goo blog サービス終了のお知らせ 

窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

経営者のためのSNS活用術-第128回YMS

2021年07月15日 | YMS情報


 7月14日、mass×mass関内フューチャーセンターにて第128回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回僕は初めてZOOMからの参加となりました。これまでであれば欠席となっていたところが、ZOOMの一般化によってこうして参加できるようになったのは、コロナ禍の中の良い側面かと思います。



 さて、今回の講師はミアサ企画代表、細山麻実様。フリーのWebライターとして、またイベント企画・SNSサポートなど企業のサポートも行っていらっしゃいます。そんな細山様に、「経営者の為のSNS活用術 〜会社経営をされている方の個人アカウントでの投稿ポイント〜」と題してお話しいただきました。

 初めに、日本で普及している代表的なSNS、LINE、Twitter、Instagram、Facebookなどについて、それぞれのユーザー層や特徴のお話がありました。まずツールが持つ特性や年齢層を理解しておく必要があるのは、そうしたことを踏まえて使い分けないと、経営者にとっては非効率なところにPRを行ってしまう可能性があるためです。

 細山さんによれば、SNSとは一頃で言えば「ネット上の自分新聞」。つまり、企業や商品PR、あるいは集客のために活用するのだとしても、そこには経営者の個性を反映できるという特徴があるということです。この特徴を上手にブランディングに活用していく必要があります。

 その上で、最も大切になるのが、SNSを活用する目的を明確にすることです。そもそも、どんなメッセージを誰に発信し、どんな成果を得たいのかが不明確では、使用するツールも定まりません。特に経営者としてはあくまで個人としてでも、ビジネスとしてでも、あるいはその両方としてでも、その使用目的は様々に考えられます。

 よく勘違いされる注意点として、SNSによる発信とは、TV番組に取り上げられるように即効性を求めるものではなく、地道にゆっくりとファンを獲得していく作業だと認識することです。これを勘違いすると、恐らく疲れてしまったり、嫌になってしまったり、あるいは延々と効果が出ないことを続けるといった罠に陥ることになるのでしょう。

 さて、実際にSNSを活用し始めたとします。前述のようにSNSは投稿者の個性が反映されるツールですので、耳寄りな情報や、告知など以外に、人柄が現れる投稿が可能です。それらがバランスよく組み合わさることで、「自分らしい」個性のある投稿が形成されていきます。古典的なAIDMAモデルで言えば、特に注意(A)、関心(I)、記憶(M)に働きかける、もちろん目的によってはそこから願望(D)を呼び起こし、行動(A)につなげる役割を担うようになります。個人的には、SNSはほぼ個人目的で下らないことばかり書いていますが、実感として記憶には残るようになったのかなと言う感触があります。

 また、投稿する時間帯、曜日も大事。SNSは時間の経過とともに大量の情報の中に投稿が埋もれていってしまうので、見てもらいたい人が見ている時に投稿するタイミングが重要になります。これ次第で同じ内容でも反応が全く違ってくるというのは、僕の実感としてもありますね(その割にあまり気にしていないですが)。また、コミュニケーションツールであるという点もSNSの大きな特徴。したがって、SNSを有効なものとするには、自分のことばかりに注意を払うのではなく、見てもらいたい人の投稿への関心、反応も大切になります。それに、このコミュニケーション自体が、その人の個性をより際立たせることに繋がります。さらに言えば、冗長な投稿はそもそも読んでもらえないので、要点を絞った投稿を心掛けるということも大切になります。

 最後に、いわゆる「SNS疲れ」にならないため、自分の性格を知る簡単な心理テストを行いました。半分遊びのようなものですが、こうしたテストはネット上でも手軽にできるそうです。

 個人利用とはいえ、お話を伺って、あまりにもいい加減すぎたかなという反省はあります。ちょっとした心がけでも、結構大切だなと言うお話が沢山ありましたので、ぜひ取り入れていきたいと思います。

 なお、情勢を鑑み、8月のYMSはお休みとさせていただきます。次回第129回YMSは9月8日の開催となります。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久しぶりにお金の話をしよう-第127回YMS

2021年06月11日 | YMS情報


 6月9日、mass×mass関内フューチャーセンターにて第127回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 講師は以前よりYMSにご参加いただいている、株式会社あしたばの安藤宏和さん。普段受講している側が講師となる、講師から引き続き受講するようになるという、「誰もが先生、誰もが生徒」というのはYMSの大きな特徴の一つでもあります。

 テーマは、「確定拠出年金セミナー~会社でも個人でも始められるお得な制度を使った『コツコツ投資』」。YMSとしては2017年6月の第84回「家族信託等を活用した自社株対策ほか」以来、久しぶりにお金の話、具体的には確定拠出年金(企業型DC/401k)を活用した長期分散投資についての基本を学びました。



 2年ほど前、いわゆる「2,000万円問題」が世間を騒がせました。真偽のほどはともかく、確定拠出年金(企業型DC/401k)とは、「公的年金を補完するため、将来の資産作りを税制面から支援する国の制度」のことで、「確定拠出」とは拠出金額が確定しているということ(実際にもらえる給付金額は確定していない)。記憶では2000年頃、盛んに「日本型401k」ということが言われていましたね。

 確定拠出年金の仕組みは、加入者(企業/個人)が毎月掛金を積み立てていき、60歳以降(今後延長の見込み)に運用成果に応じた給付金を受け取るというものです。先ほど述べたように、公的年金を代替するものではなく、補完するものという位置づけになります。

 運用する商品、例えば元本変動型商品にするか、元本確保型商品にするかは、加入者が選択します(もちろん、組み合わせも可)。また、これらの組み合わせに資産をどのように配分していくか、いわゆる資産配分(アセット・アロケーション)も自由に決められます。金融商品はリスクが異なりますし、リスク態度や給付までの年数も人によって様々です。したがって、目標時期や年齢に応じて資産配分を変えていくのが基本。どのように配分するかの決定は非常に重要なポイントとなるようです。

 確定拠出年金は、「企業型」と「個人型(iDeCo)」とがあります。拠出元が企業か個人かの他、拠出限度額が幾つかの条件によって異なります。先ほど、確定拠出年金の定義のところで、「将来の資産作りを税制面から支援する」とありましたが、拠出額が基本給から控除されるとか、運用益は非課税であるとか、受給時は退職所得扱い、あるいは公的年金等控除になるといった税制面の優遇措置があります。

 YMSの参加者がほぼ企業人であることから、企業型確定拠出年金に話を絞りますと、企業型確定拠出年金には幾つかの種類がありますが、ここでは全員加入制、選択制(給与原資型)、併用制の三つについて解説がありました。「選択制」というのは、先ほどの拠出限度額から加入者が実際に拠出する額を選択できるということです。前述のように、拠出額が基本給から控除されるため、所得税や社会保険料を節約できるといったメリットがあります。一方、デメリットとしては、途中で止められないこと、途中で死亡した場合はその時点での評価額が受給額になること、各種手当や給付の算出基準となる基本給が下がるため、これらの受給額が減額になる可能性があるといったことが挙げられます。因みに、企業型確定拠出年金は役員も加入できます。

 終わりに、確定拠出年金に限らず、「投資・運用」の基本について。基本は「長期分散」であること。素人的な投資イメージにあるデイトレードやビットコインなど「短期集中」ものは、厳密には「投機」に当たるそうです。分散投資のポイントは、まず時間(タイミング)の分散。つまり、金融商品の価格が下がった時に慌てて止めないということです。何故なら、投資の成績とは、価格×量(口数)で決まるからです。その次が、先ほど述べた資産の分散になります。

 前者の「時間の分散」ということで言えば、以前安藤さんのオフィスにお邪魔した際、待ち時間に手に取った小冊子に「ドルコスト平均法」という投資手法が紹介されていました。これは、金融商品を購入する場合、一度に購入せず、資金を分割して均等額ずつ定期的に継続して投資する手法のことです。



 例えば、単純にある株が5ヶ月で上図のように推移したとします。株価1,000円の時に40,000円一括投資したとすると、株数は40株。これを5ヶ月目に売却しますが、残念ながらその時の株価は900円でした。すると、売却額36,000円-購入額40,000円=売却益△4,000円となります。一方、40,000円の原資で毎月10,000円ずつ定額購入したとします。すると5ヶ月目には、売却額45,857円-購入額40,000円=売却益5,857円となります。これが前述の「投資の成績=価格×量(口数)」ということです。もちろん、定額購入した場合でも損をすることはあります。



 因みに、上記はS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが公表している、アメリカの代表的な株価指数S&P500(スタンダード・アンド・プアーズ500種指数)過去150年の推移です(引用元は上表をクリックしてください)

 「早く始めて、長く続ける」、最後は安藤さんからのアドバイスで締めくくりたいと思います。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久しぶりの「刑事塾」-第126回YMS

2021年05月13日 | YMS情報


 またいつものmass×mass関内フューチャーセンターに戻りました。引き続きお世話になります。

 4月12日、第126回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回も残念ながら懇親会は中止です。

 今回は久しぶりの「刑事塾」。第58回YMS「刑事塾:ビジネスで役立つウソや人間心理の見抜き方」第94回YMS「元刑事が教えるウソ〔人間心理〕の見抜き方〜実践編 人狼ゲームで見抜く〜」は代表の森透匡さんにご登壇いただきましたが、今回は一般社団法人日本刑事技術協会理事、森雅人様より「サイバー犯罪担当元刑事が教える「SNS調査術」~ネット情報を駆使して人や会社の本質を見抜く」と題してお話しいただきました。

 もちろん今回は、サイバー犯罪のような高度なテクニックを要する捜査の話ではなく、意外と捜査でも活用されているオープン・インテリジェンス(Osint)、つまりネット等で入手可能な公開情報を犯罪捜査の経験から個人や企業にどう活かせるかというお話しでした。

 例えば、皆さんも普段から活用されていらっしゃると思いますが、SNSやGoogle map。一見何気ない情報でも、それらが蓄積されることと、視点を変えることによって、さまざまな行間情報が浮かび上がってきます。我々はそうして得られる情報をどのように生活に活かすことができるのか?逆に、その様な情報に溢れたネット時代を生きていく上で、どのようなリテラシーを身につける必要があるのか?そのようなことを実際に起こった犯罪事例を基に学びました。このように書くと、何やらネガティブなイメージが付きまといますが、単に情報から身を守ったり、二次的なリスクを未然に防いだりというばかりでなく、情報を建設的な方向に積極的に活用していくといった示唆も得られました。

 このブログも開設して14年になりますが、トップページを見ただけでも様々な僕自身の人物像を発信していることが分かります。

・性別
・顔
・出生年(年齢)
・会社
・酒や食べ物の嗜好
・趣味

などなど。これらの情報は直接意図しているわけではありませんが、情報として積みあがることによって窪田恭史という人間の人物像を浮かび上がらせているわけです。実際、ネットを活用した「ネットの履歴書」人物調査サービスがあり、それによるとプロフィールの詐称など、調査情報の内のおよそ28%が何らかの問題ありと判定されたそうです。



 断片的な情報の組み合わせから表に出ていない何らかの兆候を読み取るという意味では、このブログでご紹介している「表情分析」や「筆跡診断」にも通じるところがあります。「SNS投稿から見える心理」というのも勉強になりました。

 さらに、日頃感じていたことではあるのですが、これだけ膨大な情報がほとんどコストをかけずに入手できる時代に生きているにもかかわらず、それに対する備えであったり、自分の好意がどのような影響を及ぼすのかの配慮であったりといった意識や教育が追いつていないように思います。森さんは、そうした教育の部分にこれまでの知見を活かしていきたいとおっしゃっていました。

 なお、日本刑事技術協会には現在、警察組織で培われた様々なノウハウを民間に活かすことを目的として、9名の警察OB・OGがいらっしゃるそうです。いずれYMSでも「刑事塾シリーズ」を開催したいと思っております。


過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

素材・健康・地域を活かす塩×TSUBAKI食堂-第125回YMS

2021年04月15日 | YMS情報


 4月14日、横浜市庁舎が入っているラクシスフロント2階のTSUBAKI食堂さんをお借りして、第125回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 今回のテーマは「塩のおはなし」。一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事、青山志穂様に、身近でありながら知られていない、塩の奥深さについてたっぷり90分お話しいただきました。また、今回は試食を伴うということで、TSUBAKI食堂さんに会場のご協力をいただきました。お塩とTSUBAKI食堂さんの共通点を一言で表すとすれば、「素材・健康・地域を活かす」と言えるのではないでしょうか。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。



 さて、今回のお話しの要点をまとめさせていただきます。

1.塩の基礎知識

 ドレッシングはその名の通り、食材に別の味を纏わせる(ドレッシング)するもの。これに対して、塩は食材が本来持つ味を引き出す。また、調味料ではなく直接塩を用いることで、かえって摂取塩分量を調節することができる。食材の力を引き出すことで、食が豊かなものになる。また、塩には食材に味をつけるだけでなく、蛋白質を溶かす(逆に凝固する)、菌の繁殖を抑制する、水分を抜くといった働きがある。

 塩は海水塩、岩塩、湖塩、地下海水塩、再製加工塩、藻塩に分類される。日本では海水塩が一般的だが、世界的に見れば60%が岩塩。海水塩はむしろ少数派。日本だけでも流通する塩は4,000種類以上にも上る(沖縄だけで100種類ある)。日本で流通する塩は、イオン交換膜塩か再製加工塩。うち、前者が8割を占める。「精製塩」は前者のことだと誤解されていることが多いが、実は後者に属する一商品名を指す。

 日本では岩塩が取れないので、海水から塩を精製する様々な製法が発達した。濃縮、結晶それぞれの工程でも様々な製法がある(濃縮する釜ひとつとっても、鉄釜、土釜など様々)。

 また、塩の結晶は基本的に立方体だが、結晶の成長条件(温度や濃縮の仕方)によって様々な形を形成する。その結晶の形が、塩の食感に影響を与える。

2.塩の味わい

 塩の味は産地が決めると思われがちだが、ほとんどは製法によって決まる。塩の味はミネラルが決定するが、同じ原料でも生産者の意図次第で全く違った味わいを見せるのが塩。

ナトリウム・・・しょっぱさ
マグネシウム・・・苦み
カリウム・・・酸味
カルシウム・・・甘み
その他・・・雑味(味に厚みを与える役割を果たす)

 上記のように、それぞれのミネラルが味の要素となるので、成分表示からどのミネラル分が多いかなどを見ることによって、自分好みの塩を選ぶことができる。

 また、前述のように結晶の形や大きさも味の決定要因となる。例えば粒が小さければすぐ溶けるので、よりしょっぱいという印象を与える。逆に粒が大きければ、よりまろやかに感じる。



 さて、そこで実際に塩を味わってみようということで、食塩、ヒマラヤ岩塩、竈方の塩を味わってみました。どの塩が好みでしょうか?その時に美味しいと思う塩によって、身体が求めている不足しているミネラルも分かるようです。例えば、ヒマラヤ岩塩であれば鉄、竈方の塩であればマグネシウムといった具合に。



 脱線すみません。マグネシウムというとどうしても思い出してしまうので。秘密戦隊ゴレンジャーの必殺技、「ゴレンジャーハリケーン、レンズカバー エーンド マグネシューム!」

3.塩と健康

 人体には体重(㎏)×60%×0.9%の塩分が含まれているのが正常。例えば体重60kgsの人であれば、324g。したがって、夏場の発汗には塩分の補給が必要であるし、水分の摂り過ぎによる塩分濃度の低下にも注意が必要。

 塩分は高血圧の原因と広く認識されているが、実は塩分摂取と高血圧との因果関係はハッキリとしない。大切なのは適切な塩分摂取(適塩)。適塩を測る目安としては、体液と同じ濃度の食塩水(0.9%)を冷蔵庫に常備しておき、飲んだ時にしょっぱく感じる(足りている)、無味または甘く感じる(不足している)かで診る方法がある。また、前述の通り、塩は自分で適量をコントロールできるように使うのがコツ。例えば、食べ物を塩につけるのではなく、自分で塩をつまんで食べ物のほうに加えると言ったように。

4.塩と食材の相性

同化・・・同種の味を混合した際に生じる相乗効果のこと。例えば、ステーキとクレソンと岩塩の組み合わせ(鉄分による同化)
対比・・・異なる味を少量加えることで、主たる味が引き立つこと。例えば、塩がぜんざいの甘みを引き立てる。
抑制・・・二種類の味を混合した際、一方または両方の味が弱められること。意外なことに、酸味の強いコーヒーに少量の塩を加えるとまろやかになるのだとか。



 ここで再び、先ほどの三種類の塩で今度はミニトマトと春キャベツを味わってみました。好みは人それぞれだと思いますが、塩によって驚くほど野菜の味に変化が感じられました。特にトマトですが、塩をつけただけなのに、昆布だしのような旨味が感じられました。

 天婦羅にはパウダーソルト、ステーキには粗塩と、経験的にも食材と合う塩のタイプがあるのは分かりますが、食材と塩の相性を下のようなマトリックスで理解すると分かりやすいようです。なお、米は分類上右下の緑の象限に属するとのことです。


※配布資料より引用。

 今回は食事をしながら講義を受けるという、今までにない形式で行いました。TSUBAKI食堂よりご提供いただいた品書きは以下の通りです(カッコ内は生産者)。また、写真は久しぶりにフォトチャンネルにまとめましたので、そちらもご覧ください。

・春セロリのおひたし(港北区堤國雄様)
・川エビの唐揚げ
・苅部ネギのマリネ(保土ヶ谷区苅部博之様)
・ど根性サラダ
・お刺身盛り合わせ<三崎まぐろの大トロ、赤身、わらさ、鰆、たこ>
・横浜野菜の天婦羅
 -こごみ、タラの芽(港北区堤國雄様)
 -スナップいんげん(磯子区苅部弥生様)
 -新玉ねぎ(保土ヶ谷区矢野輝様)
・たけのこの釜めし(磯子区苅部弥生様)
・あら汁



 初めての試みでしたが、充実したセミナーになりました。青山先生、椿さんありがとうございました。

過去のセミナーレポートはこちら

TSUBAKI食堂



神奈川県横浜市中区本町6丁目50−10




過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サラリーマンから落語家へ―第124回YMS

2021年03月15日 | YMS情報


 3月10日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第124回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。緊急事態宣言延長に伴い、今回も懇親会は中止となりました。

「50歳の時に、100歳まで生きると決めた」

失礼を承知で言えば、一般的には変わった方に分類されるのでしょう。東京大学から銀行、警備会社へと長いサラリーマン人生を送られ、60歳で早期退職。そして落語の道へ。しかし、ご本人にとっては至って当たり前、特別なことをしているつもりはないようにお見受けしました。僕も似たようなところがありますが、平素から「80歳まで生きられそうにない」と思っていたので、これでは本当にそのようにしかならないのではないかとお話を伺って思いました。

前置きが長くなりましたが、第124回YMSの講師は、豆生田信一様。「サラリーマンから落語家へ?〜60歳の心機一転」と題してお話しいただきました。

 「三つ子の魂百まで」といいますが、子供の頃のお話を伺うと、やはりなるべくして今のお姿があるのだなと感じます。豆生田さんは、幼少期から人を楽しませることがお好きで、良く大人の前で子供落語を披露するなどされていたそうです。高校1年生の時にはNHKののど自慢に出場し予選を通過したそうですが、それもただ出るのではなく、友人と「どうすればNHKの目に留まるか?」を考えたのだそうです。そこで思いついたのが、「NHKが好きな(つまりよく出演する)タレントの歌を歌う」こと。とはいえ、誰でも知っている大物では目立ちませんから、無名タレントの歌を歌い、目論見通り注目を引いたのだそうです。実はその無名タレント、後のキャンディーズだったというオチ。目の付け所がやはり、その後の人生に影響を与えているのではないかと思いました。これは我々すべてに当てはまることなのかもしれません。

 そんな調子ですから、サラリーマン時代も基本的に自由人。お堅いイメージのある銀行に20年在籍した自由人の姿を想像するのは難しいですが、やはり上司の性格により向き不向きが大きかったようで。これは何となく分かる気がします。

 銀行、警備会社と経て、60歳で早期退職。100歳まで生きると決めた場合、50歳で既に折り返し地点に入っていること、年齢による体力の衰え等を考慮すれば、60歳から65歳までの5年というのは貴重な5年であることなどを考えての決断だったそうです。もちろん、家族の了解を得てのこと。

 50歳からは、バイオリン、読書、演劇、殺陣、MBAの経験を活かした勉強会など様々なことに取り組まれます。一見無節操なように見えるのですが、恐らくご本人の中ではちゃんと一貫性があってのことではないかと想像します。僕も33歳の時から「いつかやろう」と思っていたことの「いつか」を消すという方針で様々なことに取り組みましたが、続いているもの、続かなかったものはあるにせよ、不思議と先ほどの「三つ子の魂」にだんだん焦点が合ってきているように感じています。



 豆生田さんが本格的に落語の道に入るようになったきっかけは、仕事でバンコクに赴任していた時、現地の日本人劇団に参加したことだったそうです。演劇を通じて子供の頃からやりたかったのは落語だったのではないかと気づき、2016年、三代目三遊亭遊三師匠に入門。豆生田さんをご紹介いただいたのは、2019年7月なので、それからわずか3年後のことです。

 豆生田さん曰く、落語の魅力は一人でできること、すぐにフィードバックが得られること、笑いは人の役に立つと思えること、定年がないこと。体調管理やスケジュール管理など自己責任は重くなりますが、「自分で決められる」というのが自由人にとって何よりなのだと思います。そしてサラリーマン時代に築いた人間関係、知り合いを大事に思えるようになったこと、主婦業の凄さを身をもって知るようになったとのこと。

 落語の世界は基本的に供給過剰。恐らくプロの噺家さんでも落語だけで食べていけるのはほんの一握りだろうということです。そういう世界で落語家としてどのようにポジショニングしていくか?豆生田さんのコンセプトは、「落語界の回転寿司を目指す」というもの。即ち、どこに問い合わせればよいのか、誰にすればよいのか、費用はどれ位かかるのかと言った具合に、何かと敷居が高いイメージのある世界にあって、分かりやすい、気楽、すそ野を広げられる活動をしていくということです。こういった点は、やはり元ビジネスマンの視点だと思いますが、それ実現するための細かい気配りもビジネスの世界では当たり前のことであって、豆生田さんの培ってきた経験が独自性を生み出しているようです。つぶさに目を向ければ、我々には必ず培ってきた独自性があるはずであり、こうした視点は参考になるのではないかと思います。「誰もが講師」を標榜して11年やってきたYMSとも通じるものを感じました。

 さらにオリジナルとして「あなたのための創作落語」というのがあり、企業の社史などを落語にすることを得意としているそうです。ここにもビジネスマンとしての長い経験が生きていますね。社史だけでなく、同窓会、故人を偲ぶ落語、披露宴、地域の歴史、英語落語など、豆生田さんの人生のストックが有機的に結びつき、紡ぎ出される落語の応用範囲は実に幅広いです。逆に、その応用範囲の広さも落語の魅力とも言えるのかもしれません。

2021年1月21日付日本経済新聞:「企業の歴史 唯一無二の落語に-会社員経験を生かしオーダーメード 笑わせるだけでなく発展を後押し



 実際、横浜の開港時、横浜と東海道を結ぶ「横浜道」の普請を請け負った軽部清兵衛の歴史落語を披露していただきました。なるほど、落語もこんな応用の仕方があるのだなと思いました。面白く学べる、これは興味深いやり方です。

 最後に、ご多分に漏れず、豆生田さんの落語も新型コロナの打撃をまともに受けているそうですが、その様な中でも普及したオンライン・ミーティングツールを利用し、ギニアやメキシコなど海外にも日本文化としての落語を伝える、収録型の落語を配信するなどの工夫をされているそうです。

「自分の中にある知見、経験を活かして、何かを作り上げる」

今回のお話からの学びを一言で表すとするならば、これかと思います。だからこそ、人生は素晴らしい。歳を重ねることはむしろワクワクすることなのだと教わった気がいたします。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SDG’sで何をしたいのか?-第123回YMS

2021年02月16日 | YMS情報


 2月10日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第123回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。前月に続き、今回も開始時間の繰り上げ、懇親会中止としました。



 さて、今回の講師は株式会社大川印刷の大川哲郎様。私も含め、YMSの何人かのメンバーは長年お付き合いさせていただいており、11年目にして初登壇というのが不思議なほどでした。

 今や環境への先進的取り組みで地元横浜は元より、全国に知られる大川印刷さんですが、印刷業としての歴史も古く、日本の活版印刷の黎明期(1848年、本木昌造がオランダから導入)、1881年の創業で、今年140周年を迎えられます。高峰譲吉の「タカヂアスターゼ」(消化剤)のラベルや、恩田栄次郎の『開国小史』の印刷を手掛けるなど、教科書に載っているような出来事との関りがその歴史を感じさせます。

 今回のテーマは、「大川印刷におけるSDG’sの取り組み」。SDG’s(持続可能な開発目標)が何かについてはここでは採り上げませんが(リンクの外務省のページをご覧ください)、大川印刷さんは2015年に国連でSDG’sが採択されるはるか以前からCSR(企業の社会的責任)や環境経営に取り組まれ、2004年には自社の存在意義を「ソーシャルプリンティングカンパニー©(社会的印刷会社)」と位置づけ、2019年には再生エネルギー100%を達成。「CO2ゼロ印刷」(いわゆる「風と太陽で刷る印刷」)を展開する日本でただ一つの印刷会社となっています。

 大川さんが社会改良への意識に目覚めたきっかけは、18歳で父親を医療事故で亡くされ、どちらかといえば世を拗ねた態度で見ていた学生時代に、訪れたアメリカで差別と貧困の中でも明るく生きる黒人のコミュニティと黒人音楽であるブルースに触れたことにあったようです。ブルースの名曲を数多く生み出した、ウィリー・ディクソンの言葉、

"The blues are the roots, everything else is the fruits."
(ブルースは根っこ、その他の全ては果実)

大川さんは言います、「印刷は根っこ、その他(生み出される成果物)すべては果実に過ぎない」。だからこそ、CSRやSDG’sは「本業とは別の取り組み」ではなく、「本業でいかに社会問題を解決するか」というのが本義だと。

【ビリー・ホリデー『奇妙な果実』の背筋も凍るような歌詞】


 例えば、「SDG’sとは何か?」にどっぷり浸かり、SDG’sの要件をいかに完璧に満たすかに血道を上げる人がいます。しかし、中小企業の経営者にそんなことが必要か?また経営者だけが夢中になっている、逆に従業員や外部の事業者に任せきりという経営者もいます。CSRと呼ぼうと、SDG’sと呼ぼうと、身の丈に合ったことを会社全員で、凡事徹底が大事だということです。また、注意したいのは、現在既にやっていることの中からSDG’sの要件に適合することを拾い上げて満足するのではなく、あるべき未来の姿から逆算して現在の施策を考える(backcasting)という発想が大事だということ。大川印刷さんでは、毎年「社内パートナーシップSDG’s経営計画」づくりを90分×4日に渡って全社員で行い(その間は当然操業が止まります)、

1. 上手くいっていることは何か?
2. 上手くいっていないことは何か?
3. やってみたことは何か?

を話し合うそうです。特に日本人は過去からの積み上げ(forecasting)は得意だが、このbackcastingが苦手な傾向にあるとのこと。

 そんな大川印刷さんも、取り組みの始まりは売上減少、従業員の士気低下、採用難、定着率の悪さといった、多くの中小企業が抱えている課題からでした。そのような現実を突きつけられている中で、ある会社社長からもらった言葉、

「明日、あなたの会社がなくなったら、あなたのお客さんは本当に困りますか?」

まるで1946年の映画『素晴らしき哉、人生』のようです。

 さらに、地元神奈川県で障碍者雇用の先進的取り組みで知られる日本理化学工業の故・大山泰弘氏がお坊さんから聞いたという言葉、

「人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、人から必要とされること。この四つが人間の究極の幸せである」

この内、「愛されること以外の3つの幸せは、全て働くことによって得られる幸せだったのです。尤も、一生懸命働いていれば、愛してくれる人にも出会えるかもしれませんが」と大山氏はおっしゃったそうです。

 また、社内に残っていた明治24年(1891年)の「横浜貿易新聞」に掲載された広告、そこに次のような文言が書かれていました、

「いたずらに価格のみの競争をせざるは」
「総て確実をもって江湖(世間一般を指す言葉)諸君に信用あるは」

つまり、130年前の創業者たちも考えていることは同じだったというわけです。

 以来、大川印刷さんの使命は、①仕事を通じて一つでも多くの「しあわせ」を創出すること、②横浜・日本の印刷の歴史・文化を内外に発信、伝えていくこと、の二つだということです。

 本業を通じた社会問題解決への取り組みは、人財登用、メンタル面のプラス効果、エシカルな世代への訴求効果、社会的信用など様々な良い効果を生み出しているようです。大川さんは「仕事と遊び(やりたいこと・自己実現)は同じだ」と強調します。また、「文句を言っても意味がない、大事なのは種を蒔き続けることだ」と。その30年近く種を蒔き、育て続けてきた結果が大川印刷さんを唯一無二の会社にしているのでしょう。今こうして我々が見ている大川印刷さんのように。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美しく示唆的なミツバチの社会-第122回YMS

2021年01月14日 | YMS情報


 2021年1月13日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第122回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。1都3県の緊急事態宣言発令に伴い、今回は開催時間を繰り上げての開催となりました。

 11年目を迎える新年最初の講師は、オルト都市環境研究所・代表取締役の岡田信行さん。岡田さんは、都市緑化研究の仕事をされる中で、都市に花を植えることのフィードバックを得るためミツバチと関わるようになり、ミツバチの飼育を通じた「ひと・まち・環境」をつなぐ市民活動「Hama Boom Boom!」を立ち上げ、地域づくり、教育活動などを行っていらっしゃいます。ということで、今回は「ミツバチたちとマネジメント」と題してお話しいただきました。

1.なぜミツバチなのか?

 前述の通り、元々都市緑化を研究する仕事をしており、都市に花を植えることの効果についてフィードバックを必要とされていたことがミツバチと関わるようになったことの始まりだそうですが、グローバル化が進展する中、一見地球規模で人がつながるようになったように思われますが、むしろ眼前では産業と地域、自然と地域、つまり人と自然とそれが形作る地域のつながりが希薄化しているというのが現実です。人と人とが、人と自然とがつながらなくなり、私たちの身の回りの環境は、人が集まり、多少の木や花があっても、それぞれがバラバラで孤立感を深め、活力を失っています。

 こうしてバラバラになってしまった「つながり」を再生し、地域に活力を蘇らせるには、再び結びつこうとする何か地域の資源を活用した「面白いこと」が必要ではないか?そうして白羽の矢が立ったのが「ミツバチの飼育」、つまり養蜂だということです。数式的に言うと、地域に眠るa、b、c、dといった多様な資源にミツバチの飼育というxを掛け合わせる。するとxが共通因数となり、x(a+b+c+d)といった形で括れるというイメージになります。

2.養蜂は目的ではなく手段

 ミツバチの飼育は人と人とを繋げ、生産したハチミツは地域ならではの特産として、さまざまな地域の産物と結びつき、それらを活性化します。また、ハチミツを作るには花が必要であり、花を必要とする地域はその環境を保全することにもつながります。

 養蜂は大抵誰もが初心者であり、下手をすると刺される可能性があるので少し怖さを伴います。また、防護服というユニフォームを着用し、共同で作業に当たります。まさにこうした性質が、達成感、仲間意識を育くみます。

 つまり、養蜂は地域づくりに貢献すると共に、地域と共にかかわる人々も成長していく格好の媒体と言えるのです。

3.完璧に調和したミツバチの社会

 ミツバチの群れ(2群)は、あたかも大きな会社組織のようです。そこには約3万匹(内女王バチ1匹、雄バチ1,500匹、ほか働きバチ)のハチがおり、営業部、ハチミツ事業部、総務部、営繕部などのように、群れの遺伝子の継承を目的とした分業制が存在し、しかもそれらが完璧に調和しています。

 まず働きバチですが、

日齢3日ごろ:掃除
日齢7日ごろ:育児
日齢10日ごろ:巣作り
日齢14日ごろ:貯蔵
日齢20日ごろ:門番
日齢20日以降:ミツ集め

というように、経験(?)に応じて果たす役割が分かれます。働きバチの役割で我々が一番イメージしやすいのは最後の「ミツ集め」(会社で言うなら営業部)だと思いますが、この仕事は一番のベテランがこなすのですね。

 ミツを採取する範囲は半径2㎞、良く知られた8の字ダンスで営業報告を行い、どこに花があるかを共有し、採蜜の効率を上げます。5月、6月が最もミツの採れる時期で、季節の花の移り変わりと共に、ミツの色も変わります。つまり、地域のハチミツには地域の花の特性ばかりでなく、季節も反映されるのですね。

 門番は外敵の侵入に備えます。外敵が来たらまずは羽音で威嚇。次に体当たり。針で刺すのは最後の手段だそうです。ミツバチは一度針で刺すと、毒袋と共に内臓が抜けてしまい、死んでしまいます。こうした自己犠牲が起こるのは、ミツバチが個体としてではなく群れという超個体として遺伝子の継承を目的にしているためです。

 「働きバチ」というと、下っ端のようなイメージですが、実は群れの人事権を握っているのは女王バチでも雄バチでもなく、働きバチなのだそうです。例えば、女王バチも孵化した幼虫の時点では働きバチと変わりありません。しかし、働きバチがこしらえた王台と呼ばれる小部屋で産まれ、ローヤルゼリーを与えられた幼虫だけが女王バチとなることができるのです。

 雄バチの場合は、働きバチが必要な雄バチの分だけ、大きさの違う穴を作ります。女王バチは雌雄の産み分けが可能ですが、穴の大きさによって本能的に雌雄を生み分けるのだそうです。つまり、女王バチの誕生も、雄バチの誕生も働きバチが制御しているということになります。

 同じ巣に複数の女王バチが存在した場合、新旧の女王バチが女王の座をかけて争います。力が同等であった場合、旧女王バチが群れの一部を引き連れ別の巣を作ります(これを分蜂と言います)。

 良く知られているように、ミツバチの巣は、精巧なハニカム構造(正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造)をしています。その完璧な構造には驚嘆せずにはいられず、美しささえ感じます。そもそも「ハニカム」という言葉自体が、「ミツバチの櫛(=蜂の巣)」に由来します。材質は蜜蝋で、隙間をプロポリス(蜂ヤニ)で埋めます。

 雄バチの仕事は交尾のみ。針もありません。エサも働きバチから与えられて過ごしますが、冬になると用済みということで巣から追い出される運命にあります。雄バチは英語で”drone”、例の小型無人航空機「ドローン」と同じです。ブーンという音という意味の他、「のらくら者」といった意味があります。何だか可哀想ですね。



4.飼育のマネジメント

 このように奇跡とも思える、システムが完璧な調和を見せるミツバチの社会。その飼育を通じて、私たちは自然と組織を俯瞰して見るようになります。そして飼育プロジェクトを通じ、自分たちの地域社会というシステムを蘇らせ調和させる。いわばプロジェクトそのものが、調和したシステムのフラクタル(相似的)構造になっているとも言えます。

 ミツバチの飼育は1年を通じて、おおよそ以下のようなライフサイクルがあります。

3月:準備期
4月~6月:成長期(女王バチ交代もこの時に起こる)
7月~9月:成熟期(ハチの数が最も多い。外敵との争いも激しくなる)
10月~2月:衰退期(ハチの数は1/3に減る)

 養蜂で果たす人の役割は、常に巣箱のモニタリングをすることです。ハチミツを生み出すミツバチのマネージャーと言えますね。例えば巣箱、巣枠の追加を行うか、分蜂の兆候はないか、逆に群れの状態が良いので意図的に分蜂させるか、悪ければ統合させるかなど。

 よく養蜂家さんが巣枠を扱うのに煙を焚くのをご存知の方も多いのではないかと思います。なぜ煙を焚くのかと言えば、ハチが煙を吸って動きが鈍くなるからではなく、山火事が起こった際、ミツバチは別の場所へ移動するため、必要最小限のミツなどを身体にため込む準備に入り、外敵を攻撃するという優先順位が下がるためだそうです。

 ミツバチの巣にもそれぞれ個性があるそうです。それは先天的な場合もありますが、人間の扱い方によって後天的に変わる場合もあります。例えば、巣を乱暴に扱えば、ミツバチも攻撃的になるのだとか。

 ミツバチにとって、ハチミツは燃料となります。寒い時は羽を振動させ、熱を起こし、逆に暑い時は水分を扇いで巣を冷やします。飼育する人は、こうした負担をなるべくミツバチにかけず、ハチミツの生産性を上げるため気を配ります。

 手間ひまかけてできたハチミツは、遠心分離器で収穫します。僕もぜひこの作業を見てみたいですが、教育現場でもこの作業は子供の関心を惹くようです。

5.プロジェクトとSDG’s

 養蜂のプロジェクトは、SDG’sの17目標のどれに当てはまるというより、5つのP(People、 Prosperity、Planet、Peace、Partnership)をつなげるという概念そのものが非常に近いのではないかと岡田さんは考えていらっしゃいます。いわば、プロジェクトは地球規模ではなく、半径2㎞のただし目に見えやすいSDG’sの実現。上記のように、ミツバチの生態はそれ自体が奇跡的とさえ思える完璧な調和です。『サピエンス全史』の著者、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏によれば、人間と他の動物との違いは、たとえ現実でなくても想像したルールや基準、価値観に従って、大規模な集団が行動できるという点だそうです。しかし、我々の社会が「群という超個体としての遺伝子の継承」を目的とするミツバチほど調和しているようには思えません。ミツバチを凌駕する人数での協調行動をとれるのが人間だとすれば、欠けているのは協調行動をとらせる価値観だということになります。この点にこそ、このミツバチ・プロジェクトの意義があるように思いました。企業のCSR活動、引きこもりの人の自立支援、福祉施設などとの連携など、可能性はまだまだありそうです。

 我々YMSにとっても示唆に富むお話しでした。まだまだできることがありそうです。



過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

非常時の中、迎えた10周年‐第121回YMS

2020年12月10日 | YMS情報


 12月9日、日ごろ大変お世話になっている「勝烈庵」にて、第121回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 YMS10周年という特別な年であった、2020年の締めくくり。人と人とのつながりで紡いできたYMSですが、まさにその「つながり」が危機にさらされた1年でした。

 しかし、私たちは人のつながりが希薄化した社会をニュー・ノーマルと称して受け入れるつもりはありません。つながりは人が人たる所以であり、築き上げてきた文化・文明、創造の源、つまり人間の本質です。むしろ、当たり前だった「つながり」の重みをかみしめ、さらなる10年を歩んでいく所存です。

 ここで改めてYMS設立趣旨を振り返ってみたいと思います。

【YMSの価値観】

 1859年に開港する前、横浜はわずか100軒足らずの小さな漁村に過ぎませんでした。しかし、それから150年を経て、現在では350万都市(注:設立当時)にまで成長しています。その原動力をわたしたちは、横浜が未知なる世界に進んで飛び込む自立心と好奇心をもち、常に流れ込んでくる新しい文化や人に対して心を開きつつも、地域に人一倍の愛着を持ってつながりを大切にする気風をもった人々が集い、和洋折衷した独自の文化を創造してきたことにあったのではないかと考えています。

 わたしたちは、20年の長きにわたって閉塞感漂うわが国を再び前向きにするものこそ、この横浜が育んだ気風であると考え、こうした気風をもつ人を出自によることなく”濱っ子”と呼び、特に事業活動に携わる”濱っ子”を”濱っ子マネージャー”と呼ぶことにしました。

 ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー(YMS)は、”濱っ子マネージャー”が集い、切磋琢磨できる場を提供することで、”濱っ子”の気風を広め、社会に貢献することを目指します。

【YMSの活動内容】

・YMSは、”濱っ子マネージャー”や”濱っ子マネージャー”を志す人が低負担で、頻繁に交流できる「活力ある場」を提供します。
・YMSは、”濱っ子経営”注)を学ぶ勉強会を主催します。参加者は各々の嗜好に応じ、参加を自発的に選択することができます。
・YMSは、これら交流の場や勉強会を参加者の主体性によってつくりあげます。

注)”濱っ子経営”とは、上記の価値観に基づき、社会の活性化を志す経営のことです。

 新年のYMSは、2021年1月13日です。10年間多大なお力添えをいただいたのべ2,266名の皆様、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。YMSはこれからも皆さんと作り上げていく会であり続けます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

AI時代の数学の楽しみー第120回YMS

2020年11月12日 | YMS情報


 気がつけば、銀杏が色づき、世の中も冬の装いです。さて、先月10周年を迎えたYMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)ですが、11月11日、さらに節目となる第120回YMSをmass×mass関内フューチャーセンターにて開催しました。

 今回の講師は、YMS創設メンバーであり最年長の㈱エルデータサイエンスの山口行治さん。曰く、山口さんにとってYMSとは、「自分はまだまだだと思っている人の集まり」。そんな山口さんが「120回やってきたけど、『数学』がテーマだったことがないよね?(注)」ということで、今回のテーマは、「AI時代の数学の楽しみ-経営戦略の数理」。

注:数学ではなく、会計など「数字」を扱ったテーマということであれば何回かあります。

 さて、数学が苦手な人にとって、数学の世界およびそこに住んでいる人たち(数学が得意な人)というのは、何となく自分は入っていけないのではという近寄りがたさを感じるのではないかと思います。子供の頃、数学が得意な友達に問題の解き方を聞いても、何のことを言っているのか分からない宇宙語のような感覚、理解できないことによる無力感…。「オイラーの定理の美しさ」なんて言われても、「いったい何の話だ?」という感じです。数学が好きな人というのは、数学の何が楽しいのか?山口さん自身は、「それが何かの役に立った時」だと言います。そして、「数学は気長に楽しめばよい」と。子供の頃、あっという間に授業についていけなくなった絶望的記憶、我々もいい加減その桎梏を取り払って良い年頃なのかもしれません。

 山口さんにとって、好きだからやっていた数学が役に立つことによって楽しいと感じられたエピソードとして、40年以上も前、まだPCなど存在しなかった時代にアメリカの統計プログラムを変更して日米貿易摩擦の問題解決に貢献できた話、また20年以上前に当時の日本の製薬会社においてより丁寧な計算を行うことにより、新薬開発リスクを大幅に低下させた話などがありました。それこそ、個人の計算が数億円規模で役に立つわけですから、凄い話です。我々の身の回りを見ても、元々は人間の頭の中の数学だったという技術やサービスで溢れています。



 数学というと、厳密な定義と式でただ一つの解を導くという論理的なイメージがあります。確かに2000年以上続く長い数学の歴史の中で問題解決としての数学の側面は大きいですが、数学にはもう一つ問題発見の側面もあります。今回のお話しでは前者を「論理」、後者を「数理」と呼んで区別していました。後者の側面は、いうなれば「証明はできなくとも、『こうではないか?』という仮説の下で計算を繰り返し未知の物事を解明していく」プロセスと言えるのではないかと思います。例えば、2012年にその存在が確認され話題となった、物質の質量を決めるヒッグス粒子は、1964年には計算上の仮定として提唱されていました。仮説と計算によって未知の地平を切り開くのも数学ということですね。数学というのは人間の思考を形にしていくツールと言えるのかもしれません。「第45回燮会」で採り上げた「ベイズの定理」もその一つです。山口さんの言葉を借りれば、「論理は証明、数理は『気づき』の技術」だと言えます。

 特に近年、AIの発達によって膨大な計算が短時間にできるようになり、かつそうして得られた情報がますます安価に入手できるようになっています。そうすると、人間はかつて計算に費やしていた膨大な時間と労力を問題発見、つまり気づきの方に費やすことができるようになります。ビジネスの世界においても、経営戦略はこれまで論理の側面から展開してきました。今後はそれに加えて数理の側面がますます重要になるのかもしれません。どんな人でも数学的な思考が必要であり、「文系/理系」の区分自体がナンセンスであるように思えます。

 今回参加された多くの方が「(話が)難しかったけれども、楽しかった」とおっしゃっていましたが、それこそ数理的な考え方が「気づき」の技術であるところの所以なのかもしれません。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10周年の節目に再開しました!-第119回YMS

2020年10月15日 | YMS情報


 2020年10月14日、7カ月の休止期間(1回のオンライン開催を挟む)を経て、mass×mass関内フューチャーセンターにて第119回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 2010年10月13日に横浜情報文化センターにて第1回YMSを開催して以降、コロナによる休止期間を除けば毎月第二水曜日のセミナーを絶やすことなく、記念すべき10周年を迎えることができました。これも偏にこれまでご参加いただいたのべ2,237名の皆さまとのべ125名の講師の皆さま、そしていつも会場を快く貸して下さるmass×mass関内フューチャーセンター様、馬車道十番館様のおかげです。心より感謝申し上げます。



 今回の講師はコンサルティング歴35年、ブランディングコンサルタントの髙橋珠美様。「コロナ禍の中、前年月額対比1000%の売上を達成するビジネスアクションとは」と題してお話しいただきました。

髙橋珠美様HPはこちらです。



 また、今回からオンライン受講も並行して行えるようになりました。まだ改善点は多々ありますが、今後も続けていきたいと思います。

 さて、脈絡にかける点はあろうかと思いますが、お話の要点をまとめさせていただきたいと思います。

<売れる仕組みづくり>
ビジネスコンセプト
ブランディング
マーケティング(仕組みづくり)
これらが三位一体でなければならない

事例:コロナ期にもかかわらず、売上を前年同月対比、5月4.65倍、6月6倍、7月10倍に伸ばしたパン教室。

1.ビジネスコンセプト(売り方、スタイル、理想)
・自らの存在性を定義する
・存在性には「Being」と「Identity」の二つがある

Being…性格・資質など(identityの土台になるもの)
Identity…後天的に付加されるもの(肩書や役割など)

Beingから表に出したくないものを消していく。すると、表に出しても良いものが残る。それがIdentityの土台となり、その人(事業)の独自性を形作る。したがって、自分のBeingをどれだけ深く知るかが大事となる。

2.ミッション・ステータス
・ブランディングの土台となるもの
・「根源的ミッションステータス」、「職業を通じたミッションステータス」、「オペレーションを通じたミッションステータス」の三種類があり、順番に下からの階層構造を成している。
・これらが「評判」につながる

3.ペルソナ(たった一人の顧客)を決める
・その顧客の問題を認識する(5つのキーワードに基づき、100個書き出す)
・本当に顧客を知っているかを徹底的に考える

4.ポジショニング(自分のビジネスフィールドはどこか、ライバルは誰か)
・自分はポジショニングマップのどこにいるのか?
・ベンチマークすべき相手はどこに位置しているのか?
・競合他社をプロットし、業界のポジショニングマップを作成した時、どこに隙間があるか?
・空いている隙間のどこを選ぶか?
・それによりブランディングの仕方が変わってくる

5.ブランディングは、以下の全てを含んだプロセスである

入力:会社を意味するものすべて
処理:整理・精査
出力:市場に対するメッセージをビジュアル化。適切な媒体による発信

6.計画策定のプロセス
①ゴール(何を目指すのか)を決める
②目的を決める
③独自性を決める
④理想の光景(結果どうなるのか)を考える(現状は置いておいて、妄想をたくましくする)
⑤本当に価値のある最終生産物は何か?

これらに基づき、戦略計画、戦術計画が作られる

7.マーケティングの逆三角形(パーチェスファネル)
・(逆三角形の底辺より)認知→興味・関心→比較・検討→購入・申し込み
・本命商品を持っているか?
・フロント商品(お試し)は何か?
・見込み客の導線をどう作るか?(媒体の活用)
・マーケティングは知ってもらい、購買につなげる仕組みづくり
・したがって、逆三角形の底辺が広いことが大事

事例:コロナ期にもかかわらず売上を前年比207%伸ばしたボディケアサロン。

8.ストーリー作り
・「アーンドメディア」、「オウンドメディア」、「ペイドメディア」のサイクルを回す

① アーンドメディア
・口コミで獲得するメディア露出
・オウンドメディアと双方向の影響関係にある
② オウンドメディア
・自分でコントロールできるコンテンツ(ブログ、SNSなど)
・ペイドメディアからの影響を受け、アーンドメディアへ影響する関係
③ ペイドメディア(有料広告)
・アーンドメディアとオウンドメディアへ影響する関係

・とりわけオウンドメディアのアクセスをいかに伸ばし、滞在時間を長くするかが大事
・そのために見込み客の啓蒙を行う

8.コンディションの公式
・自分の状態を数値化し、グラフの傾きから処方を考える(コンディションごとにとるべきアクションがある)
・より良いコンディションへ移動させていく
・横ばいはノーマルではない、緊急事態である
・良いコンディションも危険の兆候となり得る

 このようにまとめると、抽象的な知識のインプットが続いたように見えますが、実際のお話は非常にリアルなものでした。とりわけ、コロナ禍でセミナー業やコンサルティング業自体が苦境に立たされていた中、早期の段階で、すでに顧客に対しコロナ禍での適切な処方箋を示していた点に感銘を受けました。これも何年も前からネットを活用したマーケティングと、成果を出すまで伴走することによる実績の蓄積があったからこそと思います。いかに「普段が大事か」ということを思い知らされました。先生も「リスクも適切な行動を取ることによってチャンスとなり得る」とおっしゃっていましたが、「言うは易し、行うは難し、成果を生むのはなお難し」です。

今回のお話を一言でまとめますと、「良い商品だから売れるとは限らない。『見せ方、売り方』が大事。知られないことには始まらない」と言えるかと思います。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする