法律の周辺

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買収防衛策の差し止めに係る最高裁の判断について

2007-08-07 20:35:42 | Weblog
ブルドックソース:スティール側の抗告棄却 最高裁 MSN毎日インタラクティブ

 新株予約権の行使・取得に係る別異取扱いが株主平等原則に反するとの主張の判断にあたり立てられた規範は次のとおり。

 株主平等の原則は,個々の株主の利益を保護するため,会社に対し,株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務付けるものであるが,個々の株主の利益は,一般的には,会社の存立,発展なしには考えられないものであるから,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の存立,発展が阻害されるおそれが生ずるなど,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には,その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても,当該取扱いが衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。そして,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,最終的には,会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものであるところ,株主総会の手続が適正を欠くものであったとか,判断の前提とされた事実が実際には存在しなかったり,虚偽であったなど,判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきである。

 次に,買収防衛策がいわゆる「有事導入型」である点に関しては次のとおり判示。

 本件新株予約権無償割当てが,株主平等の原則から見て著しく不公正な方法によるものといえないことは,これまで説示したことから明らかである。また,相手方が,経営支配権を取得しようとする行為に対し,本件のような対応策を採用することをあらかじめ定めていなかった点や当該対応策を採用した目的の点から見ても,これを著しく不公正な方法によるものということはできない。その理由は,次のとおりである。
 すなわち,本件新株予約権無償割当ては,本件公開買付けに対応するために,相手方の定款を変更して急きょ行われたもので,経営支配権を取得しようとする行為に対する対応策の内容等が事前に定められ,それが示されていたわけではない。確かに,会社の経営支配権の取得を目的とする買収が行われる場合に備えて,対応策を講ずるか否か,講ずるとしてどのような対応策を採用するかについては,そのような事態が生ずるより前の段階で,あらかじめ定めておくことが,株主,投資家,買収をしようとする者等の関係者の予見可能性を高めることになり,現にそのような定めをする事例が増加していることがうかがわれる。しかし,事前の定めがされていないからといって,そのことだけで,経営支配権の取得を目的とする買収が開始された時点において対応策を講ずることが許容されないものではない。本件新株予約権無償割当ては,突然本件公開買付けが実行され,抗告人による相手方の経営支配権の取得の可能性が現に生じたため,株主総会において相手方の企業価値のき損を防ぎ,相手方の利益ひいては株主の共同の利益の侵害を防ぐためには多額の支出をしてもこれを採用する必要があると判断されて行われたものであり,緊急の事態に対処するための措置であること,前記のとおり,抗告人関係者に割り当てられた本件新株予約権に対してはその価値に見合う対価が支払われることも考慮すれば,対応策が事前に定められ,それが示されていなかったからといって,本件新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない。


記事にもあるとおり,スティール・パートナーズが濫用的買収者にあたるかについては判断せず,「本件仮処分命令の申立てを却下すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。」とした。

判例検索システム 平成19年08月07日 株主総会決議禁止等仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件


会社法の関連条文

(株主の平等)
第百九条  株式会社は,株主を,その有する株式の内容及び数に応じて,平等に取り扱わなければならない。
2  前項の規定にかかわらず,公開会社でない株式会社は,第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について,株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
3  前項の規定による定款の定めがある場合には,同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして,この編及び第五編の規定を適用する。

第二百四十七条  次に掲げる場合において,株主が不利益を受けるおそれがあるときは,株主は,株式会社に対し,第二百三十八条第一項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。
一  当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合
二  当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合

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