分屯基地分屯基地創設記念行事が行われます。双方ともレーダーサイトです。ペトリオットミサイルの展示や、天候さえ許すならば近傍の基地からの飛行展示も行われることでしょう。シャトルバスの運行情報などは、特にレーダーサイトは山頂にあるため、公共交通機関を乗り継いでいくことはできませんし、タクシーではかなり高額になる可能性があります。必ず部隊HPや管区地方協力本部HPにてご確認ください。
◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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陸上自衛隊、今年度の主要演習実施計画の概要を発表 ヤマサクラを東北方面隊が担当

2012-05-24 20:03:11 | 防衛・安全保障

◆師団等協同転地演習は第6師団が担当

 朝雲新聞が今年度の陸上自衛隊主要演習の実施計画を発表を掲載しました。本日は、その概要を紹介してゆきたいと思います。

Img_8415 今年度の日米共同演習は方面隊指揮所演習ヤマサクラ(YS)を東北方面隊担任として日米両国で実施予定、実動訓練は中部方面隊が米陸軍と実施し、北部方面隊・西部方面隊・中央即応集団が海兵隊との共同訓練を国内で、更に北部方面隊と米陸軍及び西部方面隊と米海兵隊が米国において訓練を実施するとのこと。

Img_5855 師団等協同転地演習、かつての北方機動演習は6月から8月にかけ第6師団が東北南部から北海道へ機動、師団規模の実動訓練を実施するようです。昨年は東日本大震災により協同転地演習における師団規模の部隊機動実動訓練の重要性が確認されたわけで、本年は被災地を抱える第6師団が担当となりました。

Img_3901 連隊等協同転地演習、これは師団規模の転地演習の縮小版というもので、この演習では北部方面隊が主体となり、帯広の第5旅団が10月から12月にかけ西部方面隊管区への転地を行うほか、東北方面隊が主体となる演習が第9師団により9月から10月にかけ北部方面隊管区において演習を実施するとのこと。

Img_0801 東部方面隊管区では第12旅団が10月から12月にかけ西部方面隊管区において転地演習を予定とのことで、中部方面隊管区では広島の第13旅団が8月から9月にかけ、中部方面隊管区から北部方面隊管区への演習を、それぞれ実施すると計画に記されています。

Img_256_8 師団規模転地演習に対し、連隊規模転地演習は規模こそ抑えられていますが、各方面隊からの実施となり師団や旅団という戦略単位で見た場合に頻度は高まっていることを意味し、回数として転地演習の参加だけではなく師団規模での増援部隊動員の後方支援という意味で大きな意義があるのだといえるでしょう。

Img_0226 方面隊実動演習は、師団協同転地演習や連隊協同転地演習のような展開能力ではなく方面隊の能力全般の点検と練成を目指すもので、北部方面隊と西部方面隊が今年度の実施を予定しており、北部方面隊担任の演習は8月から9月にかけ、西部方面隊担任のものは11月に、それぞれ実施されるとのこと。

Img_9958 ホーク・中SAM派米訓練、日本国内の演習場では射程が大きく実弾を発射した場合に演習空域を飛び出してしまうことで実施される訓練ですが、各高射群及び高射教導隊より17個中隊が派遣され、9月下旬から12月下旬にかけ、アメリカニューメキシコ州マクレガー射撃場において実弾射撃を行います。

Img_4226 地対艦誘導弾の実弾射撃は、各地対艦ミサイル連隊より射撃部隊が参加し、5個部隊が10月上旬から11月中旬にかけ、アメリカカルフォルニア州のポイントマグー射撃場において実弾射撃を行うとのこと。本年は88式地対艦誘導弾の後継となる12式地対艦誘導弾が制式化されたとしでもありましたね。

Img_0833 来年二月には陸上幕僚監部担任の陸上自衛隊演習が全国の駐屯地で行われるとのこと。東日本大震災を契機に陸上自衛隊の機動力に関する重要性が認識された翌年でもあり、加えて動的防衛力の実現には、基盤となる防衛力からの人員の転換を如何に行うかという課題と共に、各部隊の能力を高く維持する必要があります。同時に本年も訓練中の事故が無いよう祈念する次第です。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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豪州海軍駆逐艦バララット呉基地親善訪問(5月31日~6月4日)ホストシップに護衛艦しまかぜ

2012-05-23 20:09:17 | 海上自衛隊 催事

◆九州南東方海域で日豪共同訓練を実施

 海上自衛隊によれば5月31日から6月4日まで、オーストラリア海軍駆逐艦バララットが呉基地を親善訪問し、護衛艦しまかぜ、がホストシップに当たるとのことです。

Eimg_0999 ミサイル護衛艦しまかぜ、は満載排水量5950t、ターターシステムを搭載する艦隊防空艦です。今回親善訪問する駆逐艦バララットは、アンザック級8隻の6番艦で満載排水量3600t、領域警備と艦隊汎用艦として性能を割り切って設計されているため、しまかぜ、よりも二回りほど小さいですがASMD近代化改修により僚艦防空能力を付与する計画が進められており、健在建造計画が進められているイージス艦ホバート級までの間の艦隊防空能力と将来の補完を目的としています。しまかぜ艦長は矢野幸浩2佐、バララット艦長はジョナサンアーレイ海軍中佐です。呉へのオーストラリア艦寄港は3年ぶり15回目とのこと。

Eimg_9284 バララット呉入港は5月31日1000時、出港は6月4日0950にホストシップが、その後に1000時バララットが出港します。写真は、はるな、しまかぜ。オーストラリア空軍が那覇航空基地を海軍と併せて親善訪問することになっており、6月1日にAP-3哨戒機一機とC-17輸送機一機が展開するとのことで、AP-3は6月9日まで、C-17は6月2日まで那覇航空基地を訪問するとのこと。指揮官はマイケルジャンセン空軍中佐、海上自衛隊からは第5航空群の市田章1佐がホストスコードロンを指揮します。

Eimg_1687 日豪共同訓練は、親善訪問に続いて九州南東方海域に6月4日から5日にかけ実施され、その後の6月6日から8日にかけ日米豪共同訓練が実施されます。訓練は対潜戦闘、戦術運動訓練を実施し海上自衛隊からは護衛艦しまかぜ、潜水艦1隻、航空機1機が参加、米海軍からは駆逐艦1隻、潜水艦1隻、航空機1機が参加し、豪州軍からは駆逐艦バララット、空軍1機が参加予定、このほか写真撮影には米海軍の空母1隻と巡洋艦1隻が参加します。日米豪訓練は五回目とのことで、写真撮影だけでも空母が参加することで、この地域における日米豪の協力関係を対外的に示す意味があるのでしょう。

北大路機関:はるな

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海上自衛隊地方隊への一考察① 我が国におけるミサイル艇の位置づけを考える

2012-05-22 22:25:46 | 防衛・安全保障

◆外洋海軍としての自衛艦隊との任務区分

南西諸島への軍事的圧力増大や南海トラフ地震などの大規模災害への対処、海上自衛隊では横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊に総監部を置き、沿岸を管区とし対処の先頭に立つ地方隊の位置づけについて、考えてみましょう。

Mimg_6543 ミサイル艇の必要性、沿岸部隊の必要性の是非に分け、考えてゆくこととします。これは同時に、実任務部隊を自衛艦隊に、指揮系統を自衛艦隊か地方隊に必要に応じ配分するという運用への考察ともなるでしょう。沿岸での任務を主眼としているミサイル艇、打撃一本の運用が基本であり、多任務に臨む大型護衛艦とは全く異なる運用が為されます。海上自衛隊は外洋海軍であるためミサイル艇は不用であるという論点やミサイル艇は有事の際に航空戦力により一方的に駆逐される立場であるため不要という視点があります。
Img_07700 海上自衛隊は大型護衛艦を基本とした外洋海軍です。大型水上戦闘艦の保有数は満載排水量4000t以上の大型艦で今なお中国海軍やロシア海軍を凌駕しアメリカ海軍に続く世界第二位です。しかし、こちらでも指摘を頂いていますが、離島地域においては有効なのです。特にミサイル艇は発見されず最初の一撃を行うことが任務、この点広く大洋に進出すれば過酷な運命が待ち構えていますが、沿岸部に展開し位置を秘匿すれば接近する揚陸艦などをミサイルの一撃により過酷な運命に追い込むことが出来るわけです。
Mimg_1335 ミサイル艇は、魚雷を搭載していた高速戦闘艇がより射程の大きい対艦ミサイルに切り替えたことで誕生し、元々水雷艇が担っていた任務を特に打撃力にのみ特化したものです。ミサイル艇は対艦ミサイルを搭載し、命中させれば大型水上戦闘艦であっても無力化することができるのが最大の利点と言えます。
Mimg_5979 しかし、水雷艇を駆逐するべく駆逐艦という区分が誕生したように、駆逐艦は対空ミサイルや電子戦装備を搭載し、航空攻撃に対しいっていの防御能力を有するほか、対艦ミサイルに対しても一定の備えがあります。また、ミサイル艇には搭載可能な装備が限られるため、対潜装備は全く搭載しないか、大型化と低速鈍重化を妥協し限定的に搭載するか、不向きを乗り越える無理をしているといえるでしょう。
Mimg_6687 事実、ミサイル艇は哨戒ヘリコプターが搭載する小型対艦ミサイルに対し、ほぼ無力です。搭載できる防空装備は76mm砲か携帯地対空ミサイル、ヘリコプターには対艦ミサイルが搭載される時代であり、もしくはデータリンクで広報の護衛艦に位置を通知しミサイルを誘導、結果簡単にアウトレンジされます。中にはRAM簡易防空ミサイルを搭載する事例がありますが、搭載できるレーダーの重量に限界があるため、索敵能力が限られますし、余り大出力のレーダーを無理して搭載すれば電波により位置が評定され、より遠くから対艦ミサイルが飛んで来ることは間違いありません。
Img_1226  一定の装備を搭載すれば、コルベットというべき装備になり、例えば海上自衛隊の護衛艦いしかり型のような沿岸警備用護衛艦に近づいてしまうことに。特に下手に大型化すれば、潜水艦による攻撃からも防護するべくソナーの搭載や短魚雷発射管を搭載する必要が生じ、結果、ミサイル艇は限りなくコルベットに近づくこととなるでしょう。大型化は高速航行に当然抵抗が大きくなることにより大型の機関を必要とし、結果生じるのが建造費や維持期、運用人乗員の確保など、際限ない高価格化の循環です。
Mimg_5905 それならば、海上自衛隊は護衛艦に特化するべきであり、ミサイル艇の必要性は少ない、と言えるでしょう。しかしこれはミサイル艇は沿岸で運用するという運用特性を無視した場合の話で、護衛艦は本来ミサイル艇を駆逐し展開するという目的に徹した場合でのこと。
Mimg_6642 ミサイル艇は、防御力が限定的である分を、小型である点に特化し秘匿性を何よりも重視、特に一撃にすべてを投じてその後は逃げの一手に懸かる運用で、島嶼部の入り組んだ海岸線を活かし、時には偽装網を使用し岩場に潜み、入り江に待機しその時を待つ運用ですが、重要なのは、日本にも直接脅威を受ける沿岸部はあるというものです。
Mimg_1087 先島諸島の島嶼部や、小笠原諸島島嶼部では、護衛艦が常駐できない状況下に抑止力として機能します。特に侵攻する揚陸艦に対して、ミサイル艇は最大の脅威となります。この点は潜水艦についても当てはまる特性ですが、潜水艦は先行し自己位置を秘匿しなければならないことに対し、ミサイル艇は平時の訓練により示威することが可能、この点は最も異なる点と言えるでしょう。この点で大きなものは、自衛安泰に集約され、沿岸警備任務に当たる地方隊からは護衛艦が全て自衛艦隊に移管されており、即応部隊を有さない、ということです。
Mimg_1272 外洋での任務や必要に応じて自衛艦隊から地方隊に移管するという方式はあるでしょう。しかし、最も重要なのは有事における任務ではなく、地方隊の哨戒、つまり平時における抑止力がかなり大きな能力を発揮する、ということかもしれません。例えば、津軽海峡、対馬海峡、宗谷海峡には一般に潜水艦が展開し監視にあたっているとされますが、津軽海峡及び対馬海峡へは、自己位置を秘匿しなければならない潜水艦とともに打撃力を正面に出して抑止力を発揮できる点は額面の評価に何かを加算するべきかもしれません。
Mimg_6043 こうした点から、海上自衛隊、特に地方隊が沿岸警備に当たる際において、ミサイル艇はそこに展開することにより抑止力を発揮できますし、有事の際には秘匿する運用において、護衛艦隊の護衛艦が展開するまでの間、脅威勢力の行動を制限することがかないます。もちろん、地方隊の管区に護衛艦が入った倍、自動的に自衛艦隊から指揮系統概観し平時の哨戒任務に対応するという運用ならば話は別ですが、自衛艦隊には自衛艦隊の訓練計画があり、それは運用計画と調整され展開されるものですので、全てをこの方式とすることは当然できないわけです。実は、地方隊に平時の抑止力としてミサイル艇を保有する必要がある点はこの一点に集約されると考えるところ。
Mimg_1092 即応部隊と言わずとも、ミサイル艇を導入するということは数が大きくなる分多くの費用を要するので、既存の装備、例えば海上保安庁の巡視船では対応できないのか、特に哨戒任務では海上保安庁の大型巡視船でも船体規模では大型駆逐艦並なので、領海に接近する艦隊に対しても抑止力を発揮できるだろう、という指摘はあるでしょう。もちろんもっともなのですが、巡視船には機関砲までしか搭載されておらず、この点で抑止力とはなりません。
Mimg_1643 海上保安庁の巡視船による警戒業務も同時に、指揮系統は異なるのですが実施されるべきです。しかし、打撃力を有さない巡視船を補う分、例えば護衛艦が展開できない状況において、巡視船が前面に展開し警告を行いつつ、いつでも必要に応じて打撃力を来わえられるのだ、という一からミサイル艇が警戒に当たることが、護衛艦の任務を代替する運用形態となるでしょう。
Mimg_1316 海上自衛隊、これまで記した運用特性の上で適したミサイル艇は、哨戒や不審船対処は能力が限定されてでも特に沿岸警備における打撃力を重視し、抑止力としての能力を最適化することが求められ、逆に言えば性能よりも数の配備を重視するべきといえるのでしょう。
Mimg_1330 理想は、はやぶさ型ミサイル艇の増強ですがコスト面から考えた場合は、台湾海軍の海鴎型ミサイル艇、これが海上自衛隊に最適なミサイル艇と考えます。はやぶさ型ミサイル艇はもちろん、一号ミサイル艇よりもさらに小さく満載排水量47トン、乗員10名、兵装は機関銃のほか射程40kmの雄風Ⅰ型対艦ミサイル二発のみ、速力は36ノットを発揮しますが、余りに小型で用途が限られ、台湾海軍はより大型のミサイル艇へ転換しているところ。
Mimg_7280 しかし、小型巡視艇並みの大きさということで台湾海軍は四年間で50隻を建造することが出来、建造費や維持費用、また乗員捻出の面で負担は決して大きくないことを示しています。20mm機関砲を搭載して哨戒艇としての任務にも用いることが出来ますし、なにより台湾が想定している脅威と海上自衛隊が想定する脅威、また任務の特性、共通点があることも挙げておくべきやもしれません。
Mimg_6342_1 台湾海軍はより大型のミサイル艇、FACG-60へ転換しているではないか、という指摘を受けるでしょうが、これは機関砲などを増強し、より射程の大きい雄風Ⅱ型対艦ミサイルを搭載し、哨戒任務への対応を重視し、フリゲイトの補完を重視しているという背景があります。
Mimg_1445 海上自衛隊はミサイル艇には相応の役割がありますが、安価に多数を揃えるという点に特化すれば、護衛艦の建造費を大きく制約することにはつながりません。護衛艦を増勢し、離島部分に常時貼り付けることが出来れば、こうした苦労は無いのですが、地方隊に二個護衛隊を配置できた時代は、中々戻ってきそうにありません。
Mimg_5991 もっとも、搭載する対艦ミサイルは、SSM-1では大型すぎ、ノルウェー海軍のペンギン対艦ミサイルか、射程はかなり制限されますが陸上自衛隊の中距離多目的誘導弾を搭載するか、捜索レーダーの性能を含め建造費に影響することでもあり、この部分で少々難しいところがあることは、確かなのですけれども。
Mimg_7657 実質的に、自衛艦隊は外洋海軍ですが、地方隊の任務は沿岸海軍の側面が大きいです。我が国には法執行機関として海上保安庁があり、小型巡視船を多数運用していますが、先ほど記したように法施行機関には限界があり、この点を忘れないようにするべきです。こうした観点から、海鴎型ミサイル艇を見た場合、それなりの能力を発揮でき、抑止力ともなるでしょう。
北大路機関:はるな

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