嘘の吐き方(うそのつきかた)

人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。

わどを思い出してみる -その1-

2005年05月06日 15時29分40秒 | Weblog
あいつは言ったんだ
「この煙草の箱の中で、この内側で暴れ回る事で、この煙草の箱は壊れる」
ってそう言ったんだ。

おいおい勘弁してくれよ
それはお前が毒だと知りながら、
ひたすら煙草を吸い続けている、意志の弱い人間だから、
だからそんなたとえ話が出てくるんだろう、
僕はそう思った。
いや、その時はそう思わなかったんだけど、
今思い出すとそう思ったけど、言葉がまだ生まれてなかったんだ。

だってあいつは、一度だって自分の言った事を守らなかったし
そして自分はいつも一生懸命だって、いつだって俺は頑張ってるんだって
そう演技してまわるから、
自分の世界でぐるぐるぐるぐる暴れ回ってるつもりだから、
だからよっぽど、自分の意志の弱さを認めたくないんだろうって
そう思ったんだ。

だって僕は、デリダの本なんて読んだことは無いし
デリダに会ったこともないし
デリダが本当に居たかどうか、それさえも怪しいと思っているけれど
思ってはいるけれども、
とにかくそう、
僕はデリダの脱-構築がどんなものかわからなかったにせよ、
あいつの言った脱-構築は、たぶんデリダとは何の関係も無いんだ。

だってあいつは、自分の中にあるデリダを勝手に褒め称えているし
しかも自分がデリダの話をした時に、
僕がデリダの話をすると怒るから、
「お前はデリダをわかってない」ってそう言うから
だから僕はあいつこそがデリダをわかってないって事に、
その事にすぐ気付いたんだ

僕はデリダを知らないから、
わかってるとかわかってないとか、そんなの僕には関係ないんだ。
ただ、僕はあいつの脱-構築は嘘だって、
そんなの嘘っぱちだって、指摘してやりたかったんだ。
だけどあいつはそれを僕に言わせないように、
必死で話をはぐらかしてた。
だからその時の流れは、意味のない愛想笑い合戦になってた。

僕は洗濯機の話をしようかと思ったんだ。
洗濯物が洗濯機の中で暴れ回っても、洗濯機は壊れない。
洗濯機はもっと別の、大きい力と、小さい力で、
あるいは力とか関係なく、洗濯機が作られたという、
その事実化によって、事実は崩壊するんだ。
洗濯機が作られた時、洗濯機が壊される歴史が生まれるんだ。
だって洗濯機なんてものは、もともと此処には無かったんだからね。

だから僕は、イデオロギーを壊すために今を暴れ回る、
そのやり方が気に入らないって、
その話をしたかったんだ
だから僕はその時、構造主義を壊す事よりも、
構造主義を忘れる事の方が、
日本語を忘れる事で、日本なんてどうでもいいと思う方が、
そういうやり方の方が、
よっぽど世界を壊せるんじゃないのか?
って、そういう話をしようかと思ったんだ

もちろんやっぱり、そんな話は無駄だったけどね。
あいつはガツンとした現実感が好きだとか、
そんな話をしたがるから、
だからたぶん、俺の話を聞く気が無いんだろうね
もちろん僕にだってあいつの話を聞く気は無いんだけどさ。

「俺は無口な性格だ。」と言いながら毎日しつこく話しかけてくる、
あいつのやり方は、どうも僕にはよくわからなかったし、
カッコツケで「じつは俺には過去なんてない、過去の問題は全部、俺の今の問題だから」
と言いながら
自分が過去に話した内容や固有名詞を既にすっかり忘れている、
その自己矛盾を、指摘するたびに、あいつは何故か激怒したから。

俺には現実感なんて無いんだ、
あるのは現実の痛みだけなんだって
現実なんか信じられないし、信じたくもないんだって
僕は何度もそう言ったし、書き続けてきたのに
何故奴は現実の社会構造を僕にしつこく押しつけてきたのか、
それはいまだにわからない。

つまり僕には、彼の動機はわからないんだ。
新しい言葉を作るのが生き甲斐だと言って、
僕に小説を書かせたがっていた、あいつの動機は僕にはずっとわからないんだ。
そしてまた、言葉で周り中を傷つけていて、
「あんまり俺を傷つけないでくれ」と必死で頼む、その歪んだ動機がわからないんだ。

だからたぶん、あいつの言ってることはほとんどが嘘なんだ。
「言葉に命を賭けている」と言いながら、
「俺は最近君のせいでずっと鬱で、これ以上傷つけられると自殺するかもしれない
だから俺を傷つけないでくれ」と懇願するその様子は、
どう見ても、弱者の惨めな抵抗だったから。
「はにゃん、ごめん、俺はもっと君に色々してやりたかった、だけど俺は精一杯やったんだ。」
と泣きながら僕に謝ったけど、
そんな事を謝られても、そんなの全然意味ないと思った。
だからもちろん許す気にもなれなかった。
僕はもともと、彼には心を許していないのだから。

ただ、僕が気になっているのは、
言葉に命を賭けているならば、彼はどうして死なないのか?
という奇妙な疑問だ。

あるいはまた、小さな疑問点だ。
僕に自分の発言した言葉が伝わらなかった事を認めて後悔しているならば、
彼はとっくに死んでいるべきなのだ。
なのに彼はまだ生きているという事は、
命懸けであった事がもともと嘘であるか、
あるいはまだ、僕に伝える言葉が尽きていないのか。

彼はもうすぐ僕への言葉が尽きると書いた。
そしてそれが「俺にはわかる」と。

だったらなおさら、彼が生きている事に対して、僕は疑問に思ってしまう。
そして僕が答えを出さないままで、
暫定的に結論づけると、彼は僕の事をまだ諦めていないのだ。
そしてまた、その事が僕にとって巨大な迷惑行為であると、気付いていないか、
その事から目をそらしているのだ。

だから僕は一言だけ、今の彼に言ってやろうと思う。



「煙草吸うの、やめた方がいいよ」