角岸's blog (Kadogishi s' blog)

酒、酒&映画・・時事問題?

たまらない哀愁とカッコ良さ。香納諒一「心に雹の降りしきる」

2012-09-02 16:47:47 | ミステリー
この間、ネットで買った、香納諒一「心に雹の降りしきる」

もう大正解でした。



主人公都筑は、山下県という架空の地方県警捜査一課の刑事なんだけど、これが、まぁいわゆる悪徳警官でしかも一人で捜査するアウトローなわけ。

なにせ、お人よしの経営者から口巧みに金をふんだくったり、聞きこみと称してショッピングセンターの駐車場で昼寝したりと勝手し放題。

で、物語は7年前消息不明となった、チェーンレストラン経営者井狩社長の娘の服が、フリーマーケットから出てくるところから始まります。

しかし、この貴重な手掛かりを発見した興信所の梅崎は遺体で発見。

というわけで、主人公都筑が、この事件を調べて行くんだけど、彼は7年前この少女失踪事件の担当者でもあるんですね。
しかも、少女が生きているとはこれっぽっちも、思っていなくて、生きている信じている父井狩社長をウザったいと思っているわけ。

そして、事件を捜査していくうちに、梅崎の上司である興信所の所長上村も遺体で発見されます。

もうここいらへんから、このグータラ警官が猛烈に捜査して行くんだけど、もうね、ボロボロになりながらも真相解明へと突き進む主人公の心の変化に泣かせられます。

小生は、物語の本筋の巧みさにもうならされましたが、この登場人物の描き方の見事さったらないですよ。

まず、主役都筑の亡き父と母親の描写。物語中盤に描き込まれるんですがうまいですねぇ。

そして、このダメ警官の捜査手腕をかっている、上司の小池係長。都筑との会話描写が絶妙なうえ、この人物がいるおかげでドラマがグッと盛り上がります。

それから、夫からのDVに悩み、隠れ暮らす母子を都筑がかくまうんですが、この母弓子への淡い恋心。この母子の存在は、終盤に登場する別の母子との対比、そして母子家庭で育った都筑の複雑な心境を炙りだすんですが、ええですな~。特にラス・・・いやしゃべられない。

そのほか、ヤクザの津田、不動産屋の勝美など、素晴らしい人物描写です。

哀愁漂う男のハードボイルドを読みたい人へおススメの一冊です。

ちなみにコレは本の帯。





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