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野口英世はなぜ間違ったのか(30)-中間まとめ-

2013-12-14 16:17:36 | 野口英世
ここまで野口の論文及び手紙を見てきたが、ここで中間的なまとめをしてみようと思う。

野口は黄熱病の患者からレプトスピラを分離し、それを黄熱病の病原体として発表する間違いを犯した。



このレプトスピラは既に日本の稲田らがワイル病の病原体として発見した微生物である。野口は稲田からこの微生物を入手して、形態、培養等の研究を行った。更に野口はアメリカに於けるワイル病患者からもこの微生物を分離している。更にヨーロッパの株も入手し、これらの株の抗血清を作製していた。すなわち野口はワイル病レプトスピラに関して熟知していたのである。それではなぜ間違ったのか。

基本的原因
1.ワイル病と黄熱病の症状が黄疸と出血を主症状とし、非常に似ている。
2.現地における黄熱病の診断は野口ではなくワイル病の存在を知らない現地の医師たちが行い、ワイル病患者を黄熱病患者として患者材料を野口に渡した。
3.現地の衛生状態が悪く、患者の一部はワイル病と黄熱病の両方に感染していた可能性がある。
4.黄熱病の病原体は濾過性であり、ワイル病レプトスピラも濾過性である。

疑問点
1.野口はが黄熱病患者から分離したレプトスピラがワイル病レプトスピラの抗血清と反応したと上司のフレクスナーに手紙を書いている。この時点で野口は自分が黄熱病患者から分離したレプトスピラはワイル病レプトスピラであることを知ったはずである。しかし、このことは以後の論文には記載されていない。なぜか?
2.野口からの手紙を受け取った上司のフレクスナーもなぜそのままレプトスピラが黄熱病の病原体のまま研究を進めるのを許したのか。
3.当時、レプトスピラの病因説には多くの疑問が投げかけられていた。にも係わらずそれに反論する実験を全く行っていないのはなぜか。
野口は黄熱病患者から分離したレプトスピラをモルモットに接種して多くの死体を解剖し各臓器の変化を観察している。反論するには黄熱病患者分離レプトスピラとワイル病レプトスピラを別々にモルモットに接種し、死体解剖の所見の違いを見つけ、両レプトスピラは異なることを述べるべきでなかったか。
4.野口はワイル病レプトスピラによるワクチンを作製しており成果を挙げていた。また黄熱病患者分離株によるワクチンも作製し同様に成果を挙げていた。自説を証明するには両ワクチンを用いて相互の攻撃を行えば良いと思われるが、それも実施していない。
5.当時、黄熱病の中間宿主は蚊であることは証明されていた。野口はレプトスピラを接種したモルモットを蚊に吸血させてから、他のモルモットを刺させて、そのモルモットにレプトスピラが見つかったと、現在では考えにくいことを論文に記載している。この観察が正しいとすると、後者のモルモットは初めからレプトスピラを持っていたことになる。

これらの疑問点から考えると、野口は初めから自分が黄熱病患者から分離したレプトスピラはワイル病レプトスピラであることを知っていたのではないだろうか。しかし、攻を焦るが故に、それが分かってしまう実験は敢えて行わず、間違いを自覚しつつも突き進まざるを得なかったのではないだろうか。野口とフレクスナーは一身同体だったのであろう。
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