告白すれば小生は、魔法やら魔術使うファンタジー系の小説&映画は苦手な訳です。従って、あの「ハリーポッター」シリーズはもう全然ダメ。
一応観るには観たんですが、率直に言って“何が面白いのか”てんで理解できません(ファンの人はすいません)。
もっといえば、もう完全に“別世界の神話”みたいなヤツはもっと苦手。「ロード・オブなんとか」とか「ナルニア国なんとか」いうタイプの物語。いわゆる「ハイファンタジー」というジャンルは(あくまで私個人の)生理的に合わないんですな。
SFでもファンタジーでも、現実世界に即したお話しじゃないと、白けてついていけなくなっちまうんですなぁ。
さて、話がだいぶそれちゃったんですが、その科学的合理主義者の権化みたいな人がかのシャーロック・ホームズその人なんですな。
コナン・ドイル卿が生みだした、この知の巨人は現代でもあらゆる作家から映画や小説でたびたび、新作が発表され、いわゆるそのパスティーシュ(模倣作品)群は、今や一つのジャンルと言えるでしょう。
で、この間、娘の少女漫画買い物に引っ張り回されて、偶然某本屋で発見したのがコレ。今、多分どこでも平積みされてます。
「シャーロック・ホームズ 神の息吹殺人事件」 ガイ・アダムズ著
なんだか、聞いたこと無い作家だけど裏表紙読むとなんだか面白そう。
・・さて、肝心のお話はと言うと・・・
19世紀末ロンドン。 例によって語り手は愛すべきジョン・H・ワトソン博士。愛妻メアリーを亡くして再びベイカー街の古巣に戻ってきてホームズとの共同生活始めた矢先、“心霊医師”を名のるサイレンス博士からある悪霊の「予告殺人」の情報がもたらされるんですな。
そして、予告殺人の3番目にホームズの名があるのですが、合理主義者ホームズは当然この“心霊医師”を胡散臭いと思うワケ(当然!!)、冷たく追い返します。
ところが、ついに予告殺人の一番目に名を連ねる貴族青年の謎の死が起こるんですなぁ。
しかも、そのロンドンの真ん中で朝に発見された遺体は全身あざざらけで膨張し、体中の骨が砕けてる異様な死にざま。さらに積雪ある晩だったにも関わらず、周りには第三者の足跡一つも無い、まさに大空間の密室殺人事件状態。・・・で、ここに至ってついに我らがホームズが、相棒ワトソンと共に、この黒魔術っぽい殺人事件に挑んでいくのですが・・・・
・・・・ね、面白そうでしょう。 ホームズファンならワクワクするはず。
小生も、で、ついつい買っちゃったわけなんですが、昨日報告した通り、左手薬指骨折につき日曜午後はもうこの小説一気読み!!
・・・と、ところが・・・読み進めていくうち、何だか途中から雲行きが怪しくなっていきます。
と、いうのも、登場人物である、前述のサイレンス博士や、トマス・カーナッキなど、当時のオカルト小説の登場人物たちまで登場し、途中からもう完全に、心霊オカルト小説に変質していきます。ホームズの相棒、ワトソンですら、列車移動中エクトプラズムを目撃するに及んで、もう完全に信じちゃう始末。
で、物語後半はホームズが「バスカヴィル事件」の時のように戦線から離脱(遠くから観察&捜査)するため、ワトソンとほかの霊媒師やら魔術師やらと、悪の霊能力者と戦う、もう完全な“オカルト小説”に変質してしまいます。
ぶっちゃけ小生、この辺りから、もう読むの何度止めようかと思ったのですが、なんとか我慢して読み進めました。 もしこれがワトソン博士の口から語られなかったら、クリーチャーと西洋の陰陽師が魔法やら魔術を駆使してのバトルなんかアホ臭くて読み進めれるものではありません。
まさかこの連続殺人事件も悪霊クリーチャーの仕業だったってことは無いようなぁ?・・と不安になりつつ読み進めていくと、最後の最後に、我らがシャーロック・ホームズが登場!!
で、ついに・・・ついに、ホームズの口から事件の全容が語られます。しかも、合理的かつ科学的な!!
まぁ、ここからちょっとネタバレチックになるので、未読の人は読まないでください。もちろん決して犯人らの名前は言いませんが。
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・ポイント
1.まず、物語の構成自体は、あのゴシック長編「バスカヴィル家の犬」と同じ。
つまり、物語の主人公は明らかにワトソン博士自身であり、彼の冒険譚と言えましょう。
2.これだけの、壮大な長編でありながら、トリック自体は、短編「悪魔の足」とほぼ同じ。
つまり、悪霊も魔法も毒というか薬物による幻覚症状がもたらす“夢”だったわけ。
3.で、疑問に思ったのが、それでもホームズが「心霊現象」を認めてしまうこと。
何故? このおかげで、この小説自体が推理小説なのか、オカルト小説なのか曖昧に。
さて、小生が一番疑問に感じたことは、例の悪霊と魔術を駆使しての心霊バトル描写の部分。
好きな人には、良いかもしれませんが、苦手な小生にとっては苦痛以外のなにものでもありませんでした、この魔法合戦。(しかも、ありゃ全部夢だったって言われるんですから)
今日び、日本の読者は「ジョジョの奇妙な冒険」など秀逸な冒険漫画を読んでるため、この程度のクリーチャー描写でははっきり言って、退屈は感じこそすれ、面白いとは思わないでしょう。
この著者は一度荒木飛呂彦先生の「JOJO スターダストクルセイダース」を読んで、空条承太郎とデイオ・ブランドーとの激闘を読んで、クリーチャー描写を研究すべきです。
で、最後に決定的なことを一つ。
紹介した通り、ホームズによる事件全容を語る解決編で物語は終わるのですが、第一の殺人については、誰がどう殺害したのか、全く語られません。結局、物語冒頭起こる一番ミステリアスかつ、この巨大密室殺人事件は謎のままなんです。・・・こんなのあり?
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さて、訳者解説によれば、すでにこのガイ・アダムズによるホームズもの第2作目も完成したとのこと。
しかも、今度のお話はH・G・ウェルズのあの「ドクター・モローの島」に出てくる「Dr.モロー」ものと言うじゃありませんか!!
その名も「Sherlock Holmes :the Army of Doctor Moreau」
「ドクターモローの軍隊」だって。なんだか面白そう。
なんのかんの言ったって、出たら買うんだろうなぁ。
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