10月1日から公開された007シリーズの最新作「No time to die」は15年間も007を演じ続けたダニエル・グレイグ最後のジェームズ・ボンドです。小生も10月6日、万全に体調を整え鑑賞してまいりました。こんな3時間近くに及ぶ大作は、途中トイレに行かないよう、検診日のようにオシッコを絞りだし、飯も食わず水分補給せずに朝一番の回に見るに限ります。
映画の出来栄えに関して小生ごときが、とやかく言うのはおこがましいのですが、ともかく一言で言うなら、“切ないジェームズ・ボンド”・・・これでしょう!! こんな切ないジェームズ・ボンドは「女王陛下の007」(1969年)以来です。・・・というか、最新作をより深く味わうには、この旧作の鑑賞は必須ですよ、みなさん。ダニエル・グレイグ版の4作品鑑賞はもちろん必須ですが、「女王陛下」も是非見て頂きたい(今なら、アマゾンプライムで全作品みられますしね)。
この「女王陛下の007」は、シリーズでも傑作の部類に入り(少なくとも小生はそう思う)、最新作とも様々な共通点があります。まず当時のアクション映画として異例の長さで、2時間半近くあります。そしてMI6引退&結婚みたいな人間性あふれるジェームズ・ボンド像(しかも、ワルの娘に惚れるし)。さらには、秘密兵器がほとんど登場しないリアリズム。アクションシーンは体張って痛そう(これ1作で終わったジョージ・レーゼンビーが可哀想っす。S・コネリーもR・ムーアもP・ブロスナンもCGとQの秘密兵器で楽(ラク)しまくりだったのに・・・)。
そして、何より小生が注目したのが音楽。これです。
最新作では、あの巨匠ハンス・ジマーが担当したのですが、歴代のボンド音楽を手掛けたジョン・バリーへのリスペクトが至る所に垣間見えるわけです。特にバリー音楽の最高傑作である「女王陛下の007」の哀しい挿入曲が効果的かつドラマの肝として使用されているのは要注目です。
ちょっとネタバレっぽく、なるので未見の人は気を付けて読んでいただきたいのですが、「女王陛下」では、物語終盤(ほとんどラストシーン)に、ハネムーンに二人で出掛け、ヨーロッパの海辺の美しい道路のドライブシーンで、ボンドは重要な、実に重要なセリフを言います。
We have all the time in the world.
と。これって、直訳すると「我々は世界の全ての時間を持っている」となるわけですが、早い話が、めちゃくちゃ時間を持て余している。逆に時間にせかせかしなくてもいいというわけです。
定年退職したお父さんが、早朝「遅刻だッ」と目が覚めてたら、隣で起きた嫁さんが言うセリフみたいなもと言ったらイメージできるでしょうか。
「女王陛下」では「世界は我々だけのものだ」みたいな字幕になってたような気がします、確か(プライムで確認してね)。
しかも、このセリフを2回言うんですよ。
1回目は笑いながら。
そして、2回目は号泣しながら・・・
実は、ジョン・バリーが作曲した悲しい旋律の挿入曲の題名が「We have all the time in the world.」これ。しかも、これをそのまま歌詞にして、ジャズ界の大御所サッチモこと、ルイ・アームストロングが哀愁を込めて唄うんですな。
さて、最新作「No time to die」の物語序盤、幸せいっぱいのボンドとマドレーヌはハネムーンよろしく、アストンマーチンでイタリア、マテーラの海辺の道路を走っています。「女王陛下」の終盤のあのシーンにそっくりです。バックにはハンス・ジマーの美しい旋律曲が流れているのですが、さりげなく、実にさりげなく、この「悲劇の挿入歌」が一瞬流れるわけ。
そして、ボンドがマドレーヌにそのセリフを言うわけですよ。
We have all the time in the world.
と。小生、なんの予備知識も無く見に行ったもんだから、もう鳥肌もんですよ!
水飲まないで行ったのに、ちびるかもと思いました。
↓↓ ハンス・ジマーの実際の曲を聞いてください。曲名は「マテーラ」。ちょうど35秒くらいの所から30秒ほどその旋律は流れます。
さて、観客はここから、これから始まる二人の悲劇性を予想できるのですが、映画終盤もう一度鳥肌もんの瞬間が訪れます。
そのためには、この曲の旋律の記憶と、この英語だけは聞き取れるようにした方がいい。
英語が苦手な人も、何度も何度もこのフレーズを練習してサラッと言えるようになればOK。
(サラリと自分で言えるようになると、英語は聞き取れるものです。言えないけど聞き取れるってウソですよ。)
そして、映画の最も大敵はオシッコ。これはホントに厄介。ちょうど最後のいいシーンで見逃したらそれこそ悲劇です。
No time to go to the rest room
ですよ皆さん。鑑賞前にしぼりだして、コーヒーもコーラもダメです。