北大路機関

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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【04】イージス艦ちょうかい-横浜みなとみらいビル群とともに(2012-10-08)

2022-12-25 20:12:04 | 海上自衛隊 催事
■イージス艦ちょうかい
 ちょうかい。こんごう型ミサイル護衛艦4番艦であり1993年から短期間で4隻か建造された我が国イージス艦の鏑矢です。

 ちょうかい。Weblog北大路機関をOCN時代からご覧の方はお気づきと思いますが、長らく北大路機関のロゴタイトルにはイージス艦ちょうかい、その雄姿を掲載していました。ちょうかい、この堂々航行の様子を見ますと、ある意味で思い入れ或る護衛艦なのです。

 十年一昔、こういう単語があるのですが年末にさしかかるクリスマスの季節にこうして自衛隊観艦式、十年前の観艦式の写真を紹介しつつ、今年すなわち海上自衛隊70周年の我が国安保環境を思い起こしますと、その変容ぶりに驚くという次第です。特に今年の。

 二十年に及ぶミサイル防衛の、予算増なき巨大防衛事業の推進により自衛隊の防衛力は破綻してしまった、こう説明するところですが、思い起こせばこの観艦式を撮影しました2012年の段階はミサイル防衛に着手しほぼ十年という時期なのですが、防衛力は健在でした。

 10年でここまで、というのは非常に残念なのですが、例えば海上自衛隊も、あぶくま型護衛艦、あさぎり型護衛艦が延命に延命を重ねていますし、もう竣工29年となるイージス艦こんごう型の後継計画はまだ未着手、P-3C哨戒機にSH-60J哨戒ヘリコプターについても。

 海上自衛隊はもう少し状況はよいのかもしれませんが、原型機が1959年に初飛行を迎えたF-4EJ戦闘機がようやく全機用途廃止されたのがつい昨年のことですし74式戦車もまだまだ残っているばかりか、後継戦車ではなく戦車部隊ごと廃止さえ追いついていないという。

 ヘリコプターはずいぶん減りました、観測ヘリコプターはOH-1観測ヘリコプターが製造終了してから15年ですが、その増強が行われないままOH-6D観測ヘリコプターは全廃し、なんと無人機で補うということですがそのすばらしい無人機はほとんど実績がありません。

 ミサイル防衛に今度は島嶼部防衛、しかもそのための新部隊が編成されましたが、定員は同じまま、その十年すこし前には中央即応集団が創設されていますが、これも定員を同じままとしましたので、5000名を切る師団、という惨状がでています。平時の定員とはいえ。

 大学でいえば単科大学ではなく総合大学なのに学生数が二百人、というような状況になっていますし、予算が同じで箱物を調達するものですから既存の装備を運用する予備部品や整備治具、いや消耗品さえ不足する有様で使える装備と稼働率が明確に影響を受けている。

 ミサイル防衛、必要性はわかるのです。北朝鮮の各開発とミサイル開発は、たとえ日本が北朝鮮と決定的な対立をしなくとも、横田基地や横須賀基地、横浜ノースドックに500kt水爆が撃ち込まれれば、横浜の場合で横浜駅はもちろん品川付近までなにものこりません。

 しかし、小泉内閣時代、ミサイル防衛に必要な予算を、防衛予算の増額という形で増額していたならば防衛力は破綻せずに済んだように思うのです。いや実際、2012年と2022年でヘリコプターや戦車に装甲車両と航空機、なかでも稼働機を比較しますとかなり減った。

 防衛費1%、2012年の時代には田中内閣時代から長らく継続されていました防衛費の一種の上限は、中曽根内閣時代に一時若干超過したものの、基本的に踏襲されてきました、いや日本の高度経済成長時代と安定成長時代には防衛費を増やすことができていたのですが。

 破綻してしまうと立て直すのが難しくなるものです、例えば原発事故、格納容器が破損しそうな状況で立て直すと、危険を無視していたという批判やもう廃止しろという圧力に周辺の地価に影響するとか批判はあるでしょうが再構築することはできるでしょう、しかし。

 一線を越えるといいますが、原子炉を例に思い浮かべますとこわれてしまったならば、もう格納容器から漏れ出す一方であり、その前の状態に戻すことは基本的にできなくなってしまいます。これは一例なのですが、防衛力、無理を重ねて20年、限界を超えてしまった。

 2011年東日本大震災、こうした大規模な震災は幸いもう日本をおそうことはありません、こう開き直れるならば防衛力は特にヘリコプターなどの削減は看過できるところです。しかし現実をみますと真逆であり、南海トラフ地震、千島海溝地震などが懸念されている。

 GDP2%、思い切った政治の決定という印象なのですが、しかし、その分だけ宇宙防衛や認知領域戦争という任務が加わりましたので、果たして大丈夫なのか、宇宙は通信と偵察を司る新しい戦場ですが、宇宙に及ぶほど日本は核保有国ではありませんし切迫性は少ない。

 コンピュータウィルス対策として消毒用アルコールや高性能空気清浄機を買い込むような方向性の間違いはないのか、こんな懸念を感じてしまうのですね。まず、防衛力はミサイル防衛に必要な予算を割きすぎたことで崩壊している、認識を共有することは重要です、ただし。

 防衛力を強化するのではなく再構築するという視点をまず第一に示した上で、足りない装備と足りない維持部品などを列挙し、"防衛再構築基金"のような特別会計予算を構築した上で、一つ一つ、いきなり防衛産業に増産を求めることはできない故、数年間でそろえる。

 戦車などは2010年代前半に毎年8両しか予算が認められず、これでは戦車定数の400両をそろえることは難しいために防衛大綱を300両に削減すると、今度は毎年6両しか認められないようになる、定数を減らして現実の調達にあわせようとすれば調達数も削られる。

 GDP2%の点について、防衛費は足りないという懐疑的ではあるにもかかわらず、その増額にどうしても賛同できない背景には、予算を増やしても必要な装備がそろう気配がない、こと。そして予算を増やす政治決定があっても年度ごとに財務省に認められない歴史が。

 財務省が姑息なところは、防衛予算のための増税と責任を防衛省に転嫁する一方で、増税した予算を防衛予算として認める確証はなく、また政府が内閣人事局を設置しながら、民主主義により選ばれ場政治の政策を蔑ろにした官僚を更迭せず義務を怠るという実状です。

 自衛隊がミサイル防衛という巨大事業を組み直しで挑み20年で防衛力が崩壊に近い状態まで追い込まれてしまいましたが、しかし10年間は何とかなりました。これを政府の予算全体で、他の省庁に無理を強いる事は簡単ではないのでしょうが、数年やっては、とおもう。

 10年間なんとかなりましたのはこの2012年の状況を見ればわかるとおりであり、先ず増税ではなく既存予算の組み直しにより、5年間GDP2%の予算を組み、新任務の付与はせず、その上で防衛力を崩壊する前の段階まで、とりあえず再建する事の方が重要でないか。

 ミサイル防衛という新任務、この追加を既存の枠組みにより実施した事で、削り過ぎた各々の部分が維持できなくなり崩壊したのですから、防衛費は数千億円規模で不足するものの、数兆円を必要とはしていません。ただ、一旦崩壊した為に組みなおすには努力が必要です。

 防衛力を再建するには、数年間のGDP2%の支出は必要だと思う、しかし永遠に必要とするほど、自衛隊の想定する任務は広いものではない、GDP1.4%でも充分といえる。他方で再建までの期間であれば増税せずとも、既存枠組で、防衛省はこれまでやってきました故に思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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