老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『カポーティ』

2006-10-14 17:15:19 | 映画
朝日新聞の夕刊に毎月1回掲載される沢木耕太郎氏の映画批評、「銀の森へ」で紹介(10/2)されていた映画。銀座の1館だけで上映されていたが、今日から拡大されたようだ。休日に多摩川を越えて出かけるのには余程の決心が要るワタシとしては大変ありがたい。

「ティファニーで朝食を」などで知られる作家、トルーマン・カポーティが田舎町で起きた一家4人惨殺事件の犯人の心の闇に迫ろうとする小説「冷血」を書く過程で、犯人の若者に近づき小説のネタをうまいこと引き出したものの、やがて逆に若者の死刑がなかなか執行されないことで追い詰められていく。このあと、カポーティはアル中になって一作も書かずに死んでいくわけだが、沢木氏も書いている通り、途中のカポーティの描き方がやや物足りないものの、真の表現者としての作家の苦しい生き方を十分に見せてくれている。

日本でも宮崎勤とか永山則夫とか、死刑囚に近づいて作品のネタにしようというのはどこでもよくあることで、作家にとって死刑囚はよっぽど魅力的な存在なんだろうということがよくわかる。ただ、カポーティの場合は自分自身が子どもの頃から親からも疎外されて孤独な人生を歩んできたことや、しゃべり方で明らかなようにカンペキなオカマであることから、死刑囚の若者への同情がつのり、単なるネタとして利用しきれなかったことが悲劇だったということだ。
苦しい映画と対照的に、静かな風景が美しく印象的。

主演のフィリップ・シーモア・ホフマンはこの作品で第78回アカデミー賞主演男優賞を受賞した。
監督はベネット・ミラー。

10/14、川崎 チネチッタ
2005年 アメリカ映画


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