4月14日、横浜市庁舎が入っているラクシスフロント2階のTSUBAKI食堂さんをお借りして、第125回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。
今回のテーマは「塩のおはなし」。一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事、青山志穂様に、身近でありながら知られていない、塩の奥深さについてたっぷり90分お話しいただきました。また、今回は試食を伴うということで、TSUBAKI食堂さんに会場のご協力をいただきました。お塩とTSUBAKI食堂さんの共通点を一言で表すとすれば、「素材・健康・地域を活かす」と言えるのではないでしょうか。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
さて、今回のお話しの要点をまとめさせていただきます。
1.塩の基礎知識
ドレッシングはその名の通り、食材に別の味を纏わせる(ドレッシング)するもの。これに対して、塩は食材が本来持つ味を引き出す。また、調味料ではなく直接塩を用いることで、かえって摂取塩分量を調節することができる。食材の力を引き出すことで、食が豊かなものになる。また、塩には食材に味をつけるだけでなく、蛋白質を溶かす(逆に凝固する)、菌の繁殖を抑制する、水分を抜くといった働きがある。
塩は海水塩、岩塩、湖塩、地下海水塩、再製加工塩、藻塩に分類される。日本では海水塩が一般的だが、世界的に見れば60%が岩塩。海水塩はむしろ少数派。日本だけでも流通する塩は4,000種類以上にも上る(沖縄だけで100種類ある)。日本で流通する塩は、イオン交換膜塩か再製加工塩。うち、前者が8割を占める。「精製塩」は前者のことだと誤解されていることが多いが、実は後者に属する一商品名を指す。
日本では岩塩が取れないので、海水から塩を精製する様々な製法が発達した。濃縮、結晶それぞれの工程でも様々な製法がある(濃縮する釜ひとつとっても、鉄釜、土釜など様々)。
また、塩の結晶は基本的に立方体だが、結晶の成長条件(温度や濃縮の仕方)によって様々な形を形成する。その結晶の形が、塩の食感に影響を与える。
2.塩の味わい
塩の味は産地が決めると思われがちだが、ほとんどは製法によって決まる。塩の味はミネラルが決定するが、同じ原料でも生産者の意図次第で全く違った味わいを見せるのが塩。
ナトリウム・・・しょっぱさ
マグネシウム・・・苦み
カリウム・・・酸味
カルシウム・・・甘み
その他・・・雑味(味に厚みを与える役割を果たす)
上記のように、それぞれのミネラルが味の要素となるので、成分表示からどのミネラル分が多いかなどを見ることによって、自分好みの塩を選ぶことができる。
また、前述のように結晶の形や大きさも味の決定要因となる。例えば粒が小さければすぐ溶けるので、よりしょっぱいという印象を与える。逆に粒が大きければ、よりまろやかに感じる。
さて、そこで実際に塩を味わってみようということで、食塩、ヒマラヤ岩塩、竈方の塩を味わってみました。どの塩が好みでしょうか?その時に美味しいと思う塩によって、身体が求めている不足しているミネラルも分かるようです。例えば、ヒマラヤ岩塩であれば鉄、竈方の塩であればマグネシウムといった具合に。
脱線すみません。マグネシウムというとどうしても思い出してしまうので。秘密戦隊ゴレンジャーの必殺技、「ゴレンジャーハリケーン、レンズカバー エーンド マグネシューム!」
3.塩と健康
人体には体重(㎏)×60%×0.9%の塩分が含まれているのが正常。例えば体重60kgsの人であれば、324g。したがって、夏場の発汗には塩分の補給が必要であるし、水分の摂り過ぎによる塩分濃度の低下にも注意が必要。
塩分は高血圧の原因と広く認識されているが、実は塩分摂取と高血圧との因果関係はハッキリとしない。大切なのは適切な塩分摂取(適塩)。適塩を測る目安としては、体液と同じ濃度の食塩水(0.9%)を冷蔵庫に常備しておき、飲んだ時にしょっぱく感じる(足りている)、無味または甘く感じる(不足している)かで診る方法がある。また、前述の通り、塩は自分で適量をコントロールできるように使うのがコツ。例えば、食べ物を塩につけるのではなく、自分で塩をつまんで食べ物のほうに加えると言ったように。
4.塩と食材の相性
同化・・・同種の味を混合した際に生じる相乗効果のこと。例えば、ステーキとクレソンと岩塩の組み合わせ(鉄分による同化)
対比・・・異なる味を少量加えることで、主たる味が引き立つこと。例えば、塩がぜんざいの甘みを引き立てる。
抑制・・・二種類の味を混合した際、一方または両方の味が弱められること。意外なことに、酸味の強いコーヒーに少量の塩を加えるとまろやかになるのだとか。
ここで再び、先ほどの三種類の塩で今度はミニトマトと春キャベツを味わってみました。好みは人それぞれだと思いますが、塩によって驚くほど野菜の味に変化が感じられました。特にトマトですが、塩をつけただけなのに、昆布だしのような旨味が感じられました。
天婦羅にはパウダーソルト、ステーキには粗塩と、経験的にも食材と合う塩のタイプがあるのは分かりますが、食材と塩の相性を下のようなマトリックスで理解すると分かりやすいようです。なお、米は分類上右下の緑の象限に属するとのことです。
※配布資料より引用。
今回は食事をしながら講義を受けるという、今までにない形式で行いました。TSUBAKI食堂よりご提供いただいた品書きは以下の通りです(カッコ内は生産者)。また、写真は久しぶりにフォトチャンネルにまとめましたので、そちらもご覧ください。
・春セロリのおひたし(港北区堤國雄様)
・川エビの唐揚げ
・苅部ネギのマリネ(保土ヶ谷区苅部博之様)
・ど根性サラダ
・お刺身盛り合わせ<三崎まぐろの大トロ、赤身、わらさ、鰆、たこ>
・横浜野菜の天婦羅
-こごみ、タラの芽(港北区堤國雄様)
-スナップいんげん(磯子区苅部弥生様)
-新玉ねぎ(保土ヶ谷区矢野輝様)
・たけのこの釜めし(磯子区苅部弥生様)
・あら汁
初めての試みでしたが、充実したセミナーになりました。青山先生、椿さんありがとうございました。
過去のセミナーレポートはこちら。
TSUBAKI食堂
神奈川県横浜市中区本町6丁目50−10
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繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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