安倍首相が辞意を表明しました。
首相は良くも悪くも憲政史上に一時代を築いた、歴史的な大宰相として刻まれることでしょう。
しかしながら、どうしても負の面があったことは否めないと思います。ただ、それは小生にとってメディアが騒ぐ、「加計学園」「森友学園」「桜を見る会」などの国民生活と全く無関係などうでもよい問題のことではありません。
小生が思うにネガティブな面の第一は、2度にわたる消費増税の実行です。
それは金融緩和(アクセル)と増税(ブレーキ)の両ペダルを同時に踏むという明らかに矛盾した政策で、アベノミクスが中途半端どころか、せっかく上向きかけた景気を自らつぶしてしまったようなものでした。
さらには、今般のコロナ禍における後手後手の対応に、首相は危機管理に強いとされていただけに失望した人も多かったのではないでしょうか。
まぁ、それは不運と言ってしまえばそれまでですが、しかし、ドイツのメルケルは消費税減税をやってのけたし、トランプさんのヘリコプターマネーや鎖国政策も早かったように他国のリーダーに比べれば、どうしてもモタモタしたようにしか見えませんでした。
鎖国政策(特に中国から)に関して言えば、中国の赤い皇帝、習近平を国賓として招いてしまったために、まさに絵に描いたような自縄自縛に陥ってしまいました。
・・ただ、安保、外交においては卓越した手腕を発揮したと思います。もちろん中には「拉致問題」「北方領土問題」が解決していないじゃないかという人もあるでしょう。
しかし日本列島は地政学的に、北にロシア、東に北朝鮮、韓国、中国と敵性国家に囲まれ、それはまさに、家がヤクザとストーカーに囲まれているようなもので、これほど不運な国家は無いと小生は思うのです。国土の安定的な防衛は、もちろん経済活動、国民生活に直結し、そこを安定させなければ、景気も税制もへったくれもない土台中の土台です。
今から半世紀ほど前に書かれた「日本人とユダヤ人」(1971年)の中で著者のイザヤ・ペンダサンは次の重大な指摘をしています。つまり「日本人は水と安全がただで入ると思っている」と。「湧水があちこちに溢れだし、しかも国土は米軍が守っている」まさに平和ボケした日本人を羨みと少しの侮蔑を交えて表現したものです。
中東の敵性国家(アラブ主要国)に囲まれたイスラエルは(日本みたいな湧水は無いし)、膨大なコストをかけて軍事力を維持しなければ生き残れないという現実があるわけです。まぁ最近は、やっとUAEとは和平にこぎつけたようですが、日本は逆にどんどん安全保障において厳しさを増してきています。
そういう中で多くの反対があったにしろ「特定秘密保護法」や「集団的自衛権」の確立、そして、世界中を飛び回り、一つでも日本の味方を作る総理自ら外交は安倍首相の大きな功績ではないでしょうか。
自民党から民主党まで1年ももたないでコロコロ変わる総理大臣のおかげで、日本は外交の世界から脱落しかけていました。それを、世界のメインストリームに戻したのは安倍さんだと思うわけです。
「憲法9条を守れば、戦争に巻き込まれない」と信じている、左巻きの護憲宗教の方々には何度説明しても解からないでしょうが、パイの奪い合いである国際社会の中では、冷徹で現実的な実利の追及しかないわけです。「話せばわかってくれる」みたいな甘い話は通用しないことは、あのルーピー宰相がオバマ大統領に「トラスト・ミー」と口先だけの発言して、国民皆、赤っ恥かいたことで証明済みでしょう。また、お隣のムン大統領があっちにもこっちにもいい顔する八方美人外交を展開し、ほぼ、世界中の首脳から失笑と侮蔑を受けていることからも明らかです。
なんだか、話が妙に抽象的になりましたが、要は、どこの国リーダーでも自らの国の国益を追求する愛国者でなければ、かえって相手から信用されなくなるということです。
そういう意味では、安倍首相は首相先進国だけでなく、中国やロシア、北朝鮮のような国からも一目置かれていたように思います。これは、次の政権のある意味正念場です。「日中友好」だの「世界平和」だのと寝ぼけたこと抜かしたら、すぐに領土侵犯等の挑発が繰り返されることでしょう。恐らく、その時、我々は安倍首相の成し遂げた偉大さを解ると思うのです(そうならないでほしいですが)。
経済に関してはホントに惜しい。思えば民主党末期時(野田政権)、平均株価は8千円しかなかったにもかかわらず、第2次安倍内閣の誕生により、何もしなくてもいきなり1万円を突破。コロナ禍の3月までに2万4千円にまで膨れ上がりました。消費増税しなければもっと上がっていたでしょう。大幅な失業率の改善とそれに伴う自殺者の大幅減は安倍政権のおおきな功績です。少なくともコロナ禍までは。
いろいろ、屁理屈を言ってアベノミクスは失敗だという学者(民主党よりの)もいますが、ただ、「安倍首相辞任」の速報で株価が急落したことからも、マーケットは正直です。というより、これほど、「学者:机上の空論」の主張より「マーケット:現実」の動きとどちらが実体経済にとって本当かがわかるというものです。ちなみに、民主党最後の宰相、野田首相の解散明言、安倍自民党総裁誕生までに、株価は18%上昇しました。返す返すもマーケットは正直です。
さて、第2次安倍政権が誕生した時はうちの娘は小学5年生でした。その娘が今年、大学に入学したことを考えると、安倍政権は本当に長期政権だったことを痛感します。
恐らく、娘にとって総理大臣と言えば、安倍晋三ただ一人であり、その前の総理大臣がコロコロ変わっていたなんて、知る由もないでしょう。
次の総理大臣が誰になるかはわかりませんが、与党はもちろん野党も、足の引っ張り合いをして国際社会における日本の地位低下を招かないよう切に願うものです。与党も、野党も国民生活の向上と、国益の追及において政策で切磋琢磨してほしいものです。
さて、安倍晋三首相、長きにわたり本当にお疲れさまでした。ゆっくり、ご養生されてドンドン政策提言とアドバイスする議員にカムバックすることを願います。
日本国のために。