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窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

初のオンライン開催-第118回YMS

2020年07月09日 | YMS情報


 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、2020年3月より10月まで休止しているYMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)ですが、7月8日、初めての試みとしてZOOMを用いたオンラインで開催しました。

 講師は、YMS最多登壇(通算7回目)の、お馴染み野原秀樹先生。テーマは、「オンラインでチームビルディング、『謎解き』ワークを楽しもう!!」です。

 これまで身体を動かすことの多かった野原先生のプログラムですが、オンラインということで今回は「謎解き」、頭を使うワークでした。そして、ただオンラインというのではなくZOOMの良さを逆に活かした、「オンラインだからこそ」の内容だったと思います。

 アイスブレイクとして、参加者同士「このコロナ禍での近況について」グループセッションを行った後、「謎解き」のワークを二問行いました。

 これまで幾度も野原先生のプログラムを受講してきて、「自分で作り上げたフレームに惑わされてはいけない」と分かってはいるのですが、頭で分かっていても身体が動かない「インプロ」(即興)と同様、頭そのものもやはり「分かっているだけでは動かない」ことに気づかされました。私たちは何と思い込みに囚われやすいことか…。

 また、お互いが離れたオンラインでのワークでも、起こることは普段の組織内で起こることと同じであることにも気づかされました。二問の謎解きから得られた気付きは多いのですが、いくつか挙げてみますと、

・目の前の情報に惑わされない
・過去の似たような経験を駆使する
・規則性を見つける
・様々な角度から物事を眺める

 以上は個人内のことですが、

・他の人の力を借りることに躊躇しない
・「大したことない」と思えるようなことでも表に出してみる(他の人にとっては重要なヒントかもしれない)
・空気を読み過ぎて、遠慮しない

 こうした行動は普段の組織でも起こっている可能性があり、一つ一つは何気ないことではあるのですが、それが個人のみならず組織としての創造性をかなり阻害しているのではないかと思いました。折角仲間が集まっているというのに、相乗効果が生まれないばかりか、下手をすると個人以下に能力が抑え込まれてしまう。これは見過ごせない課題です。

 また、たとえ「自分は組織への貢献度が低い」と思っていたとしても、視点を変えれば貢献できることは必ずあるということです。わずか二問の謎解きの中で、「自分たちにはまだまだできることがある」と思わされた90分でした。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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社内の対立・紛争を前進に変えるー第117回YMS

2020年02月20日 | YMS情報


  2月12日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第117回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。



  今回の講師は、僕が日本交渉協会で普段お世話になっている、コンサルタントの向展弘さん。「社内の対立・紛争を前進に変える」と題し、交渉学とも非常に共通点の多いコンフリクト・マネジメントの入門についてお話しいただきました。

  経営学者のチェスター・バーナードは、組織の成立要件として、

1.共通目的
2.貢献意欲
3.コミュニケーション

を挙げました。しかし、たとえ共通目的や貢献意欲を持っていたとしても、人の認識にはそれぞれ差異があるので、組織を形成すれば多かれ少なかれ対立(コンフリクト)が生じ得ます。コンフリクト・マネジメントとは、そのような対立が生じた場合に、それを放置せず積極的に問題解決を図ろうとする取り組みのことを言います。



  さて、初めにアイスブレイクとして「国境を超えろ!」という、コンフリクト・マネジメントでは有名なワークを行いました。ワークは次のようなものです。

「あなたと友人Aさんの間に国境線があると想像してください。国境線の内側はそれぞれの領土です。課題は『2分以内に対面する相手を自分の領土に入れること』です。さあ、どうしますか?」
引用:『人と組織を強くする交渉力〔第3版〕 (あらゆる紛争をWin-Winで解決する協調的交渉術)』

  このワークがコンフリクト・マネジメントのイントロとしてよく取り上げられるのは、対立を解決するために人がとると考えられる5つの解決方法を理解するのに好適だからです。


(上の写真をクリックすると拡大します)


  この5つの解決方法は、1976年に心理学者のケネス・W・トーマスとラルフ・H・キルマンが分類したもので、「二重関心モデル」と呼ばれます(上図)。つまり、人は「自分への配慮」と「相手への配慮」という二軸の観点から、「協調」、「強制」、「妥協」、「服従」、「回避」の手法を使い分けているというのです。この5つの解決法を先ほどの「国境を超えろ!」に当てはめますと、

回避:お互い相手の説得を試みるも時間切れになる、あるいは交渉をしない(lose-lose)。
服従:一方が、相手に従って境界線を跨ぐ(win-lose)
妥協:双方譲り合い、片足だけ境界線を跨ぐ(lose-lose)
強制:お互いに相手を自分の領域に引き込もうとする(win-lose)
協調:話し合って、双方が同時に相手の領域に入る(win-win)

というようになります。つまり、5つの解決法のうち「協調」だけが互いに得をする、いわゆる「win-win」につながることが分かります。しかし、双方同時に相手の領域に入るには、まず「自分も境界を跨いで構わないのだ」と思考の枠を広げられる「発想の転換」(リフレーミング)、話し合って合意する「コミュニケーション」、約束を履行する「信頼」の3条件が必要であることが分かります。因みに、対立の解決法として、常に「協調」が正しく、その他が誤っているという訳ではありません。対立が起きているコンテクストによっては、「回避」や「強制」が望ましい場合もあるという点に注意が必要です。

  ところで、交渉学では「服従」、「妥協」、「強制」のように、「自分」と「相手」のいずれかの配慮に偏る交渉を「分配型交渉」、「協調」のように、「自分」と「相手」のどちらにも配慮し、双方が満足する価値を創造する交渉を「統合型交渉」と呼んでいます。この「分配型交渉」と「統合型交渉」を直観的に理解するために、交渉学で必ずと言っていいほど採り上げられる、「オレンジをめぐる姉妹の交渉」があります。

「ある姉妹が、1個のオレンジをめぐって争っていました。お母さんが仲裁に入りますが、互いに譲ろうとしません。あなたがお母さんの立場だったとしたら、どのように解決しますか?」

 これを先ほどの「二重関心モデル」に当てはめてみましょう。もちろん、解決策は他にも考えられると思います。

回避:双方譲らず。
服従:どちらかを一方的に我慢させる(「お姉ちゃんなんだから」、「妹なんだから」)
妥協:お姉ちゃんにカットさせ、妹に欲しい方をとらせる
強制:母親が仲裁案を強制する(「今回は妹に譲り、次はお姉ちゃんに譲りなさい」)

  これらのいずれの解決策も決まった大きさの価値を分配しているだけなので、当事者の満足度は下がります。分配型交渉にはこのような性質があります。最後の、双方が「win-win」となる「協調」について考えてみましょう。先ほど、「協調」の解決法には「リフレーミング」、「コミュニケーション」、「信頼」の3条件が必要であると述べました。そこでお母さんは、姉妹にオレンジを手に入れてどうしたのか質問しました。すると、姉はマーマレードを作るために皮が欲しいと思っており、妹はジュースを作るために実だけが欲しいと思っていることが分かりました(コミュニケーション)。そうであれば、オレンジ1個をどうするかではなく、姉には皮だけ、妹には実だけあげればよいということが分かります(リフレーミング)。この仲裁案に、お母さんのいうことなので、双方が納得しました(信頼)。そして、どちらも満足する解決となったのです。

  オレンジ1個であることに変わりありませんが、「1個のオレンジをどこで分配するか」という発想にとらわれていれば、得られるオレンジは最大で半分、つまり満足度は50%ということになります。決まった大きさの価値を分配しているので、これは「分配型交渉」です。これに対し、「皮と実を分ける」と発想を転換したことによって、満足度は100%になりました。つまり、倍の価値を創造したことになります。これが「統合型交渉」です。

  「二重関心モデル」が「自分」と「相手」の二軸で考えたように、統合型交渉も「自分のニーズ」と「相手のニーズ」というように複数の軸で考えることが必要です。軸が複数あるということは、そこに利害の対立があるということでもあります。つまり、コンフリクトそのものは、双方がより得をする「価値創造のための母胎であると言うことができ、必ずしも忌避すべきものではないのです。

  さて、コンフリクトを生み出す要因は、上記のような立場(例:「オレンジが欲しい」)やニーズ(例:「皮が欲しい」、「実が欲しい」)だけではありません。物事を捉える認知の違いや感情のズレもコンフリクトの要因となります。むしろ認知や感情の相違の方が対立の原因としては多いかもしれません。


出典:https://matome.naver.jp/odai/2142589139748345701

  認知については、ゲシュタルト心理学の有名なだまし絵に上のようなものがあります。これが若い女性に見えるという人もいれば、老婆に見えるという人、あるいは猫がいるようにしか見えないという人、全て見えるという人等々、見る人により様々な答えが返ってきます。つまり、人の認知はそれそれであるということです。にもかかわらず、人は自分の認知こそが正しいと思うので、対立が起こるという訳です。「事実と解釈は異なる」ということを我々は理解しておくことが大切です。

  まとめるとコンフリクト・マネジメントにおいても、交渉においても、「相違や対立は価値創造の母胎でありうること」、「対立(交渉)する相手は、敵ではなく問題解決のためのパートナーであること」、「人の認知はそれぞれ異なるということ」を理解しておくことが重要だということです。組織にコンフリクトは避けられませんが、このことを理解しておけば、それを利用して逆に組織を強くすることさえできます。コンフリクトが組織を崩壊させるか、強くするか。我々の認識と行動次第だという言えそうですね。

  次回、第118回YMS(3月11日)は開催会場が通常と異なりますので、FBでの告知にご注意ください。

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歯と心身の不思議な関係―第116回YMS

2020年01月09日 | YMS情報


 芸能人じゃなくても歯は命!皆様、ご自分の歯を大切にされていますでしょうか?僕は若い頃、詰め物のとれた歯を放置しっぱなしにしたり、随分と無頓着だったと反省しています。

 さて、年も改まり、2020年(令和2年)最初の第116回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)をmass×mass関内フューチャーセンターにて開催しました。

 今回の講師は、オハナデンタルクリニック関内院長の宮路早苗様。肩こり、腰痛、膝痛、頭痛、腱鞘炎まで、原因は歯から?「ストップ鎮痛剤!慢性痛は、まず歯を疑え!」と題し、歯と心身の驚きの関係についてお話しいただきました。



 歯科なのになぜ「オハナ」なのかと思っていたのですが、「オハナ」とはハワイの言葉で家族という意味なのだそうです。その名の通り、院内は患者さんにリラックスしていただけるよう、ハワイをイメージした内装で心地よいハワイの音楽が流れています。

 まず、首の痛み、肩こり、腰やひざの痛みは、ひょっとすると歯が原因かもしれないというお話。歯のかみ合わせが悪いと、それが原因で背骨が歪み、身体のあちこちに変調をきたすことは知っていましたが、宮路さんのところには、根本原因である歯からこうした異変にアプローチするため、整形外科から患者さんが紹介されることが多いそうです。

 例えば、みなさんの舌は普段、上あごに先だけでなく上面が着いているでしょうか?身体がリラックスしている時、通常舌はこの位置なのだそうです。ところが、歯並びが悪かったりすると、身体が無意識に不快感を避けるため舌を口腔内に浮かせたり、下あごにつけたりします。これは本来不正常なため、舌の筋肉が緊張します。その結果、肩こりの原因になることもあるそうです。舌が上あごに着かないのには、母乳で育てられるケースが減っていることも影響しているそうです。

 また、通常上あごと下あごがくっついている時間は1日平均わずか17.5分しかないそうです。つまり、常に上あごと下あごがくっついている人、ましてやグッと噛み締めている人も緊張状態にあると言えます。PCやスマホの普及も影響しているようです。つまり、いずれも原因が歯にある可能性があるということ。宮路さんはこれらを踏まえ舌を鍛える運動なども行っているそうです。

 さらに驚くべきは、歯の尖りが舌や頬に当たることで脳に十分な刺激が伝わらず、脳の働きが低下するために腰痛などの原因になるということもあるそうです。というのも、歯は三叉神経と呼ばれる、脳に12対ある脳神経の中で最大の神経とつながっているそうで、仮に腰痛や肩こりなどに外側からアプローチしても歯から伝わる誤った刺激に脳が反応するために、「脳が記憶している」痛みが継続してしまう可能性があるからなのだそうです。以前呼んだ『脳の中の幽霊』という本に「幻肢痛」と呼ばれる、事故などで失われたはずの肢が痛むという現象が書かれていた記憶があります。つまり、腰痛など身体の痛みと関連していた歯からの刺激が脳の記憶を呼び戻すというわけです。僕も以前、歯が痛むので歯医者に行ったところ、「その(痛む)歯には神経がない」と言われたことがあります。



 したがって、歯の治療が思わぬ身体症状の改善につながることがあります。例えば、

・歯の被せものを取ったら、膝の痛みが改善した。
・歯石をとったら、頭痛が改善した。
・虫歯を治したら、身体が楽になった。
・歯を調整したら、猫背が矯正された。



 そこで宮路さんは歯に振動を加えることで脳に正しい刺激を与え、身体の痛みの症状を緩和するという施術をされているそうです。具体的には回転する器具で歯に振動を与えるのですが、驚くべきは患者ひとりひとりの特徴に合わせ、回転数や器具を歯に当てる角度を変えているのだそうです。実際の施術の動画を見ましたが、冷え症で、四六時中歯を喰いしばっているために全身がこわばり、真っすぐ立っているつもりでも少し押されただけで倒れてしまいそうなほどバランスの悪かった女性が、歯に刺激を与えたところ見るからに改善していました。



 しかもそれを、僕自身も体験してみました。僕もペンを持つ握りが異常に強かったり、どちらかというと始終身体が緊張している方だと自覚していたのですが、事前検査の結果、僕は前後のバランスが悪いということが分かりました。普段から姿勢には気を付けているつもりだっただけに、この結果は少々ショックでした。

 ところが、上の右前歯に刺激を与えたところ、力を抜いて上の歯と下の歯を離して立っても、先ほどよりはるかに前後の押しに対して強くなったのです。身体感覚としても、丹田に重心が落ちた実感がありました。つまり、歯に力が入っているために身体のバランスが悪くなり、それが常態化しているために、立つためには歯に力が入っていなければならないと脳が記憶していたという悪循環です。それを歯に振動を与え、脳への刺激を変えることで、「実はそうではないんだよ」と脳に教えてあげます。何だか、不安障害の暴露療法のようです。

 もちろん、身体の痛みは様々な要因が複雑に絡み合っており、一つの原因を取り除けば、また別の原因が現れるというように、まるで玉ねぎの皮を剥くかのように解明していかなければなりません。しかし、「痛いから鎮痛剤」とすぐ考えるのではなく、薬に頼らなくても症状を緩和できる方法もあるのではないか、と知っておくことは重要だと思います。

 もう一つ驚いたのは、電磁波が身体に及ぼす影響。スマホを持っているだけで、持っていない時より明らかにバランスが悪くなっているのです。これは一体どういうことなのか?我々は電磁波とはもはや無縁ではいられない生活を送っているだけに、考えさせられます。合気道の達人、植芝盛平は、路面電車に乗ることも嫌がったという話を聞いた記憶がありますが、ひょっとすると電磁波により重心が狂うことを嫌ったのかもしれません。



 あまりにも身近で、普段は意識することすらあまりない歯が心身に及ぼしている影響の大きさに、新年早々驚きの連続でした。

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10年目に向け、感謝をこめてー第115回YMS

2020年01月04日 | YMS情報


  更新が大変遅くなりましたが、去る12月11日、横浜中華街、菜香新館にて第115回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催いたしました。12月は恒例の、そしてYMSとして10回目の忘年会でした。

  すっかり板についてきた「令和」最初のYMS(忘れていましたが、昨年4月まではまだ平成だったのですね)は、第2回沖縄大会も含め、以下のような内容をお届けしました。

第103回 横浜市の再生成可能エネルギー100%達成を楽しみにしています!
第104回 ”TOKYOディープ!”が見たYOKOHAMA
第105回 『横浜ウォーカー』から考える“ジモト”って何だろう?
第106回 コーヒーは楽しい!〜まだまだ広がるコーヒーの楽しみ方〜
第107回 農業の可能性は無限大、横浜農家の挑戦!
第108回 第2回沖縄大会
第109回 最新IT技術の動向とその未来
第110回 90分で理解するデジタル社会
第111回 おうちで楽しめるテーブルワイン
第112回 爽快!ジャグササイズ~脳と体の健康体操~
第113回 「歩き遍路」の楽しみ
第114回 ハレの着物 ケの着物



  また、これまでの延べ参加者総数は2,182名になりました。10周年を迎える今年も既に3月に行われる「大人の遠足」を含む多様なコンテンツを予定しておりますので、皆様お誘いあわせの上、奮ってご参加ください。

  本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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着物をもっと自由に楽しむー第114回YMS

2019年11月15日 | YMS情報


  11月13日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第114回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

  余談ですが、奇しくも今日11月15日は、着物の日なのだそうです。



  今回の講師は、鎌倉を中心に活躍していらっしゃる、着物着付師の棟方環様。お名前から推察されるとおり、日本を代表する版画家、棟方志功のお孫様でいらっしゃいます。今や我々のような中年でさえ馴染みのなくなった着物をもっと楽しむため、「ハレの着物 ケの着物」と題してお話しいただきました。

  残念ながら僕が参加することができなかったため、受講者の感想をいくつかご紹介させていただきます。




1.江戸時代の話から、最近のデニムの着物まで、着物の世界に親しみを覚えた90分の講義だった。様々な実際の着物に棟方環先生の実演、リアリティにあふれていた。生活感のある経営スタイルとしても、大いに勉強になった。男の着物というタイトルだったけれども、これからはやはり女性の時代なのだと思った。男性では、これだけの説得力で、女性を開眼させることはできないだろう。それにしても、染物が織物よりも「格が上」という感覚は、世界でも日本だけではないかと思う。絹が木綿よりも上ということなら、ありそうな話だ。絹の紐が締りが良いという話の次に、でも男性にはマジックテープの紐があるというのだから、日本独自の文化であることは確実だ。日本文化の「品格」と「独自性」、そしてなにより日本女性の「経営力」はあなどれない、そして素晴らしい。




2.棟方先生の独自視点での着物の考察(例えば今はやりのデニムの着物にブーツの組み合わせとか)は目から鱗が落ちるくらいでありました。(着物にブーツって坂本龍馬の風体を思い浮かべました。)男性の着物の着方、女性の着物の着方、身長が低い時代の古い短めの着物の着方、今どきの着物の着こなし方など90分では端折ってしるしかなかったのでもう少し長い時間で色々伺えたらと感じた講義でした。ファッション同行ではなく着物着付け同行もできるというお話でしたので、ご興味がある方は是非!!



3.単に着付け、というより、所謂「伊達男」「いなせ」そんな文化、オシャレを感じるレクだったと思います。勿論、着付けの基礎をちゃんと踏まえた上で、日常着として着られる着物の提案などもあり、和装に対する敷居が低くなった、と個人的には思っています。数年前、大枚をはたいて購入した浴衣があるのですが、あれ、来年の夏に普段使いしてみようかなw



4.男性の着物の着こなしは、スーツと同様であり、TPOに合わせて何ら難しく考えるものではない。しかし、洋服が主流の昨今、まずは入りやすい浴衣からのチャレンジで色々と試して、普段着に取り入れるポイントをレクチャーして頂いた。基本的にホテルや旅館でしか着たことがないのだが、棟方さんが実践されている、鎌倉や横浜を着物で歩く会にはチャレンジしていきたい。



  次回第115回YMSは、12月11日、横浜中華街『菜香新館』にて恒例の忘年会を開催の予定です。奮ってご参加ください。

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「歩き遍路」の楽しみ-第113回YMS

2019年10月10日 | YMS情報


  四国八十八か所巡りのことを初めて知ったのはいつ頃だったでしょうか?はっきりとした記憶はありませんが、恐らく1993年、所属していた大学の映画サークルで、松山出身の先輩が作成した自主製作映画『八十八つ』を観たのが最初ではなかったかと思います。

  さて、10月9日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第113回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回のテーマは、過去112回のジャンルにはなかった、「歩き遍路」の楽しみ。過去23年で4度の八十八か所巡礼を成し遂げられ、YMSにも何度もお越しいただいている、串間洋さんよりお話しをいただきました。



  四国八十八か所巡礼とは、人間に88あるという煩悩を払うため、弘法大師にゆかりのある88か所の寺院を巡る旅のことです。「歩き遍路」、距離にして1,122㎞。お遍路はそもそも歩くものではないかと思っていたのですが、毎年20万人~30万人と言われる巡礼者のほとんどが今や車やバスでの移動だそうです。実際に歩いているのは1%程度なのだとか。

  歩き遍路は徳島県の一番札、霊山寺に始まり、高知、愛媛、香川と巡って、最後の八十八番札である大窪寺まで40日~50日かかるそうです。88か所を結ぶ道も一筋ではなく、地図や途中の標識が頼り(現在はスマホアプリもあるようですが、充電に難がありそうです)。言うまでもなく四国は山がちですから、標高910mに至る難所もあるようです。どう考えても一筋縄ではいかないことが分かります。また、現在は道が舗装されているのでと考えるところですが、舗装されていない山道も多く、逆に舗装道路はかえって足への負担が大きくなります。何より歩いている人がほとんどおらず、都会のように至る所に自動販売機やコンビニがあるという訳でもないので、水分補給のタイミングも重要なポイントになります。宿泊は、民宿、お寺の宿坊、はては野宿など。食事やトイレはもちろん、意外にも洗濯のための洗濯機確保が重要だそうです。

  お遍路は金剛杖を持って歩きます。金剛杖は弘法大師の化身としての役割があるとされ、弘法大師と共に歩くことになるので、これを「同行二人」と言います。弘法大師の化身ですから、粗末に扱ってはいけません。宿でも杖は床の間に置くそうです。また、愛媛県にある別格霊場8番札所、「十夜ヶ橋」は、弘法大師が橋の下で野宿をしたという「十夜ヶ橋伝説」が残っており、この橋の上では杖をついてはいけないとのこと。

  さて、札所(お寺)に到着したら、次のようなことをします。

① 手水(ちょうず)を使う
② 鐘をつく
③ 参拝
④ 写経奉納(納札で代用する場合も)
⑤ 読経(一番短いもので般若心経。諳んじていても必ず経本を読む)
⑥ 納経帳(御朱印帳のようなもの)に書いてもらう
⑦ 御影(仏様の肖像画)をもらう

  この他、お遍路の醍醐味として、地元の人との触れ合いがあるそうです。地方は車移動が主流のため、確かに道を歩いている人は少ないのですが、信仰の対象であるお遍路の巡礼者に対しては、「お接待」と呼ばれる沿道住民からの様々な支援があるそうです。その形は食べ物をふるまったり、宿を提供したりとっ様々ですが、必ず巡礼者に施しをしなければならないという決まりがあるわけではなく、あくまでその時々の巡礼者と住民との一期一会の交流であるようです。お接待は巡礼者に代理でお参りを託す「お布施」の意味合いがあるため、原則として断るべきではなく、有難く頂戴して納札を1枚差し上げるものだそうです。

  健康のため、精神修養のため、自分を見詰め直すため。お遍路に挑戦する動機には様々なものがあるようですが、串間さんは心身を本質的に変容させるというよりは、洗濯してきれいにする感じだとおしゃっていました。もちろん、中には劇的な覚醒をされた方もおられるかもしれません。お遍路に参加する人は西暦2000年頃をピークに減り続けているようですが、最近ではご多分に漏れず外国人が増えているようです。

  歩き遍路に適した季節はいつか?季節的に一番良いのは、別名「花遍路」とも呼ばれる春。しかし、一般に働いている人にとって3月や4月は休みの取りにくい季節でもあります。逆に夏は夏休みがあるので、休みは取りやすいですが、当然のことながら暑さが大敵。秋も季節は良いですが、四国なので台風に注意が必要です。冬は厳しそうですが、意外と快適だそう。ただし、前述のように標高の高いところも数か所あるので、注意が必要です。また、日が短い上、民宿も冬場は休業しているところも多いので、その点も注意が必要とのことでした。

  なお、八十八か所巡りを達成することを「結願(けちがん)」、88番札所の大窪寺から1番札所の霊山寺まで戻り、八十八か所を環状に結ぶことを「満願」というそうです。

  最後に、四国八十八か所のように、巡礼地を環状に結んだあり方は珍しく、一直線上に結んだ例としては、スペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路があるそうです。



  いつか自分も八十八か所巡りをすることになるのか?それは今のところ分かりませんが、こういう時でもなければ知る機会すらない、珍しいお話をたくさん伺うことができました。いつの日か、頭の片隅に残るこのお話が甦る時が来るかもしれません。

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ボール一つで心と体を解き放つ-第112回YMS

2019年09月12日 | YMS情報


  9月11日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第112回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回は、俳優、道化師、テーブルクロス引きのスペシャリストと多くの顔をお持ちで、かつジャグリングを日本に初めて紹介しシガーボックスを広めた、ダンディGOこと三浦剛先生にお越しいただきました。テーマは、「爽快!ジャグササイズ~脳と体の健康体操~」。今週日曜日から月曜日にかけて関東地方を直撃した超大型台風15号が去り、とてつもなく蒸し暑い中、疲れた体と心にとても良いエクササイズを教えていただきました。



  初めに驚いたのが、先生の今年59歳とは思えないほどのお若さ。見た目もさることながら、体重も20代の頃をキープしているそうです。その秘訣が、ご本人によればジャグリングを応用した健康体操、ジャグササイズなのだそうです。

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ダンディGO
オレンジページ


  ジャグリングとは、一言で言えばボールやモノを使ったお手玉。しかし、一見単純に見える動作には、手足バラバラの動き、正しい姿勢、バランス、リズム、視覚、聴覚、触覚、空間感覚など脳を刺激する要素が数多く含まれています。つまり、ジャグリングは脳に良いということが言えるのです。

  実際、英国の科学雑誌『ネイチャー』に掲載された記事によれば、ドイツのレーベンスブルク大学にて、2004年、被験者に3カ月間ジャグリングを行わせたところ、大脳皮質の視覚を司る領域が強化されたということです。また2009年に英国オックスフォード大学で行われた実験でもジャグリングが脳の高次機能を司る領域、白質を強化することが確認されているそうです。1990年代まで、脳は年齢と共に衰えるというのが常識とされてきましたが、ここ20年の脳科学の発達により、脳は可塑性を持っており、成人してからも発達することが明らかになっています。

  その他にも医学的に見て、複数の動作(デュアルタスク)を同時に行うジャグリングは前頭葉、末梢神経を刺激し、内臓の血行を良くし、リズミカルな動きがセロトニンの分泌を促すなど、心と体に良い効果が期待できるそうです。



 ジャグリングにはジャグリング専用のボールを使います。「第110回YMS」で登場したボッチャのボールに似ていますが、粟を合皮で包んだ柔らかいボールは、ただ握っているだけでもリラックス効果がありそうです。しかし、いきなり複数のボールを使うというのは敷居が高いので、今回はボール1個のみを使った基礎中の基礎の動作を行いました。

1.トス…ボールを上に挙げ反対の手で捕球する
2.パス…トスを水平にした動作
3.腕の下まわし…ボールを反対側の腕の下から投げ上げ、反対側の手で捕球する
4.クロウ…トスしたボールを反対側の手で上から掴むように捕球する
5.スイッチ…上半身を左右にひねりながらパスを行う。その際、投げた方と反対側の足を一歩前へ踏み出す
6.脚の下まわし…ボールを反対側の腿の下からトスし、反対側の手で捕球する

  これら手の動作を胸の前、腰の後ろ、顔の前、頭の後ろなどで行います。さらに足を前後に踏み出すという足の動作が加わります。これら一つ一つは単純な動作ですが、組み合わせることにより無数のバリエーションが生まれます。



  普段あまり行わない体の動きに、最初は戸惑い、笑ってしまう位ポロポロとボールをこぼしていた参加者も、たちまち慣れてリズミカルな動きができるようになりました。捻る、回す、伸ばすといった体の動きは、凝り固まった筋肉をほぐし、血流が良くなり、体幹から熱くなっていくのが分かります。また、上手くやるためには頭で考えるのではなく、体に心の目を向けなければなりません。集中力が高まり、酸素が行きわたったのか脳が晴れ晴れとしていきました。その結果、「部屋が明るく見えるようになってきた」とおっしゃる方もいらっしゃいました。



  最後は、ペアまたはグループになって、以前野原秀樹先生の研修でも行った「わたし・あなた」ゲームをボールを使って行いました。複数で行うと、相手への配慮や呼吸を合わせるなどさらに複雑な認知機能が求められます。個人にとって良いばかりでなく、場の雰囲気を盛り上げ、コミュニケーションを促す、チームビルディングの効果も期待できる一石二鳥のエクササイズでした。

  老若男女を問わず行うことができ、場所や時間を選ばないジャクササイズ。その応用範囲はかなり広そうです。

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おうちワインと言ったって、なかなか-第111回YMS

2019年08月26日 | YMS情報


  この日46歳の誕生日でもあった8月21日、今年で7回目となる恒例のワインセミナー(第111回ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー、通称YMS)を開催しました。いつも会場をご提供下さっている馬車道十番館様、ならびにワインをご提供下さっている横濱屋様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 今年も41名の方にお越しいただき、大盛況でした。また、これでYMSの累計参加者数も1,200名に達しました。

【過去のワインセミナーの様子】
2018年:ワインを飲んでいる時間を無駄な時間だと思うな。その時間にあなたの心は休養しているのだから
2017年:酷暑の中でさっぱり飲めるワイン特集
2016年:世界が認める勝沼甲州ワインを軸にした日本ワインとフレンチのマリアージュ
2015年:夏に合うワインと料理のマリアージュを楽しむ
2014年:注目のジャパニーズ・ワインを楽しむ
2013年:手ごろなワインと料理のマリアージュを楽しむ



  さて、今年のテーマは「おうちで楽しめるテーブルワイン」。ワインをもっと身近に、気軽に楽しんでいただけるよう、カジュアルな銘柄が揃いました。あくまでもセミナーなので、まずはソムリエの片桐様より、今回のワインについて解説がありました。



  今回のワインは、以下の通りです。小売価格にしておおよそ2,000円以下のワインかと思いますが、テーブルワインとはいえブドウ品種の個性がしっかりと味わえる、楽しいワインが揃いました。

ジョージ・ヴィンダム・シラーズ(オーストラリア)
ジェイコブス・クリーク・リースリング(オーストラリア)
ガンチア・アスティ・スプマンテ(イタリア)
ガンチア・ポリッイアーノ・キャンティ・コッリ・セネージ(イタリア)
フォルタン・リトラル・メルロー(フランス)
フォルタン・リトラル・グルナッシュ・ロゼ(フランス)
マトゥア・リージョナル・ピノ・ノワール・マルボロ(ニュージーランド)
マトゥア・リージョナル・ソーヴィニヨン・ブラン・マルボロ(ニュージーランド)
ラ・ロスカ・ブリュット(スペイン)
ラ・ロスカ・ロゼ(スペイン)



  続いて料理の解説。もちろん、料理も今回のワインとのマリアージュを考えて下さっています。例えば、ガンチア・アスティのような甘口のスパークリングであれば、塩気のある生ハムに合わせるとか、シラーズやメルローのように黒ブドウの果実味がしっかりしたワインであれば、デミグラスソースのミニハンバーグやローストポークに合わせるといった具合に。10年以上前になりますが、ワインのブドウ品種を覚えるため、家でテイスティング・ノートをつけていた時があります。その時一番楽しかったのは、ワインと料理の相性がぴったり合った時ですね。今回の料理の中に、「これなら家でもできそうだな」というヒントがたくさん隠れていました。

生ハムのマリネ
パプリカのムース
ホタテと小エビのサラダ
魚のポワレとムール貝
チキンのトマト煮
ジェノベーゼ・ペンネ
パエリア
フルーツ盛り合わせ
ココナッツプリン



  なお、来年2020年のワイン・セミナーは、8月ではなく7月8日に開催することが決まりました。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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出現する未来-第110回YMS

2019年07月11日 | YMS情報


  7月10日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第110回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

  今回の講師は、株式会社CAC Holdings特別顧問の島田俊夫様。テーマは、前回に続きIT分野、「90分で理解するデジタル社会」と題してお話しいただきました。

  島田さんの株式会社CACの設立は1966年。戦後に起こった情報通信という分野において、しかも日本が敗戦国だったことを考えればなおさらですが、かなりの古参と言えます。そんなIT業界に長年身を置きながら、日本の高度成長、低成長、バブル経済とその崩壊、その後の失われた30年を見続けてこられた島田さんから見て、デジタル化の進行に対する日本社会の危機感の薄さの背景はどこにあるのかと言えば、「依然として過去の栄光から抜け出せないのではないか?」というご意見です。

  例えば、今年4月を以て平成という時代が終わりましたが、平成元年、世界の時価総額ランキングで日本企業は上位20社の実に7割を占めていました。しかし、直後にバブルが弾け、産業構造も変わった30年後、今や上位20社に日本企業は1社も入っていません。にもかかわらず、一般的にはさすがに”Japan As No.1”とまでは言わないまでも、未だ先頭争い位はしているんと思っているのではないかという見立てです。さらに例えるなら、現在、プロ野球のセリーグは巨人が1位、横浜が2位ですが、2位は2位でも9.5ゲーム差も離されているじゃないかいうような感覚(因みにこれは僕の比喩であって、島田さんがそうおっしゃったのではありません)。

  とはいえ、デジタル化は既に我々の生活のあらゆる側面を急速に変え始めています。例えば、タクシーを1台も所有していないにもかかわらず、アプリケーションとネットワークだけで世界最大のタクシー会社となったUber。このようなサービスはアメリカや中国のみならず、東南アジア諸国も日本より先を行っています。

  Uberの成功例が示すものは、IT技術によって生活者、消費者のニーズ、消費パターンの変化により適応できた者が、膨大な資本やインフラを持つメーカーやサービス提供者を淘汰し得る社会が出現したということです。それは我々の生活を否応なく大きく変えていきます。ゆえにトヨタ自動車は、既に自らを「モビリティサービス・プラットフォーマー」であると位置づけ、自動車メーカーからの脱皮を宣言しているのです。



  これは島田さんが現地を訪れてのお話ですが、バルト三国の一つ、人口132万人程度(因みに川崎市の人口は147万人です)の小国エストニアでは、IT技術を行政に活用する「電子政府」への取り組みが進んでいます。つい先日、福岡市に本籍がある僕は、身分証明書を取り寄せるため福岡市役所のHPからダウンロードした書式より必要書類を手書きで作成し、封筒に返信用封筒と切手を入れ、郵便局の窓口で小為替代を払い、数日待ってようやく身分証明書が家に届きました。しかし、エストニアでは既に行政サービスの大半がオンライン上で完結するのだそうです。できないのは結婚・離婚と不動産取引ぐらいだとか。

  また、これは僕も上海で経験したことですが、上海の現金流通率は5%。町の自動販売機にもお金の投入口自体がありません。同行していた年輩の中国人は、「先日家にスマホ忘れてきて、コインパーキングから車を出そうとしたら、現金精算ができなくて困った」と話していました。空港のレストランでも、レジでお金を払う人はいません。テーブルにQRコードが貼ってあり、そこにスマホをかざせば清算終了です。無人コンビニも普及しつつあるそうです。中国のデジタル化の背景に監視国家があろうと、つい先日騒ぎになった7PAYの脆弱なセキュリティが露呈しようと、否応なしにIT技術は我々の生活を大きく変えていくのだということは認めざるを得ません。

  次に、何かと話題のAIについて、その歴史と今現在どのようなことまでが可能になっているのかについてお話がありました。例えば2016年、囲碁でAIがプロ棋士に互先で勝利し話題になりました。そのたった2年前まで「AIがプロ棋士に勝つには10年かかる」と言われていたのです。この例一つとっても、技術の進歩がいかに早いかが分かります。

AIが作曲した、Taryn Southernの”Break Free”。


  ポケモンGOなどのAR(拡張現実)も、さらに進化すればディズニーランドやUSJなどはどうなってしまうのかなという気がします。



  最後は、お世話になっている清水建二先生も携わられた、勘定認識AIによる動画分析サービス「心sensor」のデモに参加してみました。AIが判定した、僕がプレゼンしている時の笑顔のスコアは何と18点!「表情自体が動いていません」という改善アドバイスをもらいました。そう、まさにその通りなのです。自分でもたまに「顔面がマヒしているんじゃないか?」と思ったりします。

 結びに、島田さんによる「デジタル社会を生き抜く心構え」を抜粋します。

1.デジタル社会の本格到来はあと7年くらい?
2.馬を速くしていくだけなら、淘汰される
3.使った分だけ支払いたい消費者は増加する
4.明日を今日の延長にしない
5.やりたいことを定めたら、実現のために他者と組む



  番外編。CACグループが支援している、ボッチャというカーリングに似たパラスポーツを紹介していただきました。意識すれば目に留まるもので、今朝町内会の掲示板で、早速ボッチャ大会開催のお知らせを見ました。

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最新IT技術の動向とその未来-第109回YMS

2019年06月13日 | YMS情報


  6月12日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第109回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。



  今回の講師は、株式会社野村総合研究所の吉田吉徳様。今回のテーマは、超アナログな「ぼろ屋」の世界に生きている僕にとって、あまり良く分かっていない分野。しかし何人も最早無縁でいることはできないIT技術の世界。1時間半という限られた時間の中で、最近特に重要なキーワードのいくつかについてお話しいただきました。タイトルは、「最新IT技術の動向とその未来」

  IT技術の発展が全ての人々にとって無縁ではいられないことの一つの分かりやすい表れが、現在世界経済の大きなリスクとなっている米中貿易摩擦です。これはITの観点から見ると、通商問題の枠を超え、第5世代のIT技術を巡る米中の覇権争いとして捉えることができます。IT技術は経済的、軍事的優位性の基盤となることから、まさに冷戦終結後の世界の新たな覇権をめぐる争いということができるでしょう。

1.最新IT技術の動向

  今回取り上げられた、何だかわからなくてもよく耳にするキーワードを順にご紹介します。初めに、RPA(Robotic Process Automation)。読んで字のごとく、ソフトウェアロボットによる知的生産業務の自動化のことです。従来、人間がコンピュータの画面上で行っていた幾つもの業務プロセスを、ロボットが自動処理したり情報収集したりして代わりに処理していきます。今回、デモ動画を見ましたが、本当に会社の経理業務など全て自動でできてしまうような感じです。尤もRPAにもまだ苦手な分野があり、例えば手書き情報の読み取りであったり、意図の理解が必要な業務であったり、プロセス変更が頻繁な業務などには適していないようです。

  5G(5th Generation)、前述の第5世代の通信規格のことです。この分野は、実は中国が一歩先を行っており、この分野を支配した者があらゆる産業において優位に立つことから、アメリカとの摩擦が激化しているのだそうです。簡単に言うと、現在の4Gと比べ、通信速度において20倍~100倍、通信遅延が10分の1、同時接続数が100倍となることから、自動運転や医療分野などでのIT技術の活用が飛躍的に高まることが期待されています。

  IoT。最初見た時は絵文字だと思っていましたが、Internet of Thingsの略です。通信により機器と機器がやり取りすることにより、我々の日常生活の身近なところまで自動化が可能になります。例えば、雨が降りそうだったら洗濯物を自動的に取り込んでくれるとか(その前に、「洗濯物を干す」という行為の方が無くなりそうですが…)。そしてこれらを実現、普及するための安価な通信ネットワークであるLPWA(Low-Power Wide-Area Network)。

  IoTは既に本格的な普及期に突入しており、我々の生活のあらゆる分野に急速に浸透してきています。そうした先にどのような未来が待っているのか?それを予言したのが、ジェレミー・リフキンの『限界費用ゼロ社会』です。

限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
柴田裕之
NHK出版



2.IT技術発展の先にある未来


  「限界費用」というのは経済学の用語で、生産量が1単位増加した時の生産費用の増加分のことを言います。一方、生産量が1単位増加した時の収益の増加分のことを「限界収益」と言います。理論上、限界費用<限界収益であれば利潤が増える余地があるということになります。ということは、利潤が最大化するのは、限界費用=限界収益の時です。

  限界費用ゼロとは、IT技術の発展によりあらゆる生産をITが代替することで、費用が極限まで下がる、つまり「無料化」する現象のことです。そうすると、究極的にあらゆる企業は利益を生み出せなくなり、資本主義のシステムそのものが停止するということになります。

  リフキンが2014年にこの説を打ち出した時、驚きをもって迎えられたようですが、個人的にはオーストリアの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーターが100年近くも前に言っていたことと同じことであるように思えます。シュンペーターも完全競争が想定する市場均衡は、市場経済の停滞であり、企業の利潤が消滅すると考えていました(元の理論が同じなので当然です)。また、その過程で経済を寡占した巨大企業(現在のGAFAがそれにあたるのかどうか分かりませんが)は官僚組織化して活力を失い、資本主義はやがて社会主義へと移行していくとも予言しました。資本主義の原動力である創造的破壊は、結局また限界費用を下げ、停滞へと向かわせることになりますので、そこには本質的にパラドックスが存在すると言えます。

  リフキンは、そのような未来においては、協業型コモンズでのディープ・プレイ(市場ではなく、シビル・ソサエティで人々が才能や技能をシェアし、社会関係資本を生み出すこと)が重視され、社会関係資本の蓄積が市場資本に劣らぬほど重視されると述べています。シュンペーターもまた、市場経済が停滞する世界においては社会福祉や公共経済などの分野に革新の機会を求めるべきであると述べていました。実際その様な世界が訪れるのかどうか分かりませんが、ひょっとすると人類が20世紀に経験したのとはまた違った形の社会主義が現われるかもしれないと考えるのは、ナイーブすぎるというものでしょうか。



  さて、番外編です。最後は、吉田さんが趣味でされているエアロビクスの披露がありました。

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